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Trademark Appeal Case

保湿表示の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35699(T2000−35699/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4074268号商標(以下「本件商標」という。)は、「MOISTURDROP」と「モイスチャードロップ」の文字を上下二段に併記してなり、平成8年5月1日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤、つけまつ毛用接着剤」を指定商品として、同9年10月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標

請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1997471号商標は、「ドロップ」と「DROP」の文字を二段に併記してなり、昭和60年3月26日に登録出願、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、同62年11月20日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第3282641号商標(以下、これらを一括して「引用商標」という。)は、「ドロップ」と「DOROP」の文字を二段に併記してなり、平成6年9月26日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同9年4月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の指定商品中の『せっけん類,化粧品』についての登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出している。

請求の理由

1 本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反して登録されたものである。

2 商標法第4条第1項第11号について

美しくて健康な肌や頭髪でいるためには、肌や頭髪を汚れや紫外線から護るとともに、これらに常に一定の水分(湿り気)を保たせることが重要であるとされている。

しかして、この事情を反映して、化粧品業界においては、肌や頭髪の水分(湿り気)を一定に保ったり、補給したりする効果を有する化粧品やせっけん類(甲第4号証及び同第5号証)が取り引きされていて、これら化粧品やせっけん類が肌や頭髪の水分(湿り気)を保ったり、補給する効果を有するものであること(すなわち、保湿効果を有するものであること)を表示するものとして、「モイスチャー」及びこれと実体的には同一のものとみるべき「モイスチユア」の文字が広く一般に使用されているのが実情である(甲第6号証)。

ところで、この「モイスチャー」及びこれと実体的には同一のものとみるべき「モイスチユア」の語は、「水分」「湿り気」を意味する英語として一般に親しまれているものということができる「Moisture」に通ずるものである(甲第7号証及び同第8号証)。

一方、本件商標は、「MOISTURDROP」と「モイスチャードロップ」の文字よりなるものであるところ、これら両文字からは、これよりそれぞれ全体として親しまれている一語を形成しているから、それぞれ一連不可分のものとみるべきである、といったような、これらを一連不可分のものとしてのみに把握しなければならないとする特段の事情は見出せない。

かえって、本件商標が、前記のような「モイスチャー」あるいは「モイスチユア」の文字を、その使用効果を表示するものとして使用している化粧品やせっけん類について使用されたときは、取引者、需要者は、その構成中の「モイスチャー」の文字を、その化粧品やせっけん類の使用効果(保湿効果)を表示しているものと理解するとみるのが相当である。

このようにみると、本件商標は、上記のような化粧品、せっけん類との関係においては、「モイスチャー」と「ドロップ」、「MOISTUR」と「DROP」の文字よりなるものと把握されるものというべきである。

もっとも、上記の「MOISTUR」には、「MOISTURE」の末尾の「E」が存在しないが、「MOISTURDROP」という11字もの構成において、その中間に存する僅か一字の「E」の存否が、常に明確に認識されるとはいい難いうえに、この文字には、この文字の読みにも通ずる「モイスチャー」の文字が極めて密接な位置関係で配されている。

そうすると、簡易、迅速を旨とする商取引の場においては、「MOISTURDROP」の文字も、「MOISTURE」と「DROP」の文字よりなるものと看取される場合も、決して少なくないとみるのが相当である。

してみると、本件商標が、その指定商品中の保湿効果を有する化粧品やせっけん類について使用されたとき、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「モイスチャー」及び「MOISTUR」の文字は、その使用効果を表示しているものと把握し、「DROP」及び「ドロップ」の文字を自他商品の識別標識と認識して、これらより生ずる「ドロップ」の称呼によって取引に当たる場合が決して少なくないというべきである(ちなみに、「MOISTURE」「モイスチャー」あるいは「モイスチュア」を自他商品の識別力なしと認定した審査、審決例については、甲第9号証〜同第12号証)。

