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Trademark Appeal Case

ぬれの識別力と結合商標の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35568(T2000−35568/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4309508号商標(以下「本件商標」という。)は、「ぬれ小町」の文字を横書きしてなり、平成10年6月15日に登録出願され、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同11年8月27日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標

請求人は、以下の3件の登録商標を引用しており、いずれも現に有効に存続している。

(a)昭和38年10月21日に登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同42年12月19日に設定登録された登録第765003号商標(以下「引用商標1」という。)

(b)昭和51年12月8日に登録出願され、「ぬれ」の文字を縦書きしてなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同57年4月30日に設定登録された登録第1510594号商標(以下「引用商標2」という。)

(c)平成7年4月17日に登録出願され、「ぬれ甘納豆」の文字を横書きしてなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同9年8月29日に設定登録された登録第3342511号商標(以下「引用商標3」という。)

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第12号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)利害関係

請求人の所有する引用各商標は、取引者、需要者の間に周知著名な商標となっているから、請求人以外の者が商品「甘納豆」及びこれに類似する菓子及びパンに「ぬれ」の文字及び「ぬれ」の文字を含む商標を使用することは、請求人の引用各商標に蓄積された信用にただ乗りするばかりでなく、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、請求人は本件審判請求について重大な利害関係を有する。

(2)本件商標と引用各商標との類否について

(ア)引用各商標の構成及び称呼並びに観念について

引用商標1は、平仮名「ぬれ」の文字と「甘なっと」の文字からなり、「甘なっと」の文字は指定商品「甘納豆」を指称するものと認められるから、要部は「ぬれ」の文字部分にあるといえる。

したがって、引用商標1からは、「ヌレ」の称呼を生ずるとともに「ヌレアマナット」の称呼をも生じ、「ぬれ印の甘なっとう」なる観念が生じる。

引用商標2は、平仮名「ぬれ」の文字からなり、これより「ヌレ」の称呼を生ずるが特定の観念は生じない。

引用商標3は、平仮名「ぬれ」の文字と漢字「甘納豆」の文字とを一連に表示してなるが、「甘納豆」の文字部分は指定商品名であるから、要部は「ぬれ」の文字部分にあると認められる。

したがって、引用商標3からは、「ヌレ」の称呼を生ずるとともに「ヌレアマナットウ」の称呼をも生じ、「ぬれ印の甘納豆」なる観念が生じる。

(イ)本件商標及び引用各商標の自他商品の識別機能を有する部分の「ぬれ」の観念について

引用各商標の要部は既に述べたように「ぬれ」の文字部分にある。

平仮名「ぬれ」そのものには特定された観念はないが、これに相応する漢字には「濡れ」「塗れ」等がある。しかし「濡れ」又は「塗れ」の文字は、その前後にある言葉が付加されて「・・・塗れ」又は「塗れ・・・」或いは「・・・濡れ」又は「濡れ・・・」のように表現された場合、初めて特定の観念が生じる。

単に「ぬれ」のみでは観念を特定することは困難である。何かに「ぬれ」る対象が指定商品「菓子、パン」であるとすれば、「濡れた菓子(水等に)」なるものは未だ存在しない。また、菓子、パンにおいて多湿に仕上げるものは枚挙に暇のない程存在するが、多湿のものを「ぬれ」「濡れ」と称することのないことも当業界における実情である。すなわち多湿であっても、ぬれている物ではないからである。

したがって、「ぬれ」なる語は、「菓子、パン」に使用するときは自他商品の識別標識としての機能を有するものである。

(ウ)本件商標と引用各商標との比較について

本件商標は、前記したとおりの構成よりなるところ、「ぬれ」の文字と「小町」の文字が結合された「ぬれ小町」からは、特定の観念が生じないから、観念上「ぬれ」の文字部分と「小町」の文字部分とが分離して認識され得る商標であり、又、外観上も「ぬれ」(平仮名)の部分と「小町」(漢字)の部分においても観者をして分離して認識せしめ得る商標である。

してみれば、本件商標は、商標全体から「ヌレコマチ」の称呼を生ずるほか「コマチ」の称呼、「ヌレ」の称呼をも生ずるものと認められる。

したがって、本件商標と引用各商標とは、商標全体の外観において相違するところがあるが、その要部「ぬれ」において外観及び称呼を同一にする類似する商標といわざるを得ず、指定商品は、ともに菓子及びパンの範疇に属し、商品中、甘納豆において抵触する商品であり、その他の指定商品において類似する商品である。

