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Trademark Appeal Case

称呼類似性の判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号判定2001−60044(T2001−60044/J6)
審判種別記載はありません。
結論other

結論テキスト

商品「コンピュータのキーボード操作の技能訓練用プログラムを記憶させたCD−ROM」に使用する(イ)号標章は、登録第4214663号商標の商標権の効力の範囲に属しない。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4214663号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成9年2月10日出願、商標の構成を後掲(1)に示すとおり「特打」の文字(漢字)とし、指定商品を第9類「ゲーム用・教育用・その他の電子計算機用プログラムを記憶させた磁気ディスク・フロッピーディスク・CD―ROM,その他の電子応用機械器具及びその部品,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,家庭用テレビゲームおもちゃ,レコード,メトロノーム,電気通信機械器具,理化学機械器具,測定機械器具,写真機械器具,光学機械器具,映画機械器具,計算尺」として、同10年11月27日に設定の登録がされたものである。

2 (イ)号標章

請求人の提示に係る(イ)号標章、すなわち、商品「コンピュータのキーボード操作の技能訓練用プログラムを記憶させたCD−ROM」について被請求人が使用する商標(以下、「(イ)号標章」という。)は後掲(2)に示す構成よりなるものである。

3 請求人の主張

請求人は、被請求人が商品「タイピング練習用プログラムを記録したCD−ROM」に使用する(イ)号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、添付資料1(後述甲第1号証の1及び同2)及び添付資料2(後述甲第2号証の1及び同2)を提出した。

(1)請求人が商標権者である本件商標は上記1のとおりであって、「特打」は、漢字2文字からなる商標である。本件商標は、「とくうち」及び「とくだ」という称呼を生じるものである。

また、添付資料1に示すように、請求人は、タイピング練習用ソフトウェアをCD−ROMに記録し、そのCD−ROMを「特打」という商標を附して販売している(以下、「請求人商品」という)。

この添付資料1に示した請求人商品の販売パッケージに示すように、登録商標「特打」は、「TOKU−UCHI」というルビ的な表記を伴って使用されている。さらに、請求人商品は平成13年9月からテレビコマーシャルで放映されており、そのコマーシャルにおいて、請求人商品を「とくうち」という名称で何度も繰り返し連呼する場面が放映されている。

また、請求人商品は、タイピング練習用ソフトウエアの分野では、販売シェアは1位を占め、その販売本数も100万本を超えている。さらに、日経BP社が主催する「140万読者が選ぶパソコン・ベスト・ソフト」においても、教養エンタテイメント部門にて2年連続「BEST SOFT」賞を受賞している。

このように、ソフトウエア製造販売業界、ソフトウェア流通業界及び請求人商品を購入する一般消費者に至るまで、請求人商品の名称、即ち、登録商標「特打」は、「とくうち」という称呼であることが周知なものとなっている。

(2)被請求人の販売商品及び(イ)号標章の説明

被請求人が販売する商品は、添付資料2に示すように、タイピング練習用プログラムをCD−ROMに記録し、そのCD−ROMを「極射」という商標を附して販売している(以下、「被請求人商品」という)。

ここで、被請求人商品に使用される商標「極射」は、漢字2文字からなる商標である。この商標「極射」は、「きょくしゃ」、「きょくうち」、「ごくしゃ」及び「ごくうち」という称呼を生じるものである。

この添付資料2に示した被請求人商品の販売パッケージに示すように、商標「極射」は、その表示位置の極近傍に「GOKU−UCHI」というルビ的な表記を伴って使用されている。

したがって、被請求人は、意図的に被請求人商品の商品名を「ごくうち(GOKU−UCHI)」という称呼で販売するものであり、ソフトウェア製造販売業界、ソフトウェア流通業界及び請求人商品を購入する一般消費者に至るまで、被請求人商品の名称「極射」は、「ごくうち」という称呼であると認識できる。

(3)「特打」と「極射」との関係

上述のように、ソフトウェア製造販売業界、ソフトウエア流通業界及び請求人商品を購入する一般消費者に至るまで、「特打」の称呼は「とくうち」と認識され、「極射」の称呼は「ごくうち」と認識されている。ここで、「とくうち」と「ごくうち」とを比較すると、何れも4文字の呼称であり、その相違点はそれぞれの接頭部の「と(TO)」と「ご(GO)」の部分のみである。

