Trademark Appeal Case
商品形状の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年審判第9756号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて,キーホルダー」、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成9年4月9日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品中『貴金属製の靴飾り,かばん金具』等の形状そのものの範囲を出ないと認識するにすぎない立体的形状よりのみからなるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。なお、出願人が提出した参考資料1ないし3よりは、本願商標に文字が付された使用がされているから、本願商標そのものが使用されているとは認め難いものである。」旨認定して本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物のみならず、商品を構成する部品等商品の一部(以下「商品等」という。)の形状をも含むものといえるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感(見た目の美しさ)を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおり、美感等の向上のためにデザインされた(リボンを付けた)金具の形状の一形態を表したものとみるべきであって、これを本願指定商品中「貴金属製のかばん金具,同靴飾り」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状の一形態を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
請求人は、本願商標を貴金属製の靴飾りについても使用しており、請求人の独自の創作に係るデザイン性の高い立体商標であるから、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものではない旨主張する。
しかしながら、商品「かばん金具、靴飾り」は、かばん類、靴の部品として使用されるものであるところ、かばん類、靴等の商品はいわゆるファッション関連商品といわれ、デザイン、外観の美しさが需要者の購買、選択意欲に重要な影響を与えるものであって、商品のデザイン、形状は、その時々の流行、需要者の趣味、嗜好によって異なったものとなり、そして、変化してゆくものであるから、商品の一部を構成する部品の金具、飾り等についても、商品との調和、それ自体又は商品全体の美感の向上等のために、多種多様のデザイン、形状が一般に採択され、使用されているとみられる。
そうとすれば、角に丸みをもたせた全体としてやや横長の四角形の金具の両端にリボンを通し、折り返すことにより上下の膨らみをもたせて、リボンの結び目を作らないという本願商標を構成する特徴は、商品の美感等を効果的に際立たせるための範囲内のものというべきである。
したがって、本願商標が請求人独自の創作に係るものであるとしても、それのみをもって、自他商品の識別標識としての機能を有しているとはいえないものである。
(3)請求人は、本願商標は1978年に、日本を含む世界各国において発表したもので、「ヴァラ」の愛称を持つ著名商標であり、これを「履物、ベルト、革製品、かばん、袋物、被服」等に使用しており、その結果、本願商標は、請求人の商品の出所を示す表示として日本においても著名となっている。したがって、本願商標は、その出願時点においては既に需要者の間で広く知られ、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識することができるに至っている(商標法第3条第2項に該当する)旨主張し、原審において参考資料1ないし3(これらのうち一部の資料が甲号証と同一と認められる。)を、当審において甲第1号証ないし同第119号証(甲第120号証についての言及はあるが、該甲号証の提出はない)を、それぞれ提出している。
(a)そこで以下、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否か検討する。
イ)ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られると解されるところである。
しかして、商標は商品あるいはその包装等に自他商品の識別標識として使用されるものであるから、出願に係る商標が商品を構成する部品等、商品の一部の立体的形状のみからなる場合であっても、その使用に係る商品自体には、自他商品の識別標識として、該立体的形状以外の文字、図形等の平面標章が使用されているのが一般的であるといい得る。
したがって、出願に係る商標が商品の一部の立体的形状のみからなるものであるのに対し、実使用に係る商標が該立体的形状と文字、図形等の平面標章の場合には、両商標の構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
ただし、上記立体的形状よりなる商標と平面標章よりなる商標とが使用されている商品全体を観察した場合、使用に係る商品の一部を構成する立体的形状と出願に係る商標とが同一であり、その立体的形状が識別標識として機能するには、商品等に付された平面標章部分が不可欠であるとする理由が認められず、むしろ平面標章部分よりも立体的形状に施された変更、装飾等をもって需要者に強い印象、記憶を与えるものと認められ、かつ、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができるに至っていることの客観的な証拠(例えば、同業組合又は同業者等、第三者機関による証明)の提出があったときは、直ちに商標の構成要素が同一ではないことを理由として商標法第3条第2項の主張を退けるのではなく、提出された証拠から、使用に係る商標の立体的形状部分のみが独立して、自他商品を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて判断する必要があるというべきである。
ロ)そこで、まず、本願商標と使用に係る商標との同一性についてみるに、本願商標は、文字等の表示はなく、金具の中央部分の、一方のリボンを通す穴部分の辺からもう一方の同部分の辺までの長さ(以下「縦方向の長さ」という。)と、該穴部分を有しない辺からもう一方の同辺までの長さ(以下「横方向の長さ」という。)とがほぼ同じ長さであるとみられるものである。
