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Trademark Appeal Case

称呼類似と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2001−35105(T2001−35105/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1.本件商標

本件登録第4287624号商標(以下「本件商標」という。)は、平成10年3月4日に登録出願され、別掲に示すとおりの構成よりなり、第3類「ヘアートリートメント」を指定商品として、平成11年6月25日に設定登録されたものである。

第2.請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、「エスト」の文字と「EST」の文字を2段に横書きしてなり、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、昭和62年3月23日に登録出願され、平成1年10月31日に設定登録された登録第2176893号商標(以下「引用商標1」という。)、同じく「EST」の文字を横書きしてなり、第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,つや出し剤」を指定商品として、平成4年6月19日に登録出願され、平成11年4月9日に設定登録された登録第3371266号商標(以下「引用商標2」といい、一括して「引用商標」という。)である。

第3.請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番を含む。)を提出した。

1.請求の根拠

本件商標は、請求人の所有する引用商標1及び引用商標2に類似し、かつ、両引用商標に係る商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録を受けることができないものである。

(1)本件商標と引用商標の比較について

本件商標からは、別掲の構成に照らして、「ジブンデデキルヘアエステ」「トクニイタンダカミニ」「トウメイヘアマニキュアセイブンハイゴウ」「口シ」「ヘアー」「エステ」「トリートメント」「パック」「エスト」又は「イイエステイ」「ヘアートリートメント」のそれぞれの称呼を生じる。

一方、引用商標にあっては、引用商標1からは、その構成中その片仮名部分より「エスト」の称呼を、英文字部分より「エスト」又は「イイエスティ」の称呼を、引用商標2からは、「エスト」又は「イイエスティ」の称呼を生じる。

上述したように、引用商標の称呼は「エスト」又は「イイエスティ」であるから、引用商標と比較されるべき本件商標の称呼は、上記商標中から当然「エスト」又は「イイエスティ」である。

本件商標において、「エスト」又は「イイエスティ」の称呼の生じる部分は、その構成中ほぼ中央にレタリングを施した「EST」である。

この「EST」は看者をして最も目に触れやすい中央に大きく表記されている。この表示が本件商標の要部をなすものであることは明らかである。

しかも、かかる部分は他の細かい文字に比し、独立して自他商品識別標識としての機能を持つものである。

そして、甲第1号証の3として提出する商標出願・登録情報検索(詳細画面)によれば、本件商標に対して、「エスト」「イイエスティ」の称呼が付与されている。この「エスト」「イイエスティ」の称呼は当然ながら中央に大きく描かれたレタリングを施した「EST」に対してである。

このレタリングを施された「EST」の文字は過去の審査においても「エスト」又は「イイエスティ」と称呼するものとして取り扱われている。

それは、甲第4号証の1に挙げる平成9年商標登録願第108863号の願書(写し)である。

上記の登録出願に係る商標は、本件商標の上述した要部と同一の表記すなわちレタリングを施されている「EST」である。

ところが、この商標は、本件商標に対して引用された引用商標1及び引用商標2が引用されて拒絶されたものである。

すなわち、提出する甲第4号証の2によれば、該商標は、本件商標に引用された甲第1号証及び甲第2号証に示した商標と同一又は類似であって、これら甲号証に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであると認定されたものである。そして、提出する甲第4号証の3に示すとおり拒絶査定となっている。してみると、ここに示された商標の称呼は「エスト」又は「イイエスティ」であると認定されたことになる。そして、本件商標は、この拒絶された商標と同一態様の文字であるところから、「エスト」又は「イイエステイ」の称呼が生じることに疑う余地はない。

したがって、「エスト」又は「イイエスティ」の称呼を生じる本件商標は、「エスト」又は「イイエスティ」の称呼を生じる引用商標と称呼において同一であるから、本件商標は引用商標に称呼上類似する商標である。

(2)指定商品の比較について

本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品とは一見して明らかなとおり、同一又は類似の商品である。

また、請求人は、甲第5号証及び甲第6号証に示すように引用商標と同一性を有する商標を付した引用商標に係る商品を販売している。そして、商品の包装容器には、「est」の文字がはっきりと表記されている。

このように、本件商標を付した商品が市場に出回ったら、称呼上の問題のみならず、視覚を通して反応するその読みが同一であるところから、需要者をして混乱を生じせしめることは必至である。

2.被請求人の答弁に対する弁駁

(1)本件商標の央部のレタリングを施した表示の客観的な称呼は「エスト」又は「イイエスティ」である。

被請求人は、該表示の部分を要部であると認めたうえで先頭の文字は「E」ではなく「F」であるとしている。そして、その根拠として、小文字の「f」を筆記体にて表示したものをレタリングのデザインを取り入れて、大文字にて表現したものである旨(意味不明)を述べるとともに種々の説明をしている。

