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Trademark Appeal Case

著名商標CHANELとHANELの類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35250(T2000−35250/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4155061号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4155061号(以下「本件商標」という。)は、「HANEL」の欧文字を書してなり、平成8年9月24日に登録出願、同10年6月12日に第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として設定登録がなされたものである。

第2 請求人の引用する商標

(1)登録第785680号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として昭和40年11月2日に登録出願、同43年7月10日に設定登録、その後、同53年9月1日、同63年5月25日、平成10年3月10日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

(2)登録第860151号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として昭和40年11月2日に登録出願、同45年6月12日に設定登録、その後、同56年2月27日、平成2年4月27日、同12年3月14日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

(3)登録第1218150号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として昭和45年9月18日に登録出願、同51年9月13日に設定登録、その後、同61年9月18日、平成9年4月18日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

(4)登録第1458925号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として昭和47年4月20日に登録出願、同56年4月30日に設定登録、その後、平成3年6月26日、同13年2月27日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

(5)登録第2153054号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として昭和57年12月24日に登録出願、平成1年7月31日に設定登録、その後、同11年6月1日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

(6)登録第1824054号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として昭和58年1月25日に登録出願、同60年11月29日に設定登録、その後、平成8年3月28日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

(7)登録第2581618号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として昭和57年12月24日に登録出願、平成5年9月30日に設定登録がなされたものである。

(8)登録第3009777号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として平成4年4月20日に登録出願、同6年11月30日に設定登録がなされたものである。

(9)登録第3009778号商標は、「CHANEL」の文字よりなり、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として平成4年4月20日に登録出願、同6年11月30日に設定登録がなされたものである。(以下、これら商標を併せて「引用商標」という。)

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第57号証を提出している。

1.引用商標の著名性

請求人は、著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」により創設され、香水等の化粧品の他、高級婦人服、ハンドバッグ、ベルト、靴、時計、アクセサリー等の宝飾品などのデザイン・企画並びにこれらの商品の製造販売を業とするトータルファッションメーカーであり、請求人の創設者の名に由来する「CHANEL」ブランドは、請求人の営業を表示するものとして、また請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界的に極めて高い信用が形成されているものである。

日本においても、「CHANEL N ゚5」をはじめとする請求人のブランドにかかる香水は、一般需要者間に広く認識されており、また請求人のハンドバッグは「CHANEL BAG」、婦人服は「CHANEL SUITS」、靴は「CHANEL SHOES」と称されるほどに極めて高い知名度を有しており、いずれも洗練された高品質の商品であり、請求人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が日本においても形成されているものである。

これらの事実は、本件商標出願前に刊行された各種刊行物により「CHANEL」ブランドが数多く紹介されていることからも明らかな事実である。(甲第12ないし第18号証)

以上のことから、本件商標の出願当時1996(平成8)年には、すでに請求人が自らのブランドとして「かばん・被服・化粧品」等のファッションに関係する商品に使用する引用商標「CHANEL」は、極めて広く知られるに至っていた商標である。

2.本件商標と引用商標との比較について

本件商標は、「HANEL」という5文字の英文字の外観から構成され、当該文字は、6文字の英文字から構成される世界的に著名な請求人の引用商標「CHANEL」の語頭部の「C」を単に除いたにすぎない構成である。

また、本件商標「HANEL」は、その構成全体としては何ら特定の意味観念を生じるものではない。

本件商標は、5文字中のすべての文字がそのまま引用商標である「CHANEL」に含まれているものであり、引用商標「CHANEL」が極めてよく知られている本件指定商品等の商取引の実情からすれば、本件商標は直ちに著名な引用商標「CHANEL」の語頭部の「C」を欠落させたにすぎないものと認識されることが必定である。

