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Trademark Appeal Case

称呼類似性「イ」音の識別

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35335(T2000−35335/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4028098号の指定商品中「植物成長調整剤類」についての登録を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第4028098号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ESTAR」と「エスター」の文字を二段に併記してなり、平成7年10月6日に登録出願、第1類「植物成長調整剤類,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),高級脂肪酸,原料プラスチック,パルプ,肥料」を指定商品として、平成9年7月11日に設定登録されたものである。

2.引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3330470号商標(以下、「引用商標」という。)は、「エイスター」の文字を横書きしてなり、第5類「薬剤」を指定商品として、平成7年3月20日に登録出願、同9年7月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3.請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。

(1)本件商標は、請求人の先願にかかる商標と類似し、一部類似の商品(植物成長調整剤類)に使用されるものであり、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条に基づき一部無効とされるべきものである。

(2)本件商標と引用商標は前記に示すとおりの構成よりなるところ、本件商標は、片仮名文字「エスター」に相応して通常「エスター」の称呼が生じ、他方、引用商標からは、構成文字に相応して「エイスター」の称呼が生じるものと考えられる。

そこで、両称呼「エスター」と「エイスター」について考察すると、両者は構成音中第2音目において「イ」の音の有無を有する以外、その前後音で

ある「エ」と「スター」を共通とするものである。しかして、相違音である「イ」の音は口の開き方が小さな前母音であり、且つ中間に位置するため、弱く調音されて聴取し難いものである。また、「イ」の音の前音は、「イ」と発音が近似している母音「エ」であり、且つ明確に発音され難い「イ」の音は二重母音の後音として調音される曖昧音であることから、聴者には両商標は明瞭に聴別し難いものである。

したがって、両商標を一連に称呼する場合、その語調語感は相似たものとなり、その差異は明確に認識し難いものである。

次に、本件商標の指定商品中の「植物成長調整剤類」は、引用商標の指定商品である「薬剤」の範疇に属する商品であるから、両者の指定商品は抵触するものである。

(3)請求人は、現に保有する引用商標につき、抵触する商品に対して商標の使用に由来する出所の混同を防止すべく、本件商標の一部取消しを求め、本件無効審判請求を行うものであり、請求人が利害関係を有することは明白である。

4.被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のとおり述べている。

(1)本件商標からはその片仮名文字部に相応して「エスター」の称呼が生じる。他方、引用商標は、片仮名文字のみにて「エイスター」と横書きして成るものであるが、つまるところ両商標が類似するとする請求人の主張の根拠は、

(ア)相違音「イ」は口の開き方が小さい前母音である。

(イ)相違音「イ」は中間に位置するため弱音化する。

(ウ)相違音の前音「エ」は相違音「イ」と発音が近似する。

(エ)相違音「イ」は二重母音の後音として調音される曖昧音である。

という点にあり、よって本件商標と引用商標の差異音「イ」は聴取し難くその有無を明確に認識し得ないというにある。

しかしながら、上記(ア)及び(ウ)を除き請求人の主張の根拠は失当であり、一般的には妥当するであろう上記(ア)及び(ウ)を考慮するにしても、本件においては差異音「イ」の有無を明確に認識することができ、両商標を聴別することは十分可能である。

(2)先ず相違音「イ」が、「u」を除く他の母音と比較すれば「ロの開き方が小さい前母音である」という点は否定し得ないが、これが中間に位置することを以て「弱音化」するというのは論理の飛躍である。本来明瞭に発音される有声開放音が中間に位置することで全て弱音化するわけがない。

中間音がしばしば聴取困難となる場合の多くは差異音とその前後の音の関係にあり、その中でも、前後の音と母音が共通するが故に聴取困難となるものが最も一般的と目される。しかしながら、本件の場合、そもそも差異音「イ」と前に位置する「エ」は共に母音であるから母音共通という関係にはない。

