結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35596号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
I 本件商標
本件登録第4023461号商標(以下「本件商標」という。)は、「週3日制予備校」の文字を横書きしてなり、第41類「予備校における教授」を指定役務として、平成4年7月30日に登録出願、同9年7月4日に設定登録されたものである。
II 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第35号証(枝番を含む。)を提出した。
1.本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(1)引用標章について
▲1▼請求人は、昭和62年1月の設立と同時に、大学受験予備校である灘予備校の経営を始め(甲第3号証)、それ以後今日まで継続してその経営に携わっている。請求人の代表取締役である李芸求(甲第4号証)は、昭和62年灘予備校の発足に際し、その教育方法として「週3日の必修授業、残りの3日はレベル別・テーマ別の無料補講」を採用した。
▲2▼灘予備校は、自己が提供する「予備校における教授」を他の予備校と区別するために、標章「週3日制」あるいは「週3日制システム」(以下、両標章をまとめていうときは、「引用標章」という。)を一般新聞、大学新聞、入学案内書、DM(ダイレクトメール)、各種の予備校ガイドブック、チラシ、駅広告板、ラジオ等の各種広告媒体を通して、昭和62年の発足時から今日に至るまで継続して頻繁に使用している。
▲3▼灘予備校は、標章「週3日制」を昭和62年初春に使用し始めた(甲第5号証の1;昭和62年度入学案内書表紙、これが昭和62年度のものであることは、甲第16号証の1、甲第6号証より明らかである)。
昭和62年3月14日付毎日新聞、同年3月21日付神戸新聞における灘予備校の広告にも、「週3日」の文字が表示されている(甲第10号証の1、2)。
さらに、標章「週3日制」の使用開始時期に関しては、本件商標(平成4年商標登録願第149578号)の当初の出願人であり、灘予備校の初代校長として請求人に雇用されていた奥野光太郎(以下「奥野」という。)は、審査段階の意見書で「出願人は、昭和62年、『灘予備校』の校長に就任する際、本願商標『週3日制予備校』の使用をはじめ、」と述べ、また、上記平成4年商標登録願第149578号拒絶査定不服審判(平成6年審判第12310号)における審判請求理由中でも「奥野は昭和62年に灘予備校の校長に就任する際、『週3日の授業と残り3日の自主学習』という授業システムを創設すると共に、本願商標を採択し」と述べて
いる(甲第7号証、甲第8号証)。
なお、上記審判請求理由中で奥野が「週3日の授業と残り3日の自主学習」という授業システムを創設したと主張しているが、この授業システムは、奥野が灘予備校に就任するに際し、週3日の授業形態を李芸求に提言してきたところ、それでは大学合格率が伸びないのではないかと危惧した李芸求が、「週3日の授業と残りの3日の自主学習」という授業形態を考え出し、灘予備校がこれを採用したものである。(なお、奥野は平成1年1月末日に退職した。)
▲4▼灘予備校が、「予備校における教授」について、前記のような独特のシステムを採用し、その役務を示すために標章「週3日制」を最初に使用した事実、該標章の第三者の使用を止める努力をしていたことを示す書類として、奥野宛通告書写しを提出する(甲第9号証)。
このように、引用標章は、請求人により昭和62年から今日まで継続して使用された結果、本件商標の出願時である平成4年7月30日には、京阪神間の「予備校における教授」の需要者に広く認識されていた。
(2)本件商標の出願時までに、引用標章が広く認識されていた事実について
▲1▼新聞広告;引用標章は、主として朝日新聞、神戸新聞、毎日新聞、読売新聞等の朝刊に昭和62年より今日に至るまで継続的に使用されている(甲第10号証の1〜44)。昭和63年から平成4年までの広告掲載回数は、年順に、11回、14回、15回、22回、14回であり、新聞別に見ると、朝日新聞(朝刊)には概ね31回、神戸新聞には概ね38回である。また、その広告費用は、概算15049000円であり、広告掲載期間は、大学受験予備校が受講生を募集する2月から4月に集中的に行われている。
このように短期間に、毎年15回程継続的に発行部数の非常に多い一般新聞に広告を掲載したこと、広告には、標章「週3日制」が請求人が経営する「灘予備校」の名称とともに、はっきり大きく表されていること、及び当時、他の大学受験予備校が「週3日制」という授業システムを全く採用しておらず、灘予備校だけが非常に特徴的な「週3日制」という授業システムを採用していたことからすると、京阪神間の「予備校における教授」の需要者は、引用標章は灘予備校が採用している商標として認識していたと認められる。