(3)本件商標の出所の混同について

引用商標1は、使用開始から既に50年以上使用しており、広告宣伝をしてきた結果、取引者・需要者間に極めて周知著名な商標となっている。本件商標は、周知著名な引用各商標と要部を同一にし、その指定商品も類似するものであるから、本件商標は、引用各商標の著名性にただ乗りする行為であり、本件商標をその指定商品について使用するときは引用各商標と商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。

(4)結び

本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べている。

(1)請求人が長年使用しているとする引用商標1は、「ぬれ」と「甘なつと」を独特の草書体で、同大に、2段に縦書きした商標であり、甲号各証を見ても、一貫して「ぬれ」と「甘なつと」を一体不可分の形態で使用していることは明らかである。しかも、これらはいずれも商品「甘納豆」に使用されているものである。してみると、引用商標1は、仮に、それが周知商標であったとしても、「ぬれ」と「甘なつと」の文字が一体不可分に結び付いた「ぬれ甘なつと」の商標であり、しかも商標構成中に「甘なつと」の文字が含まれていることから、「甘納豆」に限定された商品についてのみ周知性を有するものである。したがって、「ぬれ」の文字が独立して周知性を有しているものではなく、「ぬれ」の文字を含む商標がすべて「ぬれ甘なつと」と誤認混同を生じるとする請求人の主張は何ら根拠がなく、失当である。

一方、本件商標は、「ぬれ小町」の文字が活字体で同大かつ一連に横書きされたものであり、「ぬれ」と「甘なつと」が一体不可分に使用される引用商標1(請求人が周知商標と主張する商標)とは、外観、称呼、観念とも明確に区別することができ、仮に、甘納豆を含む菓子類に使用したとしても、需要者をして何ら誤認混同を生じさせるものではない。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

また、請求人が使用する引用商標1は、「甘納豆」以外の他の非類似商品に使用しても誤認混同を生じるほどには著名性を獲得しているのではなく、それを示す証拠も提示されていない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。

(2)本件商標と引用商標の類否判断について

(ア)引用商標1「ぬれ甘なつと」との対比

引用商標1は、「ぬれ」と「甘なつと」が二列に縦書きされているものの、これらを同書体同大で、しかも互いに密接させて一連の流れで並記しているものであるから、全体的に観察しても「ぬれ」と「甘なつと」は緊密に結び付いた一体不可分の関係にあり、ことさらこれを分離して観察すべきものではない。したがって、引用商標1は「ヌレ」と「アマナット」が独立して別々に称呼されることはなく、「ヌレアマナット」と一連に称呼されるのが自然である。また引用商標1「ぬれ甘なつと」は、指定商品が「甘納豆」であることと相俟って、”表面が濡れてツヤがあるような甘納豆”を連想するものである。

これに対し、本件商標は「ぬれ小町」の文字を活字体で一連に同大に表わしたものであり、「ヌレコマチ」の一連の称呼が生じるものである。本件商標は、平仮名「ぬれ」と漢字「小町」から構成されているが、全体的に両者は一体不可分に結び付いており、「ぬれ」と「小町」が別々に認識され、称呼されることはない。したがって、本件商標と引用商標1は、構成文字及びその形態が相違するため、外観上非類似であり、また「ヌレコマチ」と「ヌレアマナット」では、これを一連に称呼した場合、発音数、音感等が相違するため、称呼上も非類似である。

さらに、本件商標の「ぬれ小町」は、「小町」の文字から、請求人が主張するように、小野小町に代表される美しい娘を連想し、これに「ぬれ」の文字が一体結合することにより、”小雨等に濡れた美しい娘”を連想するものである。

一方、引用商標1の「ぬれ甘なつと」は、上述のように ”表面が濡れてツヤがあるような甘納豆”を連想するものであり、両商標は観念上も非類似である。

以上のように、本件商標と引用商標1「ぬれ甘なつと」は、外観、称呼、観念ともに非類似であり、何ら出所の混同を生じるものではない。したがって、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(イ)引用商標3「ぬれ甘納豆」との対比

引用商標3は、「ぬれ甘納豆」の文字をゴシック体で一連に表記したものであり、「ヌレアマナットウ」の一連の称呼を生じるものである。また、上述の引用商標1の「ぬれ甘なつと」と同じように ”表面が濡れてツヤがあるような甘納豆”の観念を生じるものである。

本件商標と引用商標3を比較すると、「ぬれ小町」と「ぬれ甘納豆」では構成文字が相違し、発音的にも「ヌレコマチ」と「ヌレアマナットウ」では音数、音感等が相違するため、全体的に外観、称呼が非類似である。また、上述のように両商標からは別々の意味合いを想起するものであり、観念的にも非類似である。

