結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2000−31143(T2000−31143/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
(1)本件商標に関する権利関係については、甲第1号証及び甲第2号証に示すとおりである。
(2)請求人の調査によれば、本件商標は、取消請求に係る商品「録音済み磁気テープ,録音済み磁気ディスク,その他のレコード,録画済みビデオディスク,録画済みビデオテープ,映写フイルム,スライドフイルム」につき継続して3年以上日本国内において使用されていないのみならず、本件商標を使用していないことについて正当な理由が存することも認められない。
加之、本件商標について専用使用権の設定または通常使用権許諾の登録もないから、使用権者による使用ということも問題にならない。よって、請求人は、商標法第50条第1項の規定に基づき本件商標の指定商品中、上記商品につき登録の取消を求める。
(3)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)被請求人はその取り扱いに係る雑誌の付録のCDが指定商品中の「録画済み磁気ディスク」に該当しこれに商標を使用することも商標法50条にいう「使用」にあたる旨述べている。
a)被請求人が述べるように「CD」自体は、確かに指定商品「録画済み磁気ディスク」に該当する。そして、被請求人が答弁書及び乙第1号証、乙第3号証並びに乙第4号証の中で自認している通り、被請求人の商標は「付録としてのCD」についてのみ使用されている。
しかしながら、商標法上「付録」は商品ではない。商標法における商品とは「商取引の目的たりうべき物、特に動産をいう」とされており、「商取引の対象」であるためには、当該商品自体が対価を伴う取引対象であることを要する。しかるに、被請求人に係る「CD」はそれ自体が有償で売買されるものではなく、売買の対象となっているのは「雑誌」である。従って、当該「CD」は商標法上の商品とはいえない。
b)また、たとえ、商標法上の商品と解される余地があったとしても、被請求人の証拠からは本件商標の「使用」とはいえない。標章(商標)の使用については、商標法第2条第3項各号に使用態様が掲げられている。形式的には、被請求人の商標の使用は、「商品に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)に該当するようにも見られる。しかしながら、本号に規定されている各行為は、商標の使用の態様を形式的に記載したものであり、商標の使用と謂えるためには現実に商標の機能を有効に発揮させることが必要である。前述の通り「CD」は商品である雑誌の付録に過ぎず、取引の現場においては、被請求人が謂うところの商標「LOVE PA」は、雑誌を識別する働きをするものに過ぎない。
特に、使用商標に係る音楽系関連の情報雑誌にCDを付録としているような場合には、万引き防止等の事故を防ぐために雑誌自体をビニールで包装している場合が多いため、需要者は雑誌の表紙を目印にして商品の選択をする場合が多いという実情がある。従って、被請求人の謂う商標は、CDとの関係においては自他商品識別力を全く発揮するものではなく、出所表示機能、品質保証機能、宣伝広告機能という商標の機能を何ら発揮しないのである。よって、商標の「使用」には該当しない。
(イ)被請求人はその取り扱いに係る雑誌付録のCD上にそれぞれ記載された「ラブパ」または「LOVE PA ON PLASTIC」は本件商標とは全体と一部の関係にあり、本件の場合、両者はその語感、音感において極めて類似しており、さらに当該雑誌のEメールアドレスのドメイン名は「loveparade」が使用されているとして、「LOVE PA」は「LOVE PARADE」を略して表すものであって同一性を有する旨述べ、判決例(甲第3号証)を挙げているが、判決例は固有の事例であって被請求人主張の「全体と一部の関係になっているものであったとしても、その両者が社会通念上同一の商標といえる関係にあれば、商標の使用というべきである。」との点を支持する記載は全く見出せないから、本件とは別個のものであって、これらが社会通念上同一の商標とは到底認めがたいものである。
また、「LOVE PARADE」と「LOVE PA」はその語感、音感において極めて類似しているというが、両者の称呼を比較すれば両商標には全く近似性がなく、語調、語感において全く類似性を有しないことが明らかである。
さらに、被請求人は「LOVE PA」中の「PA」から当然何らかの言葉の一部と認識される旨述べているが、この種雑誌の取引者または一般の消費者がこの「PA」を英単語またはその一部と考えることはあり得ず、況や「PARADE」の語を想起することなどあり得ない。
そして、また、被請求人主張のEメールのドメイン名は、元々、Eメールに送信するための単なるいわば「住所表示」のようなものであって、商標との関連性はないから、ドメイン名の一部に使われている文字から直ちに「パ」の文字を認識する者など皆無である。
その他、「PA」は、英単語の省略形として数多く英和辞典に掲載されているとしても、それらの中には「PARADE」は見出し得ない(甲第4号証)から、この点を述べる被請求人の主張も不当である。
(ウ)被請求人主張の「(2)不使用につき正当事由の存在」について
