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Trademark Appeal Case

白抜き文字の称呼判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35094(T2000−35094/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4161593号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件商標登録第4161593号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成8年6月21日登録出願、第32類「飲料水,鉱泉水」を指定商品として、平成10年7月3日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標

請求人の引用する登録第2013282号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和60年5月27日登録出願、第29類「鉱泉水」を指定商品として、同63年1月26日に設定登録され、その後、平成9年11月25日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第5号証を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、円形の中に「π」の白抜き文字と「WATER」の欧文字からなる構成を有しており、この構成から「パイウオーター」の称呼、観念を生ずるものである。

これに対して、引用商標は「π」のギリシア文字と「ウォー夕ー」の片仮名文字からなる構成を有しており、この構成から「パイウォーター」の称呼、観念を生ずるものである。

したがって、本件商標と引用商標とは、共に「パイウォーター」の称呼、観念を共通するものである。そして、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似のものである。

(2)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、商品「鉱泉水」について、「πウォーター」と明らかに認識し得る文字からなる商標又はこれらの結合からなる商標を広く使用し今日に至っており、商品「πウォーター」の周知性は高まり、本件指定商品の分野の需要者は、「πWATER」からなる本件商標が、本件指定商品について使用された場合には、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである(甲第3号証乃至甲第5号証)。

4 答弁に対する弁駁

(1)商標法第4条第1項第11号について

被請求人は答弁書において、本件商標が図形商標であって、白抜きされた部分は漢字の「兀」を連想させ、まとまりよく黒丸と一体的に図案化されて描かれ、家紋のひとつの種類である「文字紋」を連想するような態様で構成されていると主張するが、黒丸自体の構成に何等の識別力がない以上、その中央に描かれた白抜きの部分にのみ取引者・需要者の注意が注がれるものと思料される。被請求人は、漢字の「兀」を連想させるとするが、この漢字の「兀」は、常用漢字に指定されていないものであり、3画という比較的簡単な構成からなる漢字でありながら、「コツ」という読み方さえも良く知られていない漢字であるといえる。一方、ギリシャ文字である「π」は、一般に円周率を表すものとして、広く知られているものであるから、本件商標に接する取引者・需要者は、その白抜きの部分から「パイ」の称呼を生じる蓋然性は非常に高く、これに連なる「WATER」部分の称呼についても、引用商標と同一である。

文字のレタリング化が普及した今日において、文字を白抜きすることは、非常に一般的であって、しかも、その周辺の外形を丸くした程度のものであるから、本件商標から「パイウォーター」の称呼が生じるものであり、本件商標と引用商標は、称呼が同一であるから、商標法第4条第1項第11号に該当することは明らかである。

なお、登録商標第3274914号(乙第1号証)についても、「パイ」の称呼が生じるものあり、請求人はこの商標についても、指定商品「飲料水,鉱泉水」について、無効事由を包含するものと思料する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

被請求人は、請求人が引用商標をその指定商品に使用している事実は窺い知ることはできるが、引用商標が請求人の商標として広く一般に周知されていることを否認する。

請求人が提出した甲第4号証は、国際的であって、著名人及び業界人が多数参加したフォーラムに関する特集号であって、スポンサー企業として、請求人の広告が掲載され、請求人の名称及び引用商標が掲載されており、当業界において広く認知されているものであるから、本件商標を被請求人がその指定商品に使用した場合に、商品の出所混同を生じるものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(3)以上、本件商標が、商標法第4条第1項第11号及び同条同項第15号の無効事由を包含することは明らかであります。

5 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判請求の費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第10号証を提出した。

(1)答弁の理由

本件商標と引用商標は非類似であり、かつ、引用商標は広く一般に知られている商標ではなく、本件商標をその指定商品に使用しても請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれは全くない。したがって、本件商標は請求人主張の上記いずれの条項にも該当するものではない。

(ア)本件商標は商標法第4条第1項第11号について

(a)請求人は、本件商標と引用商標とは、ともに「パイウォーター」の称呼、観念が生じるので、両商標は類似するものであると主張している。しかし、この主張は当を得ないものである。

すなわち、引用商標はギリシャ文字の「π」と「水」を意味する外来語の「ウォーター」の片仮名文字を一連に結合して横書きしてなるものである。

そして、この引用商標を構成する上記「π」及び「ウォーター」の各文字は同一大きさ、同一間隔で左右に調和よく配置され、外観上においても上記各文字の結合は強く、かつ、その称呼も極く自然であって発音し易く、この商標は不可分一体に結合した造語よりなるものであるとみるのが相当である。したがって、引用商標から生じる称呼は「パイウォーター」である。

