結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35256号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第3247093号商標(以下「本件商標」という。)は、1993年5月24日ドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成5年11月24日に登録出願され、別掲に示すとおりの構成よりなり、第25類「被服(和服を除く。),履物(げた・草履類を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年1月31日に設定登録されたものである。
請求人の引用する平成5年商標登録願第122523号商標(以下「引用商標」という。)は、「NO NAME」の文字よりなり、平成5年12月8日に登録出願、第25類「エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品とするものであり、現在、審査に係属しているものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第6号証を提出した。
(1)引用商標「NO NAME」の周知性について
引用商標は、1991年にブランド創作されたものであり、1993年3月に「MARIE CLAIRE Bis」誌に(甲第2号証)、1993年7月に「FOOTWEAR NEWS」誌に(甲第4号証)、そして、1993年11月に「DEPECHE MODE」誌に(甲第3号証)掲載されている。
引用商標が使用されている「スニーカー」の売上実績は、1993年夏シーズン(1993年2月頃から7月頃販売の春夏物)において、17,073,500フラン(約4億2683万円)。その内訳は、フランス国内において8,882,800フラン、輸出が8,190,800フランであり、販売数量は、シーズン全体で200,000足となっている。1993年冬シーズン(1993年8月頃から1994年1月頃販売の秋冬物)においては、14,813,100フラン(約3億7032万円)。その内訳は、フランス国内において6,155,700フラン、輸出が8,657,300フランとなっている(甲第5号証)。
また、日本での実績は、1993年9月にストックマン社による「NO NAME」の商標を付したスニーカーの展示会を行うとともに、1993年11月1日に780足、1993年11月24日に492足を日本へ輸出した(甲第6号証)。
上記事実に照らしてみれば、引用商標は、本件商標の優先日である1993年(平成5年)5月24日以前から(遅くとも、出願日である平成5年11月24日においては)請求人の業務に係る商品(主に靴類)を表示するものとして公然と使用され続けていたものであり、著名なファッション雑誌・ファッション業界紙に掲載され、売上額の約半分はフランス国外への輸出によるものであるから、少なくともフランスやドイツを初めとするヨーロッパ各国のファッション業界においては、広く認識されていたものということができる。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
本件商標は、黒帯地に白抜きの目立つ態様で「NONAMES」と記載されている部分から「ノーネームズ」の称呼を生ずる。これに対して、引用商標は、「ノーネーム」の称呼を生ずるものである。
両称呼は、6音、5音という比較的長い音数であるにも拘わらず、わずかに類否判断上ほとんど注意を引きにくい末尾音の「ズ」という音の有無という一点においてのみ相違しているだけであるから、日本における需要者にとっては、称呼において極めて類似しているものといえる。
また、観念においても、両者は、共に「ブランド名にこだわらない」あるいは「無印良品」というイメージを直ちに想起させるものであるから、観念においても明らかに類似しているものである。
したがって、本件商標と引用商標との間には、外観・称呼上の非類似性を主張し得る程のさしたる相違も見いだせず、観念は共通したものであるため、両商標は、互いに類似する商標といわなければならない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
引用商標は、外国における周知性と売上額の約半分が輸出によるものであることを考慮すると、我が国においても少なくとも当業界において請求人の使用に係る商標として、本件商標の出願時には既に周知になっていたということができる。
そして、本件商標と引用商標とは互いに極めて類似する商標であり、指定商品もほとんどの指定商品において重複している。
