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Trademark Appeal Case

周知商標と後願登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35479(T2000−35479/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4024526号の指定商品中、「塗料」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4024526号商標(以下、「本件商標」という。)は、「COLOR TOUCH」の文字を横書きしてなり、平成7年11月9日に登録出願、第2類「塗料,染料,顔料,印刷インキ(「謄写版用インキ」を除く。)」を指定商品として、同9年7月11日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第46号証を提出している。

1.請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものである。

(1)「COLOR TOUCH」若しくは「カラータッチ」の文字よりなる商標(以下、「引用商標」という。)は本件商標の出願日である平成7年11月9日以前において既に請求人が製造販売する自動車補修用ペイント製品を表示するものとして、我が国の需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っていたものである。また、その状況は現在まで続いてきている。

(2)請求人は、英国ホルト社との合弁会社であり、自動車補修用ペイント及びその他のカー用品等の製造・販売を主たる業務とする株式会社である(甲第2号証)。

引用商標を付した請求人の製造に係る「自動車補修用ペイント」(以下、「使用商品」という。)は、平成3年以来我が国において広く販売されて来た。その結果、引用商標は請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願日以前から現在に至るまで、我が国の需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っているものである。

(3)請求人は、平成3年3月に使用商品の販売を開始した(甲第3号証)。使用商品はその発売開始当初から需要者の高い人気を博し、その販売高は、発売初年度の平成3年には330,021本(小売価格約1億6500万円)、平成4年には649,875本(小売価格約3億2500万円)、平成5年には746,009本(小売価格約3億7300万円)、平成6年には765,751本(小売価格約3億8900万円)、平成7年には857,672本(小売価格約4億2900万円)となっており、その後も現在まで順調な伸びを続けている(甲第4号証)。使用商品はその発売開始の翌年である平成4年6月の時点において既に、業界新聞において、「特に売れ行きが目立っている」製品及び「よく売れている」製品として報道されている(甲第5号証)。

請求人は、使用商品の宣伝広告費として、本件商標の出願時までに、平成3年には1041万円、平成4年には6365万円、平成5年には6731万円、平成6年には3916万円、平成7年には1億2255万円を支出している(甲第6号証)。

引用商標を付した使用商品の宣伝広告は、たとえば、現在の会員数を1500万人以上とする社団法人日本自動車連盟の会員用月刊誌「JAF・MATE」には一貫して引用商標及び使用商品の宣伝広告が掲載されてきているところである(甲第7号証ないし同第18号証)。

甲第19号証は、ホームセンター等経営情報専門誌である「GENERAL MERCHANDISER」に掲載された引用商標及び使用商品の宣伝・広告である。

甲第20号証及び甲第21号証は、カー用品の最大の卸業者であるエンパイヤ自動車株式会社が発行しているカー用品カタログの93年・94年版及び95年・96年版であるが、それらには引用商標及び使用商品が掲載されている。

甲第22号証ないし甲第28号証は、請求人が平成7年までに作成配布した使用商品のパンフレットの一部である。各パンフレットは其々5万部が印刷され、全国2500店のカー用品販売店及び全国29社のカー用品卸会社に配布されている。

甲第30号証ないし甲第43号証は、カー用品関連業界における主力業者及び関係者からの証明書である。

甲第44号証はカー情報雑誌「デイトナ」平成8年12月増刊号であるが、自動車ボディのキズの補修に使用商品が適していることが述べられている。

以上の各証拠からも、引用商標は、本件商標の出願日である平成7年11月9日以前において既に請求人が製造販売する自動車補修用ペイント製品を表示するものとして、我が国の需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っていたものであることが明らかである。

(4)本件商標と引用商標とは、「カラータッチ」の称呼を同一にする類似の商標であることは明らかである。従って、本件商標は、その指定商品のうち「塗料」については商標法第4条第1項第10号に背反して登録されたものであることが明らかである。更に、本件商標の他の指定商品のうち「顔料」は塗料の原料となるものであり、また「染料及び印刷インキ」は、塗料及びその類似商品としばしば同一の店舗において販売されることが顕著な商品であり、用途においても密接な関係を有するものである。

