Trademark Appeal Case
著名氏名と商標の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90168号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4195997号商標(以下「本件商標」という。)は、平成9年6月17日登録出願、商標の構成を「VALENTINOINTERNALE」の標準文字とし、第25類「洋服,コート,セーター類,毛皮製ストール,帽子,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」を指定商品として、同10年10月9日に設定の登録がされたものである。
2 登録異議申立ての理由
本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、異議申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第62号証を提出した。
(1)本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏の著名な略称を含むものであり、同人の承諾を得たものでないから、その登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものである。
(2)本件商標は、申立人の引用に係る商標、すなわち、商標の構成を「VALENTINO」、「バレンチノ」又は「VALENTINO GARAVANI」の文字又はこれら文字を主要部とし、指定商品を衣料品類、履物類、宝玉・装身具類等としてそれぞれ登録された商標登録第852071号、同第4084774号、同第3150659号、同第1415314号、同第972813号、同第1793465号及び同第1786820号の各登録商標(以下、一括して「引用商標」という。)と類似し、指定商品も抵触するものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
(3)申立人は、引用商標のほか、喫煙用具類についても、商標登録第1402916号(「VALENTINO GARAVANI」)を所有している。そして、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」商標は、申立人に係る婦人服・紳士服・ネクタイ等の被服類、バッグ類、靴類ほかライター等を表示するものとして本件商標の出願前すでに著名となっていたものであって、本件商標をその指定商品について使用した場合、需要者がその出所について混同を生じさせるおそれがあるから、その登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
3 本件商標の取消理由
登録異議の申立てがあった結果、本件商標の登録を取り消すべきものとして商標権者に対して通知した取消理由(平成13年8月15日付取消理由通知書)は、要旨次のとおりである。
<取消理由>
本件商標は、平成9年6月17日登録出願、商標の構成を「VALENTINOINTERNALE」の欧文字とし、第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とするものである。
申立人の提出に係る甲各号証(甲第2号証ないし甲第62号証)によれば、次の各点が認められる。
(1)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名デザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。以来、同氏は、イタリア・ファッションの第一人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで広く知られる国際的デザイナーの一人と認められる。
(2)わが国において、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)の名称(氏名)または標章(以下、「申立人商標」という。)は、前記1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞を契機に知られるようになり、同時にその製作・発表に係る作品群、すなわち、その取扱いに係る婦人服その他の衣料品、かばん類、はき物類ほかファッション関連各商品を表彰するいわゆるデザイナーズキャラクターブランドとして、ファッション関連雑誌、新聞等により屡々日本国内にも紹介されてきたことが認められる。また、この間、日本及び極東地区総代理店として昭和49年に設立された「株式会社ヴァレンティノヴティックジャパン」の事業展開と相俟っていわゆるヴァレンティノ(VALENTINO)製品の輸入、販売及びその広告・宣伝活動が活発に行われてきた状況を窺うのに十分である。
これら事情よりして、前記デザイナーの氏名ないしその作品群またはそれら取扱いに係る商品を表示する申立人商標は、わが国において、少なくとも昭和50年代前半においてすでにわが国の需要者一般に広く認識せられるに至ったいわゆる著名商標と認め得るものである。
(3)前記デザイナー名称または申立人商標は、一方において、前出新聞、雑誌の記事や見出し中において、単に「VALENTINO」または「ヴァレンティノ」の省略形または略称(以下、「略記商標」という。)をもって取り扱われている事実があり、ファッション関連分野において「VALENTINO」(ヴァレンティノ)といえば前記デザイナーに係る商品を表示するものとして、申立人商標と同様に需要者間に広く認識せられるに至ったものと認められる。