したがって、需要者が時と所を異にして両商標に接する場合には、外観において相紛れるおそれがあり、両商標は外観において類似する商標であると言うことができる。

特に、本件商標登録出願前及びその査定時において、請求人の婦人服が「CHANEL SUITS」、靴が「CHANEL SHOES」と称されるほどに高い知名度を有していたことからも明らかなように、「被服・履物」等を指定商品とする本件商標の指定商品の取引界において極めて良く知られ、また引用商標がその他様々な商品に使用されていたという実情からすれば、取引者・需要者が本件指定商品である「被服・履物」等に付された本件商標に接した場合、直ちに著名な引用商標「CHANEL」を想起し、「CHANEL」として見間違って認識する可能性が高く、その場合にその商品について出所混同を生ずるおそれがあると言える。

3.出所混同について

請求人の引用商標「CHANEL」は、請求人が自らのブランドとして「かばん・被服・化粧品」等のファッションに関係する商品に使用して、極めて広く知られるに至っていた商標である。

また、本件商標は「HANEL」の構成からなり、世界的に著名な商標「CHANEL」の語頭部の「C」を単に除いたにすぎない構成であり、その構成全体としては、何等特定の意味観念を生ずるものではない。

しかるに、引用商標「CHANEL」の世界的な著名性に鑑みれば、全体としては何ら特定の意味観念を生じない本件商標が、請求人が引用商標を使用している前記商品と使用態様、使用目的等を全く同じくするその指定商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、「CHANEL」の文字の語頭部の「C」が欠落していることについて注意を払うことは少なく、一文字の僅かな差異は認識し難いと言え、直ちに著名な引用商標「CHANEL」が容易に想起されるものであるから、結果として本件商標を著名な引用商標「CHANEL」として見間違って認識する可能性が高く、その場合にその商品が請求人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。

4.不正の目的及び信義則違反について

本件商標は、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的)をもって使用するものである。

言い換えれば、本件商標は、「世界的に著名な商標と同一又は類似の商標について、出所表示機能を希釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもって使用するもの」であり、「世界的に著名な商標について信義則に反する不正の目的で使用するもの」である。以下、その理由について述べる。

「株式会社フリーポートコーポレーション」(以下、「フリーポートコーポレーション」という。)なる会社によるチラシ(1)においては、「フリーポートコーポレーションが日本での窓口になります。」という見出しとともに、本件商標「HANEL」が「コピーライト」の略称記号とともに使用され、全体としては別掲に示すとおりの使用標章A(以下、「使用標章A」という。)の態様で使用されている。また使用標章Aの横には、本件商標の登録番号である「NO.4155061」の数字が記載され、またカテゴリーとして「レディース・メンズ アパレル ハウスウエアー シューズ バッグ 雑貨etc.」と表示され、「フリーポートコーポレーションが独占契約により日本での窓口となります。」としてフリーポートコーポレーションが本件商標のライセンシーを募集しているものである。

また、かかるチラシ(1)の中央には、使用標章Aが非常に大きな態様で記載されている。

次に、当該チラシ(2)においては、モデルの女性と共に、「Paris」の文字、そしてその一方の端には使用標章Aが繰り返し表示され、またその一方の端には、別掲に示すとおりの使用標章B(以下、「使用標章B」という。)と使用標章C(以下、「使用標章C」という。)が繰り返し表示されており、かかる態様のうち、前記使用標章B及びCの前半の図形部分は、アルファベットの「C」をイメージさせ、全体として「CHANEL」と認識できるものとなっている。

かかるチラシ(1)及び(2)における本件商標の使用態様から明らかなように、本件商標は、一見して請求人の著名な商標「CHANEL」を想起させるような態様で使用されているものである。

すなわち、本件商標は、特許庁において登録された態様である「HANEL」ではなく、使用標章A又は同B又は同Cのようにして、著名な商標「CHANEL」をより想起させるように語頭にコピーライトの表記又は(アルファベットの「C」をイメージさせる)使用標章B及びCの前半の図形部分を付記し、さらに「フランス生まれのアーティストHANEL氏・・・」との説明及び「Paris」の文字とともに使用することによって、フランスの著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」により創設された請求人の著名な商標「CHANEL」をイメージさせる使用態様となっているものである。