同様な広告は大学新聞にも掲載した(甲第10号証の87、88)。
▲2▼その他の広告;入学案内書、入学案内リーフレット及びDM用ハガキ付案内等においても、昭和62年より今日に至るまで継続的に使用されている(甲第5号の1〜11、同第13号証の1〜10、同第14号証の1〜9、同第16号証の1〜10、甲第17号証の1〜4)。
▲3▼新聞への折り込みチラシ等(甲第15号証)。
▲4▼駅での広告;阪急岡本駅は、多数の高校の最寄り駅として利用されており、この近辺の大学志願者に灘予備校の標章「週3日制」を強く認識させたと認められる(甲第18号証の1〜3)。
▲5▼高校における広告;兵庫県立東灘高等学校及び兵庫県立御影高等学校の掲示板においても、灘予備校の標章「週3日制」を大学志願者に訴えている(甲第19号証の1、2)。
▲6▼ラジオ放送による広告;請求人は、「週3日制」の言葉を昭和62年から平成4年にかけて、スポット広告に使用している。そのスポットは、OBC(ラジオ大阪)「ぬかるみの世界」、MBS(毎日放送)ラジオ「ヤングタウン」、KissFMにおいて放送された。その内容は「・・・灘予備校は週3日制年間28万円残りの3日も無料補講あり神戸078−43−1155イケイケゴーゴー灘予備校」というものである。また、その放送時期と回数は、OBC;昭和62年2月〜7月、同63年2月及び7月の85回、平成1年2月〜7月、同年10月〜12月、同2年1月〜3月の117回、MBS;昭和63年2月〜3月の33回、平成1年2月〜3月の36回、KissFM;平成3年2月〜3月の50回であり、大学受験予備校の受講生獲得時期である2月から3月に集中していること、「ぬかるみの世界」「ヤングタウン」は京阪神間の大学志願者の年齢層に人気のラジオ番組であること、及びこの放送回数とを考え合わせれば、需要者に灘予備校の「週3日制」という言葉を強く浸透させたものと認められる。これらの放送費用は総額8550460円である。
▲7▼雑誌による広告;請求人は、株式会社旺文社あるいは株式会社旺文社インタラクティブ発行「全国予備校ガイドブツク」に平成3年から今日に至るまで灘予備校を掲載しており、その特色・指導方針の欄には「日本初の週3日制システム」が記載されている(甲第20号証の1〜8)。この「全国予備校ガイドブック」は、毎年平均して10万部ほど発行されている発行部数の多いものであり、このようなガイドブックに灘予備校が、著名な大手予備校と並んで掲載されていることは、大学志願者に灘予備校の「週3日制システム」を広く認識させるものであったと認められる。
また、平成5年、同6年、同8年、同9年には、株式会社リクルート発行「進学リクルートブック進学速報」にも灘予備校及び引用標章が掲載されている(甲第21号証の1〜4)。
▲8▼上記の如く、様々な広告媒体を通しての広告宣伝、灘予備校が提供する教授内容の良さから、同予備校には受講希望者が多く、その受講者数は、昭和62年から平成8年まで年順に、236人、484人、531人、464人、678人、751人、801人、765人、420人(阪神大震災の年)、486人といったように伸びている(甲第22号証)。絶対的な高校生の数が減少し、大学志願者も減少している状況、さらに、少数の大手予備校が大多数の受講生を確保してしまうという予備校業界にあって、上記受講者数は非常に多いものであり、灘予備校は、その営業範囲である京阪神間において「駿台、代々木に続く第3の予備校」と呼ばれた。
このことは、登録第3301006号商標の登録無効事件の審判請求書に添付した甲第13号証において、奥野も「アッという間に地域で第3位の予備校にのし上がった。」と認めるところである(甲第23号証)。
(2)以上より、引用標章は、請求人により使用されている態様、実態、灘予備校の経営の規模からみて、本件商標が出願された時点には、請求人が提供する役務「予備校における教授」を他人が提供する役務と識別するために使用されている標章として、需要者間に広く認識されていたものである。
そして、引用標章は、今日まで継続して頻繁に請求人により使用されている(甲第10号証の43〜84)。
(3)本件商標と引用標章との類否を比較する。
本件商標は、その構成中の「予備校」の部分がその役務との関係で本件商標が使用される場所、用途を示し、その要部は「週3日制」の部分にある。この要部「週3日制」は、請求人が使用する周知標章「週3日制」と同じ構成であり、周知標章「週3日制システム」と「週3日制」を共通にするから、引用標章と「シュウミッカセイ」という称呼を持つ点で共通し、称呼において類似する。また、本件商標の指定役務「予備校における教授」は、引用標章が使用されている役務と同じ役務である。