被請求人は、商標「LOVE PARADE(ラブパレード)」をキーワードにした音楽関係の事業を計画していたこと、構造不況の中計画の見直しを迫られたこと、請求人主催のイベントとの混同を防ぐ意味から本件商標の使用は慎重にならざるを得なかったこと等の事情を述べ、これら理由は本件商標の不使用についての正当理由に該当する旨述べているが、商標法第50条第2項但書の正当理由が認められる場合とは、商標権者または使用権者の責めに帰すことができない予見困難な事情によって使用できなかった場合であって、たとえば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、あるいは、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等をいうものと解されるから(社団法人発明協会発行「工業所有権法逐条解説」第15版ほか)、「構造的不況等により商品化の準備が遅れ商標の使用ができなかった事情」は自己都合でしかなく、不使用の正当理由には当たらない。
従って、被請求人の主張する正当理由は、独自の見解であって妥当性を欠くから認めるべきでない。
(エ)以上の次第であるから、本件商標がその「指定商品」に使用されていないこと及び本件商標の不使用の正当理由も存しないことは明らかである。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証(被請求人会社に係る「現在事項全部証明書」を乙第5号証とした。以下、同じ。)を提出した。
(1)本件商標の使用の事実
被請求人において発行している雑誌「LOVE PA!!」創刊号及び第2号に付録としてコンパクトディスク(以下、「CD」とする。)がそれぞれ添付されている。そして、創刊号付録CDには「ラブパ」の、刊行第2号付録CD上には「LOVE PA ON PLASTIC」の記載がそれぞれなされている(乙第1号証)。
本件商標「LOVE PARADE」と「LOVE PA」とは全体と一部の関係にある。全体と一部の関係にしても、その両者が社会通念上同一の商標といい得る関係にあれば、商標の使用というべきである(東京高等裁判所平成2年2月20日判決 判例時報1350号134頁参照)。
そこで上記を見るに、両者はその語感、音感において極めて類似しており、さらに、「PA」は、それ自体意味のある言葉ではなく、したがって当然何らかの言葉の一部であろうことは容易に想像がつくものであるところ、雑誌「LOVE PA!!」記載に係る編集部宛のEメールアドレスのドメイン名には「loveparade」が使用されており、「LOVE PA」は「LOVE PARADE」の一部であり、これを略して表すものであるということはこの点からも明らかである。なお、付録に商標を使用することも、商標法50条にいう「使用」にあたるというべきである。
(2)不使用につき正当事由の存在
(ア)被請求人は、商標「LOVE PARADE(ラブパレード)」をキーワードにした音楽関係の事業を計画し、平成9年9月11日、本件商標について登録を受けた。
その計画は、「LOVE(ラブ)」をキーワードとしてその連続状態、集合状態としての「PARADE(パレード)」という概念を設定し、その概念に基づき、まずCD等の音楽ソフトを皮切りに、音響機器等まで発展させ、これを計画的に開発、販売していくというものであった。その際、想定された音楽分野は、いわゆる今日の「クラブミュージック」である。なお、「クラブミュージック」とは本来はクラブ(大音量で音楽を流して踊る場所)で流すための、シンセサイザー(電子音響合成楽器)やコンピューター等の電子楽器を多用した踊りに向いた音楽分野である。
その計画に基づき、被請求人会社代表者藤野は被請求人会社内の下部組織として「日の丸レコード」というレーベルを発足させた。
(イ)しかしながら、折からの構造不況の中、レコード、CDの販売のみでは経営は行き詰まるほかなく、藤野はそれまでの計画の見直しを迫られた。
その結果、当時の我が国においては上記「クラブミュージック」はなお一般的に認知されてすらおらず、藤野はまず、我が国に「クラブ文化」を根付かせる必要を強く感じた。そのためには音楽ソフトをいたずらに販売するよりも、むしろ、その顧客になる層を開拓することこそ先決であると考えるに至った。
(ウ)そこで、被請求人会社は平成11年11月、同社内に「LOVE PARADE(ラブパレード)事業本部」を設立し、事業計画を作成した(乙第2号証)。
その事業計画ではまず平成12年に雑誌の発刊及びラジオの放送により市場を開拓し、翌13年にはCD、デジタルビデオディスク(以下、「DVD」とする。)等の録音、録画制作物の販売を開始し、さらに14年にはレコード演奏器等の音響機器の制作、発売を行っていくというものであった。
(エ)上記事業計画に基づき被請求人会社は雑誌の発刊を計画し、その計画は雑誌「LOVE PA!!」として実った(乙第3号証)。同雑誌は平成12年7月に創刊され(同年8月号)、現在同年12月号を出版し、創刊以来第5号を数え、その売り上げも順調に伸ばしてきている。
(オ)他方、被請求人は請求人の主催する催し物の存在を知っていた。その催し物がいわゆる「テクノミュージックの祭典」であり、そのイベントが我が国においても知名度を上げていくに連れ、それとの混同を防ぐ意味から、より一層の入念な準備が要求されるようになっていった。そのため、本件商標の使用はより慎重にならざるを得ず、被請求人はその準備を行っていたのである。
(カ)したがって、被請求人は、現在、この構造的不況の中で本件商標を使用して、その登録の趣旨を実現するべく準備段階にあったのであり、結果として登録から3年間使用しなかったが、その主たる理由は現在の我が国における構造的不況にあったのであり、したがってその不使用について正当の理由があるというべきである。
(3)以上のとおり、本件審判請求は成り立たないものである。
