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Trademark Appeal Case

著名商標の保護範囲

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35537(T2000−35537/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4057904号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4057904号商標(以下「本件商標」という。)は、「トトロ」の文字を横書きしてなり、平成8年1月16日に登録出願され、第19類「建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料,れんが及び耐火物,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス,木製ドアその他の建具(金属製のものを除く。),鉱物性基礎材料,可搬式家庭用温室(金属製のものを除く。),人工魚礁(金属製のものを除く。),吹付け塗装用ブース(金属製のものを除く。),養鶏用かご(金属製のものを除く。),区画表示帯,土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,道路標識及び航路標識(金属製又は発光式のものを除く。),石製液体貯蔵槽,石製工業用水槽,送水管用バルブ(金属製又はプラスチック製のものを除く。),ビッド及びボラード(金属製のものを除く。),石製彫刻,コンクリート製彫刻,大理石製彫刻,灯ろう,墓標及び墓碑用銘板(金属製のものを除く。)」を指定商品として、平成9年9月19日に設定の登録がされたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第8号証を提示している。

(1)請求人適格

請求人は、宮崎駿氏の原作に基づいて二次的に創作されたアニメーション映画「となりのトトロ」の映画製作者であると同時に、該映画作品の商品化業務に付随して取得した商標の所有者である。そして、請求人の出願に係る平成11年商標登録願第99636号について、本件商標を引用した拒絶理由が通知されているから、請求人は本件商標の登録を無効とすることにつき、法的な利害関係を有している。

(2)無効事由

本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号の各規定に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効とされるべきものである。

(3)事実関係

本件商標は、片仮名にて「トトロ」と書してなるが、これは請求人が宮崎駿氏の原作に基づいて製作したアニメーション映画「となりのトトロ」のタイトルと極めて類似し、また、該アニメーション映画に登場する主人公名「トトロ」と外観、称呼及び観念が同一である。なお、「となりのトトロ」のタイトルと「トトロ」の主人公名は、宮崎駿氏が当該作品のために自ら創案した造語である。

アニメーション映画「となりのトトロ」は昭和63年4月16日、日本全国の東宝系映画館で劇場公開されたところ(甲第1号証)、封切り直後から絶大なる人気を博し、上映の結果、それまでの邦画興行収益トップの記録を塗り替えるなどの実績を残した。また、劇場公開の結果、その年度の全邦画の中にあって、文化庁「芸術作品賞」(甲第2号証)、文化庁「芸術選奨文部大臣賞」(甲第3号証)、「毎日映画コンクール 日本映画大賞」(甲第4号証)、「毎日映画コンクール 大藤信郎賞」(甲第4号証)、その他「キネマ旬報邦画部門第1位」「芸術選奨作品賞」「ブルーリボン特別賞」「山路ふみ子映画賞」「第13回報知新聞映画賞/監督賞」「映画芸術邦画部門第1位」「全国映連賞作品賞」などの輝かしい賞を受賞し、名実ともに日本の映画史に名を残す名作としての地位を得た(甲第5号証)。

「となりのトトロ」はまた、劇場公開から約2ヶ月半後の昭和63年6月30日にフィルムコミック誌の初版が発行され(甲第6号証)、その後続々とムック本や絵本、コミック誌などが出版されているが、現時点の合計でそれらの発行部数は約400万部にも達している。そして、その出版・編集の業務は全て請求人が担当している。

「となりのトトロ」は更に、劇場公開と並行して大々的な商品化が行われ(甲第7号証)、請求人や請求人から許諾を受けたライセンシーが、「となりのトトロ」又は「トトロ」「TOTORO」の名称を付した様々の商品を製造・販売し、商品化に係るアイテムの種類はピーク時には約560種にも及び、これら商品の総販売額は現在までに約300億円に達している。

加えて、「となりのトトロ」は我が国のみならず、東南アジア諸国を中心として全世界的に出版物が販売されている。

如上の状況から、遅くとも本件商標が出願された平成8年1月16日時点において、我が国において「トトロ」といえば、誰もが「となりのトトロ」の映画作品及びその主人公「トトロ」を想起・観念し、請求人を中心とする商品化権事業グループや宮崎駿氏の出所を認識し得る状況にあったことは明白である。

(4)無効理由

a)本件商標は、請求人が宮崎駿氏の原作に基づいて製作したアニメーション映画「となりのトトロ」のタイトルと極めて類似し、また、該アニメーション映画に登場する主人公名「トトロ」と同一の文字よりなものである。しかも、「となりのトトロ」のタイトルと「トトロ」の主人公名は、宮崎駿氏が当該作品のために自ら創案した造語であるから、そのキャラクターや名称の使用を欲する者は、通常、商品化の窓口となっている請求人から許諾を受けねばならないところ、本件商標はその許諾を得ておらず、本来無断で採用してはならない他人の著名な表示と類似する記載を商標として登録したものであるから、公序良俗に反することは明かである。従って、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

b)本件商標は、本件商標が出願された平成8年1月16日時点においては既に、「となりのトトロ」の作品タイトルの一部又はその主人公名として広く認識されていた「トトロ」の表示と、外観、称呼及び観念を同じくすることが明かな「トトロ」の文字を書してなるものである(甲第1号証ないし甲第8号証)。従って、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。