このように、本件商標は、その出願当時において、請求人の周知引用標章と類似し、その指定役務も同一である。
2.本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(1)本件商標は、引用標章に蓄積されたグッドウィルを、奥野及び本件商標の通常使用権者である株式会社週三日制予備校連盟(以下「週三日制予備校連盟」という。)の代表者であり、奥野から週三日制予備校連盟の事業を引き継いだ矢野宗司(甲第24号証、以下「矢野」という。)が、自己の利益のために利用する目的で使用したものであり、さらに、同様の目的をもって、奥野が出願を行い、その出願により生じた権利を承継した被請求人が登録を得たものである。以下詳述する。
▲1▼灘予備校において、わが国で初めての「週3日の授業と残り3日の自主学習」という授業システムが創設された当時、奥野はその校長の職にあったが、同人の立場は、あくまで請求人に雇用されていた従業者であるから、引用標章を使用している主体は請求人にほかならない(甲第3号証、甲第4号証)。
したがって、それらの周知商標に蓄積したグッドウィルは請求人に属するものであり、一従業者であった奥野個人に属するものでないことは明らかである。
それにもかかわらず、奥野は、灘予備校の元校長という立場にあって、引用標章が灘予備校の業務に係るものとして周知であることを了解していながら、請求人に無断で本件商標を自己名義で出願し、また、灘予備校と全く関係のない大阪予備学院、なんば予備校及び灘予備校にほど近い芦屋キャンパスなる予備校において使用し、これらの予備校の入学案内や新聞広告等を灘予備校のそれと似せて、灘予備校の姉妹校であるかのような印象を需要者に与えようとした(甲第5号証の2及び3、甲第25号証、甲第27号証、甲第28号証)。
請求人は、奥野の上記行為をやめさせようと奥野に平成1年1月28日付で警告書を送付した(甲第26号証)。
▲2▼本件商標の出願の審査において、拒絶理由通知が発せられ、拒絶査定がなされると、奥野及び被請求人は、灘予備校の使用実績をあたかも自己またはそのライセンシーの使用実績であるかのように見せかけて審判官を誤解させ、商標法第3条第2項の規定の適用を受け登録を得ている。
例えば、平成6年4月6日付意見書において「出願人は、昭和62年に、『灘予備校』の校長に就任する際、本願商標『週3日制予備校』の使用をはじめ、現在も出願人が携わる数々の予備校に本願商標を継続して使用している」、平成6年11月17日付審判理由補充書において「本願商標『週3日制予備校』が指称する授業システムの創始者であって、当初の出願人である奥野光太郎氏は、・・・昭和62年に『灘予備校』の校長に就任する際、『週3日の授業と残りの3日の自主学習』という授業システムを創設すると共に、本願商標『週3日制予備校』を採択し、その使用をはじめ、爾後数々の予備校において本願商標を継続して使用している」、平成6年11月17日付審判理由補充書に添付の「週3日制予備校連盟の御案内」なるパンフレットにおいて「8年前、神戸市灘区の小予備校が大手予備校の進出を契機に、大手に対抗するため《週3日制》システムを考案。その後、小予備校でありながら毎年400名余の生徒数を確保。3年前より各地方都市の学習塾を対象にシステムの普及を図り、芦屋・奈良・東京・加古川での試行期間を経て、《週3日制》システムの実績及び集客力に確固たる自信を深める。本年よりその実額をもとに、学習塾の立場にたった連盟をめざし《週3日制》予備校連盟を設立。」、平成7年4月14日付審判理由補充書において「当初の出願人の奥野光太郎氏及び現出願人から独占的に使用許諾を受けた矢野宗司氏が発足させた『週3日制予備校連盟』が、本願商標『週3日制予備校』を長期間独占して使用し続け・・」などである(甲第7号証、甲第8号証、甲第30号証、甲第31号証)。
▲3▼奥野及び矢野は、周知引用標章に蓄積したグッドウィルに只乗りするのみならず、これを毀損する目的をもって、本件商標を使用したものである。
即ち、奥野は、平成5年2月17日の芦屋キャンパスの入学説明会において、事実と異なる灘予備校への中傷的な批判を行った(甲第32号証)。これに対し、請求人は奥野に通告書を出した(甲第9号証)。
また、矢野は、平成8年3月20日付神戸新聞において、「週3日の授業と残り3日の自主学習」という授業システム自体に独占権が付与されるかのような文言が含まれた、虚偽の広告を掲載したり、「週3日制」と題されたパンフレットの中で、週三日制予備校連盟に加入した予備校しか「週3日の授業と残り3日の自主学習」という教授システムを採用できないかのような虚偽の告知をした(甲第33号証、甲第34号証)。
