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Trademark Appeal Case

商標不使用取消と証拠

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成9年審判第10994号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

商標法第50条の規定により、登録第 571726号商標の登録は、取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

I 本件商標

本件登録第571726号商標(以下、「本件商標」という。)は、昭和34年11月5日に登録出願され、「ホビー」の文字を横書きしてなり、第36類「被服、手巾、釦紐及び装身用『ピン』の類」を指定商品として、同36年5月1日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

II 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由および答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証および甲第2号証を提出した。

1.被請求人は、本件商標をその指定商品である第36類「被服、手巾、釦紐及び装身用『ピン』の類」のいずれについても継続して3年以上使用していない。

また本件商標については、専用使用権、通常使用権の設定登録もされておらず通常使用権者も存せず、これらの者によって本件商標が上記商品について使用された事実はない。

以上の通り、被請求人は本件商標を使用していないものであるから、本件商標の登録は取り消されるべきである。もとより、被請求人が本件商標を使用していないことについて、正当な理由を有する余地はない。

よって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。

2.被請求人より提出された平成9年9月29日付審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)及び同10年4月13日付審判事件答弁理由補充書(以下「答弁理由補充書」という。)に対し以下のとおり反論する。

(1)所定の期間内に答弁がなされなかった点

不使用取消審判の請求がなされた場合には、当該登録商標をその請求に係る指定商品のいずれかについて使用していることを被請求人が証明しない限り、当該商標の登録は取り消される(商標法第50条)。この証明期間として、答弁書提出期間が指定され、被請求人はこの期間内に当該登録商標の使用事実を主張、立証しなければならない。

しかるに、被請求人は、指定された期間の末に平成9年9月29日付答弁書を提出したのみで、当該指定期間内に何等の主張を行なわず実質的な証明資料を一切提出していない。

平成10年4月13日付答弁理由補充書は、それより半年以上もの期間を経過して提出されたものである。外国人に対する延長期間、3ケ月を考慮したとしても、著しく不自然な期間を経過した後に初めて提出されたものであって手続の適正に反し、かつその信憑性に疑念を抱かせるものである。

被請求人が実際に登録商標を使用し、あるいは使用許諾をしているのであればその使用を示す証拠資料は容易に、かつ速やかに提出できる筈である。

答弁理由補充書及び乙各号証は、指定期間を半年以上経過して提出されたものであって、かかる主張及び資料の成立、その内容を認めることはできない。

(2)本件商標の使用の事実が立証されていない点

▲1▼被請求人は、本件審判における主張の概要について略述している。この点については被請求人主張の通りであることはこれを認める。

▲2▼被請求人は、本件商標め使用の事実が乙第1号証に示されていると主張する。しかし、この点に関する被請求人の主張は認めない。本件商標と同一の商標を通常使用権に基づき使用していた事実も示されていない。

乙第1号証の成立は否認する。中小企業においてもこの種伝票はコンピューター処理が当然となっているところ、手書きによる不自然なものである。しかも、誤記、訂正が多く、訂正印も捺印された箇所とされていない箇所があり、訂正の真偽も疑わしい。

被請求人のいう証明文についても、その内容も不自然であるし、そもそも証明者の資格の記載、その捺印すらない。かかる資料をもって証明書たりうるものではない。

内容に関する不自然な一例を示すと、被請求人は、乙第14号証のインボイスに示す輸入を行ない、「Tシャツ15枚を含む米国ホビー社...」と主張している。そして、被請求人のいうように乙第14号証には「T−Shirts 15pcs」の記述がある(他に「T−Shirts」に関する記述はない)。しかるに、乙第1号証では「ホビーカルフォルニア」40枚を含む合計83枚の記述があり、「Tシャツ15枚」としている被請求人自らの主張と矛盾する。

乙第2号証もその文書の一部が削除されており全体としての趣旨は不明なものであって、その真正を客観的に納得させるものではない。

以上の通り、乙第1号証、乙第2号証をもって、平成9年7月10日付で本件商標を付した「Tシャツ」が売り上げられ、そこに本件商標が使用されていた事実を立証することはできない。

