結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第31259号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第93595号の1商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、大正6年12月7日登録出願、第36類「被服、手巾、其他本類ニ属スル商品」を指定商品として、大正7年5月7日に設定登録され、その後、昭和13年8月17日、同33年5月28日、同54年6月28日、同63年6月22日及び平成10年6月9日の5回にわたり、商標権存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、商標権の分割移転の登録が昭和59年2月27日になされ、第36類「被服、手巾、其他本類ニ属スル商品、但し、マラソン足袋、運動用特殊被服を除く」となったもので、現に有効に存続しているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第3号証を提出した。
(1)被請求人は、指定商品についても、過去3年以上にわたって、日本国内において使用していない。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定に基づき取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
(イ)商標の同一性について
商標法第50条によれば、登録された商標と同一の商標を使用していたことを立証する必要があるが、本件商標と使用商標では多くの相違点があり(甲第2号証)、本件商標と同一の商標を使用していたとはいえない。
本件商標は、真球の中央部に輪が配置しており、その上部かつ球の中に「PLANET」と「SATURN」の語が二段に配されている点に自他商品識別標識としての特徴がある。
これに対して、使用商標は、傾斜した扁平したラグビーボール状の球に輪が配置され、当該図形とは別に、「PLANET」と「SATURN」の語が二段に配されている。
両商標を比較すると、球と輪の形状が全く異なり(真球とラグビーボール)、また、当該図形部分と文字商標部分の配置関係も全く異なる。このように本件商標の要部となる図形部分の形状及び当該形状と文字商標部分の結合関係が異なるため、両商標の自他商品識別標識としての同一性が外観上認められない。一般需要者は別異の商標として両商標を把握することは明らかである。
よって、本件商標と同一性のある商標が使用されていないのであるから、本件商標は取り消されるべきである。
裁判所も、図形商標と文字商標の結合商標について、使用されていた商標の図形部分が異なる場合に、商標の同一性を否定している(甲第3号証)。
被請求人が本件商標と同一性のある商標を使用した証拠を提出するのであれば、同一性は認められるが、請求人の調査では、そのような商標を使用していないことが判明している。
(ロ)乙8号証について
乙8号証の証明書は、被請求人の出入りの業者が作成したものであり、その信憑性に疑いがある。トレーナーのような大量生産品を購入したのが被請求人の出入り業者一社というのは不可解である。出入り業者は被請求人との関係で弱い立場にあるので、その業者が購入したとの事実だけでは商標法第50条における商標の使用としては不十分である。被請求人と取引上関係のない者の証明書を提出すべきである。
(ハ)被請求人が提出した証拠はいずれも、本件商標が本件審判請求登録日前3年以内の使用事実を証明するには不十分のものであるから、本件商標は取り消されるべきである。
被請求人は、「審判請求は理由がない」審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁及び上申し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第10号証を提出した。
(1)本件商標の使用
被請求人は、本社を登録原簿上の住所に有し、主たる営業所を大阪市都島区内代町2丁目13番26号に有し、被服の製造及び販売を行っている。
平成10年11月28日に被請求人は上記営業所に於いて、「ファミリーセール」の名でバーゲンセールを行い、営業所近所の一般家庭、社員及びその家族、取引会社、顧客を対象に案内の葉書(乙第4号証)を発送し、子供服、婦人服、などの値引き販売を行った。
案内葉書は約100枚発送し、約200人が来訪した。
乙第1号証の写真1乃至3に示す子供用トレーナ及び乙第2号証の写真4乃至6に示す子供用パーカーは、上記ファミリーセールにて販売するために在庫していた商品であって、ファミリーセールの開催日に、乙第1号証商品は3枚、乙第2号証商品は4枚販売した。このファミリーセールの開催日である平成10年11月28日は、審判請求の後であるが、審判請求の予告登録日平成11年1月6日よりも早い日付である。
乙第1号証の写真の2及び同第2号証の写真の5を参照すると、使用された商標は「PLANET」「SATURN」の語を2段に配列し、合わせてを土星の図形を付している。これに対し本件商標(乙第3号証)は、土星の図形の中に「PLANET」「SATURN」の語を表している。両商標を比較すると、本件商標は「PLANET」の語が「SATURN」に比して大きく記されているが、「SATURN」の語は明確に認識される。従って、乙第1号証乃至乙第3号証の、何れの商標も同一の称呼を生じる。また、使用された商標は土星の図形を斜めに描いているが、一般需要者をして土星を認識させることは図形の態様からして明白である。従って、使用された商標は本件商標(乙第3号証)と同一の称呼及び同一の観念(惑星、土星)を表し、本件商標と社会通念上、同一と認められるものである。
