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Trademark Appeal Case

アとハ音の称呼類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35636号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、参加人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第3370155号商標(以下「本件商標」という。)は、「アイボン」の片仮名文字を横書きしてなり、平成6年7月22日に登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,失禁用おしめ」を指定商品として、平成10年9月4日に登録されたものである。

2 参加人の引用する商標

(1)参加人が本件商標の登録無効理由として引用する登録第1318467号商標(以下「引用A商標」という。)は、「ハイボン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和40年3月15日に登録出願、第1類「薬剤、医療補助品」を指定商品として、同53年1月10日登録され、その後、昭和63年1月22日及び平成10年1月20日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。同じく登録第1362583号商標(以下「引用B商標」という。)は、「ハイボン」の片仮名文字と「Hibon」の欧文字とを二段に併記してなり、昭和40年6月18日に登録出願、第1類「薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和53年11月30日に登録され、その後、昭和63年7月22日及び平成10年11月17日に、商標権存続期間の更新登録がなされたものである。同じく登録第1396256号商標(以下「引用C商標」という。)は、「ハイボン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和41年6月22日に登録出願、第1類「薬剤、医療補助品」を指定商品として、同54年10月30日に登録され、その後、平成元年10月23日及び同11年11月30日に、商標権存続期間の更新登録がなされているものである。同じく登録第2351218号商標(以下「引用D商標」という。)は、「ハイボンL」の文字を横書きしてなり、昭和63年11月10日に登録出願、第1類「薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成3年11月29日に設定登録がなされたものである。

3 参加人の主張

参加人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として丙第1号証ないし同第17号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)本件商標と引用各商標の対比

本件商標の構成態様は、片仮名文字で「アイボン」と横書してなるものである。したがって、その構成文字に相応して、「アイボン」の称呼を生じるものである。

(2)引用商標から生じる称呼

(a)引用A商標の構成は、「ハイボン」の片仮名文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ハイボン」の称呼を生じるものである。

(b)引用B商標の構成は、上段に「ハイボン」の片仮名文字を、下段には「Hibon」のローマ字を表してなるものである。したがって、それぞれの構成文字に相応して「ハイボン」の称呼を生じるものである。

(c)引用C商標の構成は、やや肉太の書体の片仮名文字で「ハイボン」と横書してなるものである。したがって、その構成文字に相応して「ハイボン」の称呼を生じるものである。

(d)引用D商標の構成は、「ハイボン」の片仮名文字に続けてローマ文字の「L」を配して「ハイボンL」と横書きしてなるものである。その構成文字に相応して「ハイボンエル」の一連の称呼を生じるが、上記構成文字中の末尾の「L」の文字部分は一文字からなる記号又は符号を表したに過ぎないから、片仮名各文字部分の「ハイボン」の文字に相応して、単に「ハイボン」の称呼をも生ずるものである。

(3)本件商標と引用各商標の類否

本件商標と引用各商標の称呼を比較すると、本件商標から生じる「アイボン」の称呼と、引用各商標から生じる「ハイボン」の称呼とは、いずれも4音構成の称呼で、両者の第1音に「ア」の音と「ハ」の音の違いがあるに過ぎない。

しかも、この相違音である「ア」と「ハ」の音はその音感が極めて近似する音である。すなわち、「ア」の音は口を大きく開けて発音される広母音[a]であるが、「ハ」の音もその帯有する母音は同じ音の[a]である点で共通している。しかも、「ハ」の音は、その子音[h]の調音方法が声帯の振動を伴わず、呼気を声門で微かに振るわせることによって発音される無声の摩擦音であることから、「ハ」の音を発声したときには上記子音の[h]は極めて弱い響きしか生ぜず、帯有母音の[a]、すなわち「ア」の音に吸収される弱音である。

しかも、「アイボン」と「ハイボン」の称呼をそれぞれ一連に称呼した場合には、第2音以下の3つの音である「イ」「ボ」「ン」を共通にしているが、このうちの「ボ」の音は強い響きで聴取される濁音であることから、聴覚上は称呼の後半部が強く印象付けられて、相違音が例え語頭にあるとしてもその差異は微弱なものといわざるを得ない。したがって、聴覚上は相違音である「ア」と「ハ」の音は上記共通音「イ」「ボ」「ン」に埋没して極めて弱い印象しか与えず、全体としても相紛らわしい語感として聴取されるものである。

加えて、両商標はいずれも格別の語義を有しない造語の商標であるから、意味合いの違いによって疎別されることもないものである。

そうすると、電話等による口頭での取り引きを考慮し、本件商標と引用商標を時と所を異にして観察した場合においては、称呼において相紛らわしく彼此混同を生じるおそれが十分にある。したがって、本件商標と引用各商標とはその称呼において類似する商標と言わねばならない。