さらに、本件商標が登録されるや否や、矢野は週三日制予備校連盟名義で、請求人に対し平成10年5月15日付催告書を送りつけた(甲第35号証)。このような矢野の要求は、引用標章をわが国で初めて予備校における教授に用い、以来これらの標章を善良に使用し続けている請求人の業務活動を妨害しようとする不当なものである。
以上のように、本件商標は、請求人の周知引用標章と類似の商標を、被請求人らが不正の目的をもって使用し、出願し登録したものと認められるものであり、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたことは明らかである。
3.答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第10号について
▲1▼被請求人は、昭和63年度から平成8年度の募集広告における「週3日制」の表示は、商標としての使用ではない旨主張する。
しかし、商標「週3日制」は、昭和63年から平成3年頃、大学受験予備校が一般的に週に5日間講義又は週に6日間講義という教育方法をとっている中、灘予備校が他の予備校とは全く違って「週に3日間の講義・残り3日間の無料補講」という教育方法をとっていることをその需要者にアピールするために請求人が独自に採択した造語である。それ故に、需要者は、請求人の使用に係る標章「週3日制」を灘予備校と他の予備校の提供する役務を識別する商標として認識することができたのである。
▲2▼被請求人は、奥野が平成1年1月に灘予備校を退職後、阪神地区周辺において、灘予備校と同程度、あるいはこれを上回る規模の「週3日制システム」を採用した予備校を複数設立した旨主張する。
しかし、奥野が大阪予備学院等の設立当初から生徒獲得に苦労しなかったのは、大阪予備学院等の設立までに灘予備校が京阪神地区において引用標章を使用して築き挙げた多大な業務上の信用に奥野がフリーライドしたからに他ならない。奥野の一連の不正行為については、既に述べたところである。
▲3▼被請求人は、本件商標の出願時に、引用標章が京阪神間の需要者に広く認識されていたとの請求人の主張は事実に反する旨主張する。
本件商標の出願日時点において、引用標章が京阪神間の需要者に広く認識されていたことは、前述したとおりであり、また、平成1年の時点において、奥野が灘予備校の業務上の信用にフリーライドした結果、大阪予備学院等の生徒獲得に苦労しなかったことから考えても、本件商標の出願時における引用標章は、灘予備校の役務商標として、京阪神間の需要者に広く認識されていたことがわかる。
▲4▼被請求人は、本件商標の審決時にあっては「週3日制予備校」といえば、週三日制予備校連盟の役務商標として全国的に周知となっており、引用標章は京阪神間で周知となっていない旨主張する。
乙各号証を見る限り、被請求人が使用している標章の殆どが「週3日制」あるいは「週3日制予備校連盟」であり、本件商標がその審決時に周知になっていたとは到底考えられない。
その一方、甲各号証よりすれば、請求人経営の灘予備校は、週三日制予備校連盟の設立及び広告活動開始の前である昭和62年から引用標章を京阪神間において広告活動等を通して継続的に使用しており、引用標章は、本件商標の審決時には、京阪神間の需要者に灘予備校の役務商標として広く認識されていたのである。したがって、上記被請求人の主張は失当である。
▲5▼被請求人は、「週3日制システム」を考案したのは奥野であり、これに基づく請求人の主張は一切成立しない旨主張するが、「週3日制システム」を発案したのは、前記1.(1)▲3▼(「なお」以下)で述べたとおり、李芸求である。
そして、「週3日制システム」は「単に週に3日開講する予備校ではなく、週3日の授業と残りの3日に無料補講を行う」という点に特徴がある教育方法である。
▲6▼被請求人は、本件商標が、請求人の如く「週3日制」を標傍する1予備校の商標と混同を生じさせる余地などあり得ない旨主張する。
しかしながら、第4条第1項第10号の立法趣旨は、商品又は役務の出所混同防止とともに、一定の信用を蓄積した未登録有名商標の既得の利益を保護するところにある。
引用標章は、本件商標の出願時及び審決時において、京阪神間で周知であったものであり、また、本件商標と引用標章は称呼上類似の商標であること前述のとおりであるから、本件商標は、その出願時及び審決時において、引用標章との関係において需要者に出所の混同を生じさせる商標だったのである。
したがって、京阪神間の需要者に広く認識された引用標章の使用事実を保護する観点からも、本件商標は第4条第1項第10号の規定に該当する商標である。
