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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35566(T2000−35566/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4129790号商標(以下「本件商標」という。)は、「ぬれかりん」の文字を縦書きしてなり、平成8年5月31日に登録出願され、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同10年3月27日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標

請求人は、以下の3件の登録商標を引用しており、いずれも現に有効に存続している。

(a)昭和38年10月21日に登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同42年12月19日に設定登録された登録第765003号商標(以下「引用商標1」という。)

(b)昭和51年12月8日に登録出願され、「ぬれ」の文字を縦書きしてなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同57年4月30日に設定登録された登録第1510594号商標(以下「引用商標2」という。)

(c)平成7年4月17日に登録出願され、「ぬれ甘納豆」の文字を横書きしてなり、第30類「甘納豆」を指定商品として、同9年8月29日に設定登録された登録第3342511号商標(以下「引用商標3」という。)

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第14号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)利害関係

請求人の所有する引用各商標は、取引者、需要者の間に周知著名な商標となっているから、請求人以外の者が商品「甘納豆」及びこれに類似する菓子及びパンに「ぬれ」の文字及び「ぬれ」の文字を含む商標を使用することは、請求人の引用各商標に蓄積された信用にただ乗りするばかりでなく、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、請求人は本件審判請求について重大な利害関係を有する。

(2)本件商標と引用各商標との類否について

(ア)引用各商標の構成及び称呼並びに観念について

引用商標1は、平仮名「ぬれ」の文字と「甘なっと」の文字からなり、「甘なっと」の文字は指定商品「甘納豆」を指称するものと認められるから、要部は「ぬれ」の文字部分にあるといえる。

したがって、引用商標1からは、「ヌレ」の称呼を生ずるとともに「ヌレアマナット」の称呼をも生じ、「ぬれ印の甘なっとう」なる観念が生じる。

引用商標2は、平仮名「ぬれ」の文字からなり、これより「ヌレ」の称呼を生ずるが特定の観念は生じない。

引用商標3は、平仮名「ぬれ」の文字と漢字「甘納豆」の文字とを一連に表示してなるが、「甘納豆」の文字部分は指定商品名であるから、要部は「ぬれ」の文字部分にあると認められる。

したがって、引用商標3からは、「ヌレ」の称呼を生ずるとともに「ヌレアマナットウ」の称呼をも生じ、「ぬれ印の甘納豆」なる観念が生じる。

(イ)本件商標及び引用各商標の自他商品の識別機能を有する部分の「ぬれ」の観念について

引用各商標の要部は既に述べたように「ぬれ」の文字部分にある。

平仮名「ぬれ」そのものには特定された観念はないが、これに相応する漢字には「濡れ」「塗れ」等がある。しかし「濡れ」又は「塗れ」の文字は、その前後にある言葉が付加されて「・・・塗れ」又は「塗れ・・・」或いは「・・・濡れ」又は「濡れ・・・」のように表現された場合、初めて特定の観念が生じる。

単に「ぬれ」のみでは観念を特定することは困難である。何かに「ぬれ」る対象が指定商品「菓子、パン」であるとすれば、「濡れた菓子(水等に)」なるものは未だ存在しない。また、菓子、パンにおいて多湿に仕上げるものは枚挙に暇のない程存在するが、多湿のものを「ぬれ」「濡れ」と称することのないことも当業界における実情である。すなわち多湿であっても、ぬれている物ではないからである。

したがって、「ぬれ」なる語は、「菓子、パン」に使用するときは自他商品の識別標識としての機能を有するものである。

(ウ)本件商標と引用各商標との比較について

本件商標は、前記したとおりの構成よりなるところ、「かりん」は、指定商品との関係では、例えばかりん果実を材料とする砂糖漬菓子の材料、又は、かりんエキス入り咽飴等の材料を示すものであるから、指定商品の原材料を表示するものである。又「ぬれ」は、前記(イ)で述べたように特定の観念を有しない文字であり、当該文字と「かりん」の文字が結合された「ぬれかりん」からは、特定の観念が生じないから、観念上「ぬれ」の文字部分と「かりん」の文字部分とを分離して認識され得る商標である。

