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Trademark Appeal Case

称呼の1音違いの類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35618(T2000−35618/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4322760号商標(以下「本件商標」という。)は、「カロリーメイク」の文字を標準文字で横書きしてなり、第9類「電子計算機,電子計算機用のプログラムを記憶させた記憶媒体」を指定商品として、平成10年8月26日に登録出願、同11年10月8日に登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨下記のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。

1 請求の理由

(1)請求の利益について

請求人は、商標登録第4208330号「カロリーメイト」(以下「引用商標1」という。)を所有しており、本件商標「カロリーメイク」は引用商標1に類似する。

請求人は、昭和58年(1983年)発売のバランス栄養食について引用商標1を継続して使用してきた結果、周知著名の商標となっている。

本件商標をその指定商品について使用するときは、引用商標1との間に誤認混同を生じるおそれがあり、かつ引用商標1の出所表示機能を稀釈化させたり又はその名声を毀損させることにもなる。

上記したようなことから、請求人は本件審判請求をするにつき、利害関係を有する。

(2)無効理由について

本件商標と引用商標1の類否を検討する。

指定商品について、両者が類似することは詳述するまでもない。

また、商標についても、本件商標「カロリーメイク」と、引用商標1「カロリーメイト」は、いずれも7字中の最後の1文字「ク」と「ト」の違いに過ぎなく、したがって迅速性を要求される実際の商取引において、一般需要者が両者を識別したり聞き分けたりすることは到底出来ないものである。

換言すると、本件商標「カロリーメイク」と引用商標1「カロリーメイト」はそれぞれ全体が一体不可分に構成されてなるところから、その類否判断に当っては「カロリー」と「メイク」及び「メイト」の如きに分断するのは誤りである。

請求人は、前記した引用商標1と全く同一構成の登録第1609035号商標(甲第5、6号証参照。以下「引用商標2」という。また、引用商標1と引用商標2を合わせて、単に「引用商標」という。)も所有している。

請求人は、引用商標を昭和58年(1983年)発売のバランス栄養食について使用を開始し、現在に至るまで継続して使用している(甲第7号証参照)。

また請求人の引用商標は、その商品の斬新性・品質の優秀性・テレビおよび雑誌・新聞等による盛大な宣伝広告(甲第8〜16号証参照)の結果、少なくとも本件商標の登録出願時において、需要者の間に広く知られた周知著名な商標となっている。

このことは特許庁で開設のホームページの「日本国周知・著名商標」の欄に、引用商標2「カロリーメイト」は防護標章として登録されていることが掲載されている(甲第17号証参照)。

しかも請求人は、請求人の開設したホームページの「メインフレーム−大塚製薬ホームページ」(甲第18号証参照)、「Calorie Mate INTERNET」(甲第19号証参照)および「Calorie Mate/BALANCE CHECK」(甲第20号証参照)にも掲載している。

請求人のこれらホームページは、バランスチェックいわゆる栄養管理に関するものである。

そして前記「Calorie Mate/BALANCE CHECK」(甲第20号証参照)には、「現在のID登録人数は8786名です。」と記載されているが、これはデータ流出による個人情報の漏洩を避けるため登録人員が1万名近くなった時点でデータより削除している。

被請求人のホームページの「会社案内」(甲第21号証参照)によると、栄養管理に関する業務について本件商標「カロリーメイク」を使用している。

この栄養管理業務は、請求人と同じ業務でもある。

請求人の引用商標が前述したように周知著名なところから、本件商標をその指定商品等について使用するときは、請求人の取扱いに係る商品・役務と混同を生ずるおそれがあったり、請求人の商標の出所表示機能を稀釈化させたり又はその名声等を毀損させることにもなる。

2 請求人の答弁に対する弁駁

(1)商標法第4条第1項第11号ないし同法第8条第1項について

被請求人の主張を要約すると、本件商標と引用商標における後半の構成要素の観念が異なるから、あたかも両者は全体として非類似の商標の如く答弁しているが、このような主張は採用できないものである。

何となれば、同数音からなる比較的長い称呼で1音だけ異なるときは、類似の商標とされている(商標審査基準・改訂第7版参照)。

ましてや、本件商標は、引用商標と7音目の1音違いであり、実際の商取引においては非常に相紛らわしいものである。

また、商標全体の語調が近似している場合には、そうでなければ非類似とされるような商標も、類似とされることがある。更には、発音上印象の強い部分が共通であるときは、そうでなければ非類似とされるような商標でも類似とされることがある。