かかるチラシ(1)及び(2)に接した需要者・取引者は、ライセンスに係る本件商標が「レディース・メンズ アパレル ハウスウェアー シューズ バッグ 雑貨etc,」という商品について、使用標章Aという態様又は使用標章B又は使用標章C又は「CHANEL」そのものの態様で登録されたものであると誤認混同を生ずるおそれが極めて高く、本件商標「HANEL」に対するライセンシー募集のチラシとは認識しないものである。

また、本件商標権者である「株式会社トライスル」(以下、「トライスル」という。)とチラシに記載されたフリーポートコーポレーションは、商業登記簿謄本上において、取締役又は監査役として「川上哲洋」及び「川上洋子」がそれぞれ記載されており、実質的に同一の会社であるか又は少なくとも非常に密接な関係にある会社であることが客観的に明らかである。(甲第44及び同第45号証)

かかる本件商標における不正な使用の事実は、「CHANEL」の持つ出所表示機能を希釈化させ、請求人の業務に係る商品との出所混同を生じさせるおそれがあるだけでなく、請求人の使用する商標に化体した高い名声と信用、顧客吸引力等を毀損させるおそれが十分にあるものであり、このような使用は、まさに「CHANEL」に化体した高い名声と信用にフリーライドする目的を持って使用するものに他ならない信義則に反する不正の目的での使用であると言える。

本件商標は、著名な「CHANEL」の語頭部「C」を欠落させたにすぎないものと認識される商標であり、またその使用態様も使用標章A又は同B又は同Cのような態様で実際に使用しているものであるから、そもそも出願当初より、著名な「CHANEL」の持つ名声と信用にフリーライドして使用する目的をもって商標を選定し、出願したと言えるものである。

これら不正の目的をもって出願したという意図は、上記のチラシに見られる本件商標の不正な使用の事実から一見にして明らかである。

著名商標を強く保護することは、商取引の国際化が進んだ現在においては世界的な潮流であると言え、かかる国際的な観点からも、これを無視して本件商標のような国際信義に反する商標の登録を認めるべきではない。

5.結び

以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第10号、同第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号によって無効にすべきものである。

第4 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として乙第1号証を提出している。

1.引用商標の著名性について

請求人は、著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」により創設され、香水等の化粧品の他、高級婦人服、ハンドバック、ベルト、靴、時計、アクセサリー等の宝飾品などのデザイン・企画並びにこれらの商品の製造販売を業とするトータルファッションメーカーであり、申立人の創設者の名に由来する「CHANEL」ブランドは、請求人の営業を表示するものとして、又、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界的に極めて高い信用が形成されているものであることについては、商標権者は出願時では暖味で有ったが、現時点では本件商標権者は認める。

また、日本に於いても「CHANEL No5」をはじめとする請求人のブランドに係る香水が、一般需要者間に広く認識されており、又、請求人のハンドバッグは「CHANEL BAG」、婦人服は「CHANEL SUITS」、靴は「CHANEL SHOES」と称されるほどに極めて高い知名度を有しており、いずれも洗練された高品質の商品であり、請求人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が日本に於いても形成されているものであることについても、本件商標権者は出願時には不知で有ったが、最近認識するようになった。

2.商標法第4条第1項第19号について

本件商標は、請求人の取り扱い業務に係る商品を表示するものとして著名な引用商標「CHANEL 」の語頭部の文字「C 」を欠落させたに過ぎない類似の商標であって、その実際の使用態様は「使用標章A」として使用し、著名な「CHANEL」を容易に想起させる態様で使用しているものであるから、著名な商標「CHANEL」に化体した業務上の信用にfree rideする目的を持って使用するものと言うべきであり、商標法第4条第1項第19号に該当する旨請求人は主張している。

しかしながら、請求人の主張は、(1)「HANEL」は「CHANEL 」の語頭部の「C」を欠落させたものであるから、請求人の「CHANEL」の類似商標と決め付けられている。