(3)通常使用権者による使用が立証されていない点

▲1▼被請求人は、乙第1号証に示す平成9年7月10日付の使用は通常使用権者の使用であると主張する。しかし、この時点で通常使用権者たる地位にあった事実は何等示されておらず、また、本件商標と同一性を有する商標が本件商標の指定商品に使用されていた点も証明されていない。

そして、乙第4号証として示す「通常使用権者」のパンフレットは、全文が英文にもかかわらず翻訳文は一切添付されていない。審判におけるこの種書証の扱いに関する実務よりしても提出書類として認められるものではない。成立時期も不明である。そもそも、一般の通念よりしてもかかる英文のパンフレットをもって我が国における商標使用の事実を証する資料たりうるものではない。これがアメリカ合衆国内において頒布されたであろうことは理解しうるが、我が国における使用を合理的に示すものではない。また、ここに記載される内容についてみても、商品は「サーフボード」「セイルボード」「サングラス」等を主体とするものであって、被請求人の主張する「T−Shirts」はない。

▲2▼被請求人は、商標権譲受交渉の経緯を詳細に主張し資料を提出している。これと対照的に、通常使用権許諾の経緯については、平成9年7月10日の使用は通常使用権者の使用であると結論を主張するのみで、その内容、成立について何等の主張、立証を行なっておらず、通常使用権が許諾されていなかった事が明白である。そもそも、被請求人が乙第12号証として提出しているとおり、捺印を依頼する白紙の譲渡証書用紙が商標権者に送付されたのが平成9年8月8日とされている。したがって、本件不使用取消審判の予告登録がなされた平成9年7月30日以前に譲渡契約が成立していたものではないことは明白である。そして、譲渡契約の成立以前に通常使用権設定の効力を主張しうるものではないし、かかる契約を別途行なうということもありえない。この種実務に関する経験法則よりして通常使用権の許諾があったというのは不自然である。

▲3▼乙第13号証には商標権者の捺印が付されている。しかしこれ以前の経緯に関し詳細な文書を提示していることと比較すると当該文書を送付した日付を示す書状は一切提出されておらず不自然である。乙第12号証の存在から明かなとおりこれが平成9年8月8日以前に作成されたことはありえないし、実際にはこの送付は相当遅れてなされたことが合理的に判断される。そもそも、当該移転登録申請自体なされていないのであり、未だ商標権移転契約が成立していないとも推測される。

以上の通り、乙第3号証ないし乙第14号証をもって、平成9年7月10日付で本件商標が通常使用権者により使用されている事実は立証されていない。

4.本件審判の請求が権利濫用にあたるものではない点

(1)被請求人は、本件審判の請求は被請求人を害する目的でなされたものであって、権利濫用であると主張するが、この点の主張も否認する。そもそも、乙第15号証に示す記述は請求人適格の緩和に関係して記述された解釈論であって、条文上明記されているものではない。

不使用の商標が取り消されるべきことは、商標使用により商標に化体した業務上の信用維持を目的とする商標制度の特質よりして当然である。また、あらゆる手続をなすについて、それが権利濫用にあたるものであってはならないことも当然である。ここにおいて、いかなる行為が権利濫用に該当するかは議論されていない。しかし、請求の利益の存在を要件としていて実効を図れなかった旧法を改正した趣旨よりして、ここにいう権利濫用とは商標制度の目的を根本的に損う例外的な行為に限定されることはいうまでもない。

請求人は、被請求人たる商標権者、株式会社三越に対し、本件不使用取消し審判請求を手段としていかなる要求を行なうものではなく、単に障害となる登録を取り消すことを求めるに過ぎない。登録の取消し自体を不当なものと解釈することは、不使用取消審判制度の趣旨よりしてありえない。本件審判の請求は正当なものである。

▲2▼本件審判の請求を行なったのは、請求人が自らの業務の障害となる不使用商標の登録を取消すためであって、不使用商標の整理という商標制度目的とも合致するものである。出願の適否に関する判断はその出願に関しなされればよく、不使用商標の整理を目的とする不使用取消し審判制度に関し、不使用商標の整理は公益に合致する望ましい事態である本件商標権者と請求人との間で本件審判の請求以外の関係はなく、これが広く検討しても何等の権利濫用行為を構成するものではない。