本件商標と引用各商標の場合と同様に「ア」の音と「ハ」の音が相違するに過ぎない商標の類否判断においては取引の経験則を踏まえれば類似と判断されてしかるべきであり、本件商標と引用各商標とはその指定商品も抵触するところであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。

(4)本件商標と引用各商標との事実上の出所混同のおそれ

請求人は、「ハイボン」を要部とする引用各商標を現実の取引において使用してきているものである。かかる事情の下で参加人が使用する引用各商標に類似する本件商標がその指定商品に使用された場合には、その商品の出所につき混同を招来することとなり、請求人の営業活動に甚大な被害を及ぼすおそれがあるものである。したがって、本件商標の登録は商品の出所混同防止を目的とする商標法第4条第1項第11号の規定の趣旨に反し、到底容認されるべきではない。

(5)結論

以上のように、本件商標は引用各商標とその商標が類似し、かつ指定商品も抵触するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。したがって、商標法第46条第1項の規定によりその登録を無効とされるべきである。

よって、請求の趣旨のとおりの審決を求める。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、証拠方法として乙第1号証ないし同第33号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)審判請求人の引用各商標からは、「ハイボン」の称呼が生じることは明らかである。一方、本件商標は片仮名文字を横書きで「アイボン」と表したもので、その構成どおり、「アイボン」の称呼が生じる。すなわち、審判請求人は、「ハイボン」の称呼が生じる引用各商標と「アイボン」の称呼が生じる本件商標とは、類似であることを本件審判請求の根拠とするものであるが、引用各商標が登録されたこと自体、本件商標との非類似性を如実に物語るものである。

すなわち、本件被請求人は、本件商標と同一の称呼「アイボン」が生じる商標登録第406299号、商公昭26−9931号、「AIBON/アイボン」(登録日 昭和26年12月15日 更新登録日 昭和47年3月6日 権利消滅日 昭和56年12月15日 乙第1号証)を所有していた。審判請求人の引用各商標は、最も登録の早い引用A商標においてすら昭和53年1月10日であり、引用各商標はすべて、上記被請求人の登録商標「AIBON/アイボン」の商標権が存続中に登録されたものである。

つまり、「ハイボン」の称呼が生じる引用各商標は、「アイボン」の称呼が生じる先願、先登録の被請求人の登録商標とは類似せず、互いの禁止権の効力は相手方に及ばないという認定の下に登録されたのである。

しかるに、「アイボン」が「ハイボン」に類似するという主張は、そもそも互いに非類似であり、法的安定性の見地から到底認められないものである。

参加人の引用A商標は、審査段階において拒絶され、審判手続において登録を認められたものであるが、審決公報(乙第2号証)から明らかなように、拒絶引用例は「ハイドン」であり、被請求人の所有していた「AIBON/アイボン」ではない。すなわち、引用A商標の審査・審判手続においても、「アイボン」と「ハイボン」は非類似であると判断されている。

さらに、被請求人は、商願昭56−86636号として「AIBON/アイボン」の再出願を行っているが、拒絶査定謄本の写(乙第3号証)から明らかなとおり、「アイゴン」と類似するとされたが、請求人の引用各商標は拒絶引用例とされていない。

またさらに、登録異議決定謄本の写(乙第4号証)から明らかなとおり、本件商標の出願公告時、請求人は本件と同一の登録商標を引用して登録異議申立を行っているが、「アイボン」と「ハイボン」の両称呼をそれぞれ一連に称呼しても、語調・語感が相違し、かれこれ聴き誤るおそれはないものと判断され、異議理由なしの決定がなされている。

参加人は、自己の登録商標の成立の経緯を無視し、仮に「アイボン」と「ハイボン」の称呼が相紛らわしく類似するものであれば、そもそも自己の登録商標は成立し得なかったという事実関係に相反する主張を行うに他ならない。

(2)称呼の類否について

(a)請求人は、「ア」と「ハ」の差異は微弱なものであり、たとえ語頭にあるとしても全体として相紛らわしい語感として聴取されると主張している。

しかしながら、前述のとおり、語頭における「ア」と「ハ」の相違の故に、一連に称呼しても語調、語感が相違しかれこれ聴き誤るおそれはなく、互いに非類似の商標である。

(b)「アイボン」と「ハイボン」の称呼を比較すると、両者は称呼識別上重要な位置を占める語頭音において「ア」と「ハ」の相違を有する。すなわち、本件商標は開放母音[a]のみからなるのに対し、引用各商標は子音[h]と母音[a]からなるもので、子音[h]を伴った[ha]と単なる[a]とでは自ずから聴覚上において聴者に対し異なった印象を与えることは間違いのないところである。

