結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35599号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第3369172号商標(以下「本件商標」という。)は、「毛髪力」の文字よりなり、平成5年3月31日登録出願、第3類「シャンプー、頭髪用化粧品」を指定商品として、同10年3月6日に登録されたものである。
請求人が本件商標の登録を無効とすべきものとする理由に引用する登録第2221771号商標(以下「引用商標」という。)は、「髪之力」の文字よりなり、昭和62年12月7日登録出願、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、平成2年4月23日に登録され、現に有効に存続するものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第4号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標「毛髪力」は、既成語ではないものの、「毛髪」の文字が「人の頭髪と体毛の総称」を表す語として一般に親しまれて使用されているばかりでなく、指定商品との関係においても商品の用途を表示するものとして普通に使用されているものである。
また「力」の文字は「筋肉の働きや作用、能力」等の意味を有する語であり、他の既成語に対して「○○力」と使用されている事例が多くみられる(「生産力」「爆発力」等)ものである。
そうとすると、本件商標に接する取引者・需要者は、これより「(人の頭髪と体毛の総称)である毛髪の働きや作用」の観念を有する。
他方、引用商標「髪之力」よりは、「(人の頭髪である)毛髪の働きや作用」の観念を有する。
そうとすると、本件商標は引用商標と前記観念を共通にする類似の商標といわなければならない。
したがって、両商標を時と所を異にして離隔的に観察するときは、観念において類似することをも併せ考えると、外観においても近似した印象を与え、彼此見誤るおそれのある類似の商標と言わざるを得ない。
また、両商標の指定商品も抵触するものである。
故に、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。
(1)特許庁の判断の不一致について
審査段階で「毛髪力」と「髪之力」は類似しないとの異議決定をした審査官は、「毛髪力」が『特定の観念を生ずることのない造語』と認定しているものであるが「毛髪力」と「毛髪之力」を類似とした審査官は、『「毛髪力」が既成語ではないものの、「毛髪」の文字が「人の頭髪と体毛の総称」を表す語として一般に親しまれているばかりでなく、指定商品との関係においても商品の用途を表示するものとして普通に使用されているものである。また、「力」の文字は「筋肉の働きや作用、能力」等の意味を有する語であり、他の既成語に対して「○○力」と使用されている事例が多くみられる(「生産力」「爆発力」等)ものである。そうとすると、本件商標に接する取引者・需要者は、これより「(人の頭髪と体毛の総称)である毛髪の働きや作用」の観念を有する』と認定している。
この認定判断の相違は、商標の観念の捉え方(定義)に対する見解の相違に由来するものである。前者は、語学上の語彙の正確な意味合いによって特定の観念を理解しようとするものであり、後者は、取引者・需要者の理解の程度と取引の実情を基礎にして、人々がその商標にいだく意識内容を想定して商標の観念を理解しようとするものである。言い方を変えれば、前者は、論議を許さない正確な意味合いを商標の観念とするのに対し、後者は、一般の人々が通常認識する意味合いを探究し、ほぼ一致する意味合いをもって商標の観念と理解する立場に立つものである。
商標の観念の特定は、かれこれの商標の類否を判断する手法の−つである以上、その観念は漠然としたイメージをも参酌すべきものであって、このようなイメージの近似も類否判断の重要な要素であることは否定することはできない。
本件商標「毛髪力」は、「毛髪の働きや作用」という、通常、人々の間で一致する観念を有する商標であり、他方、引用商標「髪之力」も「毛髪の働きや作用」という観念で人々に理解されるものであるから、両商標は、全く同一の観念が生じる商標であるといえる。
(2)観念類似の離隔的観察について
商標は時と処を異にする離隔的観察によるものであり、過去の記憶により次なる商品を購入することになり、その記憶の曖昧さ故に観念的な相紛れが増幅されるのである。
かような観点から「毛髪力」と「髪之力」が、その語から感得される意味(「(人の頭髪と体毛の総称)である毛髪の働きや作用」の観念)において紛らわしいのである。
想定された取引者・需要者の立場に立つべき、担当審査官の判断においてすら齟齬する程に紛らわしいのである。
(3)販売数量と周知の主張
被請求人は、販売数量を掲げ「毛髪力」の周知性を主張するが、他人の登録商標に類似する所謂「権利侵害の状態」においての周知である主張は、法により保護されるべき周知性に結びつかないものであることは過去の判例の示すところである。
被請求人は、混同を起こすことは全くない、と取引実情を述べているが、それは著名商標「Lion」の商標と共に「毛髪力」が使用されたことに由来すると思われる。
仮に著名商標「Lion」を一切使用せず、「毛髪力」のみが使用されたとすれば、結果は違っていたかもしれないのであって、かかる事情が商標の類否を左右するものではなく、被請求人の主張は当を得たものではない。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第16号証を提出した。
(1)請求人は本件商標「毛髪力」及び引用商標「髪之力」がともに「毛髪の働きや作用」という観念を有するため、両者は観念上類似する商標であると主張するが、たとえ後者「髪之力」が「髪の力」のような意味合いに通じ上記観念を生ずるとしても、前者「毛髪力」は特定の意味合いを認識し得ない造語であるため同じ観念を生ずるということはできない。
