Trademark Appeal Case
ネットセキュリティの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2000−3893(T2000−3893/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「ネットセキュリティ」の文字(標準文字)を書してなり、第36類「損害保険の引受け」を指定役務として、平成10年6月1日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『ネットセキュリティ』の文字を普通に用いられる方法で書してなるが、これは『コンピュータネットワークの安全保障』の意味合いを容易に理解させるものであって、これを本願指定役務に使用するときは、単に『コンピュータネットワークに関わる事故等の損害に対する保険』であること、即ち、役務の質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、「ネットセキュリティ」の文字を書してなるところ、その構成中の「ネット」の文字は「ネットワーク」の語の略で、「コンピュータの通信網、コンピュータネットワーク」を意味する語として、また、「セキュリティ」の文字は「安全を守ること、安全、安全保障」を意味する語として親しまれているものであるから、その全体としては、「コンピュータネットワークの安全保障」、すなわち、「コンピュータネットワークを不正なアクセス等から守ること」程度の意味合いを表す語として容易に認識し得るものである(例えば、「現代用語の基礎知識(2001年1月1日発行 株式会社自由国民社)」をみても、「ネットワーク・セキュリティ」が「オープンなコンピュータ・ネットワークを、不正なアクセスから守ること。」とされている。)。
そして、本願は、「損害保険の引受け」を指定役務とするところ、損害保険の業界においては、コンピュータウイルスの侵入や不正アクセスなどでコンピュータネットワークが損害を受けた場合の補償を行う損害保険の開発と営業が盛んに行われている実情があり、このことは、例えば、新聞記事をみると、2001年2月2日の日経産業新聞には、「不正侵入の被害保険、ISS、ソフト顧客に補償―東京海上と開発。」の見出しの下に「不正侵入対策ソフトを販売するインターネットセキュリティシステムズ(ISS、東京・渋谷、〜社長)は、自社ソフトの顧客がハッカーなどの不正侵入を受けた場合にその被害を補償するセキュリティー保険の取り扱いを一日から始めた。保険を組み込むことで、ソフト顧客の拡大を目指す。セキュリティー保険『侵入禁止』は東京海上火災保険と共同で開発した。対象はISSの不正侵入監視ソフト『リアルセキュア』を導入したか、導入を検討中の顧客。ソフトを導入すれば無償で付属する保険『侵入禁止メイト』と、顧客が任意で加入する有償の『侵入禁止ベスト』の二種類を設定した。」と、2000年4月19日の日経産業新聞には、「ダイエーOMC、ネット専用保険―新ICカードも開発。」の見出しの下に「ダイエーオーエムシー(OMC)は十八日、インターネット関連事業支援のネオテニー(東京・港、〜社長)とネットセキュリティー関連事業に乗り出すと発表した。五月末に共同出資会社を設立し、八月からICカードやネット専用保険商品の開発などに着手する。」と、2000年3月6日の日経産業新聞には、「EC取引に『安全保障』時代―NTTデータ、ハッカー対策連合、IT50社。」の見出しの下に「二月二十四日、都内のホテルにネットセキュリティーに関する技術、ノウハウを持つ五十社の代表者が集まった。〜損保大手が参加するのも特徴だ。ネット上の売買で第三者による不正侵入が原因で被害が出た場合、賠償金額の基準などをどの程度に設定するか、IT企業やコンサルティング会社などと協議。ネット上の保険商品を開発する。」と、1999年2月19日の日経金融新聞には、「大手損保が発売した『ネット保険』と主な特徴。」の見出しの下に「大手損保が発売した『ネット保険』と主な特徴 ▽東京海上『ネットワーク総合保険』・再発防止対策の費用も補償・個別ニーズに応じて設計 ▽安田火災『オンライン中断保険』・初のオンライン利用企業向け専用保険・独保険会社からノウハウ導入 ▽三井海上『ネットセキュリティ総合保険』・リスクコンサルティング子会社などと提携、安全性診断も合わせて提供・初年度契約高10億円目標 ▽住友海上『ネットワーク安心総合補償プラン』・財物損害、費用損害、利益・賠償損害の中から企業が補償対象を選択 ▽日本火災『ネットワークシステム総合保険』・1年間無事故なら保険料の最大20%を払い戻し」と記載され、また、インターネットのホームページをみると、「日経コミュニケーション VPN online」のホームページ【http://search.nikkeibp.co.jp/NCC/VPN/01/n980908_1.html】には、「VPN news from Biztech」として、「ネット保険が続々登場、不正アクセス損害をカバー(19980901)」の表題の下に「企業が自社ネットワークに侵入されて、データの破壊や盗用などの被害に遭うケースが増えている。〜そんな中、損害保険会社が相次いで企業向けネットワーク保険の販売を開始した。コンピューターウイルスの侵入や不正アクセスなどで損害を受けた場合、システムの修復費や取引先へ損害を与えた際の賠償金などの一部を補償する。安田火災海上保険は今年四月、ネット保険『ぱそこん軟硬(膏)』を販売した。〜」と、「電子商取引推進協議会(ECOM)」のホームページ【http://www.ecom.or.jp/qecom/seika/naiyou/p2_bpwg/ohshima/bp/1.html】には、「ECビジネス参入ガイド」として、「1.4.8 ネットワーク事業保険 自然災害や事故などによる情報機器の直接損害や、ハッカーなどの不正アクセスや、ウィルス、プログラム・バグなどによるプログラム・データなどの消失や改ざんされた場合に生じる損害をカバーするような、ネットワーク関係の保険もいくつかできている。(1)「ネットセキュリティ総合保険」の例 三井海上火災では、「ネットセキュリティ総合保険」を発売している。〜(2)「インターネット事業者総合保険」の例 大東京火災海上では、「インターネット事業者総合保険」を発売している。〜」と、「AIU プレスリリース」のホームページ【http://www.aiu.co.jp/aiucom/press/01_10_29.htm】には、「2001/10/29 全世界を担保する『企業向けネットセキュリティ保険』を発売」の表題の下に「AIU保険会社(日本における代表者:〜)は、11月1日よりeビジネス推進企業向け専用保険『ネットアドバンテージ セキュリティ』を発売いたします。『不正アクセス』『DoS攻撃』『ウイルス』による損害は年々増えつづけていますが、これらセキュリティ事故により企業が被る賠償責任、逸失利益、特別費用等を包括的に補償することで、安心してeビジネスを推進できる環境を提供いたします。また、全世界を担保対象とし、海外からの損害賠償請求にも対応いたします。」と記載されていることからも、十分に裏付けられるところである。
そうとすると、本願商標は、その指定役務中、上述の如きコンピュータ・ネットワークに関する損害保険の引受けについて使用したときは、取引者、需要者をして、「コンピュータネットワークを不正なアクセス等から守る」程度の意味合いを理解し、それを保険の内容、すなわち、その役務の質を表示するものとして認識するにとどまり、自他役務の識別標識としては認識しないとみるを相当とし、また、前記役務以外の役務に使用したときは、恰も、コンピュータ・ネットワークに関する損害保険であるかの如く役務の質の誤認を生ずるおそれがあるものと認める。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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