III 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至乙第19号証を提出した。

1.被請求人は、通常使用権者により、日本国内において、本件審判の予告登録前3年以内に本件商標をその指定商品に使用しているので、それを証明するために、本件商標に関する使用説明書(以下、「使用説明書」という。)を提出する。

使用説明書に添付した乙第1号証は、エスパトレーディング株式会社(以下、「エスパトレーディング」という。)が、ヴィクトリアヴィエント店に商品「Tシャツ」を販売した売上伝票の写である。乙第1号証には、伝票番号及び取引先コード記載欄の左側に年月日「9.7.10」の記載があり、さらにその左側に「ホビー」の文字が片仮名で記載されている。また、これらの記載欄の下方の「商品コード・品名・色番・カラー、数量、単位、納入単価、金額等」の記載欄には、上から順に「ホビーカルフォルニア」「フィルエドワーズ」「バンブーフレーム」の品名が記載されている。そして、乙第1号証は、1997(平成9)年12月25日に、エスパトレーディングの専務取締役である森田氏から曽我特許事務所の喜多様宛にファクシミリ送信された売上伝票の写であって、その中には、「上記3点ホビーのTシャツの販売においての納品書です。」と記載されている。

また、平成10年2月19日付け曽我特許事務所弁理士岡田稔(担当:喜多佳子)から被請求人代理人木戸一彦宛ファクシミリ受信状写(乙第2号証)によれば、上記ヴィクトリアヴィエント店は東京都千代田区神田小川町に所在している。

したがって、乙第1号証は、エスパトレーディングが日本国内に所在するヴィクトリアヴィエント店へ本件審判の予告登録日である平成9年7月30日以前の平成9年7月10日に商品「Tシャツ」を売上げた事実を示すものであり、売上伝票の性格から、片仮名文字の「ホビー」は、納入された商品「Tシャツ」の商標を表していることは明らかである。

以上のことから、本件商標は、本件審判の予告登録前3年以内に日本国内においてその指定商品に使用している。

2.乙第1号証に係る本件商標が通常使用権者により使用された経緯について以下に説明する。

(1)本件商標については、まず、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市在のトーメン アメリカ インク 〔TOMEN AMERICA INC.〕の衣料部 久安邦明氏(以下、「トーメンアメリカ」という)から被請求人の業務本部法務部田丸マネージャー宛の1997(平成9)年5月8日付け書簡写(乙第3号証)にて、被請求人の所有する登録商標「ホビー」を米国ホビー(HOBIE)社に譲渡できないかとの申し入れがあった。

米国ホビー(HOBIE)社とは、乙第3号証に記載されているHOBIE社のカタログ写(発行日不明)(乙第4号証)に示されるように、アメリカ合衆国 アイダホ 83638 マッコール スイート 202 ノース サード ストリート 502(502 North Third Street,Suite 202,McCa11,ID 83638)に所在のホビー ブランズ インターナショナル リミテッド カンパニー(Hobie Brands International、以下「米国ホビー社」という。)である。

なお、乙第3号証に記載の登録番号591453に係る商標「ホビー」は、第17類の「寝具類」を指定商品とするもので他人が所持するものであり、差出人が本件商標と勘違いして誤記したものである。

上記申し入れに対し、被請求人は、トーメンアメリカ宛の平成9年6月10日付けファクシミリにて(当該ファクシミリ送信状の写しを乙第5号証として提出する)、譲渡する意向があることを伝えるとともに、譲渡手続に必要な事項等について問い合わせた。

トーメンアメリカからは、被請求人宛平成9年6月11日付けファクシミリ受信状写し(乙第6号証)にて、譲受人の社名及び住所等や移転登録申請手続を譲受人の代理人により行いたい旨の回答があり、さらに平成9年6月12日付けファクシミリ受信状写(乙第7号証)にて、譲受人が使用する代理人事務所及び代理人弁理士名を連絡してきた。代理人は曽我特許事務所(S.SOGA&CO)の黒岩徹夫弁理士である。