請求人は以前にも同じ「髪之力」という商標を引用して本件商標「毛髪力」に対し登録異議申立を行なっているが、その決定の理由においても上記と同様のことが述べられている。すなわち、「毛髪力」ということばが熟語として認識されている場合は格別として、通常これは特定の観念を生ずることのない造語よりなるものと判断されているのである。
そもそも「毛髪力」なることばは、被請求人が案出した造語であって、これまでの日本語にはないことばである。「力」という語は他のことばの後ろに付き、例えば「判断力」「影響力」「推進力」など多くの既成語を作っているが、「毛髪力」というのは全く新しいことばであり、その定義が成り立たないものである。また、「毛髪力」という構成は「〜力」という多くの既成語にならっているため、新しいことばにしては馴染みやすくなっているが、だからといって既成語のように特定の観念を生じるものではなく、むしろその馴染みやすさは「毛髪力」の一体でリズムよく称呼され、需要者らの記憶にも残りやすいという商標としての優秀性につながってゆくものである。
もちろん「毛」「髪」「力」という構成漢宇から、「毛髪力」の意味合いも指定商品との関係で漠然と認識されることはあるかもしれないが、それは髪に力が漲ってくるような、また、髪に力が湧いてくるような、あくまでも漠然としたイメージに過ぎないのであって、特定の観念を生じ得ないものである。本件商標は造語よりなるものであって、その意味合いが認識されるようなことがあっても、それは漠然としたイメージに過ぎず、暗示的に需要者らによいイメージを与えるに過ぎない商標なのである。
(2)次に請求人は、本件商標及び引用商標は観念において類似することを考え併せると、外観においても近似した印象を与えるため彼此見誤るおそれのある類似商標であると主張する。しかし、上述のように両者は観念上類似せず、さらに「毛髪力」と「髪之力」とでは全く外観が異なるため、この点においても本件商標は引用商標に類似するものではない。
(3)さらに、商標の類否は対比する商標が出所の混同を生ずるおそれがあるか否かによって判断されるべきところ、本件商標「毛髪力」は少なくとも登録の時点から現在に至るまで、被請求人に係る頭髪用化粧品ないしは育毛剤につき独自の人気ブランドとして需要者らの間で周知となっているため、引用商標との間で出所の混同を起こすことは全くない。「毛髪力」は「毛髪力」として独自の地位を確立しているのであり、「髪之力」とは混同を生じる余地のない非類似の商標なのである。
以上、請求人の主張には理由がなく、本件商標「毛髪力」は引用商標「髪之力」とはどのような観点に立っても混同を生じることのない非類似の商標である。
(1)はじめに、本件商標と引用商標とをその外観について比較検討するに、両者の構成は前記したとおりであり、いずれも漢字3字よりなるところ、その過半である語頭の2字(「毛髪」と「髪之」)を異にするものであるから、それぞれを時と所を異にして離隔的に観察したとしても、通常の注意力があれば十分区別しうるものであり、外観において相紛れるおそれはないものといわなければならない。
(2)つぎに、両商標の観念についてみるに、商標の観念は、簡易迅速を旨とする商取引に資するものである以上、一見して世人に直ちに一定の意義を理解させるようなものでなければならない。ところが、本件商標を構成する「毛髪力」の文字は、一般の国語辞典等には掲載されていないものであり、いかなる事物、事象を表現したか直ちには理解、認識することのできないものであって、一種の造語よりなるものというを相当とするから、これより一見して直ちに一定の意義を理解させるような観念が生ずるとはいい得ないものである。もっとも、該文字は、成語として知られる「毛髪」と「力」の2語を組み合わせたものと直感され、この両語を関連付けて単純に「毛髪(の)力」程度の意味合いが看取されなくもないが、その意味合いは抽象的で漠然としていて一般に親しまれた観念とはいい難く、だからといって両語をさらに詮索し、個々の意味をつないで取引に資されるとも認めがたいところである。そうすると、本件商標「毛髪力」に接する取引者、需要者は、これより特定の観念を想起しないか、想起するとしても字句どおり「毛髪力」「毛髪の力」程度の表面的、抽象的な観念にとどまるというのが相当である。
したがって、本件商標からは、その構成文字に相応し字句どおりの「毛髪力」「毛髪の力」程度の観念を生ずることはあっても、他に取引に資すべき親しまれた特定の観念は生じ得ないものといわなければならない。
他方、引用商標は、「髪之力」の文字よりなるから、これよりは抽象的であって、一般に親しまれた観念とはいい難いものの、字句どおりに「髪の力」の観念が生ずるものと認められる。
そして、本件商標より生ずる「毛髪力」「毛髪の力」の観念と引用商標より生ずる「髪の力」の観念とは、いずれも抽象的で漠然としていて一般に親しまれた観念とは言い得ないものの、別個独立の語句(「毛髪」と「髪」について時に同義に解されることがあるとしても一般的には別個の語として明確に区別されている)から派生し、それぞれ字句どおりに感得把握されるものであり、これらが同義のものとして一般に理解、認識されていると認めるに足る証拠もないから、互いに十分区別し得るものと判断するのが相当である。
(3)さらに両商標より生ずる称呼についてみるに、それぞれの構成に徴すれば、本件商標は「モウハツリョク」、引用商標は「カミノチカラ」の称呼を生じ、その差は歴然としていて互いに紛れるおそれがないこと明らかである。
(4)してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、観念、称呼のいずれの点よりみても非類似の商標と認めうるものであり、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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