結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35565(T2000−35565/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4112965号商標(以下「本件商標」という。)は、「ぬれ鬼」の文字を横書きしてなり、平成8年4月25日に登録出願され、第30類「菓子,パン」を指定商品として、同10年2月13日に設定登録されたものである。
請求人は、以下の3件の登録商標を引用しており、いずれも現に有効に存続している。
(a)昭和38年10月21日に登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同42年12月19日に設定登録された登録第765003号商標(以下「引用商標1」という。)
(b)昭和51年12月8日に登録出願され、「ぬれ」の文字を縦書きしてなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同57年4月30日に設定登録された登録第1510594号商標(以下「引用商標2」という。)
(c)平成7年4月17日に登録出願され、「ぬれ甘納豆」の文字を横書きしてなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同9年8月29日に設定登録された登録第3342511号商標(以下「引用商標3」という。)
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)利害関係
請求人の所有する引用各商標は、取引者、需要者の間に周知著名な商標となっているから、請求人以外の者が商品「甘納豆」及びこれに類似する菓子及びパンに「ぬれ」の文字及び「ぬれ」の文字を含む商標を使用することは、請求人の引用各商標に蓄積された信用にただ乗りするばかりでなく、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、請求人は本件審判請求について重大な利害関係を有する。
(2)本件商標と引用各商標との類否について
(ア)引用各商標の構成及び称呼並びに観念について
引用商標1は、平仮名「ぬれ」の文字と「甘なっと」の文字からなり、「甘なっと」の文字は指定商品「甘納豆」を指称するものと認められるから、要部は「ぬれ」の文字部分にあるといえる。
したがって、引用商標1からは、「ヌレ」の称呼を生ずるとともに「ヌレアマナット」の称呼をも生じ、「ぬれ印の甘なっとう」なる観念が生じる。
引用商標2は、平仮名「ぬれ」の文字からなり、これより「ヌレ」の称呼を生ずるが特定の観念は生じない。
引用商標3は、平仮名「ぬれ」の文字と漢字「甘納豆」の文字とを一連に表示してなるが、「甘納豆」の文字部分は指定商品名であるから、要部は「ぬれ」の文字部分にあると認められる。
したがって、引用商標3からは、「ヌレ」の称呼を生ずるとともに「ヌレアマナットウ」の称呼をも生じ、「ぬれ印の甘納豆」なる観念が生じる。
(イ)本件商標及び引用各商標の自他商品の識別機能を有する部分の「ぬれ」の観念について
引用各商標の要部は既に述べたように「ぬれ」の文字部分にある。
平仮名「ぬれ」そのものには特定された観念はないが、これに相応する漢字には「濡れ」「塗れ」等がある。しかし「濡れ」又は「塗れ」の文字は、その前後にある言葉が付加されて「・・・塗れ」又は「塗れ・・・」或いは「・・・濡れ」又は「濡れ・・・」のように表現された場合、初めて特定の観念が生じる。
単に「ぬれ」のみでは観念を特定することは困難である。何かに「ぬれ」る対象が指定商品「菓子、パン」であるとすれば、「濡れた菓子(水等に)」なるものは未だ存在しない。また、菓子、パンにおいて多湿に仕上げるものは枚挙に暇のない程存在するが、多湿のものを「ぬれ」「濡れ」と称することのないことも当業界における実情である。すなわち多湿であっても、ぬれている物ではないからである。
したがって、「ぬれ」なる語は、「菓子、パン」に使用するときは自他商品の識別標識としての機能を有するものである。
(ウ)本件商標と引用各商標との比較について
本件商標は、前記したとおりの構成よりなるところ、「ぬれ」の文字と「鬼」の文字が結合された「ぬれ鬼」からは、特定の観念が生じないから、観念上「ぬれ」の文字部分と「鬼」の文字部分とが分離して認識され得る商標であり、又、外観上も「ぬれ」(平仮名)の部分と「鬼」(漢字)の部分においても観者をして分離して認識せしめ得る商標である。
してみれば、本件商標は、商標全体から「ヌレオニ」の称呼を生ずるほか「オニ」の称呼、「ヌレ」の称呼をも生ずるものと認められる。
したがって、本件商標と引用各商標とは、商標全体の外観において相違するところがあるが、その要部「ぬれ」において外観及び称呼を同一にする類似する商標といわざるを得ず、指定商品は、ともに菓子及びパンの範疇に属し、商品中、甘納豆において抵触する商品であり、その他の指定商品において類似する商品である。
(3)本件商標の出所の混同について
引用商標1は、使用開始から既に50年以上使用しており、広告宣伝をしてきた結果、取引者・需要者間に極めて周知著名な商標となっている。本件商標は、周知著名な引用各商標と要部を同一にし、その指定商品も類似するものであるから、本件商標は、引用各商標の著名性にただ乗りする行為であり、本件商標をその指定商品について使用するときは引用各商標と商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
(4)結び
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第11号証を提出した。
(1)広辞苑には「心鬼」「神鬼」「幽鬼」等、多くの「〇〇鬼」の例が掲載されており、親しまれている例としては「赤鬼」「青鬼」等が認められる。