この「と(TO)」及び「ご(GO)」の発音は、ともにその母音が「お(O)」であり、発音をする際に、非常に類似する音として認識される。したがって、この「と(TO)」及び「ご(GO)」を接頭語として使用し、それに同一の称呼の「くうち」の語を付した「とくうち」と「ごくうち」は、称呼上混同され易い。

また、「特打」と「極射」の商標が使用されている商品は、何れも「タイピング練習用プログラムを記録したCD−ROM」であるため、その商品の需要者は一般購入者や製造販売業界、流通業界などの全ての分野において同一の需要者となる。

以上のように、請求人が製造販売し、その努力によって需要者に周知されるようになった「特打(とくうち)」と同一の商品である「タイピング練習用プログラムを記録したCD−ROM」に、被請求人が「極射(ごくうち)」の商標を意図的に使用する行為は、フリーライドという意味も含め、請求人の商標権を侵害する行為であると言える。

(4)結論

以上のように、被請求人が販売するタイピング練習用プログラムを記録したCD−ROMに使用されている商標「極射」は、請求人に係る本件商標の商標権の類似範囲に属し、その効力の範囲に属するものである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。

(1)被請求人商品に使用されている「タイピングスナイパー ゴルゴ13 極射」の商標は、以下のとおり、請求人に係る本件商標「特打」と類似せず、請求人の商標権の効力の範囲に属しないものである。

(2)請求人は、本件商標「特打」は「とくうち」という称呼として周知なものとなっており、被請求人商品に使用されている商標「極射」の称呼は「ごくうち」と認識されており、両者は「と(TO)」と「ご(GO)」が異なるのみであって称呼上類似しており、被請求人が「極射」の商標を使用する行為は周知商標である「特打」へのフリーライドであり、請求人の商標権を侵害する行為である旨主張している。しかしながら、上記主張は以下の点で不当ないし妥当性を欠くものであり、被請求人商品に使用されている商標は請求人に係る本件商標と類似せず、同商標権の効力の範囲に属しない。

(ア)まず第1に、請求人は被請求人商品に使用されている商標は「極射」であるとして、これを前提に請求人の主張を展開しているが、被請求人商品に使用されている商標は「極射」ではなく「タイピングスナイパー ゴルゴ13 極射」であり(添付資料2)、かように商標の一部を故意に抜き出してその一部のみが商標であるとして商標の類似性を判断することは不当である。

(イ)第2に、商標の類似性は一般に外観、称呼、観念の3つの要素を総合的に考察して判断されるが、需要者が商標を見たとき受ける印象の強さは、文字、記号、図形の外観から受ける印象が最も顕著であるため、外観の類似性が最も重視されるところ、被請求人が商品名として使用している商標「タイピングスナイパー ゴルゴ13 極射」と請求人が商標権を有する登録商標「特打」は外観において全く異なっている(添付資料1及び同2参照)。

また、観念においても、請求人に係る本件商標「特打」は単に「タイプを打つこと」を意味するのに対し、被請求人の商標「タイピングスナイパー ゴルゴ13 極射」はスナイパーであるゴルゴ13のキャラクターが極めて正確な射撃(タイピング)を行うことを意味しており、両者の観念は全く異なっている。

さらに称呼においても、請求人に係る本件商標は「特打」であるのに対し、被請求人の商標は「タイピングスナイパー ゴルゴ13 極射」であり、全体観察によれば類似しているとは言えない上、要部観察によっても「特打」と「極射」では、相違する1音は語頭音であり、そのうちの一方は強音であること等に鑑みれば、両者が類似しているとは言えない。

なお、被請求人は本件商標とは別個の商標について請求人より都合2回に亘って内容証明郵便により商標権侵害、販売中止等に関して通告を受け、被請求人はいずれも要求には応じられない旨回答し販売を継続している。そして、これらソフトについてはその後請求人より何の要求もなく、また、当該「激打」の商標は発売元である株式会社エス・エス・アイ(被請求人は販売元)により商標登録されている(乙第1号証ないし乙第5号証)。

(3)以上のとおり、「特打」と「タイピングスナイパー ゴルゴ13 極射」とは、外観、称呼、観念の全てにおいて異なっており、両商標は類似しているとは言えず、被請求人が使用する商標は本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。

