Trademark Appeal Case
著名標章の不正利用
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2000−91141(T2000−91141/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4406299号商標(以下本件商標という。)は、平成12年2月9日に登録出願され、「F1ダービー」の文字を書してなり、商品の区分第16類及び第28類に属する商標原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成12年8月4日に設定登録されているものである。
2 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の異議理由
本件商標は、国際的に著名な自動車レース又はそのレースに使用される専用車両の名称である「F1(エフワン)」の文字を含むものであり、かつ、その商標としての採択・使用に際して、大会主催者らの何らの承諾を得ることなく、出願・登録されたものであって、上記の世界的な自動車レースの信用を不当に利用しようとするものであるから、商標法第4条第1項第7号及び同第19号の規定に該当し、かつ、他人の業務に係る商品と出所の混同を起こさせるおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第15号の規定にも該当し、さらには申立人の先願先登録にも類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定にも該当し、同法第43条の3の規定によりその登録を取り消されるべきものである。
(1)商標法第4条第1項第7号に関する主張
「FORMULA 1」(フォーミュラーワン)は、世界各国で行われているモータースポーツの頂点に立つ自動車レースであり、1950年5月にスタートして以来、現在まで約40年にわたって継続的に開催されてきた(甲第2号証、甲第5号証、甲第9号証)。このレースは、規格に従ったフオーミュラーワンマシーンによって争われる自動車レースであり、年間10数戦のレースが世界各地で行われ、その決勝成績に応じて与えられる得点の合計でドライバー世界チャンピオン及びコンストラクター世界チャンピオン(車のメーカー)が決められる。日本でも鈴鹿サーキットを舞台に毎年開催されている(甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第9号証)。そして、このフォーミュラーワンは「F1」の文字で簡潔に表現され「エフワン」とも称され、世界的に親しまれているものである(甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、とくに甲第4号証ではこのレース「F1(エフワン)」として紹介している)。
この「F1/エフワン」に、日本からは、ホンダ、ヤマハ、ブリヂストン等がエンジン、タイヤの供給を通じて参加している(甲第4号証等)。また、日本人ドライバーとしては、中島悟、鈴木亜久里、片山右京らが知られている(甲第5号証、甲第9号証)。
なお、このレースの模様は、わが国においては、株式会社フジテレビジョンを通じて放送されており、また、このレースに関する雑誌・書籍は枚挙にいとまがない。その一例として、上記甲第2号証乃至甲第5号証を参照されたい。
さらに、本レースに関するビデオも多数販売されており、また、この名称「F1(エフワン)」を使用した鞄、帽子、ステッカー、シャツ等の商品化事業も活発に行われている。
とくに、本件商標の指定商品「おもちゃ」と類似する「家庭用テレビゲームおもちゃ」等の商品化事業も活発に行われている(甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証、甲第10号証)。申立人であるフォーミュラーワンライセンシングビーブイ(旧名称 ギスライセンシングベスローテンフェンノートシヤップ)は、F1(エフワン)に関する商標についての商品化事業を行う権限を、このレースの主催者である国際自動車連盟(Federation Internationale de Automobile 以下、「FIA」と称す)より付与されている(甲第9号証)。
甲第10号証は、上記甲第9号証の宣誓供述書に添付された証拠物件中、とくにF1マークについての世界的な商業的利用を具体的に示す証拠である。
ところで、この「F1」(エフワン)を統括するのは、世界各国の自動車連盟の連合体である上述の国際自動車連盟(FIA)である(甲第2号証、甲第5号証、甲第9号証等)。また、「Formula One Admlnistratlon Limited(フォーミユラー ワン アドミニストレーシヨン リミテッド)」は、フォ一ミュラーワンに関する事業権をFIAより授権されており、さらに、本件申立人「フォーミユラー ワン ライセンシング ビーブイ」に対して、フォーミュラーワンに関する種々の商標を世界的に出願し登録・管理する権限が与えられており、多数の出願中の商標及び登録商標がこの法人によって所有されている。
なお、我が国における登録商標の一例は甲第6号証に示すとおりである。「F1」「エフワン」の著名性については、特許庁においても顕著な事実であるが、この自動車レースの世界的著名性を立証し、かつ、上述のFIA、共同申立人の関係及びその役割等を詳細に説明するため、申立人のイギリスにおける代理人である事務弁護士事務所「Townleys Soliciors」の事務弁護士ニコラス ダンカン コーチマンの宣誓供述書を提出する(甲第9号証)。この宣誓供述書の原本には、同書の中に示されているように、証拠物件(NDC1からNDC16)が添付されているが、上述のとおり、NDC12からNDC16までは、甲第10号証として添付したが、残りのものについては、要求があれば提出する。
