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Trademark Appeal Case

周知商標の同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35466号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4141675号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4141675号商標(以下「本件商標」という。)は、別記に表示したとおりの構成よりなり、平成8年10月4日登録出願、第3類「アロマセラピー用香料その他の香料類,化粧品」を指定商品として平成10年5月1日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第26号証(枝番号を含む。)を提出している。

本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第7号及び同第19号の規定に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。

1 商標法第4条第1項第10号該当性

(1)本件商標を構成する図形は、アロマセラピー(芳香療法)の世界的な第一人者であり、請求人の一人である「ロバート ブルース ティスランド」(以下「ロバート・ティスランド」という。)の所有する周知商標にほかならない(甲第3号証、甲第12号証ないし同第24号証)。

アロマセラピーとは、嗅覚と生理の関係を利用して心身の不調を直そうという治療法の一つであるが、ロバート・ティスランドは、アロマセラピーを英国議会の議題にまでのせたことで知られるイギリスの研究者であり(甲第19号証)、名実ともにこの分野の第一人者として知られている。なお、ロバート・ティスランドが、上記商標の本来の所有者であることについては、甲第3号証(法定陳述書)を参照されたい。

(2)甲第3号証、甲第12号証ないし同第24号証からも明らかなように、請求人は、本件商標と同一の商標(以下「請求人商標」という。)を、ロバート・ティスランドの氏名(ROBBERT TISSERAND)とともにアロマセラピー用商品に付して日本を含む世界中で販売している(甲第3号証)。

請求人は、同人の商標を付したアロマセラピー用商品を、1990年(平成2年)から世界各国に輸出しているが、1992年(平成4年)から1997年(平成9年)にかけては、日本への輸出高が急激に伸びている。また、ロバート・ティスランドが著したアロマセラピーに関する書物が、1977年(昭和52年)以降、世界各国で販売されている。さらに、ロバート・ティスランドが、1986年(昭和61年)から国際的なアロマセラピーの会議を主催し、各国で講演を行ってきた(甲第3号証)。

(3)わが国において、アロマセラピーが一般にも広く知られるようになったのは、平成2年頃からであるが、それ以前から、口パート・ティスランドの名前は、アロマセラピー商品やハーブ取引者及びこれに関心を有する一般消費者の間では広く知られていた。このことは、昭和60年(1985年)に出版された同人の著書が、平成10年には13刷を数えていること、同様に、平成2年に出版された著書が、平成8年に6刷を数えていることからも明らかである(甲第8号証及び甲第9号証)。

さらに、「JAA 会報」(甲第12号証及び同第13号証)には、請求人の日本における独占的販売代理店である「株式会社サンファーム商事」(以下「サンファーム商事」という。)の広告が掲載されており、そこには、大きく請求人商標が表示されている。

また、株式会社日本エアシステム(JAS)の航空機内に設けられた女性専用化粧室では、請求人のエッセンシャルオイルが使用されており、同機内では、請求人のアロマセラピー用品を購入できるようにもなっている(甲第16号証)。

その後は、女性誌を中心に「アロマセラピー」の特集記事が頻繁に組まれるようになり(甲第18号証ないし同第24号証)、本件商標は、ロバート・ティスランドの名前とともに、アロマセラピー用商品を表示するものとして、一般消費者の間にまで広く知られていった。

(4)本件商標は、上述のとおり、請求人の商品「アロマセラピー用香料」等を表示するものとして、本件商標の出願の時において既に我が国のアロマセラピー関係者、ハーブやエッセンシャルオイルを取り扱う取引者の間において広く認識されていた請求人商標と同一の商標であり、「アロマセラピー用香料」等に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

2 商標法第4条第1項第7号及び同第19号該当性

(1)本件商標が、請求人の商品「アロマセラピー用香料」等を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている請求人商標と同一であることは上述のとおりである。

