Trademark Appeal Case
著名商標と人名使用
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90035号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4188818号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成8年12月27日に登録出願、第25類「履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成10年9月18日に設定の登録がされたものである。
2 登録異議申立ての理由
本件登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、異議申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第62号証を提出した。
(1)本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏の著名な略称を含むものであり、同人の承諾を得たものでないから、その登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものである。
(2)本件商標は、申立人の引用に係る商標、すなわち、商標の構成を「VALENTINO GARAVANI」の欧文字とし、指定商品を「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」として登録された登録第1786820号商標(以下、「引用商標」という。)と類似し、指定商品も抵触するものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
(3)申立人は、引用商標のほか、衣料品類、宝玉・装身具類、喫煙用具類についても、商標登録第852071号(「VALENTINO」)、同第1415314号(「VALENTINO GARAVANI」)同第972813号(「VALENTINO」)、同第1793465号(「VALENTINO GARAVANI」)同第1402916号(「VALENTINO GARAVANI」)を所有している。そして、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」商標は、申立人に係る婦人服・紳士服・ネクタイ等の被服類、バッグ類、靴類ほかライター等を表示するものとして本件商標の出願前すでに著名となっていたものであって、本件商標を前記著名商標の使用に係る上記商品と同じ服飾品として密接な関係にある指定商品について使用した場合、需要者がその出所について混同を生じさせるおそれがあるから、その登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
3 本件商標の取消理由
登録異議の申立てがあった結果、商標権者に対し、期間を指定して意見を述べる機会を与えて通知した本件商標の取消理由(平成13年8月20日付取消理由通知)は、要旨次のとおりである。
<取消理由>
申立人の提出に係る証拠(甲各号証)によれば、次の各点が認められる。
(1)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名デザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。以来、同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで広く知られる国際的デザイナーの一人と認められる。
(2)わが国において、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)の名称(氏名)または標章(以下、「申立人商標」という。)は、前記1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞を契機に知られるようになり、同時にその製作・発表に係る作品群、すなわち、その取扱いに係る婦人服その他の衣料品、かばん類、はき物類ほかファッション関連各商品を表彰するいわゆるデザイナーズキャラクターブランドとして、ファッション関連雑誌、新聞等により屡々日本国内にも紹介されてきたことが認められる。また、この間、日本及び極東地区総代理店として昭和49年に設立された「株式会社ヴァレンティノヴティックジャパン」の事業展開と相俟っていわゆるヴァレンティノ(VALENTINO)製品の輸入、販売及びその広告・宣伝活動が活発に行われてきた状況を窺うのに十分である。
これら事情よりして、前記デザイナーの氏名ないしその作品群またはそれら取扱いに係る商品を表示する申立人商標は、わが国において、少なくとも昭和50年代前半においてすでにわが国の需要者一般に広く認識せられるに至ったいわゆる著名商標と認め得るものである。
(3)前記デザイナー名称または申立人商標は、一方において、前出新聞、雑誌の記事や見出し中において、単に「VALENTINO」または「ヴァレンティノ」の省略形または略称(以下、「略記商標」という。)をもって取り扱われている事実があり、ファッション関連分野において「VALENTINO」(ヴァレンティノ)といえば前記デザイナーに係る商品を表示するものとして、申立人商標と同様に需要者間に広く認識せられるに至ったものと認められる。
すなわち、当審において調査するに、申立人商標はわが国において、「VALENTINO」、「ヴァレンチノ」または「ヴァレンティーノ」の略記(略称)をもって取り扱われていることが田中千代著同文書院1981年発行「服飾辞典」、山田政美著株式会社研究社1990年発行「英和商品辞典」、金子雄司ほか著岩波書店1997年発行「世界人名辞典」の当該各項の記載に徴して認め得るところであり、このほか、女性雑誌等においても、たとえば、「marie claire」(マリ・クレール)1996年2月号、「nonーno」(ノンノ)1989年12月号における当該記事の見出し表示等よりして、その状況が十分に窺われる。
