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Trademark Appeal Case

著名商標と結合商標の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35054号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第2715212号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2715212号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和55年6月5日に登録出願、第26類「雑誌」を指定商品として平成8年7月31日に設定登録がなされたものである。

2 請求人の引用する登録商標

請求人の引用する登録第655209号商標(以下「引用商標1」という。)は、「VOGUE」の文字よりなり、昭和36年10月23日に登録出願、第26類「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として同39年10月9日に設定登録されたものであり、同じく、登録第967284号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ヴォーグ」の文字よりなり、昭和43年12月20日に登録出願、第26類「雑誌、その他本類に属する商品」を指定商品として同47年6月7日に設定登録されたものであり、いずれも、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第95号証(枝番を含む。)及び参考資料1、2を提出した。

(1)「VOGUE」商標の周知著名性

「VOGUE」商標は、世界有数のファッション誌として広く認識されている「VOGUE」誌の題号であり、「VOGUE」誌は、既に創刊100周年を越えており、極めて古い歴史と伝統を有する希有の雑誌であり、世界的名声と権威を有するファッション誌である。

著名登録商標「VOGUE」(引用商標1)は、「VOGUE」の他に、「ヴォーグ」又は「ボーグ」の片仮名文字をもって、世界的に著名なファッション誌の題号を表示するものとして、本件商標の出願前より、日本国内において、広く知られているものである。

この点は、例えば、以下の諸事実から明かである。

(a)登録第655209号商標(引用商標1)について、既に22件の防護標章が登録されている(甲第3号証の2)。

(b)各種新聞、雑誌、書籍、辞典類等において、「VOGUE(ヴォーグ)」誌についての記事が広く紹介されている(甲第6号証の1ないし同第48号証)。

(c)東京商工会議所の周知証明書(甲第49号証)及び世界各国の超一流企業、公益法人、全国一流書店による周知証明書(甲第50号証の1ないし70)によって、「VOGUE」の著名性は明確に証明されている。

(d)「VOGUE」誌に広告を掲載することは、厳選された一流企業のみが可能であり、我が国の一流企業も、このような「VOGUE」誌の権威性及び著名性を高く評価している(甲第57号証及び同第58号証)。

(e)「VOGUE」の著名性は、裁判所の判決においても明確に認定されている(甲第51号証、同第52号証、同第54号証、同第55号証、同第62号証ないし同第66号証、同第68号証、同第84号証)。

また、判決に関する新聞報道記事(甲第53号証の1ないし4及び同第56号証の1ないし7)に照らしても、「VOGUE」に関する事件が一般社会において如何に注目されているか、換言すれば、「VOGUE」が如何に著名であるかが理解できるのである。

(2)商標法第4条第1項第11号

一般に、著名登録商標を一部に含む商標において、「登録商標の著名度が高い場合には、その著名度の高い部分に世人の注意が集中し当該著名登録商標の称呼、観念が生じる」ものであることは、裁判所の判断等においても明らかである[例えば、昭和39年(ワ)第12182号判決(甲第59号証)参照]。

しかして、本件商標は、「日本ヴォーグ社の」を上段に表示し、下段にこれよりも大きなゴシック体片仮名で「クレェ ヴォーグ」と表したものであるところ、その構成中に「ヴォーグ」の文字を含むものであるから、請求人の所有に係る「VOGUE」商標の著名性に照らせば、著名登録商標「VOGUE」と同一の称呼が生じることはいうまでもないことである。

本件商標のうち、フランス語の「創造する、作る、生み出す」を意味する「CREER(最初のEにはアクサン記号がある)」の片仮名表示である「クレェ」の部分は、日本で知られている既成語ではなく、更に、本件商標の上段には「ヴォーグ」の文字を含む「日本ヴォーグ社の」の文字が表れており、かつ下段にも「ヴォーグ」の文字が「クレェ」との間にワンスペースの間隔をおいて表示されていることからして、本件商標に接する取引者、需要者は、ファッション雑誌のタイトルとして世界的に著名になっている「VOGUE(ヴォーグ)」に外観、称呼、観念において類似する商標であると考えるのが自然である。

そして、本件商標の指定商品と引用商標1及び2の指定商品は、相抵触するものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、その登録は無効とされるべきである。