してみれば、本件商標は、商標全体から「ヌレカリン」の称呼を生ずるほか「カリン」の称呼、「ヌレ」の称呼をも生ずるものと認められる。

したがって、本件商標と引用各商標とは、商標全体の外観において相違するところがあるが、その要部「ぬれ」において外観及び称呼を同一にする類似する商標といわざるを得ず、指定商品は、ともに菓子及びパンの範疇に属し、商品中、甘納豆において抵触する商品であり、その他の指定商品において類似する商品である。

(3)本件商標の出所の混同について

引用商標1は、使用開始から既に50年以上使用しており、広告宣伝をしてきた結果、取引者・需要者間に極めて周知著名な商標となっている。本件商標は、周知著名な引用各商標と要部を同一にし、その指定商品も類似するものであるから、本件商標は、引用各商標の著名性にただ乗りする行為であり、本件商標をその指定商品について使用するときは引用各商標と商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。

(4)結び

本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由として、本件商標「ぬれかりん」が「ヌレ」と呼ばれることはない。また、花園饅頭の「ぬれ甘なっと」が「ぬれ」と呼ばれていることを聞いたこともない。したがって、「ぬれかりん」と「ぬれ甘なっと」が間違えられるようなことは絶対にない旨述べている。

5 当審の判断

(1)本件商標と引用各商標との類否について

本件商標は、前記したとおりの構成よりなるところ、構成各文字は外観上まとまりよく一体的に表現されていて、これより生ずると認められる「ヌレカリン」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。そして、たとえ、構成中の「かりん」の文字部分が「花梨(バラ科の落葉高木)」に通じるものであるとしても、かかる構成においては特定の商品の品質、原材料等を表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難いところであるから、むしろ構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である。

そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ヌレカリン」の称呼のみを生ずるものというべきである。

他方、引用各商標は、別掲あるいは上記のとおりの構成よりなるものであるから、その構成文字に相応して、引用商標1からは「ヌレアマナット」、引用商標2からは「ヌレ」、そして、引用商標3からは「ヌレアマナットウ」あるいは単に「ヌレ」の各称呼を生ずるものである。

してみれば、本件商標と引用各商標とは、その音構成において明らかな差異を有するものであるから、称呼において類似するものとはいえない。

また、本件商標は、一連一体の構成のものとして認識されるものであるから、引用各商標とは、その外観においても、十分区別し得る差異を有するものであり、観念についても類似するところは見当たらない。

したがって、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない商標である。

(2)本件商標の出所の混同のおそれの有無について

請求人の提出に係る甲第4号証(新版日本有名商標録)、同第8号証(全国観光土産品連盟及び日本商工会議所からの推奨状)及び同第9号証(2000年7月29日付アサヒタウンズ)によれば、引用商標1の「ぬれ甘なつと」の商標は、使用開始から50年以上にわたり、商品「甘納豆」に使用され、取引者・需要者間において、広く知られていたものであることを認めることができる。

この点について、請求人は、「ぬれ甘なつと」の著名性から、「ぬれ」の文字部分のみについても著名性があるかの如く主張しているが、取引者・需要者間において広く知られていたのは、専ら、「ぬれ甘なつと」あるいは「ぬれ甘なっと」の商標であり、これらの商標が「ぬれ」とも略称され、「ぬれ」の文字部分のみをもって著名になっていたものと認めるに足る証拠はない。

してみれば、本件商標と引用各商標とは、上記のとおり、互いに区別することができる明らかに別異の商標と認められるものであるから、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用各商標を連想又は想起させるものとは認められず、他に、両商標間に誤認混同を生じさせる事由は認められない。

したがって、本件商標は、請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。

(3)結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。

よって、結論のとおり審決する。

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