sokuhyo

Trademark Appeal Case

原料名と商品名の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35496号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4107871号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4107871号商標(以下「本件商標」という。)は、「さつまいもラガー」の文字を横書きしてなり、平成8年3月18日に登録出願、第32類「ラガービール」を指定商品として、同10年1月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、これをを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第11号証及び参考資料1ないし8を提出している。

1 本件商標は、商標法第3条第1項第1号及び同第3号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項により無効とされるべきものである。

2 請求の利益

請求人は、第32類「ビール風味の麦芽発泡酒」を指定商品とした商標登録願(商願平10−22586号)を、平成10年3月18日に出願したが、平成11年8月3日付けで本件商標を引用され本件商標と称呼を共通にする類似の商標であるとして拒絶査定を受けたものである。この拒絶査定に対し請求人は、拒絶査定不服の審判を請求(平成11年審判第14846号)しており、本件審判を請求するについて利害関係を有するものである。

3 請求の理由

本件商標は、普通の書体の平仮名で書した「さつまいも」と、同じく普通の書体の片仮名で書した「ラガー」とを一連に書した「さつまいもラガー」のみからなる構成の商標である。本件商標の構成中「さつまいも」は、本件商標の指定商品「ラガービール」の原材料、品質を表す標章であり(甲第2号証〜同第11号証参照)、他方「ラガー」は指定商品「ラガービール」の「ビール」を省略したものであって、このような省略は一般に広く行われており、指定商品である「ラガービール」そのものを表す標章である。

してみると、本件商標は、上記「薩摩芋を原材料とした、或いは、薩摩芋風味のラガービール」であることを表示しているに過ぎないといえる。

一方、本件商標は、指定商品である(薩摩芋を原材料とする、或いは薩摩芋風味の)「ラガービール」を表す普通名称であるということができる。

また、本件商標の査定時である平成9年11月10日には、前記甲第2号証〜同第11号証からも明らかなように、「さつまいもラガー」なる名称の「ビールないしビール風味の麦芽発泡酒」が販売されていた事実からしても、本件商標は「薩摩芋を原材料としたビールないしビール風味の麦芽発泡酒」の「普通名称」であると首肯できる。

4 答弁に対する弁駁

(1)被請求人は、答弁書において、本件登録無効審判の根拠となっている無効理由を裏付ける証拠甲第2号証〜同第11号証は、いずれも本件商標の登録出願日(平成8年3月18日)より後のものばかりである旨、及び「ビール」と「さつまいも」とは、不可分の関係とはいえない旨、さらに証拠資料は、いずれも請求人自身のものである旨主張している。

そこで、請求人は、参考資料1〜5として本件商標出願の登録出願日以前である平成7年の新聞記事5件を提出し、「さつまいも」がビールないしはビール風味の発泡酒の原料であることが、本件商標出願日より以前にこれら新聞記事などによって日本全国において広く知られていたことを明確にする。

さらに、前記「薩摩芋を原料としたビール風味の発泡酒」を請求人が本件商標の査定時以前に製造販売しいることを広く放映した、NHK、テレビ埼玉、フジテレビ、日本テレビ、TBSのニュース等を録画したビデオテープを提出する。

このように、「さつまいも」がビールないしはビール風味の発泡酒の原料であることは、本件商標の査定時より以前にこれら新聞記事、或いは多くのテレビ放映などによって日本全国において取引者、需要者に広く知られていたことが明らかである。

また、被請求人の答弁書による「証拠資料は、いずれも請求人自身のもの

である」との主張に対しては、参考資料6として「醸界タイムス」第4046号(平成10年1月9日発行)を提示する。

この参考資料6には、被請求人である薩摩酒造株式会社が「薩摩芋」を原料としてビール(発泡酒)を本件商標の登録出願日より前に製造販売したとの記事が掲載されている。この記事には、「製造工程は、蒸したサツマイモを麦芽で糖化して濾過。これにホップを加え、ビール酵母の一種を使って下面発酵させるという、サツマイモを使うことを除くと通常のビールと同じもの。」「サツマイモならではの味をもち、」「サツマイモから酒を造るという発想が根底にある」等の記載がある。なお、ここにおいて、上記「薩摩芋を麦芽で糖化してビール酵母の一種を使って下面発酵させる」ことは、まさに「さつまいも」を原料として「ラガー」、すなわち「さつまいもラガー」を作ることそのものである。

これは被請求人がその答弁書での「そもそも業界の常識からいって『ビール』と『さつまいも』は不可分の関係とはいえず、『薩摩芋』=『ビールの原材料等』との認識はないものである。」との主張を、根本から否定しているものといえる。