すなわち、当審において調査するに、申立人商標はわが国において、「VALENTINO」、「ヴァレンチノ」または「ヴァレンティーノ」の略記(略称)をもって取り扱われていることが田中千代著同文書院1981年発行「服飾辞典」、山田政美著株式会社研究社1990年発行「英和商品辞典」、金子雄司ほか著岩波書店1997年発行「世界人名辞典」の当該各項の記載に徴して認め得るところであり、このほか、女性雑誌等においても、たとえば、「marie claire」(マリ・クレール)1996年2月号、「non−no」(ノンノ)1989年12月号における当該記事の見出し表示等よりして、その状況が十分に窺われる。
(4)前述わが国への進出時期と前後する昭和43年頃から同49年にかけて、申立人会社は、「VALENTINO GARAVANI」または「VALENTINO」商標のわが国における使用権確保と他人による使用を排除すべく、被服、布製身回品、寝具類、はき物、装身具類、かばん類、宝玉類、喫煙用具その他いわゆるファッション関連各商品分野において商標登録出願を行い(爾後、商標登録済み。)、その後も引き続き関連商標について商標登録し権利確保を図ってきた状況が認められる。
以上、(1)ないし(4)の各点よりして、略記商標は、申立人商標と同様に、国際的デザイナーの一人に数えられる前記デザイナーまたは申立人会社に係る婦人服、紳士服等の衣料品、かばん類、宝玉その他装身具類、はき物類及び喫煙用具等の各商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時(平成9年)はもとよりそれ以前においてすでにわが国の需要者間において広く認識せられたいわゆる著名商標と認め得るものであって、その状況は本件商標の登録査定時である同10年8月10日の時日においてもなお同様であったものと認められる。
ところで、本件商標はその構成前記のとおり、「VALENTINOINTERNALE」の文字よりなるところ、意味上においてこれら文字を常に一体のものとして把握しなければならないような特段の事情は見出せない一方、その冒頭部にあって強く印象づけられる部分というべき「VALENTINO」の文字部分は前記認定の略記商標と同一の文字綴りであり、かつ、その指定商品は申立人商標または略記商標の使用に係る被服類、はき物類その他関連各商品を含むものと認められる。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する需要者は、前記各事情よりして、略記商標または申立人商標を容易に想起するとともに、その商品があたかも上記デザイナーまたは申立人会社ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を来すおそれが少なからずあったとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
4 商標権者の意見
上記の取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のように述べている。
(1)本件商標は、「VALENTINOINTERNALE」の文字からなり、まったくの新造語である。本件商標が「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」とまったく非類似であることは明らかである。また、本件商標を「VALENTINO」と「INTERNALE」に分離して判断しているが、その根拠が示されていない。本件商標は一体文字として商標を構成しているのであるから、一体文字として、出所の混同が生じるか否か判断すべきものである。常識的に判断して、需要者が本件商標を使用した商品と「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商品との間に出所の混同を来すおそれはまったくないものと思料する。
(2)以上述べた理由により、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者が、「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商標を容易に想起するものではなく、その商品があたかも申請人会社ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を来すおそれがある商標とは認めることができないので、本件商標の登録は維持すべきである。
5 当審の判断
本件商標についてした上記3の取消理由は妥当であって、本件商標は他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
商標権者は、本件商標(VALENTINOINTERNALE)は新造語であって一体のものであるから、「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」と全く非類似のものであり、これを「VALENTINO」と「INTERNALE」に分離する根拠も見当たらないとし、また、本件商標は一体文字として出所の混同を判断すべきであって、本件商標を使用した商品と「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商品との間に出所の混同を来すおそれはない旨意見を述べているが、もとより、本件においては、商標の類否を直接問題にしたわけでないこと上記3の取消理由の趣旨よりみて明らかというべきであり、かつ、本件については、商標自体とそのほか諸般の事情、すなわち、本件商標の指定商品の分野における需要者一般の注意力の程度、申立人商標又は略記商標の著名性ほか取引の実情を総合判断するに、前記認定を相当とするから、商標権者の述べる意見は採用することができない。
このほか、商標権者の述べる意見はいずれも妥当性を欠くものであって、採用の限りでない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべく、その登録は、同法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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