したがって、本件商標は、「ドロップ」の称呼も生ずるものといわざるを得ない。

一方、引用商標から「ドロップ」の称呼の生ずることは、明らかである。

また、本件商標並びに引用商標の指定商品中の「化粧品,せっけん類」に、「保湿効果を有する化粧品・せっけん類」が含まれていることも明らかである。

以上によれば、本件商標は、引用商標とその称呼を同じくする類似のものであって、引用商標の指定商品と同一の商品について使用するものである。

したがって、本件商標は、その指定商品中の「化粧品,せっけん類」との関係においては、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、上記商品についての登録は、商標法第46条の規定により、無効とされるべきである。

3 商標法第4条第1項第16号について

美しくて健康な肌や頭髪でいるためには、これらに常に一定の水分(湿り気)を保たせることが重要とされていて、これを反映して、保湿効果を有する化粧品やせっけん類が取引されていて、これら商品にその使用効果を表示するものとして、「モイスチャー」あるいはこれと実体的に同一のものというべき「モイスチユア」の文字が広く一般に使用されていることは、前記したとおりである。

してみると、「モイスチャー」とこれに通ずる「MOISTURE」と見誤り易い「MOISTUR」の文字を含む本件商標が、その指定商品のうちの「保湿効果を有する化粧品・せっけん類」以外の化粧品、せっけん類について使用されたときは、これに接する取引者、需要者は、その化粧品、せっけん類が保湿効果を有しないものであるのに拘らず保湿効果があるものではないかと、その品質を誤認するおそれがあるといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものというべきであるから、その指定商品中の「化粧品,せっけん類」についての登録は、商標法第46条の規定により、無効とされるべきである。

4 答弁に対する弁駁

(1)商標が、その構成中に当該商標を使用する商品の品質、用途(以下「品質等」という。)を表す文字を含むものであっても、当該商標が、その構成及び全体の称呼も簡潔なものである結果(例えば、商品の品質を表す文字の冒頭あるいは末尾に一字を加えてなるようなもの)、当該商標中に存する品質等を表す文字の意味は、これを看取させないまでに全体の中に埋没融合するに至っているとか、当該商標が、その構成中に存する品質等を表す文字の意味とは関係のない一語を形成していて、その語が一般に親しまれているものであるといった特段の事情があるものである場合には、当該商標は、一連一体のものというべきことに請求人も異存はない。

しかしながら、商標が上記のようないずれの事情にもないものである場合には、当該商標が例え一連一体の態様で表されているものであっても、当該商標中に存する当該商標を使用する商品の品質等を表す文字は、なお当該商品の品質等を表示するものというべきである。

なぜならば、このように解さない場合には、当該商標が他人の登録商標に商品の品質等を表す語を付加したものであっても、当該商標は、当該他人の登録商標と非類似のものとならざるを得ない結果、これが他人の登録商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであっても、その登録を認めざるを得ない結果となるところ、かかる事態は、登録商標の保護を欠く結果を招来させるからである。

(2)これを本件商標についてみると、本件商標中の「DROP」(ドロップ)は、「しずく」の意味の英語(外来語)として一般に知られているものであるから、本件商標は、この「DROP」(ドロップ)に「MOISTUR」(モイスチャー)の文字を冠してなるものと看取されるものである。

しかして、「MOISTURDROP」「モイスチャードロップ」の文字は、同じ書体で一体的に表されてはいるが、そうだからといって、その構成中の「モイスチャー」「MOISTUR」の文字の有する意味が、これを看取させないまでに全体の中に埋没融合するに至っているとか、これらが前記のごとく「しずく」の意味で一般に親しまれている「DROP」「ドロップ」の語とは関係のない一語を形成していて、かつ、これが一般に親しまれているといった特段の事情は、見出せない。

してみれば、「MOISTURDROP」と「モイスチャードロップ」の文字が、それぞれの構成においては一体のものであって、その称呼も左程冗長なものではないとしても、観念上は、なお「MOISTUR」と「DROP」、「モイスチャー」と「ドロップ」の文字よりなるものといわざるを得ず、他にこれらを常に一体不可分のものとしてのみに把握しなけれはならないとする特段の事情は見出せない。