外観は 1 6.7 % 差異がある。観念は意味が無く、非類似。称呼は「シャネル」と「ハネル」と明らかに差異があるにも拘わらず「類似」ときめつけられるのは独断である。

(2)使用は「使用標章A」だから「ただ乗り」だから「不正の目的」を持って使用するものと決め付けているが、本件商標権者は後述3.(1)のような考えで使用したもので、今後紛らわしい商標の使用を止め登録通りの商標使用を行う。

以上のとおり、商標法第4条第1項第19号は該当しないと思量する。

3.商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、「HANEL」という態様で登録されているにもかかわらず、実施は「使用標章A」という態様で使用しており、明らかに「CHANEL」の持つ著名性にfree rideする社会一般道徳に反する商標と言えるものであって、かつ、国際信義にも反する商標であるというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。尚、「ILANCELI」に対する商標登録異議申立事件においては、「・・・本件商標は、・・・著名な商標と認められる『LANCEL』の文字の前後に『I』の文字を配したのみで、その著名商標にただ乗りする社会の一般道徳観念に反する商標と言えるものであって、国際信義にも反する商標と言わざるを得ないから商標法第4条第1項第7号に該当する。」として、取消決定がなされている(甲第40号証)旨請求人は主張している。

しかしながら、(1)「HANEL」の登録商標を「使用標章A」と使用したのは、商標にはResisterd(登録)の省略のような使いかたがあり、コピーライトの略称記号も商標の最後部に付ければ問題にならなかったのですが。今後は登録商標通りの使用を行う。

(2)「ILANCELI」−「I......I」=「LANCEL」で足し算の論理であり、引き算で著名商標が残り、類似とみなされた。ところが本件商標は、「HANEL」+「C......」=「CHANEL」、「CHANEL」−「C......」=「HANEL」であり、前記事案と異なるものであるから、「HANEL」は「CHANEL」と非類似で登録されたものである。それ故に本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しないと思量する。

4.商標法第4条第1項第10号について

本件商標は、請求人が使用する著名な商標「CHANEL」と類似する商標であり、また同一又は類似の指定商品を含むものであるから、本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第10号に該当する旨請求人は主張している。

しかしながら、請求人は一度も商標の外観、観念、称呼に付いて、類似を論議されていない。外観は「CHANEL」が6英文字であるのに対し、本件商標は5英文字で外観は16.7%の差異がある。観念は「CHANEL」が個人の名前であり、「HANEL」は意味が無い訳ですから、「観念非類似」である。称呼は「シャネル」であり、本件商標は「ハネル」であるから、頭部の「シャ」の促音と本件商標の「ハ」の母音の差があり、非類似であって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しないと思量する。

5.商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、請求人が引用する商標「CHANEL」と類似する商標であり、また同一又は類似の指定商品を含むものであるから、本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第11号に該当する旨請求人は主張している。

しかしながら、請求人の「CHANEL」の登録は本件商標より早かった事は認めるが、請求人の「CHANEL」の商標と本件商標とは前述したように、「非類似」であるので、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しないと思量する。

6.商標法第4条第1項第15号について

本件商標は、請求人が使用する商標として著名な引用商標「CHANEL」の語頭部の文字「C」を欠落させたものにすぎないものと認められるから、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、あたかも請求人又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する旨請求人は主張している。

しかしながら、請求人は頭から、本件商標「HANEL」が引用商標である「CHANEL」の語頭部の「C」を欠落させたものと見なして、類似と判断して議論を進めているところ、引用商標の「CHANEL」と本件商標の「HANEL」は外観、観念、称呼とも非類似であるから、商標法第4条第1項第15号には該当しないと思量する。

7.本件商標は不正の目的をもって使用されていることが当該チラシ(1)及び(2)より明らかであり、現実に本件商標のライセンス先が募集されているものである。したがって、今現在、すでに本件商標が不正使用された形でライセンスされ、使用標章A又は同B又は同C等の標章が付された商品が、現実に使用されている可能性も十分にあり、また、その場合に請求人が被る被害は計り知れないものである旨請求人は主張しているが、商標の使用については紛らわしい部分があり、今後、登録商標の態様で使用致します。