被請求人は、非類似例として乙第3号証の1ないし3を提出している。

しかし、これら乙号証は、本件の場合の7文字構成中の1文字違いとは著しく状況を異にするもので、かつ周知著名な引用商標との関係で事例が相違する。

本件商標は「カロリーメイク」と、引用商標は「カロリーメイト」と称呼するものであり、両者は比較的に長音たる7音中の末尾の1音違いに過ぎなく、したがって両商標を一般需要者は聞きまちがいや言いまちがいをすることは明らかであるから、両者は類似の商標である。

(3)商標法第4条第1項第10号について

被請求人の主張は、本件商標と引用商標が類似しないことを前提にしている。しかし、両商標が類似していることは請求人が述べたとおりであるから、被請求人の主張は何ら理由がない。

(4)商標法第4条第1項第15号について

被請求人は、甲第12〜16号証から引用商標が本件商標の出願時に著名であったとは認められないというが、誤りである。

何となれば甲第12〜16号証は、確かに本件商標の出願日(平成10年8月26日)以降のものではあるが、請求人がこれら甲号証を提出した趣旨は、引用商標を付して販売中の商品・バランス栄養食の盛大なる宣伝広告をしていることを示すための補完的なものである。

換言すると、引用商標1は平成9年7月7日出願、同10年11月6日登録であり、かつ引用商標2は昭和55年2月8日出願、同58年8月30日登録であって、本件商標の出願日よりもはるかに早い。

しかも引用商標2の多くの類別における防護標章登録についても、本件商標の出願日よりもはるかに早い。

かくの如く引用商標が防護標章登録されていることからしても、本件商標の出願時において既に引用商標が周知著名であることは明白であり、本件商標をその指定商品に使用するときは、一般需要者においては引用商標との間に誤認混同するおそれがある。

被請求人は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かの判断基準として、企業における多角経営化の可能性について言及している。

しかし請求人は、平成12年11月10日付の審判請求書の無効理由中で述べた如く、いわゆる「栄養の管理業務」をもパソコン等で行っているもので、単にバランス栄養食の製造販売のみでないことは明らかである。

したがって、被請求人の主張は理由がない。

(5)商標法第4条第1項第16号について

請求人の引用商標がこれまでに述べたように周知著名なること明らかであると共に請求人が多角経営化も推進しているところから、本件商標の指定商品との関係でも、需要者において誤認を生ずるおそれがある。

(6)商標法第4条第1項第19号について

本件商標は、全国的に知られているいわゆる著名商標の引用商標と類似であって、引用商標の出所表示機能を稀釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもった出願に相当するものである。したがって、本件商標は本号に該当する。

(7)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10、11、15、16、19号及び同法第8条第1項に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨下記のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 答弁の理由

(1)請求人は、引用商標1及び引用商標2を引用し、無効理由として商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号、同第16号、同第19号及び同第8条第1項の規定を挙げている。本件商標がこれら各規定に該当しない理由について以下詳述する。

(2)商標法第4条1項11号ないし同法第8条第1項について

この点について、請求人は、「本件商標『カロリーメイク』と、引用商標『カロリーメイト』は、いずれも7文字中の最後の1文字『ク』と『ト』の違いに過ぎない。したがって、迅速性を要求される実際の取引において、一般需要者が両者を識別したり聞き分けたりすることは到底できないものである。」旨を述べている。

しかしながら、請求人の主張は早計に過ぎ、採用できない。

なぜならば、商標はその全体により識別標識としての機能を発揮するのであり、商標の類否判断においても原則的には商標全体が識別標識として取引者・需要者の心理にいかに反映し理解されるかという見地からなされべきである。そして商標法第4条1項11号ないし同法第8条第1項にいう「類似」とは、判断対象となる商標の外観、称呼及び観念を判断要素とし、それらを総合的に評価し、登録商標の識別力を毀損するほどに紛らわしいものであるか否かという観点から判断されるべきものであるところ、請求人の主張はこれらの判断を欠くものといわざるを得ない。

ここで、本件商標から生じる観念について検討するに、本件商標の構成要素である「カロリー」は、「熱量(エネルギー)」 を表す語として一般に用いられている話であり、広辞苑にもその記載がある(乙第1号証)。また、本件商標の構成要素である「メイク」は英語の「make」ですなわち「作る」を意味する語として広く親しまれている語であり、ヘアメイクなどとして一般に用いられている。また、1996年流行語大賞の「メイクドラマ」は記憶に新しいところである(乙第2号証)。以上の点から、本件商標はその全体から「カロリー(エネルギー)を作る」なる観念が自然に発生する。