5 当審の判断

(1)(イ)号標章及びその使用に係る商品について

本件判定の請求において、請求人が「添付資料2」として提示した(イ)号標章は、後掲(2)に示すとおり、被請求人がその販売に係るいわゆるタイピングソフト、すなわち、パソコン等コンピュータ機器のキーボード操作の技能訓練用プログラムを記憶させたCD−ROMについて使用する標章であって、同CD−ROMの包装箱表側及び同裏側の全形を示す標章(以下、「添付資料2」の表側を「甲第2号証の1」とし、同裏側を「甲第2号証の2」とする。なお、便宜上、同様に「添付資料1」を「甲第1号証の1及び同2」とする。以下、同じ。)と認められる。

また、請求人は、該使用に係る商品を「タイピング練習用プログラムを記録したCD−ROM」としているが、該商品は「コンピュータのキーボード操作の技能訓練用プログラムを記憶させたCD−ROM」とみるのがより適切なものといえるから、本件判定請求における(イ)号標章の使用に係る商品を同表示の商品とみて、以下、判断する。

しかして、前記包装箱は、特に表側部分は全面に亘って赤色、黄色又は黒色等で彩色されており、それらを背景に「タイピングマスターソフト」(初・中級者)、「ローマ&カナ字入力」、「タイピングスナイパー」、「ゴルゴ13」の各文字及び「同漫画(ゴルゴ13)キャラクターの絵図」等と共に、同包装箱の表裏数カ所に亘って黒色のいずれもやや右傾させた特有の書体をもって、「極射」の文字(漢字)を横書き又は縦書きに大きく表し、さらに、同漢字の下部又は脇に小さく籠字風の「GOKU−UCHI」の欧文字を配してなるものである。また、特に、裏側部分はその販売主体である被請求人の会社名称、同関連会社名称及びそれら関連商標(「HOLON」商標その他)の表示と共に、当該商品の仕様及び機能特性等に関する説明の詳細が示されている。

そして、前記数カ所に表された「極射」の文字(漢字)は、その特有の書体と相俟ってそれ自体が他の構成部分に比して大きく表されていて視覚印象上極めて顕著であるのに対し、同漢字脇に常に従属する如く小さく表された「GOKU−UCHI」の欧文字は、当該「極射」の文字の読みに相応する表音を欧文表記したものとして認識・理解される場合を否定し得ないものであって、少なくとも(イ)号標章の使用者である被請求人は、需要者に対し「極射」を「GOKU−UCHI」ないし「ゴクウチ」と読む意向を自ら示したものといえる。

また、(イ)号標章にあって、前記漢字及び欧文字部分(以下、これらを「被請求人商標」という。)は、視覚上又は意味上において他の文字又は図形部分と常にそれらを一体のものとして把握しなければならないような特段の事情はなく、また、その証拠も見出せないから、それ自体は独立して商品識別の機能を発揮し得るものというべく、(イ)号標章に接する取引者・需要者は、構成中の印象力の強い部分というべき被請求人商標に着目し、それら文字の外観、観念又は称呼をもって簡便に取引に当たる場合も決して少なくないといわなければならない。

してみれば、(イ)号標章又は被請求人商標を本件判定請求の対象として述べる請求人の主張は、その限りにおいて正当というべきであった。しかしながら、以下に述べる理由により、(イ)号標章が本件商標の効力の範囲に属するとする請求人の主張は妥当でなく、その請求は容認することができない。

(2)(イ)号標章と本件商標との類否について

請求人は、(イ)号標章と本件商標とが「トクウチ」と「ゴクウチ」の称呼において類似するとし、(イ)号標章が本件商標権の効力の範囲に属する旨主張しているので、これを判断する。

(a)本件商標は、後掲(1)に示すとおり、「特打」の文字(漢字)よりなるところ、該文字は全体として特定の意味合いを有する成語(邦語)とはいえない一方、これを構成する「特」、「打」の各文字(漢字)は、共に世人一般に親しまれ馴染まれている平易な漢字といえるから、これら文字の結合よりなる本件商標は、構成各文字の外観をもって強く印象づけられると共に当該文字(漢字)の一般的読み方である音・訓読みをもってこれを「とくうち」又は「とくだ」の如く読み、その称呼をもって取引に資されるものとみるのが相当である。