上述した事情から「薩摩芋」は、「ビール、或いはビール風味の発泡酒の原材料」として、或いは「さつまいも風味のビール」などを表すものとして一般に認識できるものである。よって、原材料としての「さつまいも」と、下面発酵させる「ラガー」とを一連に書し且つ称呼する本件商標「さつまいもラガー」は、前記「薩摩芋を原材料とした、或いはさつまいも風味のラガー(ビール)」であることを表示しているに過ぎないことが明らかである。

さらに、本件商標「さつまいもラガー」は、その指定商品が「ラガービール」となっているが、「薩摩芋を原材料とした、或いは薩摩芋風味のラガービール」以外の「ラガービール」に使用すると、上述した事情からその品質について需要者に誤認を生じさせることになるから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当し登録を受けることができない商標でもある。

(2)被請求人は、答弁書において、「請求人の商標登録出願の商標の態様、つまりラベルの中央に大きく表示された『SATUMAIMO LAGER』の表示態様からも明白なように、被請求人と請求人の2社が同時期に同一の商品を開発し、同一・類似の商標をたまたま採択し、この商標の出願時期が前後したことに起因すると判断するのが自然であって、被請求人はあくまで先後願の問題で解決済みと考えるものである。」と述べている。

そこでこの点について見るに、請求人の商標登録出願に係る商標は、瓶などに貼るラベル状の商標であって、円の上部内側に円環状に「KOEDO KURANOMACHI」とアルファベットで表し、この円環内側の上半分に「小江戸」とも呼ばれる「川越」の蔵の町並みを表し、さらに円の中央部横方向に「Satumaimo Lager」と変形のアルファベットで表し、さらにこのアルファベットの下に麦、ホップの実、ホップの葉などを表し、さらにまた円の下部内側に円環状に「KOEDO BREWERY」と表して構成されている。

この請求人の商標登録出願に係る商標において、商標として自他商品を識別する機能のある部分は、「KOEDO KURANOMACHI」、「KOEDO BREWERY」であり、原材料を表す麦、ホップの図形、及び原材料ないし商品の内容を表す「Satumaimo Lager」の部分は、誰でもが自由に使用することができる標章である。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第1号及び同第3号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証(枝番号を含む。)を提出している。

答弁の理由

1 請求人は、本件商標「さつまいもラガー」は、指定商品との関係から商標法第3条第1項第1号及び同第3号の規定に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきであると主張している。

すなわち、本件商標は、「薩摩芋を原材料とした、或いは薩摩芋風味のラガービール」であることを表示しているにすぎない。また、本件商標は、指定商品である(薩摩芋を原材料とする、或いは薩摩芋風味の)「ラガービール」を表す普通名称であるということができる、との主張である。

しかしながら、本件登録無効審判の根拠となっている無効理由と、これを裏づける証拠甲第2号証〜同第11号証は、いずれも本件商標の登録出願日(平成8年3月18日)より後の、しかも請求人自身の新商品の新聞記事ばかりで、この限りにおいて全く的を得ないものであり、著しく客観性を欠くものである。

2 本件商標は、「薩摩芋を原材料とした、或いは薩摩芋風味のラガービール」であることを表示しているにすぎない、との主張について。

そもそも業界の常識からいって、「ビール」と「さつまいも」は不可分の関係とはいえず、「薩摩芋」=「ビールの原材料等」との認識はないものである。

請求人は、「薩摩芋」=「ビールの原材料等」を立証する資料として、甲第2号証〜同第11号証を掲示するが、これらはいずれも請求人自身の商品の説明と宣伝であり、これをもって、「さつまいも」が、商標法第3条第1項第3号に規定する「指定商品の原材料・品質」とは決していい得ない。

3 本件商標は、指定商品である(薩摩芋を原材料とする、或いは薩摩芋風味の)「ラガービ−ル」を表す普通名称であるということができる、との主張について。

被請求人は、「さつまいもラガ−」が「ビール」の普通名称として使用されている事実を全く知らない。

商品の普通名称とは取引界において、その商品の一般的な名称であると認められている名称であるが、本件商標の登録出願後の請求人の商品「ビール風味の麦芽発泡酒」の説明・宣伝記事を以て、「さつまいもラガー」が「ラガービール」の普通名称であると主張するのは誤りである。

故に、本件商標「さつまいもラガー」は、指定商品の原材料でも普通名称でもない造語商標で、甲第7号証の記載にあるように、ラガ−をひねって名付けた商標と判断するのが極めて自然である。

4 被請求人は、本件商標「さつまいもラガー」の採択の時期と、商品開発の経緯を証明するために、被請求人会社の社内秘として平成8年6月にまとめられ、保管する「サツマイモを利用した発泡酒の開発に関する研究報告書」の抜粋を乙第1号証として提出する。