(2)第4条第1項第15号について
請求人は、引用標章を灘予備校の提供する役務に係る商標として昭和62年から継続的に使用し続け、引用標章は、本件商標の出願時においては、既に需要者に灘予備校の提供する役務に係る商標として広く認識されていた。そういった状況の下、週三日制予備校連盟が後発的に本件商標を使用しても、本件商標は灘予備校の業務に係る役務と誤認させ、あるいは、灘予備校と経済的または組織的に何等かの関係のある者の業務に係る役務であると誤認させて需要者に出所の混同を生じさせる商標だったのである。
したがって、本件商標は、その出願時及び審決時において他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標であり、第4条第1項第15号の規定に該当する商標である。
(3)第4条第1項第19号について
▲1▼被請求人は、本件商標は、その審決時には全国的に周知著名となっており、引用標章と何ら紛らわしくない商標であるから、引用標章と非類似であり、本規定には該当しないものである主張する。
上述したように、引用標章は、本件商標の審決時において、京阪神間において灘予備校の役務商標として周知であった。
そういった状況の下、後発的に週三日制予備校連盟が本件商標を全国的に使用したとしても、引用標章と本件商標は、その要部である「週3日制」及びこれより生じる称呼「シュウミツカセイ」が同じであることからすれば、需要者がその出所を混同するほど相紛らわしく類似のものである。
▲2▼被請求人は、本件商標の使用は不正の目的をもっての使用でないから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第19号の立法趣旨は、出所の混同の有無を問わず、取引上の信義則に反するような目的を持って出願された商標を排除することにあり、本件商標は、取引上の信義則に反して使用されたのであるから、「不正の目的」をもって使用されていたこと前述のとおりである。
▲3▼以上に述べた事実をより明白にするため、請求人は、本件商標の元出願人である奥野に対する証人尋問を申請する。
4.したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号の規定に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により無効にされるべきである。
III 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第40号証(枝番を含む。)を提出した。
1.商標法第4条第1項第10号について
(1)請求人の昭和62年度の募集広告(甲第10号証の1、2)には、「週3日編成」の記載は見られるが、引用標章は使用されていない。また、昭和63年度から平成3年度の募集広告(甲第10号証の3〜25)には、「週3日制」及び「年間28万円」の表示をしているが、「週3日制」の文字は、安価な授業料の理由付けとして表記されているにすぎず、商標としての使用ではない。
一方、奥野は、平成1年1月に灘予備校を退職した後、同年に大阪予備学院を設立し、「週3日制システム」を採用し、初年度から510人の生徒を集めて、近隣の大手予備校から注目を浴び、また、姉妹校として「なんば予備校」を設立するなど、阪神地区周辺において、灘予備校と同程度あるいはこれを上回る規模の「週3日制システム」を採用した予備校を複数設立している(甲第25号証、乙第1号証〜乙第6号証)。
したがって、本件商標の出願時に、引用標章が京阪神間の需要者に広く認識されていたとの主張は明らかに事実に反し、むしろ奥野の使用に係る標章「週3日制」が周知であったというべきである。
(2)奥野は、本件商標出願後の平成5年には、東京及び福岡において「週3日制システム」を採用する予備校「東京リアライズ」(乙第7号証)及び「福岡リアライズ」の設立に関わるなど、「週3日制予備校」の全国ネットワークの確立を目指した予備校の運営指導を開始し(乙第2号証)、これは後に被請求人が理事を務める週三日制予備校連盟に承継された。
この結果、灘予備校が昭和62年以降も依然として「週3日制システム」を採用し、新聞広告等を通じて宣伝活動を繰り広げたとしても、本件商標は、その審決時には、週三日制予備校連盟の業務に係る役務を表示するものとして全国的に周知となっており(乙第8号証)、引用標章が京阪神間で周知となっているとは到底考えられない。
なお、請求人は、本件審判と同様の理由で、本件商標について登録異議申立をしたが、引用標章の周知性を獲得していたとは認定されず、維持決定がなされている(乙第9号証)。
(3)請求人は、「週3日制システム」は、請求人が独自に考案したものであると主張するが、同システムを考案したのは奥野であり(乙第10号証)、これに基づく請求人の主張は一切成立し得ない。