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項により、被請求人において、その請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、または使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取り消しを免れない。そして、この場合、不使用の正当理由とは、たとえば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、あるいは、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等、その責を一方的に商標権者または使用権者に課すことが酷であると認められる場合をいうものと解される。
そこで、本件についてみるに、被請求人は、(1)本件商標をその発行に係る雑誌に付録として添付したコンパクトディスクに使用したこと、(2)不使用につき正当事由が存在すること、の2点を述べているので、以下、検討する。
(1)本件商標の使用の当否について
本件商標は、その構成前記のとおり、「LOVE PARADE」の欧文字とするものである。
被請求人は、本件商標をその発行に係る雑誌に付録として添付したコンパクトディスク(以下、「CD」という。)に使用したとして乙各号証を提出しているので、これを判断する。
乙第1号証は、雑誌「LOVE PA」創刊号(平成12年8月号)及び同第2号(平成12年9月号)の表紙、見開き頁及びCDを撮影した写真6葉であり、乙第3号証及び乙第4号証(枝番を含む)は同雑誌表紙及び同雑誌添付のCDの写し(コピー)であって、当該CDには「LOVE PA!! ON PLASTIC」および「ラブパ オン プラスチック」の表示が認められる。そして、被請求人は、このCDに表示された「LOVE PA」または「ラブパ」が本件商標の使用であると述べている。
しかしながら、これら乙号証をもってしては、本件商標をその指定商品について使用されたものとみるのは困難であり、また、このほか提出された乙号証によっても本件商標の使用は立証されないから、結局、被請求人は、本件商標の使用について主張、立証し得なかったものといわなければならない。
すなわち、前記認定の「CD」は、被請求人も自認する如く専ら当該雑誌の付録として供されているにすぎず、それ自体が単独に取引対象と目されるものでなく、また、一定の交換価値をもって市場の流通に供されているものともいえないから、商標法上の商品ということはできない。そして、そもそも、商標とは、事業者が自己の業務に係る商品(または役務)と他人の業務に係る商品(または役務)とを区別するために当該取り扱いに係る商品(または役務)に付して使用するものであって、その本質は自他識別機能にあるから、前記「CD」が商品性を欠くものである以上、それに表示された文字または図形(以下、「ラブパ標章」という。)は、商標の機能を発揮することができない。さらに、ラブパ標章は、本件商標とは明らかに別異のものであって、社会通念上同一のものとは到底認め難いものである。
したがって、登録商標との同一性の欠如、当該使用に係る物品(CD)の商品性の欠如並びに商標的機能の欠如の各点よりして、被請求人主張の本件商標の使用は客観的に証明されない。そして、この点について縷々述べる被請求人の主張は独自の見解に基づき主観論を述べるに止まり、客観性を欠くものであるから、採用の限りでない。加えて、被請求人は、前記3(2)(カ)の項において「結果として登録から3年間使用しなかった」旨述べ、本件商標の不使用を敢えて否定していない。このほか、前記認定を覆すに足りる証拠はない。
(2)不使用の正当理由の存否について
被請求人は、本件商標の不使用について正当理由が存在するとして、その理由を縷々述べ、事業計画書(乙第2号証)を挙げているが、前述の商標法第50条第2項の規定の趣旨に照らし、それら理由は、天災地変等の不可抗力事由その他法的規制等によりその責を商標権者または使用権者に課すことが酷であると認められる場合に該当するものとはいい難く、むしろ、自己都合による事情の域を出ないものというべきであるから、いずれも採用の限りでなく、その理由をもって本件商標の不使用について正当な理由が存したものということはできない。
すなわち、乙第5号証(被請求人会社に係る「現在事項全部証明書」)にあるとおり、広告・宣伝の企画及び製作、録音録画物の制作・販売その他の業務を事業目的とする被請求人会社が乙第2号証(事業計画書)記載の事業計画、すなわち、本件商標(「LOVE PARADE」)をキーワードとして、雑誌の発刊、ラジオ放送及びCD、DVD等の録音・録画記録物の制作販売を行うべく準備段階にあった事情は窺われるとしても、それらは一般的社内事情というべきものであって、如何に構造的不況の要因があったにせよ、社内の一事情をもって本件商標の不使用の不可抗力的事由とするのは甚だ客観性に乏しく合理性に欠けるものといわなければならない。そして、かかる場合、本件商標の不使用の責を被請求人(会社)に負わすことは強ち酷であるともいい難い。
その他、この点に関して述べる被請求人の主張は、いずれも妥当性に欠けるものであって、採用することができない。このほか、前記認定を左右するに足りる証拠はない。
(3)結語
以上、(1)及び(2)に示すとおり、被請求人の述べる本件商標の使用についての主張及び不使用の正当理由の主張は、いずれもこれを認めるに十分なものとはいい難いものであるから、結局、被請求人は、本件審判の請求に対し、所定事項の証明をなし得なかったものといわなければならない。
してみれば、本件商標は、本件審判の請求前3年以内に日本国内においてその指定商品中の取消請求に係る商品について使用がされなかったものであるから、その登録は、商標法第50条により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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