しかるところ、「モイスチャー」及びこれと実質的に同一のものとみるべき「モイスチュア」の語が、「水分」「湿り気」を意味する英語として一般に親しまれているということができる「Moisture」に通ずるものであること、化粧品業界においては、肌や頭髪の水分(湿り気)を一定に保ったり、補給したりする化粧品が取り引きされていて、これら商品について、これらが肌や頭髪の水分を保ったり、補給するものであること(すなわち、「保湿効果を有するものであること」)を表示するものとして、広く一般に使用されているものであること、及び本件商標中の「MOISTUR」の文字が、「水分」「湿り気」を意味する英語「MOISTURE」とは、その末尾において「E」の有無の差異がありながらも、なお「MOISTURE」を表記したものと看取され(本件商標に対する異議申立の決定も、これを認めている。)、ひいて、これが保湿効果を有する化粧品の品質を表示するものと理解されるとみることが相当であることは、審判請求書に添付の甲第4号証〜同第12号証からみて明らかである。

以上のような事実及び事情に照らすと、本件商標がその指定商品中の保湿効果を有する化粧品やせっけん類について使用されたとき、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「MOISTUR」及び「モイスチャー」の文字はその商品の品質(保湿効果を有するものであるという)を表示しているものと理解し、「DROP」及び「ドロップ」の文字を自他商品の識別標識と認識して、これらより生する「ドロップ」の称呼、「しずく」の観念によって取引に当る場合が決して少なくないとみるのが相当である。

ところで、被請求人は、本件審判の請求理由と全く同じ理由でなされた異議申立(平成10年異議第90479号)は成り立たないとされているのであるから、本件審判請求も成り立たないことは明らかであるとしているが、請求人は、上記の異議の決定に承服し難いため本件審判の請求に及んだのであり、異議申立が成立しなかったからといって、これが即本件審判請求が成り立ち得ないとされる理由とならないことは、無効審判制度の趣旨からみて明らかである。

また、被請求人は、本件審判請求は成り立たないものであるとする本件の答弁理由に、前記異議決定の理由を援用するとしているから(答弁書4頁の6行及び7行)、本件における被請求人の主張は、前記の異議決定の「当審の判断」でいう理由と同一の理由ということに帰着する。

(3)そうすると、被請求人の主張理由(すなわち、異議決定における「当審の判断」でいう理由)は、

a.本件商標は、その構成文字が同じ書体で一体的に表されている

b.本件商標より生ずる称呼は格別冗長なものでなく、無理なく一連に称 呼し得る

c.本件商標中の「MOISTUR」「モイスチャー」が「湿気、湿り、潤い、水分、水蒸気」等の意味の英語「MOISTURE」を看取させるとしても

d.それをもって、直ちに特定の商品の用途、品質等を具体的に表示するものとは認め難い

e.したがって、本件商標は、全体として一種の造語を表したものと認識される

ということに帰着することは明らかである。

しかしながら、本件商標がa及びbの要件を充たしているとしても、それは外観上及び称呼上のことだけであり、これらを充たしてさえいれば、これのみをもって、本件商標を一連不可分のものであるといえないことは明らかである。

なぜならば、本件商標はa及びbの要件を充たしているから一連不可分のものとみるべきであるとすると、例えば、本件商標が、他人の登録商標と本件商標を使用する商品の普通名称や品質を表示する文字よりなるものであっても、本件商標は、当該他人の登録商標と非類似のものということに帰着し、これが登録されるという事態を招来させるからである。

しかして、このような事態が、登録商標の保護を欠く結果となることは、前記したとおりである。

したがって、本件商標を一連不可分のものとするには、これがa及びbの要件を充たしているだけでは足りず、これに加えて、観念上もこれを一連不可分のものとみるのを相当とする特段の事情が、本件商標に存することが求められるというべきであるところ、本件商標にかかる特段の事情が存しないことは、前記のとおりである。