被請求人は、トーメンアメリカ宛の平成9年6月13日付けファクシミリにて(当該ファクシミリ送信状の写を乙第8号証として提出する)、乙第6号証及び乙第7号証に基づいて社内決裁を受けるため、正式な回答を暫く待ってほしい旨の連絡をした。

トーメンアメリカから、被請求人宛平成9年6月30日付けファクシミリ受信状写し(乙第9号証)にて、その後の経過を尋ねてきた。

これに対し、被請求人は、トーメンアメリカ宛の平成9年7月3日付ファクシミリにて(当該ファクシミリ送信袂の写しを乙第10号証として提出する)、本件商標の譲渡について社内決裁がおりたこと、並びに先般連絡を受けた代理人の弁理士名が違っていることを連絡した。これに対し、トーメンアメリカから被請求人宛平成9年7月3日付ファクシミリ受信状写し(乙第11号証)にて、譲渡許諾のお礼と代理人の正式な弁理士名を連絡してきた。

その後、譲受人の代理人曽我特許事務所の弁理士黒岩徹夫氏から、被請求人宛平成9年8月8日付け書簡写(乙第12号証)とともに、譲渡証用紙として「譲渡証及び承諾書」が被請求人に送られてきた。

被請求人はこの「譲渡証及び承諾書」に捺印して(譲渡証及び承諾書の写を乙第13号証として提出する)、譲受人の代理人弁理士に届けたが、この間に本件商標に係る審判請求書が送達されてきたので、譲渡手続は中断している。

(2)一方、この譲渡交渉と並行して、米国ホビー社の商品を日本において販売することについて、米国ホビー社とエスパトレーディングとの間で商談が成立し、アメリカ合衆国カリフォルニア在のサミット インターナショナル,エルエルシ−(Summit International,LLC)の1997年6月6日付けインボイス写し(乙第14号証)に示されるように、「Tシャツ」15枚を含む米国ホビー社の商品(Attached Sheet参照)がエスパトレーディングに輸出された。

このため、乙第16号証により本件商標の譲渡許諾の回答を得た米国ホビー社は、商品「Tシャツ」等の販売が譲渡手続完了後では時機を失することから、商品「Tシャツ」について本件商標の使用許諾を口頭で申し入れてきたのに対し、被請求人は通常使用権を許諾する旨米国ホビー社に口答した。

この通常使用権に基づいて、上述のように、エスパトレーディングは、平成9年7月10日に米国ホビー社の商品「Tシャツ」をヴィクトリアヴィエント店に販売した。

したがって、乙第1号証に表示されている商標「ホビー」は、通常使用権者の使用に関わるものである。

以上のように、本件商標は、通常使用権者が日本国内において、本件審判の予告登録前3年以内にその指定商品に使用していることは明らかである。

(3)平成9年4月1日以降の請求に関わる商標法第50条の規定による不使用取消審判は、「何人」も請求できることに改正された。

しかしながら、平成8年9月6日特許庁作成の「平成8年改正商標法等の概要〔基本・運用編〕」の第13頁(乙第15号証)によれば、「請求人適格を『何人』にすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は、権利濫用として認められない。」との特許庁の運用基準又は運用指針が記載されている。

そこで、請求人の請求行為について調査検討してみたところ、請求人は、平成9年1月17日付けで、商品区分第25類の「被服」等に出願(商願平9−3000号)(乙第16号証)している。

したがって、請求人は、本件商標を取り消すことによって、乙第16号証に示す商標の登録を図るものであることは明らかである。

しかしながら、乙第16号証の商標は、乙第4号証の米国ホビー社のカタログの第1頁下部にも明記されている、菱形の図形にHobieの文字を組み合わせた商標(乙第17号証)と酷似した商標である。尚、乙第17号証の商標はわが国においても、サーフボード、スケートボード、スノーボード等の愛好者の間では周知・著名であり、この商標の付した衣服等もこれらの愛好者の間で人気がある。