しかしながら、かかる説明はきわめて矛盾に満ちている。すなわち、該文字の中央の横棒が縦棒に対して真中あたりに位置していないから「E」ではないと述べる一方で、縦棒の下部分については中途半端な形で内側へカーブしているから「F」であると主張しているが、中央の横棒が縦棒に対して真中あたりに位置していないから「E」ではないというのであれば、「F」の文字そのものも下方で横方向内側にカーブすることなどあり得ないのであるから「F」でもないことになる。

もともと該文字はレタリングによるものであるから、文字の一画一画が正確にどこに位置しなければならないという法則によるものではない。

客観的に該文字が「E」を表示したものとして認識されればそれは「E」なのである。

(2)つぎに、被請求人は、本件商標の要部は「Fresh Treatment」なる造語の頭文字をとって「FT」とし、「F」と「T」の間に曲線を描いたものであるとしている。そして、その根拠として、「F」と「T」とは同一のレタリングを施した書体ではあるが「F」と「T」の間は一筆書き部分であると述べている。しかしながら、「F」と「T」とは同一のレタリングを施した書体であるか否かは不明である。かかる説明はきわめて主観的なものである。

(3)本件商標と引用商標の商品との混乱について

被請求人は、請求人の商品と被請求人の商品は流通ルートが異なるから混乱を生じないと述べている。

しかしながら、かかる主張は、商標の本質を全く理解していないものである。

被請求人は、請求人の商品は高級化粧品であり、被請求人の商品はスーパ一等で販売されるものであるから、請求人の主張は受け入れられないと述べているが、請求人の商品が高級化粧品であるからこそ、同一又は類似の商品に同一又は類似の商標が付されてスーパ一等で販売され、そして、それが粗悪品であっても需要者はその商品は、請求人を出所とし、請求人による同一の品質が保証されているものと信じて購入してしまうのである。そうすれば需要者をして混乱することのあることは当然である。

第4.被請求人の主張

被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証(枝番を含む。)及び乙第2号証を提出した。

1.本件商標についての請求人認定に対する反駁

(1)本件商標は、別掲に示すとおりの構成よりなるものである。ここで重要な点は本件商標の要部であり、中央に表記されている「FT」の部分である。この部分について請求人は「『EST』の文字をレタリングを施して.........」と判断しているが、この点には誤解がある。

(2)まず、この要部の先頭の文字であるが、これは「E」ではなく「F」をレタリングしたものである。具体的には、小文字の「f」を筆記体にて表記したものをレタリングのデザインに取り入れて、大文字にて表現したものである。このため、「F」の中央の横棒は全体として上方に付されており、縦棒の下部分は内側へカーブを描いているのである。これが「E」であるならば中央の横棒は縦棒に対して真中のあたりに位置するのが普通であるし、また、縦棒の下部分についてもこのように中途半端な形で内側へカーブを描く必要は全くない。以上より、本件商標の要部の先頭文字部分は「F」であって、引用商標の「E」とは全く異なるものである。

(3)さらに、本件商標の要部は「Fresh Treatment」なる造語の頭文字をとって「FT」とし、その「F」と「T」の間に曲線を一筆書きで描いたものからなる。この一筆書き部分は「本件商標を付した商品(ヘアートリートメント)を使用することによって、生き生きとよみがえった髪」をイメージしたものであり、「S」をレタリングしたものではない。この部分が「S」でないことは、「F」と「T」が変形ゴシック体風の書体により明瞭に文字が認識される状態で記載されていることからも容易に推測できる。というのも、「F」と「T」が同じ書体にてレタリングされているため、一筆書き部分が請求人が指摘するように「S」であるとすれば、同一の書体にてレタリングされているのが自然であり、これを見る者も全体の構成から判断した場合、一見して「S」であると判断するとは考えられない。

これより、本件商標の要部は英文字「FT」をレタリングしたものに「髪」をイメージした一筆書きの図形を結合させたロゴマークであって、請求人の主張するような「EST」をレタリングしたものではないことは容易に理解されるものである。

よって、本件商標の要部は上述のとおり、英文字「FT」をレタリングしたものに「髪」をイメージした一筆書きの図形を結合させたロゴマークである。

2.本件商標と引用商標の比較について

(1)称呼について請求人は「本件商標からは...(中略)...『エスト』又は『イイエステイ』...(中略)...のそれぞれの称呼を生じる。一方、引用商標にあっては、引用商標1からはその構成中その片仮名部分より『エスト』の称呼を、英文字部分より『エスト』又は『イイエステイ』の称呼を、引用商標2からは、『エスト』又は『イイエステイ』の称呼を生じる。」と判断している。

しかしながら、上述したように本件商標の要部は英文字「FT」をレタリングしたものに「髪」をイメージした一筆書きの図形を結合させたロゴマークであるから、特定の称呼は生じない。敢えていうならば、その称呼は英文字として明瞭に認識できる「FT」部分から生じる「エフテイー」のみである。よって、本件商標と引用商標の称呼は明らかに非類似である。