これに対し、甲各号証等によれば、商品「靴類,かばん類,袋物(財布,キーケース等),キーホルダー」等について使用されているリボンを付けた金具(以下「リボン付きの金具」という。)は、金具の中央部分に「Ferragamo」の筆記体文字よりなる商標が使用され、かつ、該文字が表されている金具の中央部分の縦方向の長さは、横方向の長さに較べて短いものである。
また、上記の商品自体及びその広告には、「Salvatore Ferragamo」、「FERRAGAMO」の文字商標も使用されているところである。
そうとすれば、本願商標と使用に係る商標とは、「Ferragamo」、「FERRAGAMO」、「Salvatore Ferragamo」等の文字商標の有無の差異があること及び金具の中央部分の形状が異なるものであることから、同一の商標とは認められないものであるといわなければならない。
なお、請求人提出の全資料及び全証拠によっても、商品「靴類,かばん類,袋物,キーホルダー」以外の本願の指定商品について、本願商標と同一と認め得るリボン付きの金具が使用されている事実及び上記「靴類,かばん類」等に使用されているリボン付きの金具と同一と認め得る金具が使用されている事実については確認することができないところである。
ハ)請求人は、甲第50号証ないし同第119号証を挙げ、本願商標は「ヴァラ」(「ヴァラ」シリーズ)という愛称によっても、需要者に本願商標の立体的形状を想起させるに至っているものである旨主張する。
そこで、上記甲号証等をみるに、請求人の製造・販売に係る商品「婦人靴」は、世界のトップレディ、女優にも愛用され、デザインの良さ、はきやすさ、履き心地の良さ等から、わが国においても人気を有しており(甲第4号証、甲第11号証、甲第53号証ないし同第57号証、甲第65号証等参照)、その中でも「VARA(ヴァラ)」と称される「Ferragamo」の筆記体文字が表されたリボン付きの金具が使用された婦人靴は、「伊・フェラガモの顔、オペラパンプス“VARA”は10年以上続いている定番。」(甲第51号証)、「フェラガモの代名詞の靴 VARA」(甲第91号証)、「超人気の『ヴァラ』から、・・・」(甲第99号証)、「『ヴァラ』といわれるリボン付きカッターは超定番で、・・・」(甲第102号証)等の記載によれば、特に人気が高く、「フェラガモ(社)のヴァラ(VARA)」(請求人の取扱う婦人靴「ヴァラ(VARA)」)として女性の間で相当程度認知されており、需要者間で広く認識されているであろうと推認することは可能ではある。
しかしながら、上記甲号証及び他の甲各号証によれば、i)請求人の取扱う婦人靴「ヴァラ(VARA)」等に使用されているリボン付き金具には、上記したように、「Ferragamo」の筆記体文字が表されており、文字が表されていない本願商標とは異なるものであるばかりでなく、リボン付き金具のみに着目した場合、「Ferragamo」の文字部分がその構成中で最も看者の注目を惹く部分とみられるものである。
ii)また、請求人の取扱う商品について、雑誌等に紹介されているときには、多くの場合、まず、「フェラガモ」、「FERRAGAMO」、「フェラガモの・・・」等のブランド名を表示した見出しによって紹介され、その次「ヴァラ(VARA)」、「ガンチーニ」等と称されている請求人の個別商品の内容等が紹介されているとみられること、そして、甲第3号証、甲第5号証ないし同9号証及び甲第12号証ないし同第18号証の請求人による靴の広告においても、「Salvatore Ferragamo」のブランド名は表示されているが、「VARA」等の表示は見当たらないことからすれば、これらの商品の出所を一義的に表示しているのは、ブランド名としても広く認識されている「Ferragamo(フェラガモ)」、「Salvatore Ferragamo」等の文字商標であるというべきである。
さらに、iii)請求人の取扱うリボン付きの金具を使用した商品が、「VARA(ヴァラ)」のみならず、「ビアンカ」、「LILLAZ(リラッズ)」とも称されているとみられ(甲58号証、甲76号証及び同第99号証)、iv)これら請求人の取扱う商品「靴類,かばん類,袋物,キーホルダー」等に使用されているリボン付き金具において、該金具の中央部分の縦方向の長さは、横方向の長さに較べて短いものであるから、同部分の縦方向の長さと横方向の長さとがほぼ同一である本願商標とはリボン付き金具全体の形状をみた場合、外観上の類似性は否定できないとしても、同一のものとはみられないものである。
v)そして、i)ないしiv)を総合すると、「ヴァラ(VARA)」といったときに、需要者が「Ferragamo」の文字を有しない本願商標の形状を直ちに想起するとまではいえないものと判断するのが相当である。
そうとすれば、請求人の取扱う商品「婦人靴」について、「ヴァラ(VARA)」の愛称が、需要者の間で広く認識されていると推認し得るとしても、本願商標の形状のみを直ちに想起するものとはいい難いから、本願商標が「ヴァラ」と称される著名商標として需要者間に広く認識されている旨の請求人の主張は採用できない。
ニ)そして、請求人は、上記1のとおり、指定商品について何ら補正をしていないところである。
ホ)したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものであるということができない。
(b)請求人は、請求人の長年の努力により、多大な業務上の信用が蓄積した本願商標について、識別力がないとして商標登録が認められないときには、本願商標の模倣者を徒に増やし、市場の混乱を生み出す要因を生み出すものである旨主張する。
しかしながら、商標の識別性については、他人の模倣による市場の混乱の危険性があるからといって、必ず認められなければならないというような性格のものではなく、また、請求人は、上記のとおり、本願商標が使用により識別性を有していると認めるに足るような十分な立証及び指定商品の補正等の手続をしていない以上、識別力を有するに至っていると認定、判断できないから、その主張は採用し得ないものである。
4 結 論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項には該当しないとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
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