結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2001−35086(T2001−35086/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第3369643号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成5年8月11日に登録出願、別掲(A)に示すとおり「CHAREL COMFORT」の欧文字を横書きしてなり、第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」を指定商品として、同10年5月29日に設定の登録がされたものである。
請求人が本件商標の登録無効を述べる理由に引用する各登録商標(以下、「引用各商標」という。)は、次の(1)ないし(3)に示すとおり((3)については詳細を省略する。)である。
(1)昭和58年1月25日に登録出願、別掲(B)に示すとおり「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、旧第22類「はき物(運動用特殊靴を除く)かさ、つえ、これ等の部品及び附属品」を指定商品として、昭和60年11月29日に設定の登録がされ、その後、平成8年3月28日に商標権存続期間の更新登録がされている登録第1824054号商標(以下、「引用商標1」という。)。
(2)昭和40年11月2日に登録出願、別掲(C)に示すとおり「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、旧第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和45年6月12日に設定の登録がされ、その後、同56年2月27日、平成2年4月27日及び同12年3月14日の3回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、これに基づく防護標章登録が、第35類、第37類、第41類、第30類、第42類及び第40類についてされている登録第860151号商標(以下、「引用商標2」という。)。
(3)登録第785680号商標(以下、「引用商標3」という。)、登録第1218150号商標(以下、「引用商標4」という。)、登録第1458925号商標、登録第2153054号商標、登録第2581618号商標、登録第3009777号商標及び登録第3009778号商標。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第63号証を提出している。
(1)無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効にするべきものである。
(2)無効原因
(a)引用各商標の著名性
請求人は、著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」により創設され、香水等の化粧品の他、高級婦人服、ハンドバッグ、ベルト、靴、時計、アクセサリー等の宝飾品などのデザイン・企画並びにこれらの商品の製造販売を業とするトータルファッションメーカーであり、請求人の創設者の名に由来する「CHANEL」ブランドは、請求人の営業を表示するものとして、また請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界的に極めて高い信用が形成されているものである。
日本においても、請求人の業務に係る商品は、「靴類」を含め「被服、かばん類、化粧品」等、いずれも洗練された高品質の商品として一般需要者間に広く認識されており、請求人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が形成されているものである。
これらの事実は、本件商標出願前に刊行された各種刊行物により「CHANEL」ブランドが数多く紹介されていること(甲第11号証ないし甲第17号証)、また、引用商標2ないし引用商標4について防護標章登録が認められていること(甲第2号証ないし甲第4号証及び甲第10号証、甲第18号証ないし甲第37号証)等からも明らかである。
以上のことから、本件商標の出願当時1993(平成5)年には、引用各商標は、本件商標の指定商品である「靴類」についてはもちろんのこと、関連する「かばん・被服・化粧品」等の商品を取り扱うファッション業界において極めて広く知られるに至っていた商標であるというべきである。
(b)本件商標と引用各商標との比較
本件商標は「CHAREL」と「COMFORT」の2語からなる商標であり、「CHAREL」と「COMFORT」の間は半角1文字ほどのスペースで区切られた構成である。以下、それぞれの語について検討する。
ア)「COMFORT」の識別力について
「COMFORT」の語は英語で「(体を)楽にする,痛みを和らげる」等を意味する語であり(甲第38号証)、「COMFORT」の文字の表音である「コンフオート」は、特に本件商標の指定商品である「靴類」との関係においては、「履きやすい,履き心地のよい,楽な(靴)」といった意味で「コンフオート靴」「コンフオート・シューズ」のように、普通に使用され(甲第39号証ないし甲第44号証)、本件商標の出願日(1993年8月11日)以前においても、各種の刊行物において「コンフオート・シューズ」もしくは「コンフオート靴」などの表示が、靴の種類・品質を示す語として普通に使われている事実がある(甲第45号証ないし甲第51号証)。