また、請求人は「その後奥野は平成1年1月末日に退職した。」と主張するなど、奥野の背信性を示そうとしているが、これは、灘予備校が初年度(昭和62年度)から予想以上の生徒を獲得したことを受けて、そもそも「週3日制システム」の採用に難色を示していた請求人が、一転して、上記授業システムは請求人が考案したものと主張し、この結果奥野との関係が悪化したものであることは同人の報告書からも明らかである(乙第10号証)。
それにもかかわらず、請求人は奥野に対して、本件商標あるいは「週3日制」の文字の使用を中止させようと通告書(甲第9号証及び甲第26号証)を送り付けたと主張するが、上述のとおり、甲第9号証を送り付けた平成5年当時奥野は、「東京リアライズ」及び「福岡リアライズ」の運営指導をしており(乙第2号証及び乙第7号証)、甲第9号証の内容は明らかに事実に反するものであり、また、甲第26号証には郵便局にて受け付けられたことを証する印鑑が捺印されておらず、送付したとの主張自体が事実に反するものである。
(4)引用標章は、予備校の授業システムの一形態といった観念を生じさせるものである。
これに対し、本件商標は、構成中に「週3日制」の文字を有するものとはいえ、被請求人より使用許諾を受けた週三日制予備校連盟の加盟校の現実の使用により、全国的に周知著名となり、商標法第3条第2項の適用を受けて登録されたものである(乙第8号証)。
週三日制予備校連盟は、平成6年12月に正式に設立され、被請求人が理事を務め、「週3日制システム」を採用する予備校のネットワークの拡大発展を目指した組織であり(乙第11号証)、その採用する授業システムの特異性は勿論のこと、中小予備校がネットワークを提携する経営上の特異性も相俟って、大手予備校に対抗する中小予備校の対抗手段として注目を浴び、新聞等に盛んに取り上げられ(乙第12号証の1〜7)、また、加盟校募集に向けてのセミナーを頻繁に開催し、予備校・塾関係者の間でも全国的に周知となるに至っている(乙第13号証の1〜6)。
そして、各加盟校は、週三日制予備校連盟に加盟する「週3日制予備校」として広告宣伝活動を行い、その活動内容及び本件商標は需要者の間で広く認識されるに至っている(乙第14号証〜乙第16号証)。
したがって、本件商標からは、少なくとも審決時には、単なる授業システムではなく、「週3日の授業と残り3日の自主学習」を掲げ、全国に「週3日制予備校」のネットワークを広げている上記組織の加盟校を直ちに想起させるものとなっている(乙第14号証の1〜27、乙第15号証〜乙第28号証)。
そうすると、本件商標は、構成全体をもって全国的に周知な組織である週三日制予備校連盟の加盟校の業務に係る役務の同一性を表示するものとして、多大なる業務上の信用が化体しており、引用標章とは明らかに別異のものと認識される。
(5)奥野が考案した「週3日制システム」が、灘予備校設立時である昭和62年当時、非常に目新しいものであり、「週3日制」の文字を広告に使用することで需要者の注意を惹くものであったとしても、これ以降「安い授業料で学生を集めたい」といった予備校側の意識の表れとして、これに近似するシステムを採用する予備校が急増しており、京都府の「進学ゼミナール予備校」、東京の「早稲田ゼミナール、大学予備校ヱグザム」等が「週3日制(コース)」を採用しており、「週4日制」、「週5日制」も含めると全国で多数の予備校が、これに類似するコースを設置している(乙第28号証〜乙第30号証)。
(6)本件商標が全国的な周知著名性を獲得したのは、前記(4)のとおりであり、また、現実の使用態様においても、週三日制予備校連盟加盟校は、図形マークとともに「週三日制予備校連盟]の表示をし、この下に「神戸サクセス」、「名古屋予備校」、「東京サクセス」といった各加盟校名を表示しており、常に使用態様を統一して週三日制予備校連盟加盟校の「週3日制予備校」であることを、看者に印象付ける表示をしているからである。
これに対し、灘予備校は、「灘予備校」の名称を大きく表示し、「日本初《週3日制》の灘予備校!」の表示をガラス戸にするのみであり、本件商標とは何ら紛らわしいものではなく、混同が生じるおそれもない(乙第35号証〜乙第37号証)。
このことは、新聞紙上の広告及び予備校の広告誌において、灘予備校と週三日制予備校連盟加盟校の広告が、2年連続相前後して掲載されている(甲第32号証〜甲第34号証)が、週三日制予備校連盟の周知性から、混同を生じていない。
同様に新聞広告及び生徒募集用パンフレットを見ても、明らかに相違し、混同を生じさせるおそれなど全くないものである(乙第39号証、乙第40号証)。
