Trademark Appeal Case
周知商標と混同のおそれ
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第91970号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第4159359号商標(以下「本件商標」という。)は、後記に表示するとおりの構成からなり、平成8年10月1日登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同10年8月20日に設定登録されたものである。
第2 本件登録異議申立の理由の要点
本件商標は、商標登録第2691725号に係る商標と類似する商標であって、その指定商品も互いに類似する商品であるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、あるいは、商標登録異議申立人の業務に係る商品「被服類」に使用し広く一般に知られている標章と酷似するものであるから、本件商標をその指定商品に使用するときは、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標であるから、同第15号に該当し、同法第43条の2の規定により、その登録は取り消されるべきものである。
第3 本件取消理由通知
1 引用商標の周知、著名性について
(株)講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」及びサンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド辞典’84ザ・ブランド」の記載によれば、次の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年ネクタイのボー・ボランメル社にデザイナーとして入社、巾広ネクタイをデザインし、圧倒的に若者に支持され、世界に広まった。翌1968年独立し、ポロ・ファッションズ社(以下、「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。
その頃からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形からなる商標(以下、「引用商標」という。下記参照)が用いられ、これは「ポロ」の略称でも呼ばれている。
そして、(株)洋品界昭和55年4月15日発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」の「ポロ/Polo」の項及びボイス情報(株)昭和59年9月25日発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述並びに昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、例えば、前記「男の一流品大図鑑」(昭和53年7月20日発行)をはじめ、昭和53年2月16日付け日本経済新聞(夕刊)の広告、(株)講談社昭和54年5月20日発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、(株)チャネラー昭和54年9月20日発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」(昭和55年11月20日発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」(昭和55年6月20日発行)、「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年6月20日発行)、前記「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、(株)講談社昭和60年6月25日発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、メガネについては、前記「世界の一流品大図鑑’80年版」、「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」、「世界の一流品大図鑑’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることが認められる。
また、ラルフ・ローレンの「POLO」、「Polo」、「ポロ」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決として、東京高等裁判所平成2年(行ケ)第183号(平成3年7月11日言渡)及び東京地方裁判所平成8年(特わ)第1519号(平成9年3月24日言渡)判決をはじめ、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第250号、同第251号、同第252号、同第267号、同第290号(以上平成11年12月16日言渡)、同第268号、同第289号(以上平成11年12月21日言渡)、同第288号(平成12年1月25日言渡)、同第298号、同第299号(以上平成12年2月1日言渡)、同第192号(平成12年2月29日言渡)、同第333号、同第334号(以上平成12年3月29日言渡)等の一連の判決がある。
さらに、引用商標を模倣した偽ブランド商品が市場に出回り刑事摘発を受けた旨が、例えば、平成1年5月19日付朝日新聞夕刊、同4年9月23日付読売新聞(東京版)朝刊、同5年10月13日付読売新聞(大阪版)朝刊、同10年6月8日付朝日新聞夕刊等において報道され、これらの記事中では引用商標が「ポロ」、「Polo」、「POLO」等と称されている。