してみると、本件審判の請求行為は、本件商標を取り消すことにより、乙第17号証に示す米国ホビー社所有の著名商標と酷似する請求人出願の商標の登録を図り、もって、日本国において乙第17号証に示す商標について正当に登録することができる権利を有する米国ホビー社に係る商標の登録を阻止することと併せて、日本における乙第17号証に係る商標の使用を阻止する行為に繋がるものであるといえる。

したがって、本件審判の請求時に請求人が意図していないとしても、結果的にこの請求行為は、被請求人を害することを目的としているといわざるを得ないから、本件審判の請求は、権利濫用として認められない。

(4)所定の期間内の答弁{II2.(1)}について

被請求人は、指定期間内に答弁書を提出し、通常使用権者が外国籍のため、資料の収集に若干の時間を要するので、具体的答弁の猶予を願い、その後、答弁理由補充書及び使用説明書を提出している。

したがって、被請求人は、所定の期間内に答弁をしており、本件商標の使用の事実を立証している。

(5)本件商標の使用の事実の立証{II2.(2)}について

▲1▼第1号証は、売上伝票写であって、この種の伝票を手書き処理することは、商取引において日常的に行われていることで、決して不自然なことではなく、訂正印も商取引上重要な金額欄に捺印しており、訂正に何等問題はない。また、乙第1号証に記載された「森田」なる氏等は、売上伝票をコピーした余白に載記されており、かつ、曽我特許事務所 喜多様へのファクシミリの発送人としての記載であり、証明者の資格記載や捺印を必要とするものではない。

▲2▼乙第14号証は、米国ホビー社の商品を輸出するSummit International,LLCがエスパトレーディングに対し発行したインボイスであり、乙第1号証はエスパトレーディングからヴィクトリアヴィエント店への売上伝票であるので、乙第14号証と乙第1号証に記載された商品「Tシャツ」のそれぞれの数量が相違していてもなんら矛盾はなく、合理的である。

▲3▼また、乙第2号証は、乙第1号証における販売先「ヴィクトリアヴィエント店」が日本国内に所在することを証明するものであるから、その所在地が記載されていれば十分であり他の記載を削除しても、その真正を客観的に納得させるものである。

▲4▼上述のように、乙第1号証は、エスパトレーディングが日本国内に所在するヴィクトリアヴィエント店へ商品「Tシャツ」を売上げた事実を示すものであり、乙第2号証は乙第1号証に記載の「ヴィクトリアヴィエント店」の所在地を示すものであるから、日本国内において、商品「Tシャツ」について商標「ホビー」を、本件審判の予告登録日である平成9年7月30日以前の平成9年7月10日に使用した事実を証明している。

(6)通常使用権者による使用の立証{II2.(3)}について

▲1▼本件商標の通常使用権許諾は口答で行われたものであり、乙第1号証における使用は、これに基づくものである。

▲2▼乙第4号証は、さきのIII2.(3)中及び乙第3号証に示すように、本件商標の譲渡交渉の仲介をしたトーメンアメリカが商標権者である被請求人に米国ホビー社の概要を知らせるために送付したものであり、この資料は、商標権譲受交渉の経緯を示す資料として提出したものであって、「通常使用権者」の我が国における商標使用の事実を証する資料として提出したものではないことは先で述べた通りである。なお、乙第4号証には、第5頁に「SHORTS,SHADES,SHIRT」と記載されており、第6頁には商品「Tシャツ」についても掲載されている。

▲3▼乙第10号証及び乙第11号証をみれば、本件審判の予告登録日以前に譲渡交渉が成立していることは明らかであり、さらに、この事実を裏付ける証拠として乙第18号証を提出する。

乙第18号証は、米国ホビー社の米国代理事務所であるロイス,ライス&フィンガーシュ法律事務所(LEWIS,RICE&FINGERSH A LIMITED LIABILITY COMPANY ATTORNEYS AT LOW、住所:500 N,BROADWAY,SUITE 2000 ST.LOUIS,MISSOURI 63102−2147)のEriC D. Paulsrud弁護士から曽我特許事務所の黒岩徹夫弁理士宛の1997(平成9)年7月3日付け書簡写であって、この書簡にも、米国ホビー社と被請求人との間で譲渡の合意が成立した旨が記載されている。