したがって、本件商標が、請求人の如く「週3日制」を標傍する1予備校の商標と混同を生じさせる余地などあり得ないものである。
(5)以上のとおり、引用標章は、灘予備校にて継続的に使用されていたにしても、需要者の間で広く認識されていたものとは到底言えるものではなく、また、本件商標は、奥野が当初目指していた全国ネットワークである週三日制予備校連盟の展開により、加盟校の役務の同一性を表示するものとして全国的に周知著名となり、多大なる業務上の信用が化体しており、混同を生じる余地は全くなく、商標法第4条第1項第10号の規定に反して登録されたものではない。
2.商標法第4条第1項第19号について
(1)上述の如く、本件商標は、審決時には全国的に周知著名となっており、引用標章と何ら相紛らわしくない商標であるから、その審決時には、引用標章と非類似であり、本規定には該当しないものである。
また、乙第31号証(新聞記事)にもあるように、本件商標と引用標章は、その営業地域が重複する神戸市周辺においても需要者の間で別主体の役務を表示する商標として識別されており、その上、被請求人は東京都在の東京サクセス予備校を中心に関東地区から名古屋予備校がある東海地区をはじめとする広範囲で「週3日制予備校」を展開しており、神戸市で1校のみを経営する請求人のグツドウイルに只乗りする必要もなければ、請求人が本件商標の使用により損害を被るおそれなどあり得ない。
なお、請求人は、矢野が「週3日の授業と残り3日の自主学習」という授業システム自体に独占権が付与されるかのようなことを述べている旨主張するが、これは週三日制予備校連盟のPRの中で述べていることからも明らかなように、講師、教材、カリキュラム、広告宣伝等の連盟共通の実体的運営手法の模倣について述べているものであり、他の予備校が単に「週3日の授業」を行うことを禁じる趣旨ではないのは明白である。
(2)一方、請求人は、週三日制予備校連盟が全国展開を進めるにつれて、自らの使用態様を紛らわしいものへと変化させている。
例えば、平成2年度以降、生徒募集パンフレットに、鳥のマークの商標を使用し始め(甲第5号証の4)、この構成中輪郭部において、平成8年まで「★週3日制★★年学費28万円」の文字を表示していたのに対し、本件商標が登録された平成9年には「★週3日制★★システム予備校★」の文字に変更している(甲第5号証の11)。
また、請求人は、甲第18号証の1、2(阪急電鉄岡本駅構内での看板の写真)を提出しており、さらに、本件商標が既に全国的に周知著名となった平成9年頃に、敢えて週三日制予備校連盟の本社がある加古川市内で、また、加盟校である加古川塾予備校の近隣のJR東加古川駅構内に同様の看板を設置している(乙第41号証、甲第18号証の3)。
このように、むしろ請求人が不正の目的をもって、引用標章を使用しているというべきである。
(3)以上、本件商標は、その出願前から使用を開始した奥野とその承継人である被請求人並びに矢野が、「週3日制予備校」のネットワークの全国展開のために使用を継続してきたものであり、商標法4条第1項第19号の規定に反して登録されたものではない。
IV 当審の判断
1.本件商標について
(1)本件商標は、前記したとおり、「週3日制予備校」の文字よりなるものであるところ、審査段階においては、本件商標は、これを指定役務中の「予備校における教授」について使用しても、役務の質、提供方法を表示するにすぎないものであり、また、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして拒絶されたものであるが、請求人は、指定役務を「予備校における教授」と補正し、審判において審理された結果、「請求人が提出した甲各号証を総合判断すれば、本願商標は、継続して役務『予備校における教授』に使用された結果、現在においては需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができるに至ったものと認め得る」ものとして、原査定を取り消し、設定登録されたものである。
換言すれば、本件商標は、これをその指定役務である「予備校における教授」について使用した場合は、全体として「週3日制を採用した予備校」なる意味合いを理解させるにとどまるものであるから、単に役務の質(内容)、もしくは提供の方法を表示するにすぎないものであり、本来自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないというべきものであったが、使用により識別力を有するに至った商標として設定登録されたものということができ、したがって、本件商標は、使用によって識別力を有するに至った構成態様と同一の構成態様そのものが、全体として自他役務の識別標識として機能を発揮するものというべきである。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応した「シュウミッカセイヨビコウ」の称呼のみを生ずるものであって、「週3日制を採用した予備校」なる観念を想起させるものといわなければならない。