従って、本件商標を塗料以外の指定商品について使用する場合には、引用商標の著名性に鑑みて、請求人の業務に係る商品又は請求人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずる虞があるものである。よって、本件商標は塗料以外の指定商品については、商標法第4条第1項第15号に背反して登録されたものである。

2.答弁に対する弁駁

(1)被請求人の主たる主張は、請求人が引用商標の使用を開始した平成3年3月には、「カラータッチ」の文字を横書きしてなり、第3類「つや出し剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和53年3月18日に登録出願され、同59年2月23日に設定登録された登録第1656534号商標(以下、「登録A商標」という。)が存在したのであるから、引用商標が周知性・著明性を取得したとしても、それらは登録A商標の侵害という違法な状態の下に取得されたものであって保護の対象とはならない、というものである。しかしながら、被請求人のこの主張は、本件における事実関係を無視した誤った主張であることが明白である。

(2)登録A商標は、被請求人が自認するように、更新登録無効審判の結果、無効とされているものである。従って、登録A商標の商標権は、平成6年2月23日をもって消滅しているものである。これに対して、請求人が主張している引用商標の周知性・著名性は、被請求人が本件商標を出願した平成7年11月9日の時点におけるものである。平成7年11月9日の時点においては、既に1年9ヶ月も前に登録A商標は消滅しているのであり、引用商標の使用が登録A商標の商標権を侵害する余地はないのである。従って、平成7年11月9日の時点において引用商標が登録A商標の商標権を侵害した状態で周知・著名の状態となっているなどという状況は全く存在しない。

(3)被請求人は、網野氏の論述(乙第8号証)を引用しているが、網野氏の論述は、その内容からすれば、「既登録商標が有効に存続し続けている間に同登録商標を侵害する商標が周知性を取得し、その後に既登録商標の連合商標が出願され、その時点で既登録商標も有効に存在している。」という場合のことを問題にしているのであり、同氏の論述が本件の事実関係に当てはまるものではないことは明らかである。

(4)仮に、請求人による引用商標の使用が登録A商標を侵害する違法なものとの評価があり得たとしても、いずれにしても、登録A商標が消滅した平成6年2月23日以降は、そのような状態は完全に解消されているのであり、請求人による引用商標の使用は何らの問題もない。そして、このような問題のない状態が1年9ヶ月の長期間継続した時点での平成7年11月9日における引用商標の周知性・著名性を請求人は主張しているのであり、これに対する被請求人の反論は失当といわざるを得ない。

(5)引用商標が請求人の商標として周知・著名である事実は争いようのない事実である。また、本件商標の無効原因を判断すべき平成7年11月9日の時点において引用商標の周知性・著名性について商標法上の何らの問題も存在しないことも明らかである。

第3 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証を提出している。

1.本件商標は、登録A商標の類似商標であり、その連合商標として商標登録されたものである(乙第3号証ないし乙第5号証)。

そして、登録A商標の連合商標として、本件商標を平成7年11月9日に出願する一方で、平成8年3月頃に登録A商標を製品「自動車用タイヤマーカー」に使用を開始した。

具体的には平成8年3月頃に製品「自動車用タイヤマーカー」のホワイト、イエロー、ブルー、ピンクの製品本体に「カラータッチ」の表示を行い、平成8年7月頃にはそれらのブリスターバックにも表示し、現在はブルー、ピンクのみに表示している。(乙第6号証及び乙第7号証)

2.ここまでの一連の経過において,本件商標及び登録A商標は共に、その権利は安定して存在し、且つ自己の登録商標を使用していたことがわかる。

その後、請求人より登録A商標に対して、商標権存続期間更新登録無効審判(審判平8ー12485)が平成8年7月24日に請求された。

最終的に、登録A商標の商標権は平成12年1月27日の上告却下の時点で、存続期間満了日の平成6年2月23日まで遡及して消滅したものの、上告却下の前までは有効に存在していた。