(3)商標法第4条第1項第15号

被請求人は、その業務に係る本件商標の他に甲第72号ないし同第79号証に示すように「ヴォーグ基礎シリーズ」、「ヴォーグ学園」、「NIHON VOGUE’S HOME CULTURE SERIES」或いは「ヴォーグホームカルチャー」の文字を雑誌、パンフレット、チラシ等の印刷物に使用しているのであり、その中には明確に「VOGUE」(ヴォーグ)の部分が含まれているのである。

これらの諸事実及び前記した引用商標の著名性から判断すれば,被請求人が著名商標「VOGUE(ヴォーグ)」そのものを含む本件商標をその指定商品「雑誌」について使用したときは、取引者、需要者は、「VOGUE」誌を発行する請求人らと経済的あるいは組織的に何らかの関連を有する企業の業務に係る商品であるかのように混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものであり、登録無効を免れないものである。

(4)被請求人の答弁に対する弁駁

(a)被請求人は、「日本ヴォーグ社」、「編物ヴォーグ」の商標の使用により、編物雑誌として「ヴォーグ」の著名性を主張している。

しかしながら、引用商標の著名性は、前述のとおりであり、加えて、請求人らは、1932年には「VOGUE’S BOOK OF KNITTING and CROCHET」を出版していた事実があり、その後、1965年(昭和40年)にはタイトルを「VOGUE KNITTING」に変更して、現在迄継続されており(甲第85号証の1ないし8及び甲第83号証参照)、上記雑誌は、我が国にも、少なくとも昭和33年(1958年)から昭和46年(1971年)の13年もの間、輸入販売されていた事実が存在する(甲第86号証の1ないし13)。

第二次大戦後の被請求人会社設立年度である昭和33年以前から現在に至るまで、我が国のファッション業界においてファッションを学び職業とする人々は、海外とりわけニューヨーク、パリ、ロンドン発のファッション文化を学ぶことが極めて当たり前、或いは必須であることは自明の事実であり、このような現実が存在している以上、被請求人が「VOGUE」誌と無関係に「ヴォーグ」なる文言を採択するはずがないと考えるのが自然である。事実、被請求人の所有する商標「編物ヴォーグ」(登録第2724153号)は、昭和33年当時から我が国で発売された請求人発行の雑誌の商標「VOGUE KNITTING」の日本語訳そのものなのである。

したがって、被請求人が乙各号証を根拠として主張する「株式会社日本ヴォーグ社」の著名性ないし周知性は、仮に、被請求人の企業努力があったとしても、これはあくまでも請求人らの著名商標「VOGUE」誌等がその前提として存在していたからこそ生じた現象である。換言するならば、被請求人が自社の商号を含め、本件商標の採択にあたり、ファッション雑誌「VOGUE(ヴォーグ)」の著名性とリンクさせたことによって、著名性あるいは周知性を取得しているに過ぎないものである。よって、被請求人の主張は、前提となる事実を排除あるいは看過した主張であって、誤りである。

(b)被請求人は、「VOGUE」誌の日本における1980年度の販売実績部数が月平均約4400部であることを根拠として、この程度の資料で著名性が立証されるのであれば、被請求人の使用する「日本ヴォーグ社」外「ヴォーグ」を含む商標はより著名であると主張するが、この点については、既に、東京高裁判決(甲第68号証)において判断が示されている。

加えて、被請求人が答弁書において主張する販売部数は、本件商標をタイトルとした本の販売部数ではなく、あくまでも被請求人会社全般の各種の雑誌、定期刊行物の合計にすぎない。

(c)被請求人は、本件商標の使用にフリーライドの意図はなく、「VOGUE」商標が著名であったとしても被請求人の使用は正当なものであると主張しているが、本件は、不正競争防止法に基づく紛争ではなく、登録処分が商標法第4条第1項第11号または第15号に該当してなされたか否かを争う事件であり、被請求人のフリーライドの意図を含む「不正の目的」の有無を問題にする必要はないのである。

(d)被請求人は、「日本ヴォーグ社」その他「ヴォーグ」を含む商標は、書籍、編物教室、通信講座の分野においても、請求人の商標と混同を生じていない旨主張しているが、この主張は客観性のないものであり、商標法第4条第1項第15号は、現実に混同がなくても、混同のおそれがあれば、十分である。