音声学的にいえば、「ア」の音は、共鳴の形の開放音ではっきりと澄んだ音であり、調音方法としては、舌全体が下がった有声の開放母音(広母音)で、口を広く開き舌を低く下げ、その先端を下歯茎に触れた程度の位置におき、声帯を振動させて発する母音である。

一方、「ハ」の音は、声帯を半開きにして出す摩擦音で官能的感覚の丸い音であり、両声帯を接近させ、その間隙から出す無声摩擦音(h)と母音(a)との結合した音節であり、両者、その調音方法音質・音感を異にしている。

(c)本件事例においては、このように調音方法・音質・音感を異にする「ア」と「ハ」の相違が称呼識別上重要な位置を占める語頭に存在し、しかも両者僅か4音という短い称呼数に係るものであるから、聴者が語頭音の相違を明瞭に認識するものといえる。

また、互いに4音構成というものの、末尾音「ン」は有声の気息を鼻から洩らして発する弱い鼻音であり、両商標ともほとんど3音構成といい得るもので、僅か3音程度の短い称呼数において語頭音が相違する以上、通常の4音構成の場合よりもより一層容易に聴別可能というべきある。

(3)事実上の出所混同のおそれ

(a)参加人は、「ハイボン」を要部とする引用各商標を現実の取引において使用しているとして商品パンフレットを提出している。これを参照すると、参加人が「ハイボン」を使用している商品は、「酪酸リボフラピン製剤(持続性ビタミンB2)」であり、丙第17号証で示される商品は「一般薬」ではなく、医療機関向けの「医療薬」の範疇に属する。

(b)これに対し、被請求人が使用する「アイボン」は、乙第5号証の商品リーフレットに示す如く、特に一般薬としての「洗眼薬」に使用する商標として周知著名である。平成7年の発売以来、製品の優秀性、容器・洗眼カップの特徴的な形状に加えて、全国ネットで展開されるテレビコマーシャルを通じての広告宣伝活動により、「アイボン」といえば、被請求人の製造・販売に係る「洗眼薬」を示すものとして取引者・需要者の間において全国的に知られているといっても過言ではない。

(c)両薬を比較すれば明らかなとおり、請求人の「ハイボン」は、剤型は「錠剤」であり、「ビタミン製剤」を対象とするのに対し、被請求人の「アイボン」は液剤であり、「洗眼薬」を対象とするもので、しかも全国的に周知・著名な商標であることからして、両者全く異質の商品を対象に使用されており、事実上の混同が生じるおそれは皆無である。

(4)審決例において、4音からなる短い称呼で、称呼における識別上重要な要素を占める語頭音において、それ自体明確に区別できる「ハ」と「ア」の事例がある。

5 当審の判断

本件商標は、「アイボン」の片仮名文字よりなるものであるから、「アイボン」の称呼を生ずること明かである。

一方、引用A、C商標は、「ハイボン」の片仮名文字を、引用B商標は、「ハイボン」の片仮名文字と「Hibon」の欧文字よりなるものであるから、引用A、B、Cより商標は、いずれも「ハイボン」の称呼を生ずるものといえる。

また、引用D商標は、「ハイボンL」の文字を横書きしてなるところ、欧文字の一文字は、一般に商品の記号又は符号等を表すものとして使用されるものであるから、その構成中の「L」の文字部分が省略して称呼される場合も少なくない。

そうとすれば、引用D商標よりは構成文字全体に相応して、「ハイボンエル」の一連の称呼以外に「ハイボン」の文字部分より、単に「ハイボン」の称呼をも生ずるものとするのが相当である。

そこで、本件商標より生ずる「アイボン」の称呼と引用各商標から生ずる「ハイボン」の称呼とを比較するに、両称呼は称呼を識別するうえで最も重要な要素となる語頭音が「ア」と「ハ」と相違するばかりでなく、該差異音は、明確に聴取されるものである。

そして、これら語頭音の差異が、僅か4音という短い音構成よりなる両称呼全体に及ぼす影響は大きく、両称呼は、互いに聞き誤るおそれはないものと判断するのが相当である。

つぎに、本件商標より生ずる「アイボン」の称呼と引用D商標より生ずる「ハイボンエル」の称呼を比較すると、両称呼は、上記語頭音の差に加え、末尾の「エル」の音の有無の相違により互いに聞き誤るおそれはない。

また、本件商標と引用各商標の構成態様は上記のとおりであるから外観上互いに区別し得る差異を有し、これらはいずれも造語よりなる商標といえるから観念上も何ら類似するものではない。

してみれば、本件商標と引用AないしD商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれにおいても、相紛れることのない非類似の商標といわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすることはできない。

なお、本件審判請求をした請求人は、本件審判請求を取り下げたものである。

よって、結論のとおり審決する。

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