以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、引用商標は、「ポロ」、「Polo」、「POLO」と略称され、ラルフ・ロ ーレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品等に使用する標章として遅くとも本件商標の登録出願時までには既に我が国において取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は、本願商標の出願時はもとより、現在においても継続しているものである。
2 商品の出所の混同のおそれについて
本件商標は、後記のとおりの構成よりなるものであるところ、本件商標と引用商標の図形部分は描き方は相違するが共にポロプレーヤーを表してなるものである。
そして、本件商標の指定商品には、引用商標を使用している被服類と同一又は類似の商品が含まれているものである。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用する場合は、これに接する取引者、需要者は、本件商標のポロプレーヤーの図形より、上記周知、著名な引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
3 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。
第4 本件商標権者の意見の要点
上記取消理由の通知に対して、商標権者は、以下のとおりの主張した。
1 引用商標の図形は、
(1)馬上に人が乗り、人は先端がT字型の棒を肩の上に振り上げて掲げており、顕著な躍動感ないしスピード感のない静止的な図形であり、
(2)図形は極度に写実的でなく、多数の白抜き線で区切られた「印影」状態で描かれており、
(3)馬及び人ともに左側のほぼ正面図形として描かれており、
(4)馬の前足は地面からわずかに離れているが、両足とも概ね地面に接近した状態で描かれて構成されている。
本件商標は、
(1)馬上に人が乗り、人は先端がT字型の棒を、地面にあるボールを打ち込むために振り下ろす直前の状態として描かれており、顕著に躍動感ないしスピード感があり、流動的な図形であり、
(2)図形は引用商標の図形に比較すると極めて写実的であって、「印影」状態で描かれておらず、
(3)馬及び人ともに右側側面図形として描かれており、
(4)馬の後足は両足とも地面に接しているが、前足は両足とも地面から大きく離れている。
このように引用商標の図形部分と本件商標とは、外観上、著しい相違があり、類似していない。離隔的観察手法によっても、取引者、需要者は、本件商標から引用商標の図形部分を連想、想起することはあり得ず、本件商標をその指定商品に使用しても、その商品がラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
2 取消理由で掲げる証拠1、2、9、11、24などのから立証される周知、著名標章の図形は、引用商標における上記(1)ないし(2)で外観上概略特定される図形の外観であって、引用商標から共通項として抽出された「ポロプレーヤー」という観念及び「概念」における周知、著名性は証拠から証明されていない。
「ポロ競技」は、我が国において馴染みの薄いスポーツであるならば、取引者、需要者が引用商標に含まれる図形をみて、これから「ポロプレーヤー」という「観念」を認識することはない。そして、引用商標に含まれる図形の周知、著名性は、「外観」上の周知、著名性に限定解釈されるべきであって、他の図形とを比較して観察するときに、その共通要素として「ポロプレーヤー」という「観念」を持ち出すことは妥当ではない。
また、「ポロの略称」とは、「ポロ競技」の「ポロ」を示すものではなく、ラルフ・ローレンの「ポロ」示している。そうだとすれば、引用商標に含まれる図形から生ずる略称も、ポロ競技としての「ポロ」ではなく、ラルフ・ローレンの「ポロ」である。よって、引用商標に含まれる図形から、共通項としての「ポロプレーヤー」の観念は生ずることはない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標の図形部分とは、図形の描写において顕著な差異がある。そして、引用商標の図形部分から「ポロプレーヤー」という共通要素を観念及び外観において引き出すことは失当であり、両商標の比較判断は、個別具体的に事実認定し、判断されるべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではない。
第5 当審の判断
本件商標と引用商標には、その構成に係る図形に商標権者主張のような相違があるが、本件商標のポロ競技者の図形と引用商標のポロプレーヤーの図形とは、ポロ競技者が馬上からT字状の棒(マレット)を持ち、これを上から振り下ろさんとする様子において共通し、類似性があるものと認められる。そして、取消理由通知において説示したとおり、引用商標は、商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)であるザ・ポロ・ローレン・カンパニー・パートナーシップが被服類に長年使用し、本件商標に係る登録出願前には既に周知、著名な商標になっていたことを、以上認定した事実に合わせ考えれば、本件商標と引用商標との間の商標権者主張の前記差異点は、微差にすぎないものと認められる。
そうすると、本件商標は、これに接する被服類の取引者、需要者に対して、引用商標と相紛らわしい印象を与えるものとなっており、申立人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがある商標である。
したがって、商標権者の主張は、採用することができない。そして、先に示した本件商標に対する取消理由通知における認定、判断は正当なものである。
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号に該当し、取り消すべきものである。
よって、本件登録異議の申立てに係る商標登録は、商標法第43条の3第2項の規定により結論のとおり決定する。
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