したがって、請求人の述べる本件商標より「とくうち」(トクウチ)の称呼を生ずるとする点については、その限りにおいて正当というべきである。

(b)一方、(イ)号標章にあって、前記被請求人商標は、それ自体独立して商品識別の機能を発揮し得るものであって、それら文字の外観、観念又は称呼をもって取引に資されるものというべきこと前記認定のとおりである。

ところで、被請求人商標、すなわち、「極射」の文字(漢字)及び「GOKU−UCHI」の欧文字をみるに、これら文字は、全体として特定の意味合いを表現し得ない造語とみられる一方、「極射」の文字を構成する「極」、「射」の各文字(漢字)が各々の漢字の持つ意味合いと共にその一般的読み方である「きょく、ごく、きわ(める)」、「しゃ、い(る)」の意義をもって世人一般に親しまれ馴染まれている平易な漢字といえるから(「射」を「うつ」とする読み方は極めて稀であって、一般的とはいえない。)、これに接する取引者・需要者はその一般的読み方(音・訓法)に従って全体として「きょくしゃ」又は「ごくしゃ」の如く読み、その称呼をもって取引に資する場合もあるといわなければならない。

しかして、前記「GOKU−UCHI」の欧文字又はその表音表記である「ゴクウチ」の称呼は、必ずしも前記漢字の自然的な読み(表音)又はその英文表記とはいえないとしても、それ自体が商品識別の標識として機能する場合を否定し得ないから、少なくとも(イ)号標章又は被請求人商標より「ゴクウチ」の称呼を生ずるとする点については疑義を生ずる余地はない。

この点に関し、被請求人は、その使用に係る商標は単なる「極射」ではなく「タイピングスナイパー ゴルゴ13 極射」であって「極射」を分離することは不当である旨述べているが、前記各認定に照らし、(イ)号標章又は被請求人商標より「GOKU−UCHI」又は「ゴクウチ」の称呼を生ずるとする点は否定し得ないところであるから、その主張は採用の限りでない。

(c)そこで、本件商標より生ずる「トクウチ」の称呼と(イ)号標章より生ずる「ゴクウチ」の称呼とを比較するに、両称呼は共に4音という比較的短い音構成にあって冒頭の「ト」と「ゴ」の音を異にするものである。

そして、差異音「ト」(to)は、舌尖を上前歯のもとに密着して破裂させる無声子音「t」と母音「o」との結合した音であるのに対し、差異音「ゴ」(go)は、後舌面を軟口蓋に接し破裂させて発する有声子音「g」と母音「o」との結合した音である。

しかして、差異音はその子音が無声・有声の違いを有し、かつ、その調音部位、調音方法も大きく相違し、しかも、称呼の識別において比較的明瞭に聴取されるというべき語頭に位置する音であることから、母音を同じくするとはいえ、両音の差異は明瞭というべく、それぞれを一連に称呼したとしても彼此聞き誤るおそれはなく、また、両称呼を時と処を異にして離隔的に考察した場合であっても全体の語感印象を異にし、判然と聴別し得るものというべきである。

してみれば、本件商標と(イ)号標章又は被請求人商標とは前記称呼の対比において類似のものということはできない。そして、ほかに、両者を称呼上類似のものとすべき事由はなく、また、両者の構成はそれぞれ前記又は後掲したとおりのものであって外観印象において著しく相違し、かつ、それぞれを構成する漢字自体の持つ意義と相俟って観念上両者は別個のものとはいえても、何ら紛れ得るとする点は見出せない。

したがって、本件商標と(イ)号標章とは外観、称呼及び観念のいずれよりしても判然と区別し得るものであって、このほか、いわゆるタイピング訓練用ソフトウエアの分野における需要者一般の注意力の程度、本件商標の周知性その他取引の実情に照らし総合勘案するに、両者はその出所について混同を生ずるおそれはなく、したがって、本件商標を(イ)号標章と類似のものということはできない。

(3)結語

以上のとおり、本件商標は、(イ)号標章とは非類似のものである以上、商品「コンピュータのキーボード操作の技能訓練用プログラムを記憶させたCD−ROM」に使用する(イ)号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものというべきである。

よって、結論のとおり判定する。

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