また、平仮名「ぬれ」からは、通常「濡れ」「塗れ」が認識されるが、「ぬれ」の後に語句(言葉)が連続する場合には、「塗れ」は命令形であるから後方に文字が連続する一連の語句の解釈としては不自然であって、「濡れ」と解釈されるのが自然である。そして、「ぬれ(濡れ)〇〇」なる語句について考察すると、請求人提示のとおり「濡色」「濡れ髪」「ぬれぎぬ」「濡れ鼠」のように「水に濡れること」を直接意味する語句のほか、色事や比喩として使用されている。
してみれば、本件商標は、「ヌレオニ」の称呼並びに「(水に)濡れた鬼」の如き観念が認められるのであり、商標全体が冗長とはいえず、「ヌレオニ」と一連に称呼するのに全く不都合がない。逆に、「ぬれ鬼」の商標をわざわざ「ヌレ」「ヌレジルシ」「オニ」「オニジルシ」と称呼、観念すること自体が不自然である。
したがって、本件商標と引用各商標とは類似しない。
(2)請求人の業務の表示としての「ぬれ」「ヌレ」の語句に著名性は認められない。「ぬれ」の表示を単独で使用している事実並びに、単独使用での著名性は全く立証されていない。単に「ぬれ甘なつと」の表示に著名性が憶測されるだけである。そして、「ぬれ」「ヌレ」の語句は、一部の米菓メ一カーに「多湿に仕上げた米菓」の表現として使用されている現実から、当該商品に関する業務表示性(商品出所表示性)は認められない。
したがって、本件商標の使用によって、請求人の業務と混同が生ずることはない。
(1)本件商標と引用各商標との類否について
本件商標は、前記したとおりの構成よりなるところ、「ぬれ」の文字と「鬼」の文字とは外観上纏まりよく一体的に構成されているものである。
しかして、その構成中、「ぬれ」の文字(語)からは、「濡れ」「塗れ」の漢字を想起し得るが、これらの語の後に他の文字が結合される場合は、「塗れ」の語が「塗る」の語の命令形であることから、他の語との結合は不自然であり、この場合は、「濡れ」の漢字を平仮名表記したものと解するのが自然である。そして、「ぬれ(濡れ)」の語は、「濡色」「濡縁」「濡髪」「濡鼠」の用例にみられるように、「水に濡れること、水に濡れた様」を表す熟語を形成する語として一般に知られているものである。
そうとすれば、「ぬれ」の語が単独で使用された場合には、それ自体として、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るとしても、他の語と結合して用いられた場合には、「濡れた様の〇〇」の如き一連の意味合いを表す熟語として、理解・認識されるものとみるのが自然である。
また、「鬼」の語については、「赤鬼」「青鬼」「神鬼」「幽鬼」等の如く「鬼」の語の前にこれを修飾する語を冠し、「鬼」の状態あるいは比喩的な意味合いを表す用例を数多く見受けることができる。
してみれば、本件商標は、特定の意味合いを表す熟語ではないとしても、「ぬれ」の語と「鬼」の語との結び付きに不自然さはなく、「(雨、水に)濡れた鬼」程度の意味合いを容易に看取させる一連一体の造語とみるのが相当であり、他に構成中の「ぬれ」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見い出せない。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ヌレオニ」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
他方、引用各商標は、別掲あるいは上記のとおりの構成よりなるものであるから、その構成文字に相応して、引用商標1からは「ヌレアマナット」、引用商標2からは「ヌレ」、そして、引用商標3からは「ヌレアマナットウ」あるいは単に「ヌレ」の各称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、その音構成において明らかな差異を有するものであるから、称呼において類似するものとはいえない。
また、本件商標は、一連一体の構成のものとして認識されるものであるから、引用各商標とは、その外観においても、十分区別し得る差異を有するものであり、観念についても類似するところは見当たらない。
したがって、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない商標である。
(2)本件商標の出所の混同のおそれの有無について
請求人の提出に係る甲第4号証(新版日本有名商標録)、同第8号証(全国観光土産品連盟及び日本商工会議所からの推奨状)及び同第9号証(2000年7月29日付アサヒタウンズ)によれば、引用商標1の「ぬれ甘なつと」の商標は、使用開始から50年以上にわたり、商品「甘納豆」に使用され、取引者・需要者間において、広く知られていたものであることを認めることができる。
この点について、請求人は、「ぬれ甘なつと」の著名性から、「ぬれ」の文字部分のみについても著名性があるかの如く主張しているが、取引者・需要者間において広く知られていたのは、専ら、「ぬれ甘なつと」あるいは「ぬれ甘なっと」の商標であり、これらの商標が「ぬれ」とも略称され、「ぬれ」の文字部分のみをもって著名になっていたものと認めるに足る証拠はない。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、上記のとおり、互いに区別することができる明らかに別異の商標と認められるものであるから、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用各商標を連想又は想起させるものとは認められず、他に、両商標間に誤認混同を生じさせる事由は認められない。
したがって、本件商標は、請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
(3)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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