他方、引用商標から生じる観念について検討するに、その構成要素である「カロリー」は上述のとおり「熱量(エネルギー)」を表す語として一般に用いられており、「メイト」はルームメイトなどのように「仲間」を表す語として広く認識されている。以上の点から、引用商標は、その全体から「カロリー(エネルギー)の仲間」なる観念が自然に発生する。

してみれば、本件商標全体から生ずる観念「カロリー(エネルギー)を作る」と引用商標全体から生ずる観念「カロリー(エネルギー)の仲間」は明らかに異なる概念である。

次に、本件商標と引用商標から生ずる称呼について検討すると、両者は請求人が指摘するとおり、語尾音において「ク(ku)」の音と「ト(to)」の音において相違するものである。両音は母音、子音ともに異なり、調音方法、音質、音感が異なるため、この相違音が称呼全体に及ぼす影響は大きく、一連に称呼した場合、両商標は明確に区別できるものといえる。なお、語尾音「ク(ku)」と「ト(to)」のみ相違する商標について互いに類似しないと判断した審決例もある(乙第3号証の1ないし3)。

また、本件商標と引用商標の外観が異なることは明らかである。

以上述べたことから、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても明確に区別でき、本件商標は引用商標の識別力を毀損するほど紛らわしいものとはいえず、互いに類似する商標とはいえない。

よって、本件商標が商標法第4条1項第11号に該当しないことは明白である。

(3)商標法第4条第1項第10号について

請求人は、引用商標がバランス栄養食について使用した結果、需要者の間に広く知られた商標となっていることを理由に本号に該当する旨を主張している。

しかし、本号は、互いに類似する商標について適用されるところ、本件商標と引用商標が相類似しないことは前述のとおりである。

(4)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、引用商標をバランス栄養食について継続して使用した結果、少なくとも本件商標の登録出願時において、需要者の間に広く知られた周知著名な商標となっていることから、本号に該当する旨を主張している。

まず、請求人の主張する本件商標の出願時、すなわち平成10年8月26日時点における引用商標の著名性について検討する。請求人は引用商標の使用実績を示す証拠として甲第8号証から甲第16号証までを添付しているが、このうち、甲第12号証から甲第16号証は、本件商標の出願時以降の使用を示すものであり、証拠として採用できない。また、他の証拠資料である甲第8号証から甲第12号証には引用商標の使用されている態様は何ら示されておらず、これも証拠として採用できない。よって、引用商標が本件商標の出願時に著名であったとは認められない。

これを踏まえ、本件商標の出願時において、本件商標をその指定商品「電子計算機、電子計算機用のプログラムを記憶した記憶媒体」に使用した場合に、需要者が請求人の商品であるかの如く混同するか否かについて検討する。

本件商標の指定商品は前述のとおり「電子計算機電子計算機用のプログラムを記憶した記憶媒体」である。したがって、これらの商品の生産者は、パソコンメーカーや被請求人のようなソフトウェア開発会社が一般的である。

他方、引用商標が使用されている商品はバランス栄養食品であり、その生産者は食品メーカーや医薬品メーカーが一般的と考えられる。

このように、本件商標の指定商品と、引用商標が現実に使用されている商品とは、製造、販売者、使用者、商品の取引系統等も大きく異なる。また、前述のとおり本件商標と引用商標は互いに類似しないものである。

よって、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者や需要者は、これを請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係るものであるとして、商品の出所について混同するおそれがあるとは到底考えられない。

なお、請求人は甲第18号証から甲同第20号証において、請求人の開設したホームページにていわゆる栄養管理に関するものに引用商標を使用している旨を主張するが、その開設時期は不明であり、証拠として採用できない。

仮に、このホームページが本件商標の出願前から開設されているものだとしても、引用商標はバランス栄養食品「カロリーメイト」の商品紹介のページにのみ表されており、会員の新規登録ページ以降のページには「BALANCE CHECK」なる標章が記されているのみである。また、このページ上には「登録者の中から毎月20名様にカロリーメイトやノベルティをプレゼントいたします。是非、この機会に登録願います。」等の記載があることからも、このホームページ上の使用はバランス栄養食品「カロリーメイト」の広告宣伝として使用されているに過ぎない。

よって、このホームページの開設をもって、引用商標が栄養管理に関するものに使用されているとは到底言えない。仮に引用商標が栄養管理に関するものに使用されたとしても、本件商標をその指定商品「電子計算機、電子計算機用のプログラムを記憶した記憶媒体」に使用した場合に、請求人が主張する栄養管理業務と何らの関係をも想起させない。

以上の点より、本件商標をその指定商品に使用した場合、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当しないことは明らかである。