c)本件商標は、請求人の取り扱いに係る表示として我が国で広く認識される「トトロ」の表示と同一であり、また、現に商品化が行われている「陶磁製建築専用材料」等を指定商品に包含するものであるから、これをその商品に使用した場合は、恰も、請求人から許諾を得た者の取り扱いに係る商品であるかの如く、又は、請求人や宮崎駿氏と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかの如く、その出所につき彼此混同を生ずるおそれがある。従って、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

d)本件商標は、請求人や原作者及びスタジオジブリが多くの時間と経費を費やして取得した著名性に只乗り(フリーライド)することで、それを使用しない商品よりも多くの利益を獲得しようとする目的があり、また、ロイヤルイティーを支払わないことで、請求人に損害を与える意図があったことは明白である。従って、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。

(5)むすび

以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号の各規定に該当することは明かであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とすべきものである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁していない。

4 当審の判断

本件商標は、前記に示すとおり、「トトロ」の文字を書してなるものであるところ、請求人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号の各規定に違反するものである旨主張するので、先ず、商標法第4条第1項第7号該当の当否について検討する。

ある商標が商標法第4条第1項第7号に該当するというためには、その商標が矯激、卑猥、若しくは差別的な印象を与えるような文字、図形からなるものである場合、商標の構成自体がそうでなくとも、これを指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するような場合、あるいは、他の法律によって、その使用が禁止されている商標、さらに、その使用が不正な意図をもってされ、国際信義又は公正な取引秩序に反するものである場合等を挙げることができる。

そこで、請求人の提示に係る甲各号証及びその主張の全趣旨とも併せ考慮するに、以下の点が認められる。

(1)著名性について

原作宮崎駿に係るアニメーション映画「となりのトトロ」(以下、「アニメ作品」という。)は昭和63年4月16日、日本全国の東宝系映画館で劇場公開された(甲第1号証)結果、その年度の全邦画の中にあって、文化庁「芸術作品賞」(甲第2号証)、文化庁「芸術選奨文部大臣賞」(甲第3号証)、「毎日映画コンクール 日本映画大賞」(甲第4号証)、「毎日映画コンクール 大藤信郎賞」(甲第4号証)、その他「キネマ旬報邦画部門第1位」「芸術選奨作品賞」「ブルーリボン特別賞」「山路ふみ子映画賞」「第13回報知新聞映画賞/監督賞」「映画芸術邦画部門第1位」「全国映連賞作品賞」等の各賞を受賞し(甲第5号証)、日本映画界において一躍脚光を浴び我が国の年少者を中心に大きく注目されるに至ったこと。

(2)商品について

アニメ作品は、昭和63年6月30日にフィルムコミック誌の初版を発行(甲第6号証)後、絵本、コミック誌等を出版してその発行部数は約400万部に達し、さらに、我が国のみならず、東南アジア諸国を中心として全世界的に出版物が販売されていること。

また、請求人や請求人から許諾を受けたライセンシーが、「となりのトトロ」又は「トトロ」「TOTORO」のキャラクター又は同文字よりなる標章を付した様々な商品を製造・販売し、それら商品の種類は、縫いぐるみ、オルゴール、置時計、陶製容器、陶製置物、陶製フレーム、食器、弁当箱、かばん、袋物、トランプ、貯金箱、ワッペン、タッグ等ピーク時には約560種に及び、その総販売額は現在までに約300億円に達していること(甲第7号証)。

以上(1)、(2)の点を総合すると、遅くとも本件商標が出願された平成8年1月16日の時点には、我が国において「トトロ」といえば、誰もが「となりのトトロ」の映画作品及びその主人公「トトロ」を想起・観念し、請求人又は原作者宮崎駿氏を中心とする当該商品化事業ないしそれら各商品との関係を直ちに認識し得る程度に広く我が国の取引者、需要者間に知悉せられていたものとみて差し支えないものと認められる。

ところで、本件商標は、「トトロ」の文字よりなること前記のとおりであって、該文字に相応する邦語又は外国語は存在せず、その採択事情が前記アニメ作品又は同キャラクターないしは前記商品化事業に関連する標章にあったことを容易に推測させるものである。

そして、本件商標の指定商品は、各種建築材料その他業務用の商品を中心とするものであるが、前記商品化に係る各種商品とは特に家庭用に供される商品の分野においてはなおその需要者を共通にする場合が少なくないといえる。

そうすると、被請求人が本件商標を採択、使用することは、前記アニメ作品の名声に便乗し、または、請求人関連当事者の商品化事業に係る「となりのトトロ」、「トトロ」及び「TOTORO」等の標章の有する顧客吸引力に便乗するもの、すなわち、不正の意図を推認するのに充分といわざるを得ない。

してみれば、本件商標は、公正な競業秩序を乱すおそれがあり、また、特に我が国の年少者を中心に形成された或る種キャラクターイメージを理由なく利用するものであって、商取引上の信義則に反するものといわざるを得ないから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわなければならない。

そして、ほかに、この認定を左右するに足りる証拠はなく、また、被請求人は、何ら答弁するところがない。

(3)むすび

以上のとおりであるから、請求人の述べる他の無効理由の当否について判断するまでもなく、本件商標は、前記法条の規定に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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