しかるところ、被請求人は、「MOISTUR」及び「モイスチャー」の文字を「湿気、湿り、潤い、水分、水蒸気」の意味の英語「MOISTURE」を看取させるものとしながらも、これをもって直ちに特定の商品の用途、品質を具体的に表示するものとは認め難いから、全体として一種の造語であるとみるのが相当であるとしているが、ここでいう特定の商品とは、どこまで特定されていれば特定の商品といえるか、商品の具体的な品質とはいかなる品質をいうのかも明らかにするところがない。

(4)この点に関し、請求人は、化粧品業界においては

a.肌や頭髪の水分を一定に保ったり補給したりする保湿効果を有する化粧品やせつけん類が取引されていること

b.これら商品にその品質を表示するものとして、「モイスチャー」あるいは「モイスチュア」の文字が広く一般に使用されていることを甲第4号証〜同第12号証で立証しているところ、上記でいう「保湿効果を有する化粧品やせっけ類」は、特定の商品というべき商品であり、これら商品について保湿効果を有するものであることを表示するものとして広く一般に使用されている「モイスチャー」及び「MOISTUR」(被請求人が、これも「MOISTURE」を看取させるものであることを認めているのは、前記のとおりである。)の文字を使用することは、前記商品の品質を表示するものとして、これ以上具体的には表示しようがない程に具体的なものである。

しかるところ、被請求人は、これを特定の商品の具体的な品質を表示するものではないとするのであるから、その具体的な理由を示すべきであるところ、これを示すところがない。

してみれは、本件商標は全体として一連不可分のものであるとする被請求人の主張は、その根拠のない失当というべきものであるから、理由がないものといわざるを得ない。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出している。

答弁の理由

1 請求人が本審判請求において主張しているところは、請求人が平成10年3月5日に本件商標登録に対し申立てた異議申立の理由と全く同じである。

同異議申立に対しては、本件商標登録を維持するとの平成10年7月1日付決定が下されている(乙第1号証)。同決定の理由とするところは、全く正しいものであるから、本審判請求についても請求人の主張が成り立たないことは、明らかである。

2 請求人の主張には、本件商標から、看者は「DROP」および「ドロップ」の文字を自他商品の識別標識として認識する、という判断が前提とされている。

しかし、せっけん類、化粧品を指定商品に含む登録商標の中には、「ドロップ」または「DROP」の文字を含む商標が極めて多数ある。例えば、せっけん類または化粧品について、「ドロップ」または「DROP」の文字を含む商標を市井のデータベースである「BRANDY」から抽出すると、多数の商標権者の間に旧第4類のものが52件、旧第3類のものが22件、現第3類のものが28件登録されている(乙第2号証)。これから明らかなとおり、「ドロップ」または「DROP」の文字の前または後に種々の文字を配した商標が多数登録されており、それぞれが自他商品の識別の機能を果たしているのであるから、「MOISTURDROP」および「モイスチャードロップ」を同じ大きさをもって一連に書してなる本件商標から単なる「ドロップ」または「DROP」の称呼、観念は生じる筈はないものであって、本件商標に対する異議決定に見る判断は何ら誤っていないものである。したがって、被請求人は、同異議決定の理由を本答弁書に援用するものである。

以上のとおり、本件審判請求の理由とするところは、異議決定において見るとおり誤っている。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、上記の構成のものであるところ、上段の「MOISTURDROP」の欧文字と下段の「モイスチャードロップ」の片仮名文字は、それぞれ同じ書体をもって一体に表されており、これより生ずると認められる「モイスチャードロップ」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。

また、本件商標は、上記のとおり、上段の「MOISTURDROP」の欧文字と下段の「モイスチャードロップ」の片仮名文字がそれぞれ同じ書体をもって一体に表されているところから、上段の「MOISTURDROP」の欧文字と下段の「モイスチャードロップ」の片仮名文字がそれぞれ一体不可分のものとして取引者、需要者に看取されるものと認められ、このような文字で表される成語は見あたらないから、特定の観念を生じ得ない一種の造語よりなる商標とみるのが相当である。なお、本件商標は、上段の欧文字の読み方を下段の片仮名文字が示している商標とみられるものである。