8.本件商標「HANEL」は、引用商標とは非類似であり、今後紛らわしい商標の使用はしませんので、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第10号、同第11号及び同第15号には該当せず、商標登録第4155061号の登録維持を希求するものである。

第5 当審の判断

請求人は、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号、第10号、第11号、同第15号及び同第19号の各規定に違反してされたものであるとして、その登録の無効の理由を述べているので、先ず、同法第4条第1項第7号該当の当否について検討する。

1.本件商標は、上記の構成のとおり、「HANEL」の欧文字を書してなるものであるところ、請求人の提出に係る甲各号証を総合すると、次の事実が認められる。

(1)請求人は、フランスの著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」により創設され、香水等の化粧品の他、高級婦人服、ハンドバッグ、ベルト、靴、時計、アクセサリー等の宝飾品などのデザイン・企画並びにこれらの商品の製造販売を業とするトータルファッションメーカーであり、請求人の創設者の名に由来する「CHANEL」ブランドは、請求人の営業を表示するものとして、また請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界的に極めて高い信用が形成されているものであることが認められる。

そして、日本においても、「CHANEL N ゚5」をはじめとする請求人のブランドにかかる香水は、一般需要者間に広く認識されており、また、請求人のハンドバッグは「CHANEL BAG」、婦人服は「CHANEL SUITS」、靴は「CHANEL SHOES」と称されるほどに極めて高い知名度を有しており、いずれも洗練された高品質の商品であり、請求人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が日本においても形成されているものであることは、本件商標出願前に刊行された各種刊行物により、「CHANEL」ブランドが数多く紹介されていたことからも認められる。(甲第12ないし第18号証)

(2)フリーポートコーポレーションと記載されているチラシ(1)においては、「フリーポートコーポレーションが日本での窓口になります。」という見出しとともに、本件商標「HANEL」の先頭部分に「コピーライト」の略称記号を本件商標と同じ大きさで付し、別掲に示すとおりの使用標章Aの態様で使用されている。また、使用標章Aの右横には、本件商標の登録番号である「NO.4155061」の数字が小さく記載され、またカテゴリーとして「レディース・メンズ アパレル、ハウスウエアー、シューズ、バッグ、雑貨etc.」と表示され、「フリーポートコーポレーションが独占契約により日本での窓口となります。」としてフリーポートコーポレーションが本件商標のライセンシーを募集している。

また、かかるチラシ(1)の中央には、使用標章Aと認識できる態様で、背景として非常に大きく表示されていることが認められる。(甲第42号証)

次に、当該チラシ(2)においては、モデルの女性と共に、「Paris」の文字、そして、その一方の端には使用標章Aが繰り返し表示されており、また、その一方の端には、別掲に示すとおりの使用標章B、使用標章C及び使用標章Dが繰り返し表示されていることが認められる。(甲第43号証)

(3)本件商標権者であるトライスルとチラシに記載されたフリーポートコーポレーション(平成10年3月26日設立)とは、商業登記簿謄本上において、取締役又は監査役として「川上哲洋」及び「川上洋子」がそれぞれ記載されており、実質的に同一の会社であるか又は少なくとも非常に密接な関係にある会社であることが認められる。(甲第44及び同第45号証)

2.(1)以上の事実を総合すれば、請求人の所有に係る引用商標は、我が国においては、遅くとも本件商標の登録出願時までには請求人に係る商品を表示するものとして、香水等の化粧品、被服類等のいわゆるファッション関連商品の取引者、需要者の間において広く認識され、かつ著名となっていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。

(2)そして、本件商標は、上記したとおり、平成8(1996)年9月24日の出願に係るものであるところ、その指定商品は、「被服・履物」等のファッション関連商品であることから、前記商品を取り扱う被請求人にあっては、本件商標の出願当時、当業者としてファッション事情に精通していたと容易に推認できるところである。