(2)販売方法について
上記「ファミリーセール」は、その案内葉書(乙第4号証)に記載されているように、支払い方法は現金のみであったから、セール会場にて商品の引き渡しと代金の支払いは同時に行われ、請求書及び領収書は発行されなかった。
しかし、日常的に取引関係にある下請け又は仕入れ業者には、現金支払いに代えて、仕入れ又は下請け作業についての該業者からの請求書と相殺する方法を採った。即ち、業者から請求される工賃、仕入れ代金から「ファミリーセール」に於ける売上げ代金を引いたのである。相殺勘定の販売には、現金受取をレジスタに記録することに代えて、相殺する旨のメモを残し、後日出荷伝票(乙第5号証)を発行した。
相殺勘定による販売先の1つは、大阪市都島区内代町4丁目3番15号の宮本刺繍工業である。乙第5号証の出荷伝票によって明らかなとおり、「ファミリーセール」の際に宮本刺繍工業には6点の商品を販売し、その中に品番「10050−599」の商品、即ち乙第1号証の子供用トレーナ1着(写真3参照)及び品番「10053−599」の子供用パーカー1着(乙第2号証の写真6参照)が含まれていた。乙第5号証の出荷伝票の中で品番の記載されていない3点の商品はキズ物であり、Aサンプルとは見本として製造されたが不採用の為、在庫となった商品である。
(3)証拠書類の説明
乙第5号証の出荷伝票に示すように、被請求人は「ファミリーセール」にて宮本刺繍工業には合計12915円の商品を販売した。乙第5号証の日付から判るように、平成10年11月30日に被請求人は出荷伝票を発行しており、伝票発行日よりも日前に「ファミリーセール」が開催された点は、乙第4号証の案内葉書だけでなく、この点からも証明できる。
宮本刺繍工業は、被請求人から依頼されて行った刺繍及び縫製の工賃として平成10年11月14日から平成10年12月15日の1ケ月間に10枚の請求書(乙第6号証)を発行し、この合計金額は1、520、263円であった。乙第6号証には金額訂正の為に金額の上に二重線が付されているが、これは被請求人の経理担当者が単価訂正との理由で一旦修正を加えたものである。しかし、被請求人と宮本刺繍工業の交渉の結果、元通りの金額とされた。
被請求人は、乙第6号証の請求金額(1、520、263円)から「ファミリーセール」の販売代金(12、915円)を相殺し、相殺金額1、507、348円を平成10年12月22日に、宮本刺繍工業の近畿銀行都島支店の口座に振り込んだ(乙第7号証)。宮本刺繍工業の代表者が宮本伸一であることは、乙第8号証の陳述書から明らかである。
乙第7号証に示す被請求人の振込み金額と、前記相殺金額1、507、348円は一致しており、乙第5号証の出荷伝票はファミリーセールの際の乙第1号証及び乙第2号証に関わる商品の販売代金を相殺したものであることが判る。このことは、乙第8号証に示す宮本伸一の陳述書でも明らかである。
上記の通り、本件商標は、審判の請求登録の日前に指定商品である被服に使用されていたことは明らかであり、商標法第50条第1項及び第2項の規定により取り消されるものではない。
尚、商標法第50条第3項は、商標権者等が審判請求がされることを知って、審判請求前三月から審判請求登録日までに正当な理由無く登録商標の使用をした場合を、所謂駆け込み使用として、登録商標の使用に該当しない旨を規定する。しかし、この駆け込み使用である点は請求人が証明すべきであるところ、何等証拠の開示がない。また、被請求人は審判請求日までに請求人との間で登録商標の使用許諾や権利譲渡等の交渉を行っておらず、審判請求登録日までに不便用取消審判請求がされることを知る由もない。以上の点から、審判請求は理由がなく、本件審判請求は却下されるべきである。
(4)答弁に対する上申
(ア)商標の同一性について
請求人は、「両商標を比較すると、球と輪の形状が全く異なり(真球とラグビーボール)、また、当該図形部分と文字商標部分の配置関係も全く異なる。」と主張している。
請求人のこの主張は、両商標が物理的に同一でないことを指摘しているにすぎない。本件商標と使用商標を対比するに、本件商標を構成している要部は、次の通り使用商標にもそのまま表示されている。
登録商標の要部 使用商標
球の形状 楕円の形状
太線で描いたリング 赤線で描いたリング
PLANET PLANET
SATURNを球の内側に表示 SATURNを球の側方へ表示
このように使用商標は、本件商標の要部に対応した構成を全て具えており、自他商品の識別力に何ら差はない。
(イ)使用商標が、本件商標と異なる点は、「PLANET/SATURN」を大きくして見やすくするために、図形の外に側方へ出して配置している点であるが、この程度の変更は取引の過程にて通常成されている。
本件商標の昭和63年1月29日付け更新登録出願に際して、被請求人は使用の事実を証明する資料として、乙第9号証の使用例を提出していた。この使用例からも明らかなように、織りネーム及び下げ札に表示した登録商標に併せて、側方にPLANET/SATURNの文字を表示している。この事実からも上記事情は裏付けされる。
(ウ)使用商標と登録商標の同一性を判断した資料として、乙第10号証判決を提出する。これは、東京高裁平成7年(行ケ)第95号の判決であり、使用商標は6頁下段に、登録商標は6頁上段に記載されている。
乙第10号証判決の対象とされた登録商標は文字商標であるが、使用商標と登録商標の同一性の判断は、識別力の同一性を判断する点から、文字と図形の結合商標にも適用され得る。