以上、詳述したとおり、「F1/エフワン」の文字は、本件商標の出願日(平成12年2月9日)の40年以上前から開催されている世界的に著名な自動車レースを意味するものとして、各種メディアを通してわが国においても広く紹介され、著名なものとなっている。
しかして、本件商標は、このレース名称と全く同ーの「F1」の文字を含むものである。
本件商標は、「F1ダービー」の英文字、数字、片仮名文字が同書・同大に一体的に構成されている。
上述のとおり、「F1」の文字は、「エフワン(レース)」であることを極めて容易に想起させるものである。また、「ダービー」は、イギリスで発祥した競馬のレースであり、わが国でも「日本ダービー」が開催されており、これらを転じて「大競争」の意味を持つ言葉として広く親しまれている。すなわち、本件商標の含む「F1」の文字は、「エフワン(カーレース)」を容易に想起させるものであることに加えて、本件商標は、全体として「エフワン大競争」なる観念を容易に想起させるものである。
したがって、本件商標に接する需要者・取引者は、本件商標の「F1」の文字より、国際的に著名な自動車レース「F1/エフワン」を直ちに連想するというべきである。すなわち、本件商標は全体として、国際的に著名な自動車レースを示す「F1/エフワン」からなるものである。加えて、本件商標権者は、この商標を採択・使用するにあって、その統括団体であるFIAの承諾を何ら得ているものではない。
また、F1(エフワン)に関する商標等の使用・登録を含む事業権の管理を授権されている本件申立人の許諾を得ているものでもない。
したがって、本件商標権者が、本件商標を使用・登録する行為は、「F1」(エフワン)のもつ顧客吸引力を不当に利用する行為であって、正当な商慣習に反し、かつ、国際信義に反する行為でもある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第19号に関する主張
上述のとおり、「F1(エフワン)」は、世界的に著名な国際自動車レースの名称として、わが国において広く親しまれており、商標的にみれば、「国際的自動車レースの開催」についての著名なサービスマークとして機能している。このような状況において、上記著名名称・商標と全く同一の文字を含む本件商標を本来の権利者に無断で登録・出願する行為は、「F1(エフワン)」のもつ顧客吸引力を不当に利用しようとするものであり、商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」を有するものであることが客観的に明らかというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号に関する主張
以上のとおり、「F1(エフワン)」の名称は、国際的に著名な自動車レースを示す名称として、現実に使用され、各種雑誌等においても紹介され(例えば、甲第4号証)、本件商標出願日の平成12年(2000年)2月9日の相当以前より、わが国においても著名となっている。
また、上述のとおり、この「F1」の文字を含む商標は申立人によって、種々の商品について、商品化ビジネスに利用され、日本を含む世界中において、多数の使用許諾契約が結ばれている(甲第9号証、とくに甲号証の39一47までにその詳細が説明されている、甲第10号証)。
とくに、「おもちゃ」をその指定商品に含むものであるから、これに類似する「家庭用テレビゲームおもちゃ」すなわち、「家庭用コンピュータゲームおもちゃ」については、甲第10号証(その40)にも供述されているように、最も成功している許諾商品のひとつであり、「F1」の名称を付し、これをモチーフにした多数のものが世界的に相当の量の商品が正当に使用許諾の下で、販売されている。
わが国においては、この商品について、本件申立人の許諾の下、株式会社フジテレビジョンを通じて、使用許諾がなされはじめ、この「F1(エフワン)」を内容とする家庭用等のコンピュータゲームの製造販売についての再許諾が、我が国の多くの製造業者に許された。
甲第7号証は、株式会社フジテレビジョン事業局によって作成された契約ソフトのタイトル及び価格、許諾期間(とくに本件商標出願日前のもの)、許諾を受けたメーカーの一覧表である。甲第8号証は、それらゲームソフトのパッケージの一例である。これらのパッケージにも明瞭に「F1」の文字が示されている。
以上のとおり、本件商標権者により、著名名称・著名商標である「F1」と全く同一の文字からなる本件商標「F1ダービー」がその指定商品「おもちゃ」(第28類)や、甲第10号証にも示されたライセンス商品である「紙製の旗」や「文房具類」(第16類)に使用されれば、その商品は、あたかも「F1(エフワン)」を内容とするものであり、かつ、その主催者又はそれより許諾された関連企業の提供に係る商品であるかのように商品の出所について誤認・混同が生じることは明らかである。
よって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同が生ずるおそれがある商標にほかならず、商標法第4条第1項第15号にも該当するものである。
(4)なお、申立人は、「FORMULA 1」の文字を含む商標「AREXONS−THE FORMULA 1 IN CARCARE」(登録第4037941号)についても本件異議申立と同様の理由により、異議申立てをおこなった(平成9年異議第90690号)。
