結論テキスト
その余の指定商品についての審判請求は、成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35032号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第2497470号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に表示するとおり「トーテツ」の片仮名文字を横書きしてなり、平成2年3月1日に登録出願、第7類「建築又は構築専用材料,セメント,木材,石材,ガラス」を指定商品として、同5年1月29日に設定登録がなされているものである。
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第5号証を提出している。
引用商標における語尾の「グラウト」は、指定商品の材質「グラウト材」を意味するものである。「グラウト」は、マグローヒル科学技術用語大辞典(甲第2号証)の410頁および建築学便覧(甲第3号証)の502頁に見られるように、一般名称である。引用商標の語尾「グラウト」が一般名称であるから、その語頭「トーテツ」が自他商品識別標識として機能する部分となり、これにより「トーテツ」なる称呼をも生じるものである。
したがって、本件商標「トーテツ」と引用商標「トーテツグラウト」は、「トーテツ」の称呼を共通にするものであり、それ故、両者は類似商標となる。
(1)引用商標の「トーテツグラウト」を称呼する場合淀みなく一気に称呼されるには長すぎる。そのため、「トーテツ」の「ト」と「グラウト」の「ラ」にアクセントがつけられ、4文字からなる「トーテツ」と「グラウト」が明瞭に区切られて発音され、聞く人には、「トーテツ」の後に品質表示用語の「グラウト」が付加されたものと、認識されるはずである。したがって、引用商標「トーテツグラウト」はその構成中「トーテツ」が自他商品識別能力を担う部分となり、本件商標「トーテツ」と「トーテツ」の称呼を共通にするから、両者は類似関係にある。被請求人が主張するように、仮に「トーテツグラウト」を、よどみなく一気に称呼することができたとしても、この場合には、語頭音「ト」に最も強いアクセントが生じ、明瞭に発音される「トーテツ」に、弱く発音される「グラウト」が続くことになるから、「トーテツ」が自他商品識別能力を担う点に違いはない。
(2)「トーテツグラウト」が先願登録商標として存在しているにも拘わらず「トーテツ」を登録した審査事例と、「トーテツ」が先願登録商標として存在しているにも拘わらず「トーテツモルタル」を登録した審査事例とは矛盾しておらず、一方が正しければ他方も正しいと言わざるを得ない。しかしながら、請求人は、これら2つの審査結果に疑問をもつものである。
請求人は、上記審査事例と相入れないもう一つの審査事例を挙げることにする。甲第4号証(商願平7−20421号の願書の写し)に示すように、請求人は、平成7年3月6日に、「鉄筋連結用継手に充填されるエポキシ樹脂およびその他の建築用エポキシ樹脂」を指定商品として、普通の字体からなる商標「トーテツエポキシ」を出願したところ、甲第5号証(商願平7−20421号の拒絶査定謄本の写し)に示すように、拒絶査定を受けた(現在審判中、平成9年審判1123号)。拒絶査定の理由の要旨は、『本願商標「トーテツエポキシ」の構成中「エポキシ」の文字部分が指定商品の材質を表示するものであるから、自他商品識別標識として機能する部分は「トーテツ」の文字部分にあり、これにより、「トーテツ」の称呼をも生じるものである。一方、引用商標(注:本件無効審判に係わる登録商標)は、その構成上「トーテツ」の称呼を生ずるものであり、両者は「トーテツ」の称呼を共通にする類似する商標である』というものである。上記「トーテツエポキシ」の「エポキシ」は、4文字からなる材質を表示する用語であり、「トーテツグラウト」,「トーテツモルタル」における「グラウト」,「モルタル」と同様の役割を担うものである。上記審査において、「トーテツエポキシ」と「トーテツ」が類似するとの判断基準が正しいならば、「トーテツグラウト」と「トーテツ」とは類似するはずである。
被請求人は、「本件商標は無効とすべきでない。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第6号証を提出している。
引用商標を称呼上検討してみると、上記外観上の特徴から「トーテツグラウト」をよどみなく一気に称呼することができる。従って、たとえ請求人が主張するように、「グラウト」の語が指定商品の品質、原材料を表示する場合があるとしても商標において、これを殊更「トーテツ」と「グラウト」とに分離して「トーテツ」の文字部分のみを抽出して「グラウト」を無視する必然性はなく、「トーテツグラウト」の構成の中で「トーテツ」は要部になり得ない。
即ち「モルタル」は「グラウト」を具体的に説明する用語であって、「グラウト」と「モルタル」は意味上密接な関係にあることは明らかである。こうした事実から、引用商標「トーテツグラウト」及び乙第1号証に係る登録商標「トーテツモルタル」のそれぞれの構成から、たとえ指定商品の関係があっても「トーテツ」を抽出して、「グラウト」及び「モルタル」をそれぞれ無視する必然性はなく、これらの登録商標において「トーテツ」は要部になり得ないことを明確に示している。
このことは平成3年審判第11467号(審決日:平成9年3月5日)の審決(乙第4号証)に旧第4類を指定商品とした「アピ/API」(登録第2722140号、商公平7−119067号公報(乙第5号証))は旧第4類を指定商品とした「アピハープ/API HERB」(登録第2228431号、商公平1−69386号公報(乙第6号証))とは称呼及び観念上、非類似であると説示された理由と同様である。
以上述べた通り、本件商標「トーテツ」と引用商標「トーテツグラウト」とは外観、称呼及び観念において明確に識別でき、両者は非類似であることは明らかである。
よって、本件商標の登録を無効にすべき理由の有無について判断する。
本件商標は、「トーテツ」の片仮名文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「トーテツ」の称呼を生ずるものである。(この点は、請求人及び被請求人も認めているところである。)