この判決には、「使用されている商標と、登録商標とが同一であるか否かは、単なる物理的同一にこだわらず、取引社会の通念に照らして登録商標の使用と認められるかどうかによるべきものである。」と記載されている。
また、「社会通念上同一であるといえるものは登録商標の構成に変更が加えられたために外観が必ずしもそれと酷似するといえない標章であっても、(中路)登録商標が有する独自の識別力に影響を与えない程度にとどまる場合に限られるものと解される」旨が記載されている。これらの事項については、当事者間に争いがない。
本件審判請求に於ける使用商標と本件商標とは、図形部分、文字部分ともに、自他商品の識別力に差違があるものではなく、社会通念上同一の範疇に含まれるものである。
(エ)請求人は、甲第3号証をもって、「裁判所も、図形商標と文字商標の結合商標について、使用されていた商標の図形部分が異なる場合に同一性を否定している。」と主張している。
しかし、これは使用商標の図形部分が異なる場合に同一性を否定したものではなく、商標全体としての識別力の同一性を否定したのである。即ち、甲第3号証の使用商標と本件商標とは図形から連想される観念が全く異なる。従って、甲第3号証は、本件審判請求の使用商標と本件商標の同一性を否定する資料とはなりえない。
(2)乙第8号証について
請求人は、弁駁書の中で「乙第8号証の証明書は、被請求人の出入りの業者が作成したものであり、信態性に疑いがある。」と述べている。
ところが、何故に出入りの業者が作成した証明書は、信用できないとしているのか理解できない。
請求人は、「出入り業者は被請求人との関係では弱い立場にある。」とも述べている。
しかし、これは請求人の一方的な思い込みであり、また仮に出入り業者が被請求人よりも弱い立場にあるにしても、この証明書が信用できないとする具体的な理由、例えば取引数量等に虚偽の記載がある旨が全く立証されておらず、請求人の主張は到底受け入れることができない。
さらに、請求人は、「トレーナーのような大量生産品を購入したのが出入り業者1社というのは不可解である。」とも述べている。
しかし、被請求人は出入り業者1社のみがトレーナーを購入したとは一言も述べていない。平成11年10月29日付けの答弁書の第4頁1行目乃至4行目に記載しているように、商品の引き渡しと代金の支払いは同時に行われ、領収書等が発行されなかったから、一般に取引の証拠は残りにくい。従って、商品の売買を示す証拠として相殺勘定の伝票を提出したのであり、この伝票が残っていたのが、たまたま出入り業者の1つであった宮本刺繍工業のものであっただけのことである。従って、この点でも請求人の主張は到底受け入れることはできない。
被請求人の提出に係る乙1号証、乙2号証及び乙4号証ないし同8号証を徴するに、「子供用トレーナ及び子供用パーカー」の織りネームに別掲(2)の構成よりなる商標(以下「使用商標」という。)を表示して本件審判請求の登録前3年以内である平成10年11月28日に販売したことが認められる。
そこで、本件商標と使用商標とを比較すると、本件商標は、別掲(1)に示すとおり、まん丸い円の中央部横に太い輪を有し、その輪の前面で区切られた円内上部に「PLANET」(「P」と「T」の文字は該円の上部の円弧に沿うように表わされている。)の文字を上段に、その上段の文字の中央部下に「SATURN」(上段の文字の半分程度の大きさの)の文字を配し、同じく輪の前面で区切られた円内下部に「SATURN」の文字よりやや小さい「TRADE MARK」の文字を配してなるものである。
これに対して、使用商標は、別掲(2)に示すとおり、左側の図形部分は、左斜め向きで同方向の輪を有するラグビーボール状の縦長円で、その右側に、図形より横の長さが二倍以上大きい「PLANET」と「SATURN」の文字とを2段に併記した構成よりなるものである。
そして、上記態様の本件商標をみるに、本件商標は、「PLANET」、「SATURN」及び「TRADE MARK」の文字を構成中に有するとしても、各文字全てが円内に極めてまとまり良く配されており、その全体が外観において一体性を有しているものというべきである。他方、使用商標は、図形部分と文字部分が明らかに左右に分離して構成されているものである。
そうとすると、両商標は、たとえ要素としての文字部分の称呼と観念を同じくするとしても、外観上構成を著しく異にする別異の商標であるから、社会通念上同一性を有する商標とは認められないものである。
なお、被請求人は、文字と図形との結合商標の場合、使用商標と登録商標の同一性を判断した証拠として乙第9号証及び乙第10号証を提出しているが、乙第9号証については、昭和63年1月29日付けの更新登録出願の際に使用例として提出されたもので、本件審判の請求の登録日(平成11年1月13日)よりほぼ10年も前のものであり、しかも、更新登録出願の際の使用例の写しである。
乙第10号証については、その使用商標と登録商標の社会通念上同一であるとした事情が本件商標とその使用商標の場合と同一の事例であるとは認められないから、これらの乙号証をもってしては、上記判断を左右するものではない。
してみれば、被請求人は、本件商標を継続して本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品について使用していなかったといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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