(5)商標法第4条1項第16号について

本号にいう「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれ」とは、その品質又は質が、その商品が有する品質又は役務が有する質として需要者において誤認される可能性がある場合をいうが、本件商標はその指定商品「電子計算機、電子計算機用のプログラムを記憶した記憶媒体」について何等の不実を表すものでなく、需要者に誤認される可能性があるとは認められない。

(6)商標法第4条第1項第19号について

本号は、商標が同一又は類似であることが要件とされているが、上述のとおり本件商標と、引用商標は類似しない商標である。また、同様に本号は不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的)が要件とされているが、被請求人は、業務用コンピュータソフトウェア開発や、栄養計算業務パッケージの開発及び販売を業としており、引用商標の出所表示機能を稀釈化したり、その名声を毀損することをもって本件商標を出願したものではない。

(7)また、請求人より、本件商標について登録異議申立てがされているが、その決定においても、登録が維持されており、本件商標と引用商標は類似しない旨、本件商標と引用商標とは混同を生ずるおそれはない旨等の判断が示されている(乙第4号証)。

2 答弁の理由(第二答弁書)

(1)商標法第4条第1項第1号及び同法第8条第1項について

この点について、請求人は、「同数音からなる比較的長い称呼で1音だけ異なるときは、類似の商標とされている(商標審査基基準・改訂第7版参照)」ことを理由に、本件商標は、引用商標1に類似する旨主張している。しかし、請求人引用の商標審査基準は、「商標の称呼に内在する音声上の判断要素及び判断方法のみによって判断すとき」の基準であり、本件のように、特定の観念が生じる場合に当てはまる基準ではない。むしろ、商標審査基準の第4条第1項第11号の冒頭にある「商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない」との基準こそ本件商標と引用商標との類否判断の基準とすべきところである。

(2)商標法第4条第1項第10号について

請求人は、「商標が必ずしも類似する必要はなく、要は需要者において誤認混同をするか否かである」旨を主張している。しかし、商標法第4条第1項第10号は「需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって」とあるとおり、商標の同一又は類似がその要件とされるところ、上述のとおり、本件商標と引用商標は類似しないものである。更に、本号は、いわゆる周知商標の商品と、出願商標の指定商品の同一又は類似することが要件とされているが、本件商標の指定商品「電子計算機、電子計算機用のプログラムを記憶した記憶媒体」又はこれに類似する商品について引用商標が周知であるとは全く認めることができない。よって、本件商標と引用商標とは商標及び商品ともに類似せず、本号に該当しないことは明白である。

(3)商標法第4条第1項第15号について

請求人は商標登録第1609035号の防護標章登録の存在を理由に、本件商標は本号に該当すると主張している。確かに、防護標章登録の登録は引用商標が商品「食肉,卵,食用水産物,野菜,果実,加工食品」について一定程度の周知著名性を有することを示すものといえる。

しかし、引用商標が周知著名であるとしても、それは本号の判断において考慮される一要素であって、直ちに本件商標「カロリーメイク」をその指定商品について使用した場合に、引用商標と混同を生ずることを示すものではない。ここで、本号の他の判断要素とされる(イ)その他人の標章が創造標章であるかどうか、(ロ)その他人の標章がハウスマークであるかどうか、(ハ)商品の関連性、(ニ)企業における多角経営化の可能性のそれぞれについて検討する。まず、(イ)について検討する。引用商標は前述のとおり、熱量を意味する「カロリー」と、仲間を意味する「メイト」を結合させた商標であるに過ぎず、創造標章とまでは言えないものと考えられる。(ロ)については、引用商標はハウスマークではないことは明らかである。(ハ)については、本件商標の指定商品「電子計算機、電子計算機用のプログラムを記憶した記憶媒体」の製造者は、パソコンメーカーや被請求人のようなソフトウェア開発会社が一般的であるに対し、引用商標が使用されている商品はバランス栄養食品であり、その生産者は食品メーカーや医薬品メーカーが一般的と考えられる。したがって、本件商標の指定商品と、引用商標が現実に使用されている商品とは、製造者、販売者、使用者、商品の取引系統等も大きく異なり、商品間の関連性はないものと考えられる。(ニ)については、本件商標の指定商品の製造販売業者は既に述べたとおり、パソコンメーカーやソフトウェア会社等が一般的であるが、請求人のグループ会社にパソコンやソフトウェアを業として製造販売するような企業があるとは認められないばかりか、請求人の属する食品業界において、外食産業や医薬品産業等への多角化はまだしも、パソコン等のハードウェア産業や、ソフトウェア産業への多角化が行われていると一般需要者が認識するとは到底考えられない。以上を総合的に判断すると、引用商標の周知性を勘案したとしても、本件商標をその指定商品に使用した場合に引用商標と混同を生じるものとは認められない。