さらにその後も、健康志向の拡大,足の健康への注目などから、ますます「コンフオート・シューズ」へのニーズが高まるに至った(甲第52号証ないし甲第58号証)。
以上のように、1990年頃には「コンフオート・シューズ」、「コンフオート靴」、あるいは単に「コンフオート」の表示は靴の一商品分野名として定着し、現在に至るまで、さまざまなバリエーションを増やしつつ、靴の品質・種類を表示する語として広く一般に使われている事実がある。
したがって、「COMFORT」の語は、本件商標の指定商品である「靴類」との関係において、これに接した取引者・需要者が、単に商品の品質を表示したものと認識するにとどまるから、自他商品識別力を有さないものである。この点については、参考審決等(甲第59号証及び甲第60号証)もある。
イ)「CHAREL」と「CHANEL」との類似について
本件商標を構成する「CHAREL」及び「COMFORT」の語のうち、「CHAREL」と請求人が引用する商標「CHANEL」を比較すると、両者は外観上類似する。
また、両者はそれぞれ「CHAREL」の文字より「シャレル」の称呼を各引用商標は「シャネル」の称呼を生ずることが明らかであり、両者は称呼上類似する。また、「CHARELS」と「CHANEL」とを類似とした審決がある(平成1年審判第18046号,甲第61号証)。
(c)商標法第4条第1項第11号該当について
本件商標を構成する「CHAREL」及び「COMFORT」の語のうち、「COMFORT」の語は本件商標の指定商品との関係において自他商品識別力を有さないものであるから、本件商標「CHARELCOMFORT」は「CHAREL」の文字部分のみが自他商品識別力を有するものである。また、被請求人の名称は「有限会社シヤレル」であり、請求人の調査によれば、被請求人が「CHAREL」の文字を表示して営業している事実も発見された(甲第62号証)。
「CHAREL」を要部とする本件商標「CHAREL COMFORT」と各引用商標「CHANEL」とは、互いに類似する商標である。
したがって、本件商標は、その出願の日前の商標登録出願に係る請求人の登録商標に類似するものであって、同一の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(d)商標法第4条第1項第15号該当について
請求人が引用する各商標は、請求人が自らのブランドとして「靴類」並びに「かばん・被服・化粧品」等のファッションに関連する商品に使用して、極めて広く知られるに至っている商標である。
また、本件商標「CHAREL COMFORT」は各引用商標「CHANEL」に外観及び称呼において類似する商標である。
さらに、最高裁においても、「スナックシャレル」の表示の使用が「シャネル」の表示を使用する企業グループに属する企業についていわゆる広義の混同を生じさせる行為に当たるとされた事例がある(平成7(オ)第637号,甲第63号証)。以上のとおり、本件商標の要部である「CHAREL」及び請求人が引用する「CHANEL」は互いに類似するものである。
してみると、各引用商標の著名性に鑑みれば、これら各引用商標と類似する本件商標がその指定商品について使用された場合、その商品が請求人と何らかの関係がある者の業務にかかる商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
以上の理由から明らかなように、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び商標法第4条第1項第15号に該当するものと確信する。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。
(1)「COMFORT」の自他商品識別力について
英単語「COMFORT」単体には、靴等の履物における履き心地が良いというような観念が存在しないことは、甲第38号証の「co mfort」の意義「<体・人を>楽にする、・・・・の痛みを和らげる」からも明らかであるから、「コンフオート」等の用語が、識別力を有しないものと判断することはできない。
また、商標「COMFORT」は、本件商標と同一または類似の商品を指定商品としてとして登録されている(乙第1号証)。
従って、本件商標「CHAREL COMFORT」から、要部として「CHAREL」を抽出する特段の事情は、提出された証拠から明らかでない。
また、「DRY&COMFORT」の文字よりなる商標の拒絶審決例(甲第60号証)は、同じ「COMFORT」の文字を含むとしても、本件商標とは、前提が相違しており、本件商標の要部の把握の参考になるものではなく、また、「COMFORT」に関するヨーロッパにおける審決例(甲第60号証)をもって、我が国における自他商品の識別力の有無を判断することは明らかに失当である。
(2)「〜COMFORT」、「〜コンフオート」、「COMFORT〜」、「コンフオート〜」のような商標において、「〜」の部分と「COMFORT」または「コンフオート」とを分離しなければならない特段の事情は、本件商標の指定商品と同一または類似の商品において、存在しないことは、乙第2号証ないし乙第5号証の登録例よりみても明らかであり、本件商標の称呼は、あくまでも「シャレルコンフオート」である。
一方、引用商標から生じる称呼は「シャネル」であって、引用商標の称呼と本件商標の称呼とは、明らかに相違する。