(b)上記に対し、本件商標は黒丸の中央部に文字のような標章を白抜きでバランスよく配してなる図形商標の右横に「WATER」の文字を横書きしてなるものである。

そして、本件商標を構成する上記の「WATER」の文字の部分は「水」を意味する英語であり、本件商標の指定商品との関係からして、商品「飲料水,鉱泉水」そのものないし商品の品質を表示した部分であり、かつ、上記「WATER」の文字部分は上記図形商標と比べ小さい文字で付記的に表示されている。したがって、本件商標において、自他商品の識別機能を果たす主要部は上記図形商標の部分にあるといえる。

そこで、上記図形商標についてみると、この商標は黒丸の中にギリシャ文字の「π」を白抜きして表示したものではなく、上記文字のような標章の部分は、その書体からして、「π」というよりは、「高く突き出るさま」などを意味する漢字の「兀」を連想させ、かつ、上記したような態様でまとまりよく黒丸と一体的に図案化されて描かれ、家紋のひとつの種類である「文字紋」を連想するような態様で構成されている。そのため、この図形商標の部分から直ちにギリシャ文字の単なる「π」と理解されることはなく、文字紋のような創造的図形として認識されるものと判断するのが相当であるといえる。したがって、上記図形商標の部分からは単なる「パイ」の称呼は生じないものである。

そこで、両商標を称呼上対比すると、本件商標の上記図形商標の部分からは上記したように単なる「パイ」の称呼は生じないため、本件商標からは「パイ」又は「パイウォーター」の称呼は生じない。

一方、引用商標から生じる称呼は「パイウォーター」であり、したがって両者は称呼上非類似であること明白である。

以上で明らかなとおり、本件商標と引用商標は非類似であり、したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

なお、被請求人は、本件商標と同一の図形商標について第32類「飲料水 ,鉱泉水,その他の清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料 ,ビール」を指定商品として商標登録(第3274914号)を受けている(乙第1号証)。そして、本件商標は上記商標の連合商標として出願したものである(乙第2号証)。

(イ)本件商標は商標法第4条第1項第15号について

甲第3号証〜甲第5号証によれば、請求人は引用商標をその指定商品に使用している事実は窺い知ることはできる。しかし、これらの証拠をもって、引用商標が請求人の商標として広く一般に周知されているとは到底認めることはできない。

のみならず、本件商標と引用商標とは上記したように全く非類似の商標であり、そのため、本件商標をその指定商品について使用しても取引者、需要者をして、請求人の業務に係る商品と出所について混同を生じるおそれは皆無である。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

(2)請求人の弁駁書(平成12年12月26日)に対し、被請求人は以下のとおり答弁主張する。

(ア)商標法第4条第1項第11号について

(a)本件商標を構成する「黒丸の中央部に文字のような標章を白抜きで表示してなる商標」は、創造的図形として認識されるもので、この図形商標の部分からは単なる「パイ」の称呼は生じない。

(b)被請求人は上記主張の客観的正当性を明らかにするため、本件商標の上記図形商標の部分と引用商標を構成するギリシャ文字の「π」の部分とを対比して説明する(以下対比して説明するため「別掲(3)対比用本件商標」及び「別掲(4)対比用引用商標」という。)。

・別掲(3)対比用本件商標のAの部分は、左側が太く、かつ、切断したような端部をもって描かれ、右方向に向けて次第に細くなると共に右上がりになり、先端が細く流れるように仕上げて表現されている。

上記に対し、別掲(4)対比用引用商標のAIの部分は、左側端部が下向きの先細に描かれ、右方向に向けて次第に太くなると共に右側端部は力強く、かつ、上端に三角状の突起を形成して描かれている。

・別掲(3)対比用本件商標のBの部分は、上端から下端までほゞ同じ太さに表示され、下端は切断したように表現して描かれている。

上記に対し、別掲(4)対比用引用商標のBIの部分は、上端側から下端側に向けて次第に太くなるように描かれていると共に下端は太く、かつ丸味を付して終わっている。

・別掲(3)対比用本件商標のCの部分は、上端から下端部までほゞ同じ太さに表示され、下端側から右上方向に湾曲させると共に次第に細く、かつ、先細の先端を跳ね上げるように表現して描かれている。

上記に対し、別掲(4)対比用引用商標のCIの部分は、上端から下端側に向けて幾分太くなるように描かれていると共に下端部を太く、かつ、わずかに右方向に向けた先細の先端を形成して表現されている。

(c)以上説明したように、本件商標の文字のような標章はギリシャ文字の「π」とは書体を全く異にし、独特の表現方法によって表示され、この標章自体にしてみても特異な図形よりなるものと判断できる。しかも、本件商標は黒丸の中央部に上記の表現形態の標章を白抜きして黒丸と一体的に図案化されて描かれている。そのため、上記図形商標の部分から直ちにギリシャ文字の単なる「π」として理解されることはなく、むしろ家紋のひとつの種類である「文字紋」のような創造的図形として認識されるものと判断するのが相当である。