したがって、本件商標は引用商標3と非類似であり、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(ウ)引用商標2「ぬれ」との対比

引用商標2は、平仮名「ぬれ」を筆記体で縦書きして成り、「ヌレ」の称呼が生じる。これに対し、本件商標は、上述したように「ぬれ小町」の文字が一体不可分に表記され、「ヌレコマチ」の一連の称呼が生じるものであり、「ぬれ」の文字、及び「ヌレ」の称呼だけが独立して認識され、称呼されるようなことはない。したがって、本件商標と引用商標2は外観、称呼、観念とも非類似であり、両商標は何ら出所の混同を生じるものではない。したがって、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(3)結び

以上のような理由から、本件商標と上記各引用商標は非類似であり、仮に、引用商標1「ぬれ甘なつと」が周知商標であったとしても、本件商標と誤認混同を生じるものではなく、ましてや「ぬれ甘なつと」が指定商品を離れた非類似商品にまで著名性を有するものではない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、第11号及び第15号のいずれにも該当しない。

5 当審の判断

(1)本件商標と引用各商標との類否について

本件商標は、前記したとおりの構成よりなるところ、「ぬれ」の文字と「小町」の文字とは外観上纏まりよく一体的に構成されているものである。

しかして、その構成中、「ぬれ」の文字(語)からは、「濡れ」「塗れ」の漢字を想起し得るが、これらの語の後に他の文字が結合される場合は、「塗れ」の語が「塗る」の語の命令形であることから、他の語との結合は不自然であり、この場合は、「濡れ」の漢字を平仮名表記したものと解するのが自然である。そして、「ぬれ(濡れ)」の語は、「濡色」「濡縁」「濡髪」「濡鼠」の用例にみられるように、「水に濡れること、水に濡れた様」を表す熟語を形成する語として一般に知られているものである。

そうとすれば、「ぬれ」の語が単独で使用された場合には、それ自体として、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るとしても、他の語と結合して用いられた場合には、「濡れた様の〇〇」の如き一連の意味合いを表す熟語として、理解・認識されるものとみるのが自然である。

また、「小町」の語は、美人の代表とされた小野小町の再来の意で、「美しい娘、小町娘」を意味する用語として一般に知られるものである。

してみれば、本件商標は、特定の意味合いを表す熟語ではないとしても、「ぬれ」の語と「小町」の語との結び付きに不自然さはなく、「(雨、水に)濡れた美しい娘、小町娘」程度の意味合いを容易に看取させる一連一体の造語とみるのが相当であり、他に構成中の「ぬれ」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見い出せない。

したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ヌレコマチ」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。

他方、引用各商標は、別掲あるいは上記のとおりの構成よりなるものであるから、その構成文字に相応して、引用商標1からは「ヌレアマナット」、引用商標2からは「ヌレ」、そして、引用商標3からは「ヌレアマナットウ」あるいは単に「ヌレ」の各称呼を生ずるものである。

してみれば、本件商標と引用各商標とは、その音構成において明らかな差異を有するものであるから、称呼において類似するものとはいえない。

また、本件商標は、一連一体の構成のものとして認識されるものであるから、引用各商標とは、その外観においても、十分区別し得る差異を有するものであり、観念についても類似するところは見当たらない。

したがって、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない商標である。

(2)本件商標の出所の混同のおそれの有無について

請求人の提出に係る甲第4号証(新版日本有名商標録)、同第8号証(全国観光土産品連盟及び日本商工会議所からの推奨状)及び同第9号証(2000年7月29日付アサヒタウンズ)によれば、引用商標1の「ぬれ甘なつと」の商標は、使用開始から50年以上にわたり、商品「甘納豆」に使用され、取引者・需要者間において、広く知られていたものであることを認めることができる。

この点について、請求人は、「ぬれ甘なつと」の著名性から、「ぬれ」の文字部分のみについても著名性があるかの如く主張しているが、取引者・需要者間において広く知られていたのは、専ら、「ぬれ甘なつと」あるいは「ぬれ甘なっと」の商標であり、これらの商標が「ぬれ」とも略称され、「ぬれ」の文字部分のみをもって著名になっていたものと認めるに足る証拠はない。

してみれば、本件商標と引用各商標とは、上記のとおり、互いに区別することができる明らかに別異の商標と認められるものであるから、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用各商標を連想又は想起させるものとは認められず、他に、両商標間に誤認混同を生じさせる事由は認められない。

したがって、本件商標は、請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。

(3)結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。

よって、結論のとおり審決する。

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