以上の事実より、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、外国(特にフランス)における当業界では、請求人の使用に係る商標として、本件商標の優先日(遅くとも出願時)には、既に周知になっていたものであり、競業者がいかなる商標を使用し、どの程度の規模で、どのような国に商品展開をしているかということは、同業者ならば当然、最大限の注意を払うべきものである。
被請求人の住所であるドイツ連邦共和国ピルマゼンスは、ライン川を挟んでフランスとの国境からわずか数10kmしか離れておらず、しかも、ピルマゼンス近郊のフランス側にはフランス有数の商工業が盛んな大都市であるストラスブールがあることを考えると、被請求人が本件商標の優先日である1993年(平成5年)5月24日の時点(遅くとも出願日である平成5年11月24日の時点)で、引用商標の大成功の事実を全く知らなかったということは考えられない。
このような状況に加えて、被請求人が本件商標の出願をした時期は、請求人が日本へも進出すべく具体的行動(展示会、日本への輸出、日本国内での販売)を開始していた時期であり、被請求人は、請求人の日本進出の時期を狙い打ちするように、日本国で商標登録出願を行なっていること等の諸事実を併せ考えると、被請求人には、外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は、請求人の日本国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する等の不正の目的があったものといわざるを得ない。
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び同第2号証を提出した。
引用商標は、日本国内において、請求人の商標として周知となっていた事実はない。請求人が日本で使用したと主張する実績は、何れも、本件商標の出願日(優先日は1993年5月24日)以降のものであり、本件商標の優先日前に、我が国において引用商標が使用された事実は一切ない。
また、引用商標は、外国でも請求人の使用に係る商標として周知にはなっていない。
「NO NAME」は、ドイツ国においては、自他商品識別力を欠くとの理由により拒絶されている事実からも明らかなように(乙第1号証 ドイツ国連邦特許裁判所の決定書)、実際には、請求人の商標どころか、何人かの業務に係る商品を表示する標章としてさえも認識されることはない。
また、ドイツ語辞典「DURDEN Das Fremdworterbuch(「o」の文字には、ウムラウト記号がついている)」(乙第2号証)には、「NoーnameーProduct」の説明として「例えば、商標・商号を有しない」の如く明示されているように、「NOーName」は、ドイツ国においては「商標を有しない」商品に対する一般的な記述的語句である。
以上のように、「NO NAME」は、識別性を有しないことから、少なくともドイツ国においては、商標として認識されることはないのであり、ドイツ国の市場は巨大であって、ヨーロッパにおいて重要な販売拠点を占めているという事実を考慮すれば、ドイツ国において請求人の商標として認識されていない以上、ヨーロッパ各国において周知になることは有り得ない。
また、「NO NAME」は、自他商品識別力を欠くことを理由として商標として認められない以上、これが刊行物などに掲載されたとしても、需要者等においては、単に商品に関する記述としか認識されないので、周知商標になることはない。
しかも、本件商標の優先日以前に刊行された刊行物は、甲第2号証だけである。そして、この刊行物での掲載内容も、単に各種商品の中の一つとして紹介されているだけであり、単に「ウェッジ・ヒール 夏へ向かって大またで踏み出すための丈夫なスニーカー(Free LanceのNoName)」とあるだけで、到底この「NoName」が人気を博している様な記載とはなっておらず、むしろ「COMPENSEES(後ろから3文字目のEにはアクサン記号が付いている)」の方が商標的に記載されている。
また、これらの刊行物は、請求人が一方的に「著名な刊行物」と主張しているだけであり、その詳細(刊行されている国名、刊行部数など)は一切明らかにされておらず、実際、この様な雑誌が我が国で頒布されていたのかさえも相当疑問が残るところである。
更に、引用商標に係る商品がフランス国外に輸出されたと主張していることを証明しているのは、甲第5号証だけであり、この証拠自体、客観性・信憑性に欠けている。仮に、これに記載された内容が真実であったとしても、甲第5号証に掲載された金額は、優先日以後の売上額も含むものであり、当該優先日においては、どの程度輸出されていたのかは、一切明らかにされていない。
なお、被請求人は、本件商標を日本国内で使用するために出願したものであり、請求人に対して、譲渡の申し込みや代理店契約締結の強要を行った事実は一切ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び商標法第4条第1項第19号に該当しない。