したがって、上記図形商標の部分からは単なる「パイ」の称呼及びギリシャ文字の「π」の観念は生じないものである。そのため、本願商標からは「パイウォーター」の称呼は生じないこと明白である。

(d)以上によって明らかなとおり、本願商標と引用商標は非類似であり、したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

(イ)商標法第4条第1項第15号について

(a)請求人は、請求人が提出した甲第4号証は国際的であって、著名人及び業界人が多数参加したフォーラムに関する特集号であり、スポンサー企業として請求人の広告が掲載され、請求人の名称及び引用商標が掲載されており、当業界において広く認知されているものであるから、本件商標を被請求人がその指定商品に使用した場合に、商品の出所の混同を生じるものであり、商標法第4条第1項第15号に該当するものであると主張しているが、この主張は当を得ないものである。

(b)甲第4号証には「パイウォーター」の文字が複数個所に記載されているが、「πウォーター」、「パイウォーター」の名前の創作者は山下昭治氏であって、請求人ではない。すなわち、前記山下氏はご自分の研究について「πウォーター理論」というタイトル名を用い、同氏が研究開発した、生体構成物質(二価三価鉄塩で誘導される水)を「πウォーター」と名付けた(乙第3号証、乙第4号証)。また、甲第4号証の請求人の広告が掲載されているページ(第22頁下欄)に使用されている商標は引用商標「πウォーター」ではなく「BCS π一WATER SYSTEM」の文字からなる商標である。

(c)以上の事実から明らかなように、引用商標「πウォーター」は請求人の商標として周知されているものではない。したがって、甲第4号証をもって、引用商標が請求人の商標として広く認知されているとの主張は当を得ないものであり、認めることはできない。のみならず、本件商標と引用商標は、第1の項において説明したように全く非類似の商標であり、そのため、以上説明した事実からして、本件商標を被請求人がその指定商品について使用しても取引者、需要者をして、請求人の業務に係る商品と出所について混同を生じるおそれは全く無いものである。

(3)被請求人は本件審判事件について以下のとおり答弁主張する。

(ア)商標権を獲得し、これを利用して商業活動を行なおうとする者が、基礎となる商標が登録されていて、その後、上記基礎となる商標の基本的構成を利用して改良を加え、あるいは商品名を付記する等、発展させた商標を派生的に考案することにより、商業活動の拡大を行おうとすることは普通に見られるところであり、かつ、これらの商標を登録することも一般に行われている。この事実を立証するため、乙第5号証ないし乙第9号証を例示的に提出する。このケースは乙第5号証の商標が基礎となる商標であり、乙第6ないし第9号証の商標は乙第5号証から発展した商標である。

(イ)本件商標は商標登録第3274914号(乙第1号証)を基礎とする商標として獲得し、この商標に商品(飲料水,鉱泉水)の普通名称ないし品質を表示する「WATER」の文字を付記的に表示してなるものである。そして,上記乙第1号証の商標は、既に述べたように創造的図形商標であり、この図形商標からは「パイ」の称呼、観念は生じないものである。そのため、本件商標からは「パイウォーター」の称呼、観念は生じないこと明白である。

6 当審の判断

そこで、本件商標と引用商標との類否について判断するに、本件商標は、別掲(1)に表示したとおり、図形と文字よりなるところ、図形部分は、黒塗り円形図形の中に「π」の文字をややデザインして白抜きで表してなるが、該図形の白抜きの「π」は、ややデザインされているとしても、ギリシャ文字の小文字の「π」及び円周率を表す記号として使用されている「π」の文字を表してなるものとみるのが相当である。

さらに、その図形の右側に「WATER」の欧文字を書してなるものであが、この図形の右側にまとまりよく配されている「WATER」の文字は、「水」の意味を有する英語として親しまれており、「ウォーター」の称呼を生じ、指定商品との関係では、商品の内容を表示するものである。

そうすると、本件商標を称呼する場合には、全体として、「パイウォーター」の一連の称呼を生ずるほか、自他商品識別機能としての機能を果たし得ない「WATER」の語を略して、前記した白抜きで表された「π」の部分より、「パイ」の称呼をも生ずるものと判断するのが相当である。

これに対して、引用商標は、別掲(2)引用商標のとおり「πウォーター」の文字よりなるところ、後半部の「ウォーター」は、「水」を意味する外来語として親しまれており、指定商品との関係では、自他商品識別機能としての機能を果たし得ないものであるから、引用商標からは、「パイウォーター」の一連の称呼を生ずるほか、「ウォーター」の語を略して、「π」の文字部分より、「パイ」の称呼をも生ずるものと判断するのが相当である。

そして、「π」の文字については、前記とおり円周率を表す記号として広く知られているものである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において差異を有するとしても「パイウォーター」及び「パイ」の称呼を同じくし、また、円周率の記号として知られているギリシャ文字の小文字の「π(パイ)」の観念を同じくする類似の商標であり、かつ本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品を包含するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条の規定により無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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