してみると、本件商標の出願当時、前記のとおり、被請求人がファッション関連商品を取り扱う者であり、ファッション事情に精通していたと認められることなどを考え併せると、被請求人は、請求人の所有に係る引用商標の著名性について知り得た立場にあったと容易に窺い知れるところである。

この点に関し、被請求人は、答弁の理由において、引用商標の著名性については「請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界的に極めて高い信用が形成されているものであることについては、商標権者は出願時では暖味で有ったが、現時点では本件商標権者は認める。」「請求人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が日本に於いても形成されているものであることについても、本件商標権者は出願時には不知で有ったが、最近認識するようになりました。」と述べている。

しかしながら、本件商標登録出願前に刊行された各種刊行物に「CHANEL」ブランドが数多く紹介され、引用商標が「被服・履物」等を指定商品とする本件商標の指定商品の取引界において極めて良く知られ、また、引用商標がその他様々な商品に使用されていたという実情からすれば、被請求人の主張は認めることができない。

(3)そこで、本件商標をみるに、本件商標は上記のとおりの構成よりなるところ、その実際の使用態様は、前出チラシにおける本件商標を含む使用標章Aの態様で使用されていることが認められ、本件商標のみでの使用はされていないといわざるを得ないものである。

このことは、請求人の主張に対して、被請求人自らが「コピーライトの略称記号も商標の最後部に付ければ問題にならなかったのですが。今後は登録商標通りの使用を行います。」「商標の使用については紛らわしい部分があり、今後、登録商標の態様で使用致します。」等の弁明をしていることからしても、首肯し得るところである。

そして、前出チラシに記載されたフリーポートコーポレーションが平成10年3月26日に会社設立されていることからすれば、本件商標を含む使用標章Aの使用は、同10年4月前後頃からと推認できるところである。

(4)前出チラシにおける使用標章Aは、別掲に示したとおりの構成よりなるところ、その構成は、請求人の主張である本件商標「HANEL」の先頭部分に「コピーライト」の略称記号を付したものというよりも、著名な引用商標「CHANEL」の語頭に位置するローマ文字「C」に丸い枠を施したとみるのが自然なものである。

このことは、通常、コピーライトの略称記号の使用形態が、コピーライトの略称記号、発行年及び題号・氏名等の3つを表示することで著作権の保護を受けられるものであり、使用標章Aの態様とは異なるものである。

以上のことをもってすれば、被請求人は、本件商標の登録出願当時、請求人の所有に係る著名な引用商標の存在を知り得ていたにもかかわらず、使用標章Aの態様で使用する不正の目的をもって、本件商標を登録出願したものであると推認し得るといわざるを得ない。

(5)ところで、商標法は、公正な競争を図り、取引秩序を維持することを目的とする競業秩序を維持する面を持っているものであるが、商標法第4条第1項第7号は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができない」旨を規定しており、その趣旨は商標の構成自体が公序良俗に反する場合だけでなく、一般に国際信義に反する場合も含まれると解される。

これを本件商標についてみれば、前記認定のとおり、我が国において一般に広く認識されているばかりでなく、世界的に著名な引用商標「CHANEL」の名声に便乗し、これの模倣を図る不正の目的で本件商標を登録出願したものであることが認められ、かつ、不正の目的で使用されている本件商標を含む使用標章Aは、「CHANEL」の持つ出所表示機能を希釈化させ、請求人の業務に係る商品との出所混同を生じさせるおそれがあるだけでなく、請求人の使用する商標に化体した高い名声と信用、顧客吸引力等を毀損させるおそれが十分にあるものであって、我が国の国際的な信頼をも損なうおそれがあると言うべきであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為と言わざるを得ないから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当すると判断するのが相当である。

3.むすび

以上のとおり、本件商標は、商取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反する商標に該当するものとなっているといわざるを得ないから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものというべく、その登録は、同法条の規定に違反してされたものといわなければならない。

したがって、請求人の述べる他の無効理由の当否について判断するまでもなく、商標法第46条第1項の規定により、前記理由をもって無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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