(2)被請求人は、いわゆる並行輸入業者であり、昭和63年頃より、ロバート・ティスランドがテクニカルコンサルタント(技術顧問)を務めるイギリス法人であって、本件共同審判請求人である「アロマセラピー プロダクツ リミテッド」(以下「アロマセラピープロダクツ社」という。)の製造するアロマセラピー関連商品を日本に輸入し、オリジナル商品の包装に付されている文字商標部分を隠す等の変更処理を行ってから、日本で販売をしている(甲第5号証及び同第15号証)。

甲第5号証及び甲第15号証のアロマセラピー専門誌2誌には、サンファーム商事の広告と、被請求人が経営する有限会社森興産の広告とが同時に掲載されたが、有限会社森興産の広告には、大きく請求人の氏名である「ロバート・ティスランド」の文字と本件商標が表示されている。

本件商標が公告された後の平成10年10月28日、請求人は、被請求人に対し、本件商標の正当な所有者は請求人であるので、本件商標を早急に返還するよう求め(甲第4号証)、本件を友好的に解決すべく交渉を重ねてきたが、不調に終わった。

本件商標は、被請求人が他人の商標を無断で出願したものであるが、さらに、被請求人は、本件商標と同一の商標を、第3類「せっけん類,マッサージオイル,エッセンシャルオイル,歯磨き」について平成10年11月6日に出願している(平成10年商標登録頭第94934号)。すなわち、被請求人は、請求人が本件商標の返還を申し入れた書簡の受領を同年10月31日付手紙によって確認していながら(甲第6号証)、そのわずか6日後に該商標を出願しているのである。

このように、被請求人による本件商標の登録は意図的であり、友好的解決を望むと回答しながら、その裏で同一商標を重ねて出願するなど、被請求人の行為は悪質といわざるを得ない。

被請求人はさらに、本件商標を構成する図案化した「T」の文字を中心に配した英文字「RoberTisserand」からなる商標も、第3類「アロマセラピー用香料類,その他の香料,化粧品」について、平成10年5月22日に出願しており(平成10年商標登録願第42347号)、この出願からも不正の意図は明白である。

(3)つまり、被請求人は、本件商標の本来の所有者が請求人であることをその業務上自ら熟知していたのみならず、かつそのことを請求人より指摘された直後に、さらに本件商標と同一の商標を出願したものであって、商標法第4条第1項第19号所定の「不正の目的」(すなわち「不正の利益を得る目的」等)を有することは客観的に明白である。

(4)さらに、被請求人による本件商標の登録は、国際的な信義及び商業倫理にも反するものであり、また、本件商標の使用は、客観的に不正の利益を得、若しくは請求人に損害を加える目的を有するものというべきである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号の規定に該当する。

3 被請求人は、本件無効審判の請求は却下されるべきであると主張しているが、商標法第56条で準用する特許法第135条に係る却下の理由の存在について全く主張・立証を行っていないから、被請求人の答弁には、何ら理由がない。

4 被請求人は、請求人商標は周知商標ではないと主張しするにあたって、「化粧品」を取り扱う一般の化粧品市場及び業界と、アロマセラピー用香料の市場及び業界とを同一のものであるかのように論じ、市場、売上高、輸入取扱高、広告宣伝費等のいずれにおいても、後者は「規模が小さい」「微々たるもの」「統計にならない」「埋没してしまう」「ごく限られる」等の表現を用いて、請求人商標は周知であるとはいえないと述べている。

しかしながら、請求人商標が使用される商品は、一般の化粧品とは異なる市場において異なる需要者に販売されるものであり、一般化粧品に比すれば、限定的な市場で売買されるものである。商標法第4条第1項第10号にいう「周知」は、必ずしも公衆一般にあまねく知られているということを要さず、限定的であっても当該商品に関連する市場ないし当業者において周知であれば、「周知」といってよい。

そもそも、被請求人自身も答弁書において、「アロマセラピー用香料は、ロバート・ティスランドの功績により知られるようになって約10年である。」と自認しており、このことからも、その商品に使用されてきた請求人商標が周知であることは明らかというべきである。