他方、引用商標は、「トーテツグラウト」の片仮名文字を横書きしてなるものであるが、商標は自他商品の識別機能を果たすものとして商品に使用されるものであるから、商標中に当該指定商品の品質、形状等を表示する部分が含まれているときは、その部分は通常取引者、需要者に当該指定商品の品質、形状等を表示したにすぎないものと理解され、出所表示標識として機能しないものといわなければならない。そして、商標法施行規則第3条別表によれば、第7類には、「建築または構築専用材料」「セメント」が含まれており、これらの商品において「グラウト材」の語が用いられ、取引者、需要者は「グラウト」の文字が商品を表示するために用いられるものと理解されていることは社会常識に照らし、明らかというべきである(この点は、請求人及び被請求人共に引用商標の指定商品「建築用グラウト材」が建築または構築専用材料をより具体化したものであって、セメントに類似する商品であることを認めているものである。)から、引用商標を構成する「トーテツグラウト」の片仮名文字中「グラウト」の部分は、商品の品質を表したものとして、自他商品の識別機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
そうとすれば、引用商標は、「トーテツグラウト」の片仮名文字を一連に書してなるものではあるが、取引者、需要者は「トーテツ」の部分と「グラウト」の部分とが不可分一体のものとして認識することなく、「トーテツ」の部分によって自他商品を識別するものというべきであり、「トーテツグラウト」の文字全体が一つの格別の意味合いを有しない造語として認識されるということはできない。
してみれば、引用商標は、「トーテツ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
したがって、本件商標と引用商標とは「トーテツ」の称呼を共通にする類似の商標であり、かつ、引用商標の指定商品は本件商標の指定商品と類似するから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものというべきである。
被請求人は、引用商標の各文字が同一の書体、同一の大きさ、同一の間隔で一連に書され、外観上もまとまりよく一体的に表現されていて、軽重の差を見いだすことはできないこと、また、称呼も「トーテツグラウト」と淀みなく一気に称呼することができること、「グラウト」の語が品質、原材料を表示する場合があるとしても、「トーテツ」と「グラウト」に分離して、「トーテツ」の文字部分のみを抽出して「グラウト」を無視する必然性はなく、「トーテツ」は要部になり得ないものである旨主張している。
確かに、引用商標は、これを構成する「トーテツグラウト」の各文字を同一の書体、同一の大きさ、同一の間隔で一連に表示したものであることは被請求人の主張のとおりではある。しかしながら、引用商標の片仮名文字中「グラウト」が本件商標及び引用商標の指定商品において、「グラウト材」を示す語として取引者、需要者に使用されていること、引用商標から「トーテツ」の称呼が生ずることは前述したとおりであり、被請求人の主張は前記判断を左右するものではなく、採用することができない。
さらに、被請求人は、請求人の所有する「トーテツモルタル」なる商標が、本件商標より後願であるにもかかわらず、登録されていること、及び審決例を挙げている。
しかしながら、前記登録が存在することが、本件審判の判断を拘束するものではないことはあきらかである。本件審判における本件商標の登録の適否は、引用商標との関係でのみ判断されるべきである。すなわち、過去にされた審査例等は具体的、個別的な判断が示されているものであって、必ずしも確立された統一的な基準によっているものとはいえず、仮にその中に矛盾や誤りがあるとしても、具体的事案の判断においては、過去の審査例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、被請求人のこの点の主張も理由がない。
次に、本件商標と引用商標の指定商品についてみるに、引用商標の指定商品「建築用グラウト材」は、請求人提出の証拠によれば、「セメントと水、あるいはセメント・砂・水の混合液体。」(マグローヒル科学技術用語大辞典 甲第2号証)、「目地のグラウト充填材として、通常セメントペーストを用いる。」(建築学便覧 甲第3号証)、また、被請求人提出の証拠によれば、「空げき目地、ひび割れなどの細かいすき間を充てんするために、注入材料として用いるセメントペースト又はモルタル。据え付け機器の基礎と基礎板、共通床板などとの間の透き間をなくすように流し込む軟らかいモルタル。細かい透き間に充てんするため、混和材料を加えて充てん性をよくしたセメントペースト又はモルタル。」(JIS工業用語大辞典 乙第3号証)と記載されており、請求人及び被請求人も「建築用グラウト材」が「建築又は構築専用材料」をより具体化したものであって、「セメント」に類似することについても認めているものである。
してみれば、上記事実から、「建築用グラウト材」は、「建築又は構築専用材料」中の「リノリューム製建築専用材料、プラスチックス製建築専用材料、合成建築専用材料、アスファルトおよびアスファルト製建築または構築専用材料、その他の建築または構築専用材料」の範疇に属する商品と認められ、かつ、「セメント」と類似する商品と認められる。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中「リノリューム製建築専用材料、プラスチックス製建築専用材料、合成建築専用材料、アスファルトおよびアスファルト製建築または構築専用材料、その他の建築または構築専用材料」「セメント」については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ず、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきである。
しかしながら、その指定商品中「リノリューム製建築専用材料、プラスチックス製建築専用材料、合成建築専用材料、アスファルトおよびアスファルト製建築または構築専用材料、その他の建築または構築専用材料」「セメント」を除く残余の商品については、引用商標に係る指定商品と同一又は類似する関係にある商品とは認められないから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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