本件商標は、被請求人が平成6年12月発酵飲料製造時に既にネーミングした商標であって、平成7年12月発泡酒製造試験製造免許を取得し、平成8年3月の仕込みとあわせて平成8年3月18日商標登録出願をし、その後、何の問題もなく登録されたものであることは特許庁の記録において明らかである。

そして、被請求人は本件商標を地ビール(税法上は発泡酒)の商標として、平成8年3月から現在に至るまで、継続使用してきている。 これらの事実を乙第2号証〜同第5号証によって立証する。

販売数も平成9年8月から平成11年12月迄で8万本を越え、本件商標は、被請求人の製造・販売に係る、地ビール(税法上はビール風味の発泡酒)の登録商標として需要者間に静かに浸透している。

5 請求人は、弁駁書に参考資料1〜8を追加して、本件商標は「ビールないしはビール風味の発泡酒」については、商品の普通名称である、又は原料表示であると繰り返し主張するが、そもそも、本件商標の無効原因は、甲第1号証として添付の、請求人の商標登録出願の商標の態様、つまりラベルの中央に大きく表示された「SATUMAIMO LAGER」の表示態様からも明白なように、被請求人と請求人の2社が同時期に同一の商品を開発し、同一・類似の商標をたまたま採択し、この商標の出願の時期が先後したことに起因すると判断するのが自然であって、被請求人はあくまで先後願の問題で解決済と考えるものである。

請求人の、甲第1号証を以て示す出願商標に表示された「SATUMAIMO LAGER」の表示を商品の普通名称表示、または原料表示と判断することは全くできない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第1号及び同第3号に違反してされたものではないから、その登録は無効とされるべきではない。

第4 当審の判断

1 商標登録出願に係る商標が、商標法第3条第1項の規定に該当するか否かの判断時期は査定時又は審決時であると解されるところ、本件商標については、平成9年11月10日に登録査定がされたものである。

しかるところ、請求人が甲第2号証ないし同第8号証及び参考資料1ないし5として提出した各種新聞は平成7年及び同8年の発行に係るものであるから、これらはいずれも本件商標の登録査定日より前の資料であると認められるものである。

2 甲第4号証として提出した鹿児島新報(平成8年4月19日発行)には、請求人が「ビールタイプの発泡酒 サツマイモラガー」を開発したとの記事が掲載されており、同じ記事中に「県内では薩摩酒造(被請求人)が約2年前からサツマイモを使った発泡酒の開発を独自に進めてきた......」との記載がある。また、甲第5号証ないし同第8号証の新聞記事においても「サツマイモラガー」が、「さつまいもを原料(又は副原料)としたビールタイプの発泡酒」を意味する名称として使用されている。

そして、これらの新聞は地方新聞である「埼玉新聞」「鹿児島新報」、業界新聞である「全国農業新聞」「日本農業新聞」のみならず、「日本経済新聞」「東京新聞」「日経産業新聞」のような全国紙も含まれており、例えその記事の内容が被請求人主張のように請求人自身が開発した「ビールタイプの発泡酒」である「サツマイモラガー」に係るものであったとしても、そのことによって、これらの記事の内容についての客観性が損なわれるという性質のものでもない。

そうとすれば、ビールタイプ(ビール風味)の発泡酒の原料(又は副原料)として「さつまいも」が使用されることは、ビール及びビールタイプの発泡酒を取り扱う業界において、本件商標の登録査定日前に広く知られていたものとみるのが相当である

3 また、本件商標の指定商品は「ラガービール」であるところ、「ラガービール」について「ラガー」の文字は、その商品の略称又は品質(種類)を表すものとして取引者、需要者に認識されることは明らかといえる。

4 上記の事実よりすれば、「さつまいもラガー」の文字よりなる本件商標は、ビール及びビールタイプの発泡酒の需要者に「さつまいもを原料としたラガービール」を意味する文字としてして直ちに理解されるものと認められるものであり、したがって、本件商標は、その指定商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきである。

なお、ビールは、「麦芽比率が67%以上のもので、副原料の使用も政令でコメ、コーン、スターチに限定されている。」(甲第4号証,甲第5号証及び甲第7号証参照。)ものであるから、前記の「さつまいもを原料(又は副原料)とするビールタイプの発泡酒」は、正確にはビールに該当しないものである。

5 請求人は弁駁書において、本件商標は商標法第4条第1項第16号にも該当するとの主張をしているが、商標登録の無効の審判において、請求理由を後に追加補正することはできないものと解されるから、この点の主張は採用できない。

6 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。