また、被請求人は、平成6年審判第11943号審決を引用しているが、この審決の判断は、甲第68号証及び同第84号証で示す東京高裁による2つの審決取消請求事件の判決に照らして、誤った判断・認定といわざるを得ない。

(e)請求人の調査によれば、本件商標をタイトルに付した雑誌「クレェヴォーグ」は、昭和56年5月に創刊され、昭和57年7月号をもって最終号となっている(甲第92号証)。これは、請求人が昭和55年頃から被請求人に対し、被請求人発行に係る雑誌タイトル中の「VOGUE」「ヴォーグ」の使用中止を申込んだ経過があり、これを踏まえて、上記に至る変動があったことは容易に窺えるところである。

4 被請求人の主張

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第21号証(枝番を含む。)及び参考資料1、2を提出した。

(1)被請求人会社の著名性ないしは周知性

被請求人は、昭和33年の創業以来、第26類印刷物について登録第684245号商標「株式会社日本ヴォーグ社」(乙第1号証及び同第2号証)、登録第1334472号商標「日本ヴォーグ社の あむあむ」(乙第3号証及び同第4号証)及び登録第743590号商標「日本ヴォーグ社の編物ヴォーグ」等を取得し、「編物ヴォーグ」等とともに使用しており、また、すべての書籍には「日本ヴォ−グ社」の商標を付して多数の印刷物を出版している(乙第5号証 昭和59年11月30日発行「日本ヴォーグ社と共に歩んできたニット・グラフィティ30年」、同第6号証 平成6年6月11日発行「毛糸だま6月号」、同第7号証 平成6年5月11日発行「キルトジャパン5月号」、同第8号証 平成6年6月20日発行「ZAZAI994年夏」、同第9号証 平成6年4月10日発行「世界の編物1994年春夏号」、同第10号証 平成6年3月10日発行「ヨーロッパの手あみナチュラルセーターが好き」、同第11号証 平成6年6月10日発行「ホームソーイングQ&A」参照、以上いずれも日本ヴォーグ社発行)。

そして、昭和55年度で販売数量は約510万部、平成6年度では、7月21日から期半ばの5月20日に限っても617万冊に至っている(乙第12号証 生産実績及び売上実績昭和54年〜昭和59年、同第13号証 生産実績及び売上実績昭和61年〜平成6年)。

さらに、新聞等でも宣伝を行ってきている(乙第14号証 平成6年2月25日付朝日新聞、同第15号証 平成5年8月25日付朝日新聞、同第16号証 平成4年2月25日付朝日新聞、同第17号証 平成3年2月25日付朝日新聞、同第18号証 平成2年2月22日付朝日新聞、同第19号証 平成1年10月26日付朝日新聞)。

そして、被請求人は、編物教室その他、通信講座を開設しており、昭和32年段階で既に公認編物学校800校、教室は3万ないし5万ともいわれ、同数室は「ヴォ−グ学園」として知られている(乙第5号証)。

これら長年の使用、宣伝の結果、被請求人の会社名でもある「日本ヴォーグ社」は、広く知られるに至っている。

被請求人が当事者となってはいないため十分な立証はできていないと思われる事案においてさえ、「編物、手芸の分野では「日本ヴォーグ社」が昭和40年以来雑誌「編物ヴォーグ」を発行するとともに、専門図書を多数刊行し、また、編物教室・通信講座を開設するなどの活動を行い、右分野では広く知られた存在になっていることが認められる」とされている(甲第54号証 昭和61年(モ)第53971号商標権侵害行為等差止仮処分異議申立事件、同第55号証 昭和61年(ワ)第9077号商標権侵害行為差止等請求事件判決参照)。

他方、請求人の主張によれば、本件において販売数量は何ら明白にしていないが、他の事件における同人の主張によれば、同人の発行に係る書籍「VOGUE」は、昭和55年度においても、アメリカ版、フランス版合わせても月平均約4400部にすぎず、商品「雑誌」において周知性を主張する資料として十分なものとはいえないと考えるが、この程度の資料で著名性が立証されるのであれば、被請求人の使用する「日本ヴォーグ社」外「ヴォーグ」を含む商標はより著名である(乙第20号証の1 商願昭55−45251号商標登録異議申立理由及び証拠補充書8頁、乙第20号証の2参照)。