(2)本件商標に係る商標登録出願について、仮に同様の判断をされた場合にそこで反論をすれば十分であると判断して、先の出願については特に対応をせずにいただけのことであり、決して、先の出願についての審査官の認定を被請求人が肯定した訳ではない。したがって、本件商標の要部の称呼が「エスト」又は「イイエステイ」であることを主張するために、被請求人が行った先の出願(平成9年商標登録願第108863号)を持ち出すことは不適切であると言わざるを得ない。

(3)請求人が甲第1号証の3として提出した商標出願・登録情報検索(詳細画面)において付与されている称呼は、あくまでも出願・登録データを検索する上で便宜的に付与されているものに過ぎず、ここに付与された称呼で審査が行われたことを意味するものでは全くない。むしろ、審査の過程とは無関係に称呼が入力担当部署において行われているとするのが相当である。

(4)以上のとおり、本件商標の要部から生ずる称呼は「エフティー」のみであって、「エスト」又は「イイエステイ」なる称呼は到底生じ得ない。よって、本件商標と引用商標の称呼とは非類似である。

また、両商標は、外観、観念について非類似であること明白である。

3.本件商標と引用商標の商品について

請求人は「......商品の包装容器には、『est』の文字がはっきりと表記されている。このようなときに、本件商標を付した商品が市場に出回ったら、称呼上の問題のみならず、視覚を通して反応するその読みが同一であるところから、需要者をして混乱を生じせしめることは必至である。かかる意味合いからしても本件商標は引用商標に類似する。」と主張している。

しかしながら、本件商標の指定商品である「ヘアートリートメント」はいわゆる薬屋、ドラッグストアと呼ばれる店舗、或いはスーパーの日用品売り場等において販売されているものである。これに対して、請求人が製造販売している「est」なる化粧品シリーズは事前にカウンセリングを行うことを一つの目玉としているいわゆる高級化粧品であって、デパートの化粧品売り場においてのみ販売されるものである。この点については乙第1号証の1ないし乙第1号証の4として提出した証拠資料からもわかるように、請求人が製造販売する化粧品「est」は、本件商標を付した被請求人の商品(ヘアートリートメント)とは市場における流通ルートが全く異なる。加えて、その外観も大きく異なるものであるから、需要者をして混乱を生じせしめることは必至であるとの主張は到底受け入れられないものである。

よって、この点からしても本件商標と引用商標は類似するものではない。

したがって、本件商標は引用商標とは、称呼、外観、観念のいずれからしても非類似であるから、指定商品が同一又は類似であっても、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、その登録も同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものではない。

第5.当審の判断

本件商標は、別掲に示すとおりの構成よりなるところ、本件商標と引用商標との類否の判断をするにあたり、本件商標から「エスト」又は「イイエステイ」の称呼を生ずるか否かについて、両当事者間に争いがあるので、この点について判断する。

請求人は、本件商標がその構成中ほぼ中央のレタリングを施した「EST」の文字部分(以下、「レタリング部分」という。)より、「エスト」又は「イイエステイ」の称呼を生ずると主張し、他方、被請求人は、該部分からは称呼は生じない。あえていうなら、レタリングした「FT」の文字部分から「エフテー」の称呼のみを生ずると主張している。

そこで本件商標をみるに、該レタリング部分は、本件商標を構成する他の文字及び図形を上下に配した、縦長の逆台形内のほぼ中央に圧倒的に大きく表されているものであり、強く看者の注意を惹くものである。そして、該レタリング部分の中央には、上下の両端を細く真ん中を太くした波形の図形を大きく縦に描き、これを挟むように左右に欧文字風の線書きの図形を配してなるものである。その中央の波形の図形部分と左右の欧文字風の線書きの図形部分とは、その大きさが異なり、色彩も前者は薄く灰色に近く、後者は濃く黒色に色分けして表してなるものである。

しかして、かかる構成態様の該レタリング部分にあっては、その構成部分が各々左から欧文字の「E」「S」「T」を表したと看取することはできないものであり、特定の称呼及び観念を生ずることのないモノグラム風の図形を表現したものとして看取されると判断するのが相当である。

そうとすれば、本件商標より、上記の主張のほか甲第1号証の3及び甲第4号証の1を挙げて「エスト」又は「イイエステイ」の称呼を生ずるとし、そのうえで本件商標と引用商標とが称呼上、類似するものであるとする請求人の主張は、本件商標については前記認定を妥当とするところであるから、採用することはできない。

そのほかに、本件商標が引用商標と称呼上、類似するとすべき点は見当たらない。

また、引用商標は、前記第2.のとおり「エスト」と「EST」の文字を二段に横書きするものであるか、「EST」の文字を横書きした構成よりなるものであるから、本件商標とは、外観においては明らかに区別し得る差異を有するものであり、かつ、両商標は、観念上において比較することができない。

してみれば、両商標は、その外観、称呼及び観念のいずれからしても類似するものとすることはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項により無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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