この点に関して請求人は、本件商標中の「MOISTUR」及び「モイスチャー」の文字は、「水分」「湿り気」を意味する英語として一般に親しまれている「Moisture」に通ずる語であって、化粧品業界においては化粧品やせっけん類について、これらの商品が肌や頭髪の水分(湿り気)を保ったり、補給する効果を有するものであること(すなわち、保湿効果を有するものであること)を表示するものとして、「モイスチャー」及びこれと実質同一の語とみるべき「モイスチュア」が広く一般に使用されている実情があるから、その指定商品との関係においては自他商品識別力を有しないものであり、その結果、本件商標中の「DROP」「ドロップ」の文字部分を自他商品の識別標識として認識し、「ドロップ」の称呼をもって取引にあたる場合も少なくないものと主張する。

しかしながら、化粧品業界において、「モイスチャー」及び「モイスチュア」の語が、請求人が主張するように化粧品やせっけん類の効能を示す語として使用されているとしても、本件商標における「MOISTURDROP」及び「モイスチャードロップ」の文字は、上記認定のとおり、それぞれ一体不可分のものとして取引者、需要者に看取されるものと認められるから、本件商標は、その「DROP」「ドロップ」の文字部分のみを称呼して取引に資される場合が少なくないとすべき相当の理由はないものであり、この点の請求人の主張は採用できない。

なお、商標が、複数の語の組合せよりなる場合、その商標中の特定の語が、取引者、需要者に自他商品の識別標識として認識されることがあるか否かについては、組合せに係る語が商品又は役務との関係において識別力を有する語であるか否か、組合せに係る語が互いに外観上分離して看取される表示態様であるか否か、組合せに係る語が既成語かどうか、組み合わせた語全体として自然な意味合いを生ずるか、組合せに係る語のいずれかが周知の商標であるか等の関係する要素を総合的に考慮して個別に判断されるべきものであり、組合せに係る語の一方が、品質、効能表示等として使用されていることをもって、単純にこれ以外の語が識別標識として認識されるものと形式的、機械的に判断することはできない。

そうとすれば、本件商標は、「モイスチャードロップ」とのみ称呼されるものとみるのが相当であるから、「ドロップ」及び「DOROP」の文字よりなり、「ドロップ」と称呼されることが明らかな引用商標とは、その称呼の音構成において明確な差違を有するものであって、これと称呼上類似するものでない。

また、本件商標は、上記のとおり特定の観念を生じ得ない一種の造語よりなる商標というべきであるから、引用商標と観念を比較し得ないものであり、かつ、それぞれの構成よりみて外観上も区別し得るものである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、観念及び外観上の何れの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

2 商標法第4条第1項第16号について

請求人は、「保湿効果を有する化粧品やせっけん類が取引されていて、これら商品にその使用効果を表示するものとして、『モイスチャー』あるいは『モイスチュア』の文字が広く一般に使用されている実情がある。そして、本件商標は『モイスチャー』とこれに通ずる『MOISTURE』と見誤り易い『MOISTUR』の文字を含むものであるから、これをその指定商品中の『保湿効果を有する化粧品・せっけん類』以外の化粧品、せっけん類について使用したときは、これに接する取引者、需要者は、その化粧品、せっけん類が保湿効果を有しないものであるのに拘らず保湿効果があるものではないかと、その品質を誤認するおそれがあるといわざるを得ない。」と主張する。

しかしながら、本件商標は、上記のとおり特定の観念を生じ得ない一種の造語よりなる商標というべきであるから、その構成中の「MOISTUR」及び「モイスチャー」の文字より、商品の具体的な品質を想起するとまでは断定できないものであって、その指定商品中の「保湿効果を有する化粧品・せっけん類」以外の化粧品、せっけん類について使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれはないものと認めるのが相当である。

3 したがって、本件商標は、本件請求に係る指定商品について、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反して登録されたものでないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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