また、本件商標の出願時において、引用商標が周知・著名である事実が仮に存在したとしても、平成12年1月27日の上告却下の時点の前まで有効に存在していた登録A商標の連合商標として正当に出願を行い、そして登録となったものであり、また製品「自動車用タイヤマーカー」への「カラータッチ」の表示は本件商標の使用といえるのであって、引き続き使用しているものである。

3.そもそも、請求人が平成3年3月から引用商標である「COLOR TOUCH」、「力ラータッチ」の商標を自動車補修用ペイント製品に使用を開始する際、ほとんどの商品製造販売業者がほぼ義務的に行い、かつ、ほんの少しの努力で行える引用商標の商標調査を行えば、登録A商標が存在することに気が付くものである。

請求人側に存在する商品製造販売業者として初歩的でかつ基本的な注意義務を怠慢或いは不注意により怠った結果が、本件商標の登録無効審判請求という事態を招いたものである。

そして、請求人側に存在する商品製造販売業者として初歩的でかつ基本的な注意義務を怠慢或いは不注意による不利益を、本件商標に転化することは、商標法第1条に規定する商標法の目的に反するものである。

つまり、商標法は、同一または類似の商標を同一または類似の商品に使用する行為を商標権侵害と定めることによって、登録商標権者が登録商標を使用して全国的に信用を形成していくことを容易とするとともに、他方で商標権について登録制度を設けることによって第三者に対して排他権の存在を公示し、もって排他権の行使が第三者にとって不測の事態となることを防止している。

ところで、登録A商標の商標権という排他権が存在するにも関わらず、商標権者たる被請求人以外の者である請求人が登録商標に類似する引用商標について平成3年3月から表示の使用を開始したような場合、それにより請求人の表示が仮に周知性等を取得したとしてもその使用行為は登録A商標の商標権の侵害行為に外ならない。このような違法な状態の下に形成された周知・著名の事実をもって、本件商標が商標法第4条第1項第10号或いは同第15号に違反して登録されたものとして、本件商標を無効とされるならば、商標法が信用の形成を促進せしめるために設けた登録商標制度の趣旨に惇ると共に、商標法の目的に背反するものであるといわざるえないものである。

4.法学博士である網野 誠氏はその著書「商標」において次のように述べている。

「周知商標が保護されるためには、周知商標主が善意であることのほかに、該商標が適法に使用せられたものでなければならないとされる。従って、既登録商標がある場合において、これと抵触する商標を善意で使用しけ,周知性を取得しても、その後において既登録商標の連合商標が出願された場合においては、周知商標と抵触することを理由に連合商標の登録が拒否されることはない。何となれば既登録商標が存在する以上は、その後における商標の使用は商標法の規定に反してなされたものであって、周知商標としての事実も違法な状態の下に形成されたものであるから、このような事実は保護すべきではないとするものである。」とされている(乙第8号証)。

また、過去の審決例(昭和26年審判第230号及び昭和26年審判第231号)においても、「他人の商標の登録後に使用を開始してこれを著名ならしめた者は、正当でない行為によって既成事実を形成し、これをもって法の保護を受けようとするものであるから、法の精神に反するものとして排訴を免れない」として、被請求人の主張を裏付けている(乙第9号証)。

5.請求人の主張によると、請求人は引用商標を平成3年3月から自動車補修用ペイント製品に使用を開始し、本件商標出願日である平成7年11月9日までには周知・著名の商標となっていたとして、使用の事実を示す証拠書類を提出してその立証を図っている。

しかしながら、該商標の使用は登録A商標の登録後に使用を開始したものであって、請求人の提出した使用の事実を示す証拠書類の大半は、登録A商標の商標権が存続していた期間における正当ではない使用の事実を証拠として、該商標が周知・著名の商標である事実を立証しているものである。