本件商標は、前記に示すとおりの文字よりなるところ、請求人は、本件商標の登録が商標法第4条第1項第11号及び同第15号の各規定に違反してされたものであるとして、その登録の無効の理由を述べているので、各法条該当の当否について検討する。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「CHAREL COMFORT」の文字を書してなるところ、これを構成する「CHAREL」と「COMFORT」の各文字部分は、半文字程度の間隔を有していて視覚上必ずしも一体のものとしてのみ把握されるものとはいえないものである。また、「CHAREL」の文字部分からは特定の意味合いを看取し得ない一方、「COMFORT」の文字部分は、「コンフォート」と読まれ、「安楽、気楽」等の意味合いの平易な英語と認められる。そして、「コンフォート」(COMFORT)の用語について、請求人の提出に係る証拠(甲各号証)によれば、以下の各点が認められる。
(a)「コンフォートシューズ」(comfort shoes)の語に関し、「imidas」(株式会社集英社発行)の1997年版ないし1999年版において「見た目はハイヒールだが、中はやわらかく、足にフィットする履きやすい婦人靴」と解説され(甲第39号証ないし甲第41号証)、「現代用語の基礎知識」(自由国民社発行)の1995年版、1997年版及び1998年版において「見た目はハイヒールだが、中はやわらかく、足にフィットする履きやすい婦人靴」と解説されている(甲第42号証ないし甲第44号証、)こと。
(b)「DIME」(1989年11月2日 小学館発行)において「歩きやすく、足のためにもよいという、機能性に重点をおいた靴が売れている。...このコンフォート・シューズにも、ファッション性を重視した靴が続々登場しはじめている。」旨解説されている(甲第45号証)こと。
(c)「シューズブック」(株式会社ポスティコーポレーション発行)の1990年版において「高機能を全面に打ち出したコンフォートシューズ」との記載がある(甲第48号証)こと。
(d)1990年4月26日発行の雑誌「週刊時事」において「コンフォート靴というのは足の健康を考えて作られた靴のこと」と記載されている(甲第46号証)こと等。
以上(a)ないし(d)認定の事実を総合すれば、靴業界においては、近年、主に女性の足のトラブル解消を目的として作られた靴をコンフォートシューズ、コンフォート靴と称して、取引上普通に使用していることが認められる。
そうとすると、本件商標をその指定商品中の上記機能目的を備えた靴(コンフォートシューズ又はコンフォート靴)について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、構成中の「COMFORT」の文字部分を商品の品質を表示する部分と認識するに止まり、「CHAREL」の文字部分を自他商品の識別標識と把握し、その外観、観念をもって取引に資する場合が決して少なくないものとみるのが相当である。
ところで、「CHAREL」の文字部分は英語風に「チャレル」又は「キャレル」のほか、その指定商品がファッション関連の靴類であることから、フランス語風に「シャレル」と読まれその称呼をもって取引に資される場合も少なからずあるとみるのが相当である。
したがって、本願商標からは「シャレル」の称呼も生ずるものといわなければならない。
一方、引用商標1は、「CHANEL」の文字よりなるところ、該標章及びその片仮名表記である「シャネル」の標章が請求人業務を表彰する著名な営業表示であり、またはその取扱いに係る「被服、かばん類、化粧品」等の商標として需要者間に広く認識されたいわゆる著名商標であることは、請求人提出の証拠を徴するまでもなく、当庁において顕著な事実と認められる。 したがって、引用商標1は、該文字の外観及びこれに相応する「シャネル」の称呼をもって取引に資されるものである。
そこで、本件商標より生ずる「シャレル」の称呼と引用商標1より生ずる「シャネル」の称呼とを比較すると、両者は、共に3音構成よりなり、語頭音「シャ」及び語尾音「ル」を共通にするものである。そして、第2音「レ」と「ネ」を異にするものの、「ネ」音は舌尖を前硬口蓋に触れて発する鼻子音(n)と母音(e)との結合した音節であり、また、「レ」音は舌面を硬口蓋に近づけ、舌の先で上歯茎を弾くようにして発する有声子音(r)と母音(e)との結合した音節であって、両者は母音を同じくするうえ、子音の調音位置も比較的近接する音であり、かつ、それら差異音はともに称呼の中間に位置して印象の薄らぐ音といえるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語感印象が近似し、彼此聞き誤るおそれがあるものと判断するのが相当である。
また、両者は「CHAREL」と「CHANEL」の文字の外観において、左から4字目の「R」と「N」の違いを除く他の文字配列を悉く同じくする結果、両者を時と処を異にして離隔的に接した場合は外観印象において極めて紛らわしいものといわなければならない。
してみれば、本件商標と引用商標1とは、その外観及び称呼において彼此紛れるおそれがあり、かつ、両者はその指定商品中に上記コンフォート靴、コンフォートシューズを含むものであるから、結局、両者は、その出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標といわなければならない。
(2)結語
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その余の無効理由(同法第4条第1項第15号)について判断するまでもなく、その登録は同法第46条第1項の規定により、これを無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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