よって、請求人の主張には理由がない。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号ないし同法第8条第1項の規定違反について

甲第3号証及び甲第4号証によれば、引用商標1は、「カロリーメイト」の文字を横書きしてなり、平成9年7月7日に登録出願され、第9類「コンピュータプログラムを記憶させた磁気ディスク・同磁気テープ・同光ディスク」を指定商品として、同10年11月6日に登録されたものである。

本件商標と引用商標の類否について検討すると、本件商標は、上記のとおり「カロリーメイク」の文字よりなるものであって、「熱量の単位、栄養の単位」を表す「カロリー」の語と「作る」等の意の英語「make」を表す「メイク」の語を結合したものであり、一方、引用商標1は、「カロリーメイト」の文字よりなり、前記「カロリー」の語と「友達、仲間」等の意の英語「mate」を表す「メイト」の語を結合したものであることは明らかである。

そして、本件商標は、「カロリーメイク」と称呼され、一方、引用商標1は、「カロリーメイト」と称呼されるものと認められるところ、その構成音のいずれの音も明瞭に聴取できるばかりでなく、前半部において「カロリー」の音が共通するとしても、後半部において「メイク」と「メイト」と相違しており、その意味が前者は「作る」等、後者は「友達」等であって全く異なる語として知られていることから、全体の語調、語感が異なって聴取され、両称呼は互いに紛れるおそれがないものというのが相当である。

そして、本件商標と引用商標は、前半の「カロリー」の文字が共通しており、それぞれ、その構成全体としては既成の語とはいえず、一種の造語を表すものというべきことを考慮しても、その後半部の上記のとおり「メイク」と「メイト」が全く異なる意味の語として知られていることから、取引者、需要者は、容易にこの後半部の相違を認識し、両商標を識別するものと認められ、結局、両商標は、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号若しくは同法第8条第1項の規定に違反する、との請求人の主張は、採用できない。

2 商標法第4条第1項第10号について

本件商標が、引用商標と非類似の商標であることは上記認定のとおりである。

また、引用商標は、これをバランス栄養食について使用した結果、本件商標の登録出願前に需要者の間に広く認識されるに至っていたとしても、該「バランス食品」と本件商標の指定商品である「電子計算機,電子計算機用のプログラムを記憶させた記憶媒体」とは、用途、生産者、取引者、取引者、需要者などを異にする非類似の商品である。また、甲第18号証ないし甲第20号証によれば、請求人は、インターネットのホームページ上において、摂取栄養素と体重の変化などをチェックし、栄養管理をする情報を提供している事実が認められるが、このサービスは、引用商標を使用しているバランス栄養食を販売するための宣伝広告の目的で無料で行っているサービスであるから、このサービスを提供していることをもって、本件商標の指定商品「電子計算機、電子計算機用のプログラムを記憶した記憶媒体」又はこれに類似する商品について請求人が業として引用商標を使用して周知となっていたとは認められない。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する、との請求人の主張は、採用できない。

3 商標法第4条第1項第15号について

本件商標は、上記のとおり引用商標と非類似の商標であることに加え、引用商標が著名であるとしても、バランス栄養食の商標としてのものであるから、商品分野が全く異なる本件商標の指定商品にこれを使用しても、取引者、需要者がこれより引用商標を連想想起し、その商品が請求人あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく誤認し、その出所を混同するおそれはないものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する、との請求人の主張は、採用できない。

4 商標法第4条第1項第16号について

本件商標は、上記のとおり一種の造語よりなるといえるものであり、特定の品質を想起させるものでないから、これをその指定商品に使用しても、商品の品質を誤認させるおそれがあるとは認められない。

請求人は、引用商標が周知著名であること及び請求人が多角経営化を推進していることを根拠に、本件商標は本号に該当するものと主張するが、それらの事実は、商品の出所の混同のおそれにかかわることであっても、商品の品質の誤認を生ずる根拠とはなり得ない。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当する、との請求人の主張は、採用できない。

5 商標法第4条第1項第19号について

本件商標が、引用商標と非類似の商標であることは上記認定のとおりである。また、被請求人において、これを不正の目的をもつて使用するものと認めるに足りる証拠はない。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する、との請求人の主張は、採用できない。

6 以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同11号、同15号、同16号、同19号及び同法第8条第1項の規定に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

審判費用の負担については、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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