これに対して、上記登録を取り消す旨の決定がなされた(甲第11号証)。この取消決定の理由によれば、上記登録商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に該当すると認定されている(同号証)。また、本件商標と同様に「F1」の文字を含む「F1速報」よりなる商標に対しても(登録第4176848号)、異議申立を行い(平成10年異議第92199号)、当該登録商標を取り消す旨の決定を受けている(甲第12号証)。同決定においては、「本件商標は、その構成中に「F1」の文字を有するところ、該文字よりは国際的な自動車レースとして著名な「フォーミュラー1(エフワン)ワールドチャンピオンシップ」の名称を容易に想起しうるものである(中略)。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用するときは、あたかも前記FIA(国際自動車連盟)、FISA(国際自動車スポーツ連盟)又はこれらと関係のある者の製造販売に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとみるのが相当である。
さらに、このような商標をわが国において出願し、権利を取得しようとする行為は国際信義に反するものというべきであり、かつ、その行為には不正の目的があるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法4条1項7号、同第15号及び同第19号に該当する」、との取消理由が提示され、該理由により取消決定された。
さらに、「夕クテイクスフオーミユラーワン」の文字と「TACTICSFORMULAー1」の文字を上下二段に書してなる商標(登録第4183848号、甲第13号証)に対しても異議申し立てを行った(平成10年異議第92284号)。これについても取り消し決定が出されたが、「FORMULAー1/フォーミュラーワン」の著名性を認めるとともに、上記商標は商標法第4条第1項第15号に該当すると認定している(甲第13号証)。この「FORMULAー1/フォーミュラーワン」は、例えば甲第4号証に示されたように単に「F−1/エフワン」とも称され親しまれていることも明らかな事実である。
さらに、「エフワン」と「F−I」の文字を二段に横書きしてなり、本件商標と同様に第28類の商品を指定商品とする商標に対しても(登録第4270498号)異議申立を行った(平成11年異議第91164号、甲第14号証)。これについて取り消し決定が出されたが、その理由の中で「F1(エフワン)」は、自動車のレースの名称のみに止まらず、自動車レースの開催、運営等の役務の商標としても、高い著名性を獲得しているものと認定されている(甲第14号証)。さらにまた、「PROLONG FORMULA ONE」の欧文字からなる商標(登録第4290958号)についても取消決定を受けている(甲第15号証、平成11年異議第91425号)。
上記の取消決定の先例に照らしても、この国際的自動車レースの名称と同一の「FI」の文字からなる本件商標は、同様に取り消されるべきである。
(5)商標法第4条第1項第11号について
本件申立人は、本件商標と同ーの指定商品について、先願・先登録に係る商標「FI/Formula 1」(登録第4395176号、甲第6号証)や「FI Cafe」(登録第4283401号、甲第6号証)等を有している。これらの商標は、「F1」の文字を含み「エフワン」の称呼が生じるものであり、他方、本件商標も「F1」の文字を含み「エフワン」の称呼が生ずるものであり、これらの商標は類似する商標である。
よって、本件商標は、商標法4条第1項11号にも該当する。
(6)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第19号及び同第15号、同第11号の規定に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の3の規定により取り消されるべきものである。
3 当審の取り消し理由
本件商標は、その構成中に「FIA(国際自動車連盟)」が主催し国際的に著名な自動車レース「FORMULA ONE」の著名な略称である「F1」の文字を有してなるものである。
そして、本件商標権者は、本件商標を登録するに当たり、これらのレースを統括する団体「FIA(国際自動車連盟)」の承諾を得ていない。してみれば、本件商標をその指定商品について使用するときは、恰も前記「FIA(国際自動車連盟)」又はこれと関係のある者の製造販売に係る商品であるかの如くその商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがある。また、上記文字を含む商標を「FIA(国際自動車連盟)」の承諾もなく我が国において出願し、権利を取得しようとする行為は国際信義に反するものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条1項第15号及び同第7号に違反して登録されたものである。
4 上記3の当審の取消理由に対して商標権者は何ら意見を述べていない。
5 当審の判断
平成13年8月2日付けで取り消し理由を通知し、期間を指定し意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何の応答もなかった。そして、上記の取り消し理由は妥当なものと認められるから、本件商標登録は、この取り消し理由によって、取り消すものとする。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。