(2)被請求人の正当性

被請求人は、これら長年にわたる使用の結果得られた信用の上に「日本ヴォーグ社」を含む「ヴォーグ」の文字を有する商標を使用している。

請求人の挙げる各判決にあらわれる事案は、判決に従うかぎり、請求人の所有する「VOGUE」商標に近似させ、フリーライドの成果を得ようとする意図が推測されるものであり、また、請求人の引用する異議申立事件も、多くは商標登録を得ることによりフリーライドを維持確保する意図が推測され、当然、請求人もその旨の主張立証を行った結果、決定が得られたものと思われる。

このように、己の築き上げた信用、名声を利用しようとする被請求人と、甲号証にあらわれる請求人の信用、名声を不当に利用しようとする当事者、商標登録出願人とは、フリーライドの意図の有無において全く異なるものであって、本件とは事案を異にするものである。

著名商標保護を規定する今回改正の不正競争防止法第2条第1項第2号の解釈においてさえも、「著名表示側・使用側のいずれかの条件に、著名表示に関する不正競業性のない場合(例えば、新聞の朝日とビールのアサヒと銀行のあさひの抵触のごとき場合)には、違法性がないものとするのが妥当である」とされる(平成6年6月20日有斐閣刊、小野昌延著「不正競争防止法概説」190頁6行〜9行)。

すなわち、仮に「VOGUE」商標が著名であったとしても、被請求人の使用は正当なものである。

(3)出所混同の可能性と商標の類否

請求人は、「VOGUE」は雑誌の題号として著名なので、「VOGUE」、「ヴォーグ」を含む商標は、すべて請求人の所有する商標「VOGUE」と出所の混同を生じ、また「VOGUE」の部分が特徴となるので本件商標は引用商標と類似すると主張する。

しかしながら、請求人の根拠とする書籍販売量、宣伝量で「VOGUE」が著名といえるのであれば、被請求人の所有する「日本ヴォーグ社」商標は遥かに著名といえる。そして、「日本ヴォーグ社」その他「ヴォーグ」を含む商標は、使用される書籍、編物教室、通信講座の分野においても、請求人の商標と混同を生じていない。

東京商工会議所外の証明書も、請求人の引用商標と「日本ヴォーグ社」との類似、出所の混同を証明するものではない。

本件商標は、「日本ヴォーグ社の」の文字及び「クレェヴォーグ」の文字を上下2段に表示してなるものであって、単独で「ヴォーグ」を使用するものではない。いうまでもなく「日本ヴォーグ社」の部分は、書籍の分野で広く知られる被請求人の社名であって、被請求人の発行する書籍外には殆ど付される。そして、「日本ヴォーグ社の」と表示することで以下に続く「クレェヴォーグ」が「日本ヴォーグ社」の出版に係る商品であることを表示するものである。

仮に、請求人の引用商標が周知著名であったとしても、「日本ヴォーグ社」の周知著名度から、本件商標は、全体として「日本ヴォーグ社の発行に係るクレェヴォーグという名称の書籍」等と認識されることはあっても、本件商標から「ヴォーグ」部分のみが取り出されて判断されることはない。

このことは、本件商標に係る拒絶査定不服審判事件の審決(参考資料1)及び「エクトリー」と「ヴォーグヤーン」の文字を二段に表示してなる被請求人商標に対する無効審判事件の審決(参考資料2)から首肯し得るところである。