なお、「周知」性は商標法第4条第1項第7号の要件ではなく、被請求人は、本件商標が同条項に該当することに対して何ら具体的に反論していない。本件商標は、請求人が創作し、その商品に使用する請求人商標と完全に同一のもの(コピー)であり、被請求人は、これが日本で登録されていないことを奇貨として出願、登録したものである。このような商標の剽窃・冒認行為が、国際的な商取引秩序の信義に反し、また、社会の一般的道徳観念に反することは極めて明白である(例えば甲第25号証参照)。

5 被請求人は、本件無効審判請求書に添付されたロバート・ティスランドの委任状(以下「本件委任状」という。)が、真正なものではないかのような主張を行っているので、この点については次のとおり確認する。

すなわち、本件委任状は、ロバート・ティスランドによって真正に署名されたものである。本件委任状の委任事項には、被請求人が指摘するような修正があるが、その修正は、委任者である請求人の意思にしたがったものであり、何ら不適法はない。特許庁における手続きに用いる委任状は、あらかじめ印刷した定型的なフォームを適宜修正加筆して使用するのが通例である。

削除された出願番号は、被請求人が無断で出願した二つの出願に対する刊行物等の提出に関し、同人が記載したものであったが、不要のため削除したものである。

いずれにしても、請求人ロバート・ティスランドは、本件無効審判の手続きを当代理人に対し本件委任状により委任しており、このことは、同人が署名した法定陳述書(甲第3号証)第7ページの署名と照合しても明らかである。また、このような法定陳述書を作成・提出した者が、本件無効審判を請求する意思がなかったなどということはあり得ず、このことからも被請求人の委任状に関する主張は全く論拠のない不当な非難というべきである。

6 被請求人は、証人尋問の可能性について言及しているが、言及されている立証事項は、被請求人が並行輸入業者であるという事実のようであり、そのようなことは本件無効事由とは直接関係がない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求を却下する、又は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第12号証(枝番号を含む。)を提出している。

1 本件審判請求は却下されるべきである。

(1)被請求人は、請求人と何ら取引のない第3者に登録商標を取られることにより、需要者の当該商品に対する出所混同を防止するために、株式会社パシフィックプロダクツ(以下「パシフィックプロダクツ社」という。)が所有する商標「ティスランド/TISSERAND」、サンファーム商事が所有する商標「ROBERTTISSERAND」と同様に、アロマセラピーに関する商標登録を取得したいと考え、本件商標の登録を得た。被請求人は、上記二社と同じ並行輸入業者である。

請求人は、これらの商標登録を無効にすることに何ら意味がない。すなわち、並行輸入業者が前記各商標登録を取得し、正当な商品にのみ使用している以上問題がない。請求人は自分の商品が正しく宣伝され、少しでも多く販売されればよいことである。むしろ、請求人は、前記並行輸入業者によって、不正使用をしようとする第3者から保護されていることになる。したがって、請求人は、無効審判を請求する原因が全くなく、当事者としての適格性を有していない。よって、本件審判請求は、却下されるべきである。

(2)本件商標の返還又は譲渡交渉については、被請求人は、譲渡の依頼者がロバート・ティスランド一人の委任状(乙第1号証の1)であること、及び通常特許庁へ各種手続きを行う際の委任状であり、本件商標を譲渡する手続きのための委任状ではない点に疑問を抱き問い正した(乙第2号証)。しかし、明快な解答を得られなかった。被請求人は、真正な手続であれば請求人に本件商標を譲渡する用意がある。請求人と被請求人との間において十分な意志の疎通がないままに無効審判請求に至ったものであり、あくまでも二者間の話し合いで解決する性質のものである。

また、本件審判請求書に添付の本件委任状は、乙第1号証の1と全く同じものである。異なるのは、商標登録出願番号を塗りつぶすとともに、修正液により消した部分に「trial for invalidation」(無効審判)をタイプしたものである。そして、ロバート・ティスランドのサインはコピーであり、アロマセラピープロダクツ社のハリス氏のものと明らかに異なっている。コピーではなく正規の委任状を提出すべきである。