(4)前述わが国への進出時期と前後する昭和43年頃から同49年にかけて、申立人会社は、「VALENTINO GARAVANI」または「VALENTINO」商標のわが国における使用権確保と他人による使用を排除すべく、被服、布製身回品、寝具類、はき物、装身具類、かばん類、宝玉類、喫煙用具その他いわゆるファッション関連各商品分野において商標登録出願を行い(爾後、商標登録済み。)、その後も引き続き関連商標について商標登録し権利確保を図ってきた状況が認められる。
以上、(1)ないし(4)の各点よりして、略記商標は、申立人商標と同様に、国際的デザイナーの一人に数えられる前記デザイナーまたは申立人会社に係る婦人服、紳士服等の衣料品、かばん類、宝玉その他装身具類、はき物類及び喫煙用具等の各商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時(平成8年)はもとよりそれ以前においてすでにわが国の需要者間において広く認識せられたいわゆる著名商標と認め得るものであって、その状況は本件商標の登録査定時である同10年8月3日の時日においてもなお同様であったものと認められる。
ところで、本件商標はその構成別掲のとおりのものであって、下段の文字部分はそれ自体独立して自他商品の識別標識として機能し得るものと認められる。そして、同文字部分は、視覚上左側の「iCE」と右側の「VALENTINO」とに分離して看取し得るばかりでなく、意味上においてこれら文字を常に一体のものとして把握しなければならないような特段の事情は見出せない。また、全12文字中9文字と視覚印象に占める割合も大きい部分というべき「VALENTINO」の文字部分は前記認定の略記商標と同一の文字綴りであり、かつ、その指定商品は申立人商標または略記商標の使用に係るはき物類その他関連各商品を含むものと認められる。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する需要者は、前記各事情よりして、略記商標または申立人商標を容易に想起するとともに、その商品があたかも上記デザイナーまたは申立人会社ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を来すおそれが少なからずあったとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
4 商標権者の意見
上記の取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のように述べている。
(1)ファッション関係業界において、「VALENTINO GARAVANI」や「Valentino Garavani」の語が、イタリア国のファッションデザイナー「Valentino Garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」の氏名を表示するものとして使用されているものであることは認めるが、本件商標の指定商品において「VALENTINO」のみの語に接した需要者において、それを特定人の標章であるとは認識されないものである。
即ち、「MARIO VALENTINO」「VALENTINO」(乙第1号証ないし同第3号証)等の商標権が、申立人とは別個のマリオ・バレンチーノ(デザイナー)によって登録され、現在も有効に存続し、使用されている。
さらに、イタリア等では「VALENTINO」はありふれた名前の一つにすぎない。
また、我が国の業界においても、標章の一部にバレンチノ(VALENTINO)を含む数多くの商標が、様々な態様で数十年前より様々な商品に使用されている。
(2)本件商標は、一体に表示された外観よりなり、その文字部分も同書同大の文字を等間隔に一体的に表し、これより生ずる称呼も特段冗長でなく一連に淀みなく発音されるから、常に一連一体の「iCEVALENTINO」または「アイスバレンチノ」あるいは「アイスバレンティノ」とのみ称呼し観念される商標である。
使用の実績においても、出願時より、本件商標をその指定商品の一つである「靴」に使用しているが、その商品がイタリアのデザイナーのヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏に係る、またはその関連の事業者によるものと誤認混同を生じたとの報告や問い合わせはない。
(3)以上のとおり、本件商標は、上記3で引用する著名な商標「VALENTINO GARAVANI」と類似するものではなく、さらに「VALENTINO」とも非類似のものであり、また、他人の業務に係る商品と誤認混同するおそれもないから、商標法第4条第1項第15号に該当しないものであって、本件異議申立による取消の理由はない。
5 当審の判断
本件商標についてした上記3の取消理由は妥当であって、本件商標は他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
商標権者は、イタリア国のファッションデザイナーに係る商標は「VALENTINO GARAVANI」として著名なのであって、「VALENTINO」の文字のみで著名とはいえず、本件商標は一体のものであって、「VALENTINO」の文字部分のみを抽出して認識されるとする理由は見当たらないとし、本件商標を使用した商品と「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商品との間に出所の混同を来すおそれはない旨意見を述べているが、「VALENTINO」の文字が上記デザイナーに係る一連の作品群(デザイナーブランド)を表すものとして著名であることは上記取消理由で述べたとおりであり、かつ、本件については、商標自体とそのほか諸般の事情、すなわち、本件商標の指定商品の分野における需要者一般の注意力の程度、申立人商標又は略記商標の著名性ほか取引の実情を総合判断するに、前記認定を相当とするから、商標権者の述べる意見は採用することができない。
このほか、商標権者の述べる意見はいずれも妥当性を欠くものであって、採用の限りでない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべく、その登録は、同法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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