Trademark Appeal Case
著名商標の引用と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成9年審判第6951号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおり、「Valentino」と「Coupeau」の文字を上下二段に横書きしてなり、第25類「げた、草履類」を指定商品として、平成7年7月25日に登録出願されたものである。
第2 当審において通知した拒絶の理由
1 本願商標は、「Valentino」と「Coupeau」の文字を上下二段に書してなるものであるところ、その構成中には、後記に示すとおり、イタリア国の服飾デザイナーである「Valentino Garavani」(オランダ国在の関連企業「バレンチノ グローブ ベスローテン フェンノートシャップ社」)が「紳士・婦人服、アクセサリー、バッグ」等に使用している著名な商標「Valentino」の文字を含んでなるものである。また、本願商標中の「Valentino」の文字が我が国においてありふれた氏として、或いは、「Valentino Coupeau」の文字が一般に親しまれた特定の熟語を表すものとか、特定の人名を表すものとして知られているとかの事情は認められない。
2 ところで、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)について職権により証拠調べを行ったところ、以下のとおりの事実を発見した。
(1)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されていること。
(2)「EUROPE一流ブランド」(昭和52年12月1日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」の所有する店舗の紹介と簡単な経歴が「婦人服」の商品と共に掲載されていること。
(3)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、ヴァレンチィーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世界的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクションは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。ヴァレンティ−ノの洋服に対する考えは、まず個性が第一で、彼のコレクションからは、デテールでなくそのエスプリをくみ取ってもらうことに重きをおく。ローマの高級住宅地、アッピア・アンティカに母親とたくさんの犬と暮らしている。仕事でパリとローマを行き来するが、世界中を旅行するなど忙しい日々である。物をつくる人は誰でも波があって、いつも傑作が続くとはかぎらないが、ヴァレンティーノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。以前から東洋風なエキゾティシズムが好きで、時によってトルコ風、アラブ風の特色がみられるが、最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティーノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されていること。
(4)「朝日新聞」(昭和57年11月20日夕刊)において、世界の服をリードする3人のうちの1人として「バレンチノ」の紹介記事が掲載されていること。
(5)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の文字と共に、「スーツ、ブルゾン、シャツ、ネクタイ、ベルト及びバッグ」の商品が掲載されていること。
(6)雑誌「non-no」1989年 No23号(平成元年12月5日株式会社集英社発行)及び「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されていること。
(7)「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア Romaのデザイナー Valentino Garavani(1932−)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。・・・ 」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。
(8)「世界の一流品大図鑑’93年版」(平成5年5月20日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されていること。
以上の(1)ないし(8)の事実よりすると、「VALENTINO」「Valentino」(ヴァレンティノ)、「VALENTINO GARAVANI」「Valentino Garavani」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)よりなる商標(以下「引用商標」という。)は、「Valentino Garavani」がデザインした婦人・紳士服、アクセサリー、バッグ等の商品におけるデザイナーブランドとして、遅くとも本願商標の出願時には、我が国の取引者、需要者の間に広く知られていたものということができる。
3 そして、前記1及び2のとおり、本願商標は、その構成中に「Valentino」の文字を有し、それが周知、著名なものであること及び本願商標の指定商品「げた、草履類」と引用商標の使用をしている商品とは、共にファッション関連の商品であって、比較的密接な関連性がある商品といい得るものであること等を併せ考慮すれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中上段の「Valentino」の文字のみを捉え、著名な引用商標を連想、想起し、それが「Valentino Garavani」又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第3 請求人の意見の要旨
(1)「VALENTINO」の文字が、直ちにイタリア・ファッション界の第1人者として名声を博している「VALENTINO GARAVANI」を指すことにならないことは、甲第1号証ないし同第4号証における決定、審決から明らかである。
そして、前記の決定、審決と同じ考え方に基づいて、「VALENTINO」又はその文字の前後に「GARAVANI」以外の文字を配した標章が多数登録になっっている(甲第5号証ないし同第32号証)。
本件について示された拒絶理由通知書の理由中に示された判断は、これら決定、審判の判断を否定する考え方である。特に、甲第9号証、同第12号証及び同第13号証は、「VALENTINO」の文字からのみ成る商標である。拒絶理由中に示された判断からすれば、これらの商標は、審判手続きを経ても登録されなかったはずである。これらについても審判手続きを経て登録されていることを留意されたい。
したがって、本願商標は、甲第1号証ないし同第4号証として提出した決定、審決に示された判断及び甲第5号証ないし同第32号証に示した登録商標に倣って登録されるべきである
(2)「VALENTINO GARAVANI」が著名になった後で、「VALENTINO」の文字を含む商標等の登録を許した処分全てに問題が生じる。そればかりでなく、適法に登録になった商標を使用している者であっても場合によっては不正競争防止法の適用を受けることにもなりかねないという不都合が生じることになる。
(3)米国、台湾及び中国で「VALENTINO」の文字を使った商標の登録状況を調査したところ、甲第33号証ないし同第35号証に示すとおりの商標が登録されていることを発見した。
「VALENTINO GARAVANI」と何らかの関係がある者の商品或いは営業標識と紛らわしいと言うのであれば、米国、台湾及び中国においても同じように登録要件を欠く標識と判断され登録されないはずである。しかし、そうでないからこそ、登録がなされているのである。この事実は無視することはできない。
第4 当審の判断
当審において通知した拒絶の理由に対する請求人の意見を検討してもなお、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、その構成中上段の「Valentino」の文字のみを捉え、著名な引用商標を連想、想起し、それがイタリアの服飾デザイナーである「Valentino Garavani」又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、前記「第2」の当審において通知した拒絶の理由は妥当なものと認められるので、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し登録することができない。
なお、請求人は、「VALENTINO」「Valentino」「ヴァレンティノ」「バレンチノ」の文字又はその文字を含む商標に係る異議決定、審決例(甲第1号証ないし同第4号証)及び登録例(甲第5号証ないし同第32号証)を挙げ、本願商標は登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記各甲号証における商標(甲第5号証ないし同第8号証、同第14号証及び同第25号証は、Valentino Garavaniのデザインに係る各種商品を製造、販売する者が所有する登録商標である。)と本願商標とは、その商標の構成、指定商品、登録出願日等が相違し事案を異にするものであり、仮に、その中に本願商標に対する認定、判断との関係からみて矛盾するもの等が存在するとしても、具体的事案の判断においては、過去の審決例や登録例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、これら審決例や登録例等に基づく請求人の主張は採用の限りでない。
また、請求人は、外国での登録例(甲第33号証ないし同第35号証)も挙げるが、これら外国の登録例については、商標登録に際する判断の基準や判断過程及び根拠等が明らかではないから、その登録例をもって直ちに本願商標を登録すべきものとすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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