したがって、本件商標と引用商標とは類似するものではないから、商標法第4条第1項第11号に該当することはない。

5 当審の判断

(1)引用商標の著名性について

昭和24年10月3日発行の「朝日新聞」(甲第6号証の1及び2)には、「『ヴォーグ』入荷 世界的スタイル誌『ヴォーグ』が十年ぶりに一日入荷した。」と記載されており、昭和30年8月30日、平凡社発行の「世界大百科事典第3巻」(甲第7号証)には、「ヴォーグ」の項に、「Vogue 最も知られた流行服飾誌の名。」と記載されており、昭和34年9月10日発行の「現代用語の基礎知識 1959年版」(甲第10号証)には、「ファッション・ブック(Fashion Book)流行雑誌。外国の代表的なものとしては、『ヴォーグ』(Vogue米、仏、英版)・・等々がある。」と記載されており、昭和42年10月21日発行の「週刊新潮」(甲第13号証)には、「『ヴォーグ』とは、いうまでもなく、ファッションの中心、パリで発行されて、世界の流行を左右するといわれる服飾雑誌の権威。」と記載されており、昭和43年5月20日、婦人画報社発行の「服飾事典」(甲第14号証)には、「ヴォーグ(Vogue:フランス、アメリカ、イギリス)一般的に最も名の知られた流行雑誌。」と記載されており、昭和53年9月発行の「雑誌新聞総カタログ」(甲第28号証)には、「VOGUE アメリカ版」、「VOGUE フランス版」、「VOGUE HOMMES」及び「VOGUE PATTERNS」の紹介がされており、昭和54年3月5日、文化出版局発行の「服飾辞典」(甲第29号証)には、ヴォーグ(Vogue)の項に、「『ヴォーグ』といえばファッション誌の代名詞になっているほど。」と記載されており、昭和55年3月7日発行の「日本経済新聞夕刊」(甲第39号証の1及び2)には、「ヴォーグ60年展」の記事が掲載されており、「世界で指折りのファッション誌『ヴォーグ』は、フランス、イタリア、アメリカ、オーストラリアなどで国ごとに独自の編集をしている点に特色がある。」と記載されており、昭和44年9月20日第1刷発行の「田中千代 服飾辞典(増補版)」(甲第44号証)には、「『ヴォーグ』は、世界でもっとも名高いファッション・ブックの名前でもある。」、「一般的に最も名の知られた流行雑誌。」と記載されており、その他、請求人提出の各種新聞、雑誌、書籍、各種辞典類等において「VOGUE」あるいは「ヴォーグ」が一流のファッション雑誌である旨の記述がなされていることを認めることができる。

以上の事実に請求の理由を総合すれば、「VOGUE」誌は、1892年アメリカで創刊され、1909年からは、ザ・コンド・ナスト・パブリケーションズ・インコーポレーテッド社により、ファッション雑誌として発行されるようになり(同社が請求人に吸収合併された1988年以降も同社名義で継続して発行されている)、アメリカ、フランス、イギリス等で出版され、世界各国で発売されており、古典的かつ世界的な権威を持ったファッション雑誌として、世界的に広く知られていることを認めることができる。

そしてまた、日本国内においても、「VOGUE」「ヴォーグ」は、本件商標の出願時である昭和55年6月当時はもちろん、その登録時である平成8年7月においても、請求人(当時は、コンド・ナスト社)の発行しているファッション雑誌の題号として、服飾関係の書籍類の取引者、需要者ばかりでなく、ファッションに関連する商品の取引者、需要者間においても広く知られていたものであることを認めることができる。

この点について、被請求人は、我が国における「VOGUE」誌の販売部数が少ないこと等を理由に、「VOGUE」誌は、婦人服飾関係の専門家あるいは婦人服飾関係に強い関心を持つ者のみを読者層とする特殊な雑誌であって、我が国における著名度は限られたものである旨主張するが、被請求人主張の販売部数が少ないこと等の事情も、引用各商標の著名性を左右するものとは認められず、他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。

(2)混同を生ずるおそれについて

本件商標は、別掲のとおり、「日本ヴォーグ社の」の文字を上段に表わし、下段にこれよりも大きなゴシック体の片仮名で「クレェ ヴォーグ」と表したものである(なお、甲第1号証の3「クレェ ヴーグ誌」の創刊0号によれば、「日本ヴォーグ社の」の文字は「クレェ ヴォーグ」の文字に較べて極めて小さく表示されている)。