その意味で後ろにある「イ」が前音の「エ」に吸収されることはない。この点につき請求人は、差異音「イ」が二重母音の後音として曖昧に聞こえるとするも、二重母音(重母音)とは二つの連続する母音が「単一音節を成し、何れか一方が極めて弱い音であるもの」をいうのであって、引用商標のように「エイスター」と表記された商標の前半部「エイ」をして「単一音節」といえるかどうか疑問であるし、「イ」音を極めて微弱な音であるということもできない。

よって、相違音の前音「エ」と相違音「イ」とをそれのみで対比させた場合には音自体が近似するといい得るにしても、引用商標の相違音が前音に吸収されたり全体の称呼に埋没することはないというべきである。

(3)このように、引用商標は明瞭に「エイスター」と称呼され、これが「エスター」の如く聴取されるおそれはない。しかしながら、両商標が使用された商品の間で出所混同を生じる蓋然性があるかどうかは、あくまでも比較対象たる本件商標との関係で論じるべきである。

本件商標は、長音を含め全4音の称呼構成音数により「前母音」「摩擦音」「長音を伴った破裂音」と続くため、極めて歯切れ良く軽快に「エスター」と発音・聴取される。

これに対し引用商標は中間に「イ」音を挟む関係上、「エイ/スター」の如く二つの節をつけて発音・聴取され、かかる全体の語調、語感の相違は、音数にして僅かに1音の相違とは考えられない程の印象の違いを与える。先に「エイ/スター」の「エイ」部を「単一音節」ということはできない旨を述べたが、引用商標を発声するにあたってこれが「エイ/スター」の如く2音節に分かれてしまうのはむしろ自然といえ、このように発音・聴取される引用商標と、一気に「エスター」と称呼される本件商標とが称呼上相紛れるおそれは皆無である。なお、本件よりも長い称呼構成音であるが、「ライフィックス」と「ラフィックス」を対比した事例で同様の認定を下した審決がある旨を付言する(平成2年審判第4090号)。

よって、「両商標を一連に称呼する場合、その語調、語感は相似たものになり、差異を明確に認識することができない」という請求人の主張には合理性がない。けだし、この主張の前提は、母音「イ」という単一の音について一般的に妥当することを述べたにすぎず、本件で対比すべき「エイスター」と「エスター」の称呼を全体的に比較考量したものではないからである。

(4)以上述べたとおり、「エイスター」と「エスター」が称呼上相紛れるおそれはなく、本件商標と引用商標とは非類似の商標と目するのが相当である。

よって本件商標は商標法第4条第1項第11号には該当せず登録無効とすべき理由は何等存しない。

5.当審の判断

(1)本件商標は、上記のとおり「ESTAR」と「エスター」の文字を二段に併記した構成よりなるところ、構成中の片仮名文字部分は欧文字部分の称呼を特定したものと無理なく判断し得るものであるから、本件商標からは該構成文字に相応して「エスター」の称呼を生ずるものである。

これに対し、引用商標は、上記のとおり「エイスター」の文字よりなるものであるから、該文字に相応して「エイスター」の称呼を生ずること明らかである。

そして、本件商標と引用商標は、ともにその構成文字に照らし、特定の意味合いを看取し得ない造語商標といえるものである。

(2)そこで、本件商標より生ずる「エスター」の称呼と引用商標より生ずる「エイスター」の称呼とを比較するに、両者は語頭音「エ」と後半部における「スター」の音を共通にし、異なるところは、後者における第2音目「イ」の音の有無にすぎない。しかして、該差異音「イ」の音は、前音「エ」(e)と共に二重母音(ei)を形成するが如く一音節として発音される場合も決して少なくないものというのが相当である。

そうすると、該差異音「イ」は、きわめて弱い音となり、語頭音である「エ」の音に吸収され易く、かつ、聴者の耳に残り難い中間音であることから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が近似し、更に特定の観念を想起しない造語商標であることと相俟って、互いに聞き誤るおそれがあるものといわなければならない。

してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼において類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品中の「植物成長調整剤類」は引用商標の指定商品「薬剤」の範疇に含まれる商品である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、これに違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その指定商品中の「植物成長調整剤類」についての登録は、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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