6.上述したように、本件商標は登録A商標の連合商標として正当に出願し、正当な権利として登録されたものであり、且つ本件商標の使用といえる製品「自動車用タイヤマーカー」への「カラータッチ」の表示をおこなっている。

仮に平成3年3月からの引用商標の使用により、該商標が周知・著名の商標となっていたとしても、該商標の周知・著名の商標としての事実は、本件商標と連合関係にあった商標権を侵害して、違法な状態の下に形成されたものであり、そのような周知・著名の商標は保護すべきではなく、そのような事実をもってして、本件商標を無効とすることは、商標法の精神に背反するものである。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断

1.請求人の提出した甲各号証に徴すれば下記の事実が認められる。

(1)ジャーナル誌「A・M NETWORK(平成3年3月25日発行)」に、「カラータッチ」を商標名とした商品「自動車補修用ペイント」を平成3年3月に請求人が販売を開始した記事が掲載されていること(甲第3号証)。

(2)業界新聞「ぜんせき(平成4年6月25日発行)」に、不況に強いホルツ製品として「カラータッチ」が紹介、掲載されていること(甲第5号証)。

(3)雑誌「JAF・MATE(平成4年3月号〜平成7年12月号)」に、引用商標を表示した使用商品が継続して宣伝広告されている(甲第7号証ないし同第18号証)ほか、他の雑誌にも宣伝広告されていること(甲第19号証及び甲第29号証)。

(4)「カー用品カタログ(エンパイヤ自動車株式会社発行 93年・94年版及び95年・96年版)」(甲第20号証及び甲第21号証)及び「請求人の製品パンフレット(平成3年4月〜平成7年12月)」に、使用商品が継続して掲載されていること。

(5)使用商品の販売数量は、平成3年:330,021本、平成4年:649,875本、平成5年:746,009本、平成6年:765,751本、平成7年:857,672本、平成8年:1,421,113本であること(甲第5号証)及び使用商品の宣伝広告費は、本件商標の登録出願時までに、平成3年:1041万円、平成4年:6365万円、平成5年:6731万円、平成6年:3916万円、平成7年:1億2255万円を費やしていること(甲第6号証)。

2.以上の事実及び他の甲各号証を総合勘案すれば、請求人の引用商標「COLOR TOUCH」、「カラータッチ」は商品「自動車補修用ペイント」について使用され、本件商標の登録出願時には取引者・需要者の間に広く認識され、周知・著名に至っていたものというのが相当である。

3.そこで、商標法第4条第1項第10号について判断するに、本件商標の構成は、「COLOR TOUCH」の文字よりなるのに対し、前記において認定した周知・著名な引用商標は「COLOR TOUCH」、「カラータッチ」の文字よりなるものであるから、本件商標と引用商標とは「カラータツチ」の称呼を同じくする類似の商標であることは明らかである。また、引用商標の使用商品である「自動車補修用ペイント」は、本件商標の指定商品中、「塗料」に包含する同一又は類似する商品と認め得るものである。

したがって、本件商標は、その指定商品中「塗料」ついては、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。

次に、商標法第4条第1項第15号について判断するに、引用商標の使用商品である「自動車補修用ペイント」は、「自動車用」という極めて限られた用途の商品であり、かつ、その流通経路・販売場所・需要者の範囲等も自ずと限られるものであるから、これを本件商標の指定商品中の「塗料」以外の「染料,顔料,印刷インキ(「謄写版用インキ」を除く。)」について使用した場合は、これに接する取引者・需要者をして、該商品が請求人若しくは請求人と関係のある者の取り扱いに係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、その指定商品中「塗料」以外の商品についての登録は商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。

4.結局、本件商標は、その指定商品中、「塗料」については、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

しかしながら、その指定商品中「塗料」以外の商品については、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。

よって、結論のとおり審決する。

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