また、本件委任状及び乙第1号証の1に示された譲渡用の委任状は、商標登録番号、及び/又は出願番号を勝手に記載したものであり、ロバート・ティスランドの真性な委任状とはいえない。したがって、本件審判請求は、ロバート・ティスランドの意思によってなされたものではないことが明らかであり、本件審判請求は、却下されるべきである。

(3)請求人は商標登録をイギリスに出願していないと思われる。イギリスにおいて登録をしていないものを日本において権利を得ようと努力することに対して大いに疑問がある。また、権利を得ようとしないものが無効審判を請求することもない。よって、本件審判請求は、却下されるべきである。

2 請求人商標が周知商標であるという点に関し

(1)請求人の提出した甲第3号証には、ロバート・ティスランドの業績が示されているが、請求人商標が周知商標であったという証拠にはならない。なぜならば、「TISSERAND」商標及び「ROBERTTISSERAND」商標が請求人以外の名義で日本で登録になっている、これらの商標が登録になっていることから考えて請求人商標は周知商標ではなかったとみるのが妥当である。

(2)香料類、化粧品は、その種類、製造メーカー、販売会社は数え切れないほどあるのに対し、香料類のうちアロマセラピー用香料類を扱っている会社は、製造メーカーや販売会社もごく限られた会社しか存在していない。すなわち、指定商品、第3類「アロマセラピー用香料その他の香料類、化粧品」において、アロマセラピー用香料を扱っている会社は周知性がない。

(3)日本における1年間の香料及び化粧品の出荷金額は平成10年で年間約1.5兆円である(乙第9号証)のに対して、請求人の日本に対する輸出額は1800万円程度であり(甲第3号証、1ポンド180円で計算)、一万分の一程度である。すなわち、請求人のアロマセラピー用香料は、その売上高が、他の香料類や化粧品と比較したら微々たるもので、周知性のあるものとはいえない。

(4)「化粧品月報調査品目分類表」(乙第9号証)にアロマセラピー用香料は、香水・オーデコロン、皮膚用化粧品、特殊用途にリストアップされていない。すなわち、アロマセラピー用香料は、統計にならない程度のものであり、他の香料類及び化粧品に対して周知性があるとはいえない。

(5)「平成10年品目別輸入額前年対比表」(乙第9号証)によれば、香料類及び化粧品が約1000億円輸入されている。輸入だけをとっても、請求人のアロマセラピー用香料は微々たるものであり、国産及び輸入品の中に埋没してしまう程度の数であり、到底周知であるとはいえない。

「シャネル」といえば、香料に無関心な男性でも知っている。アロマセラピー用香料は、ほんの一部の者にとって愛用されているだけで、他の香料類や化粧品と比較すると、名前や種類、あるいはその効能等を知っている者はごく限られている。必ずしも必需品ではないため、関心度も低く、他の香料類や化粧品と比較しても、明らかに周知度がかなり低い。

(6)請求人は、請求人のアロマセラピー用香料が雑誌、特集記事として、あるいは書籍によって多く紹介されていると主張している。

しかし、他の香料類及び化粧品は、値段のほとんどが広告・宣伝に使用されているといわれている「業種別広告費」(乙第9号証)をみると、香料類及び化粧品に使用される広告費は3000億円を超えている。

請求人の提出した証拠にあるアロマセラピー用香料の広告は、特殊な雑誌にのみ限られており、他の香料類及び化粧品と比較すると、一部のファンのみのものであり、周知であるとはいえない。

(7)香料類及び化粧品は、身に付けるものとして、数千年の歴史を有する。これに対して、アロマセラピー用香料は、ロバート・ティスランドの功績により知られるようになって約10年である。このような歴史からみても、各証拠に挙げられた程度では、周知の商標とはいい切れない。