2.引用標章について
(1)引用標章は、それぞれ「週3日制」、「週3日制システム」の文字を書してなものであるところ、甲第5号証、甲第6号証、甲第10号証の3ないし88、甲第13号証ないし甲第16号証、甲第18号証ないし甲第21号証によれば、請求人の経営に係る灘予備校は、その役務である「予備校における教授」について、昭和62年より「週3日制」の表示を、また、平成1年頃より「週3日制システム」の表示を使用していたと認め得るところである。
(2)ところで、「週3日制」、あるいは「週3日制システム」の語は、「1週に3日あることをなす制度」、「1週に3日あることをなすやり方」なる意を容易に理解させる日常的なありふれた語といえるものであること、甲第5号証、甲第13号証ないし甲第15号証、甲第18号証ないし甲第21号証を徴するに、「週3日制」、あるいは「週3日制システム」の使用態様は、商標の使用というより、むしろ役務である「予備校における教授」の提供の方法、質(内容)を表示したと理解させるものであること、甲第25号証ないし甲第29号証によれば、灘予備校が昭和62年に「週3日制」の文字を使用し、「週3日制」の授業システムを導入した後、週三日制予備校連盟が設立されるまでの間、平成2年に大阪予備学院が、平成4年になんば予備校が、また、平成5年に芦屋キャンパスで「週3日制」の授業システムが導入されたことが認められ、(「週3日制」の授業システムの創始者が誰であるかはさておいて)阪神地区においては数校の予備校が「週3日制」の授業システムを導入していたことが認められること、また、近時、大学受験生等を対象とした予備校にあっては、生徒獲得のため、各校の教授システムを受験生にわかりやすく、かつ、他校との差別化を図るために、「少人数制」、「個別授業1クラス6名」、「マンツーマン指導」、「週5日コース」、「週3日コース」「週2〜3回コース」、「週5日制」などの語句をキャチフレーズとして普通に使用していることは、甲第10号証、乙第14号証、乙第29号証ないし乙第31号証などによっても認め得るところである。
(3)上記(2)の事情を勘案すれば、請求人の経営に係る灘予備校は、「週3日制」の授業システムを導入した予備校として、阪神地区では知られていたとしても、これはあくまでも「週3日制」授業システムを導入した予備校としての灘予備校が、この種役務の需要者に知られていたとみるのが相当であり、前記したとおり、引用標章は、その使用態様からして、単に役務の提供の方法、質(内容)を表示したものの域を出ないものと認められ、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものということはできない。
3.本件商標と引用標章との比較
本件商標は、前記1.で認定したとおり、「シュウミッカセイヨビコウ」の称呼、及び「週3日制を採用した予備校」の観念を生ずるものであるのに対して、引用標章は、前記2.で認定したとおり、商標の本質である自他役務の識別標識としての機能を有するものではないから、本件商標と引用標章とは、称呼、観念、外観のいずれについても比較することはできない。
4.むすび
以上のとおり、引用標章は、自他役務の識別機能を有しないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当するということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。
なお、請求人は、平成11年6月23日付弁駁書において、本件商標の登録無効請求につき、新たに商標法第4条第1項第15号を根拠とする理由を追加したが、これは当初の無効理由の要旨を変更するものと認められるから、商標法第56条で準用する特許法第131条第2項の規定により、本件商標につき商標法第4条第1項第15号を根拠とする無効理由は認められない。
また、本件商標と引用標章とは、商標において比較することができないものであり、本件商標は、請求人が挙げた無効理由の法条に該当しないこと前記認定のとおりであって、証人尋問により本件商標の出願等につき、不正の目的等があったか否かについて検討をする必要性が認められないから、請求人より申請のあった証人尋問は行わないものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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