なお、譲渡交渉と通常使用権許諾交渉を別途行うことはしばしば有りうることである。

(7)本件審判の請求の権利濫用{II2.(4)}について

▲1▼乙第16号証に示される請求人が出願した商標は、乙第17号証に示される米国ホビー社の商標と酷似した商標であり、特に、英文字部分は同一の書体である。これをみれば、請求人は、米国ホビー社の承諾を得ずに、米国ホビー社の商標を意識して乙第16号証に示される商標を出願したことは明かである。

▲2▼さらに、この事実を裏付ける証拠として乙第19号証を提出する。

乙第19号証は、上述の米国ホビー社の米国代理事務所のRobort B.Hoemeke弁護士から曽我特許事務所の黒岩徹夫弁理士宛の1997(平成9)年10月8日付け書簡写であり、この書簡には、ナガスギ(請求人永杉豊と同一人と認められる)氏に、Hobie(ホビー)が三越と協定をしようとしていることが知られたこと、及びナガスギ氏は、三越とHobieとの協定によって商標「ホビー」の譲渡が成立した場合には、ナガスギ氏が代理しているU.S.ユナイテッドがその譲渡を凍結し、U.S.ユナイテッド自身で片仮名の「ホビー」の登録を得ようとすることが述べられている。したがって、乙第19号証によっても、ナガスギ氏が不当な理由で米国ホビー社の日本における商標の登録を阻止することは明らかであり、米国ホビー社が米国で使用している商標を日本においても登録して世界的に共通の商標を使用しようとする正当な商行為を阻害することになり権利濫用である。

IV 当審の判断

被請求人は、本件商標は通常使用権者によって使用されている旨主張しているが、被請求人の提出に係る乙第2号証、乙第3号証及び乙第5号証乃至乙第13号証によれば、被請求人が通常使用権者であるとする米国ホビー社については、本件商標の譲渡交渉を行っていたことが窺えるとしても、通常使用権を許諾したことを裏付ける証左はなく、米国ホビー社が本件商標の通常使用権者であるとは直ちに認め難い。

そして、被請求人は、乙第1号証はエスパトレーディングがヴィクトリアヴィエント店に商品「Tシャツ」を販売した売上伝票の写しであるとしている。しかしながら、エスパトレーディングと本件商標に関する通常使用権者であるとする米国ホビー社との関係については、米国ホビー社の商品を日本において販売することについて、商談が成立した旨述べているのみであり、他にエスパトレーディングが通常使用権者であることを示す証左はないから、エスパトレーディングが通常使用権者であるともいい難い。

また、乙第14号証のインボイスによれば、サミット インターナショナル,エルエルシーよりエスパトレーディングへ「Tシャツ」15枚等が輸出されたとしているが、そのサミット インターナショナル,エルエルシーと米国ホビー社の関係は何等示されず、しかも、「Tシャツ」等が米国ホビー社の商品であるとする裏付けも何等示されていない。

そうとすれば、被請求人の提出に係る上記の証拠を含む乙各号証を総合勘案しても、本件商標に関する通常使用権者が本件商標を商品「Tシャツ」について使用していたということはできない。

してみれば、本件商標は、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれかによって、継続して本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品について使用されていたものということはできないし、使用していないことについての正当な理由も認められない。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。

また、被請求人は、商願平9−3000号(乙第16号証)との関係について種々述べているも、これは該出願の審査の判断に委ねるべきものであり、本件審判の直接的な審理の要件とはなり得ないので、この点については採用をしない。そしてまた、本件審判の請求は、権利濫用に基づくものである旨述べるも、例えば、請求人が被請求人を害することを目的としていることを示す具体的事実等の提示、及び、これらを客観的に把握できるような証左の提出もなく、請求人の障害となる登録の取り消しを求めることをもって直ちに権利濫用ということはできないから、その主張は採用できない。

よって、結論のとおり審決する。

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