3 法定陳述書(甲第3号証)について

(1)ロバート・ティスランドの陳述は、アロマセラピー用エッセンシャルオイルの販売実績、芳香療法の技術、アロマセラピーに関する著書或いは講演会等における同人の業績のみであり、請求人商標が周知であるという証拠になるものではない。また、同人の著書や講演会は、本件商標の指定商品が第3類「アロマセラピー用香料その他の香料類、化粧品」であることを考慮すると、「その他の香料類、化粧品」に関する著書類、講演会、使用説明会、宣伝・広告等著しい情報と比べると、微々たるものであり、周知であるとはいえない。

(2)ロバート・ティスランドの陳述によると、1996年の世界における売上は1億8千万円(1ポンド180円で計算)にしかならない。

日本国内の化粧品の売上高は約2兆円に近く(乙第9号証)、世界の化粧品の売上高は、日本の売上高の10倍として20兆円程度になる。請求人の売上の実に10万倍にもなる。「アロマセラピー用香料その他の香料類、化粧品」という指定商品において、請求人の提出した程度のものは、数や人目に触れる点でも、かなり少なく周知であるとは到底いえない。

(3)法定陳述書において、ロバート・ティスランドは、「TISSERAND」が自分の商標として使用する独占的な権利をアロマセラピープロダクツ社に付与していると陳述している。しかし、MAGGIE TISSERANDという会社が「TISSERAND」商標でアロマセラピー用香料を販売している(甲第19号証)。そして、「TISSERAND」商標はわが国においてパシフィックプロダクツ社が商標登録を取得している(乙第3号証)。すなわち、アロマセラピーの業界には、ロバート・ティスランド系の製品に付与されている商標「ROBERTTISSERAND」と、マギー・ティスランド系の製品に付与されている商標「TISSERAND」とがある。したがって、陳述されている内容は、事実と異なるところがあり、信憑性が疑われる。

4 各証拠について

(1)例えば「HERB」(甲第5号証)、「アロマテラピー」(甲第8号証)の出版社は、いずれも出版社としては大手ではない。1回に出版する数も少なく、限られた地域にしか販売されていないことが予想される。しかし、「その他の香料類、化粧品」の製造・販売会社は、有名な大手の会社が数多くあり、宣伝用のカタログ、広告を載せる雑誌、新聞、テレビ等の著名な媒体を使用して日本全域にわたって行っている。また、フランス、ドイツ等の香水を製造・販売している会社は世界的に著名な会社が多い。請求人商標が周知であるとは思えない。

したがって、各甲号証の証拠は、「その他の香料類、化粧品」に係る広告・宣伝等の情報と比較すると、前述のように、周知とはいえず、ごく限られた者の目に触れるだけのものである。

(2)甲第25号証の審決及び同第26号証の判決

被請求人は、請求人商標をそのまま登録しているが、請求人の商品以外に使用しているものではなく、また、並行輸入業者に対する使用を禁止しているわけでもない。さらに、被請求人は、需要者に商品の出所混同を生じさせたり、国際的な商取引秩序を乱すような行為を行っていない。被請求人は今後も不法な行為を行うつもりはない。したがって、本件無効審判は、これらの審判決の内容と異なるものである。

5 商標法第4条第1項第7号及び同第19号について

シールを貼って販売した被請求人の製品は、「TISSERAND」と記載されたラベルがあったため、パシフィックプロダクツ社から警告(乙第6号証)を受け、商品の数が少なく、争うより製品にシールを貼って営業を続けた方が得策であると判断したまでのことであり、公序良俗、或いは、不正競争を目的としていない証拠である。

被請求人は、サンファーム商事が本件商標と同じ請求人商標を同じ雑誌に掲載したとしても、使用を禁止するような行為を取った事実はない。また、被請求人は、請求人商標に対する不正な使用或いは不正競争を目的とした使用を行うことなく商品を販売している。

具体的に、被請求人のどのような行為が商標法第4条第1項第7号及び第19号に該当するのか不明である。

6 被請求人と請求人との関係

被請求人は、1988年頃から継続してアロマセラピープロダクツ社の製品をイギリスの「FENMAIL」社を通じて輸入しており(乙第10号証及び同第11号証)、請求人がアロマセラピー用香料に請求人商標を付けた当初から輸入販売を行っている。この当時、請求人の製品を日本に輸入していた者は、被請求人以外にいなかった。