しかして、本件商標中、下段に大きく表されている「クレェ ヴォーグ」の文字は、「クレェ」と「ヴォーグ」の文字の間に半文字程度の間隔がある構成からみて「クレェ」と「ヴォーグ」の文字を結合してなるものと容易に理解されるものである。そして、「クレェ」の語は、「創造する、作る」等を意味するフランス語の「creer(最初のeにはアクサン記号がある)」の片仮名表示と認められるものであるが、我が国においては、フランス語は英語ほど普及しておらず、直ちに特定の意味合いを認識し得るものとは認められないのに対して、「ヴォ一グ」の文字は、上記のとおり、ファッション雑誌の題号として、服飾関係の書籍類の取引者、需要者ばかりでなくファッションに関連する商品の取引者・需要者間にも広く知られているものである。

そうとすれば、「クレェ ヴォーグ」の文字は、全体として、特定の意味合いを有するものとは認め難いばかりでなく、構成文字全体をもって常に一体的にのみ認識しなければならない格別の事情があるものとも認められないものであって、「ヴォーグ」の文字の出所表示力は、「クレェ」の文字部分に較べて遙かに強いものといわなければならない。

また、上段に表された「日本ヴォーグ社の」の文字も「VOGUE(ヴォーグ)」誌の著名性からみれば、「ヴォーグ」の文字部分に強い出所表示力があるものといわなければならない。

そして、本件商標は、引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品である「雑誌」を指定商品とするものである。

してみれば、本件商標は、その構成中に、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ヴォーグ」の文字を含むものであるから、被請求人が本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者・需要者は、「ヴォーグ」の文字に注意が惹かれ、請求人の著名商標「VOGUE」「ヴォーグ」を連想、想起し、該商品が請求人又は請求人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

この点について、被請求人は、「日本ヴォーグ社の あむあむ」「日本ヴォーグ社の編物ヴォーグ」等の多数の印刷物を出版しており、「日本ヴォーグ社」の文字は編物、手芸の分野において広く知られていたものであるから、本件商標は、全体として「日本ヴォーグ社の発行に係るクレェヴォーグ」という名称の書籍等と認識されることはあっても、「ヴォーグ」の文字部分のみが取り出されて認識されることはない旨主張している。

しかしながら、本件商標構成中の「日本ヴォーグ社の」の文字は、ファッション関係全般にわたって広く知られていたものとはいえないばかりでなく、甲号各証によれば、「VOGUE(ヴォーグ)」の文字は、被請求人会社の創業以前から、請求人の業務に係る「ファッション雑誌」の題号として広く認識されていたものであり、また、甲第85号証の1ないし8、同第83号証及び同第86号証の1ないし13によれば、請求人は、被請求人が「編物ヴォーグ」を出版する以前から「VOGUE KNITTING BOOK」のタイトルの本(昭和40年に「VOGUE KNITTING」と変更されている)を出版しており、該書籍は、昭和33年から、我が国にも輸入販売されていた事実を認めることができる。更に、被請求人は、例えば、甲第72号証によれば、「ヴォーグ月報」と題する印刷物を作成・配付しており、甲第90号証(昭和58年11月1日、被請求人発行の「クレエ1号」)によれば、「ヴォーグ ニット サロン」「VOGUE/KNIT SALOON」「ヴォーグ・ブックセンター」のように「ヴォーグ」「VOGUE」の文字を「日本ヴォーグ社」の文字から独立させて使用している事実を認めることができる。

以上の事実及び事情に照らしてみれば、「日本ヴォーグ社(の)」の文字は、本件指定商品の取引者・需要者一般に、請求人とは何らの関係もない会社の商号の略称であるとの認識のもとに取引に資されていたのかどうか、疑問の残るところであり、加えて、「VOGUE(ヴォーグ)」誌の著名性との対比において、「VOGUE(ヴォーグ)」誌と本件商標とが明確に区別され、混同を生じない程度にまで本件商標が使用され、広く知られていることを認めるに足りる証拠もないから(なお、乙第12号証及び同第13号証は、被請求人の発行する書籍等の全体の発行部数と認められる)、この点についての被請求人の主張を採用することはできない。

また、被請求人は、本件商標の採択にあたり、引用各商標の信用、名声を利用しようとする意図は全くなく、被請求人の使用は正当なものである旨主張しているが、商標法第4条第1項第15号は、フリーライドの意図を含む不正の目的の有無を要件とするものではないから、この点についての主張も採用できない。

(3)結び

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録がなされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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