また、被請求人は、1988年から今までに約1億円以上の請求人の製品を輸入販売してきた。

7 前記「FENMAIL」社は、日本初のアロマセラピストである栗崎小大郎氏から紹介された会社であり、被請求人は、同人を証人として尋問する用意がある。被請求人は、同人の尋問を行うことにより、正しい並行輸入業者であり、かつ、日本において、サンファーム商事等より早く(1989年頃)から請求人の製品であるアロマセラピー用香料の輸入を行っていた。東京国際郵便局からのはがき(乙第12号証)にessential oilの「成分、用途等についての商品説明をして下さい」というメッセージがある。この当時、essential oilは全く知られていなかった証拠である。

8 平成10年商標登録頭第94934号、及び、平成10年商標登録願第42347号については、被請求人は都合により放棄している。

第4 当審の判断

1 被請求人は、本件審判請求書に添付されている本件委任状は商標登録出願番号を塗りつぶし、修正液により消した部分に「trial for invalidation」(無効審判)をタイプした委任状の写し(コピー)であり、ロバート・ティスランドの真性な委任状とはいえない。したがって、本件審判請求は、ロバート・ティスランドの意思によってなされたものではないことが明らかであり、本件審判請求は、却下されるべきであると述べる。

しかしながら、請求人の提出に係るロバート・ティスランドの法定陳述書(甲第3号証)には、その右上部に本件商標の登録番号が明記されており、その陳述の内容には、請求人商標の採択の経緯、請求人商標の付されたアロマセラピー商品の販売実績、本件商標に関する被請求人との譲渡交渉の経緯、被請求人の本件商標と同一商標の再登録出願の事実などが記載されていることが認められる。この事実からすると、ロバート・ティスランドは、本件商標の存在に強い関心を抱いていたものと認められ、本件商標について無効審判を請求する等の意思を有していたものと推認することができる。しかも、無効審判を請求する意思を有しない請求人のために、その者の委任状を偽造してまで代理人が該行為を行うことは社会通念上考え難い。

そうすると、本件委任状に文字を塗りつぶし、或いは、文字を修正した形跡が認められるとしても、本件審判請求は請求人の意思に基づいたものというべきであるから、本件委任状が真正でないとする被請求人の主張は採用できないものであり、委任状の提出がないとの理由で本件無効審判の請求を却下すべきではない。

2 被請求人は、「並行輸入業者が請求人の使用する商標を取得し、正当な商品にのみ使用している以上問題がない。請求人は並行輸入業者によって、不正使用をしようとする第三者から保護されていることになる。したがって、請求人は、無効審判を請求する原因がなく、当事者としての適格性を有していない。よって、本件審判請求は、却下されるべきである。」また、「請求人は、本件商標を本国において登録出願していないと思われる。イギリスにおいて登録をしていないものを日本において権利を得ようと努力することに対して大いに疑問がある。また、権利を得ようとしないものが無効審判を請求することもない。よって、本件審判請求は、却下されるべきである。」と主張する。

しかしながら、請求人は、本件商標は請求人の所有する周知商標にほかならないと述べ、被請求人も、請求人商標をそのまま登録していると述べていることからすると、本件商標が商標登録されているために、請求人は、わが国において自己の名義で本件商標について商標登録を受けて商標権を行使することができないという法律上の不利益な立場にあることは明らかである。請求人或いは請求人と何らかの関係を有する者が請求人商標を付した商品を販売した場合、その行為が本件商標の侵害に当たるとして、被請求人から差し止め請求を受ける等の法的紛争が生ずるおそれは一般的に否定できない。

そうすると、被請求人が、並行輸入業者に対する使用を禁止していないし、国際的な商取引秩序の信義に反するような行為も行っていない、今後も不法な行為をするつもりはないとも述べているとしても、その抜本的解決は、本件商標に法定の登録無効事由があるかどうかの実体判断によってされるべきであるから、このような場合、請求人に審判請求の法律上の利益があるとして実体判断をするのが、商標法の定める無効審判制度の趣旨に合致することは明らかである。

したがって、請求人は本件無効審判を請求する当事者適格を有していることもまた明らかであるといわなければならない。

3 そこで、本案に入って、請求人商標がわが国において周知性を獲得していたか否かについて検討する。

(1)請求人の提出に係る法定陳述書(「STATUTORY DECLARATION」甲第3号証)などによれば、以下のことが認められる。

(ア)本件商標は請求人商標と同一である。

この点については被請求人も認めている。

(イ)請求人商標は、1990(平成2年)から継続的に使用されている。

(ウ)請求人商標を付したアロマセラピープロダクツ社の商品は、同年から、特に英国、ヨーロッパ及び日本などにおいて販売されている。

(エ)該商品の包装、小売価格表、商品案内等には、すべて請求人商標が表示されている。

(オ)サンファーム商事を通じて日本において販売されている商品は、純粋エッセンシャルオイル、有機純粋エッセンシャルオイル、調合エッセンシャルオイル、マッサージオイルベース、マッサージオイル、マッサージローションなどであり、これらには約120の商品が含まれている。

(カ)サンファーム商事に対して販売された商品の売上高は、1992年(平成4年)が9,385ポンド(約170万円=1ポンド180円で計算、以下同じ)、1996年(平成8年)は100,106ポンド(1800万円)であり、1992年から1996年の5年間の売上総額は171,914ポンド(約3100万円)であった。

(キ)被請求人が販売したアロマセラピープロダクツ社の商品の販売高は、1988年からの総額で、1億円以上であった。

(ク)1996(平成8年)年7月15日発行の「JAA会報創刊号」(甲第12号証)に請求人商標及び「Robert Tisserand」「ロバート・ティスランド」の文字が表示された体裁で、サンファーム商事の商品広告が掲載された。

(2)請求人の一のロバート・ティスランドの書籍「アロマテラピー<芳香療法>の理論と実際」が昭和60年に、「ホリスティック」が平成2年に発売され、本件商標の登録出願当時もこれらの書籍は増刷され販売されており、また、平成8年4月に日本アロマテラピー協会が設立され、さらには、「アロマテラピー講座」が開講されていた(上掲「JAA会報創刊号)などの事実があり、加えて、アロマセラピープロダクツ社のエッセンシャルオイル、マッサージオイルなどの商品市場は、デパート、量販店、一般の化粧品店などで大量に販売される通常の化粧品と異なり、限定された小さな市場を形成しているにとどまると認められる(例えば、上記日本アロマテラピー協会の法人会員は100社に満たない。)ことを考慮し、前記(1)における、請求人商標の付された商品の販売実績、広告の実情などを総合勘案すれば、本件商標の登録出願のときに、エッセンシャルオイル、マッサージオイルなどアロマセラピープロダクツ社がその業務に係るアロマセラピー関連商品について使用する請求人商標は、取引者、需要者の間に広く認識され、周知性を獲得し、その状態は本件商標の設定登録時においても継続していたものと判断するのが相当である。

4 前記認定のとおり、本件商標は、請求人商標と同一であり、また、その指定商品は、アロマセラピープロダクツ社のエッセンシャルオイル、マッサージオイルなどアロマセラピー関連商品と同一又は類似の商品と認められる。

5 被請求人は、証人尋問を行う用意があるとして証人尋問に言及しているが、立証すべき事項は、被請求人は正しい並行輸入業者であり、かつ、日本において、サンファーム商事等より早く(1989年頃)から請求人の製品であるアロマセラピー用香料の輸入を行っていた事実と認められる。

そうすると、上記事実の存否は前記いずれの判断をも左右するものではないから、被請求人の述べる証人尋問は行わない。

6 してみれば、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号に該当し、その登録を無効とすべきものである。

以上のとおりであるから、請求人の主張は、理由があるから認容することとし、審判費用の負担については、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項、民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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