本件商標は、別掲に示したとおり、デザイン化された「NN」の欧文字を大きく表し、その下部の黒塗り長方形内に白抜きで「NONAMES」の欧文字を表した構成からなるものである。
ところで、商標法第4条第3項によれば、同条第1項第10号及び第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない旨規定されている。
そして、本件商標は、前記1において記載したとおり、1993年5月24日にドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成5年11月24日に我が国に登録出願されたものであるから、上記各号に該当するか否かの判断時は、本件商標の出願の優先日である1993年(平成5年)5月24日(以下「基準日」という。)であるといわなければならない。
そこで、請求人の提出に係る甲号各証をみるに、甲第2号証の「MARIE CLAIRE Bis(1993年3月号)」には、「ウェッジ・ヒール 夏へ向かって大またで踏み出すための丈夫なスニーカー(Free LanceのNoName)」と記載されており、甲第3号証の「DEPECHE MODE(1993年11月号)」には、「プラットフォーム型のスニーカー、NoNameのサクセスストーリーによって認められた証拠。今シーズンにおよそ20万足が飛ぶように売れた。1994年夏には30万足、と期待されている。・・」とあり、甲第4号証の「FOOTWEAR NEWS(1993年7月26日)」には、「・・この春、プラットフォーム型スニーカーによりブームを起こしたスニーカーの会社ーー過去3ケ月で125000足を売った・・」との記事が掲載されていることを認めることができる。
また、請求人の作成に係る書証と認められる甲第5号証「NO NAMEブランドの売上高」によれば、93年夏シーズンにおける全世界での売上高は、17,073,500フランであり、そのうち、フランス国内の売上高は、8,882,800フラン、輸出が8,190,800フランであった旨記載されている。又、その備考欄には「NO NAMEブランドは92年冬シーズンのために創られたが、93年夏、PLATO BASKETモデルとPLATO SNEAKERモデルの最初の成功によって、その真の飛躍がみられた。これらのモデルの成功は94年夏シーズンに確証されるであろう。」と記載されていることを認めることができる。
しかして、これらの証拠のうち、基準日までに発行されていた雑誌は、甲第2号証のみである。そして、当該雑誌の記事にしても、引用商標に係る商品は、各種商品の中の一つとして紹介されているだけであって、商標の使用状態が明確でないばかりでなく、使用の開始時期、数量、販売地域等も明らかでなく、「NoName」の商品が人気を博していたような記述も認められない。
そして、基準日後の発行に係る甲第3号証ないし同第5号証を総合してみても、請求人の考案に係るプラットフォーム型スニーカーは、その型の特徴的なことから、1993年春頃からはじまる夏シーズン以降、売り上げが伸び始めたことは推測し得るにしても、該シーズンの初頭に当たる基準日時点までに、どの程度、販売され、あるいは輸出されていたのか明らかでない。
してみれば、「NoName」のスニーカーは、基準日時点までに、甲第2号証の「MARIE CLAIRE Bis」誌に一回取り上げられていただけであり、しかも、該スニーカーの基準日時点までの販売数量、輸出数量も明らかでない以上、これらの証拠のみをもってしては、引用商標が基準日時点において、ヨーロッパ諸国の需要者間において広く認識されていたものと認めることはできない。
加えて、被請求人の提出に係る乙第1号証(ドイツ国連邦特許裁判所の決定書)及び同第2号証(ドイツ語辞典「DURDEN Das Fremdworterbuch(「o」の文字には、ウムラウト記号がついている)」)によれば、「NO NAME」の語は、少なくともドイツ国においては、商標を有しない商品に対する一般的な記述的用語として理解・認識されていたものと推測されるところであり、ヨーロッパにおいて主要な市場といえるドイツ国において、上記のような事情にあったとすれば、引用商標がヨーロッパ各国において周知になっていたとする請求人の主張は、この点においても疑問が残るところである。
更に、請求人は、1993年(平成5年)9月に、我が国において、ストックマン社による「NO NAME」の商標を付したスニーカーの展示会を行うとともに、1993年11月1日に780足、1993年11月24日に492足を我が国へ輸出した(甲第6号証)旨主張しているが、これらの実績は、いずれも、本件商標の基準日後のものであるから、本件商標の基準日時点において、我が国において、引用商標が使用され、周知になっていたものとは認められない。
してみれば、引用商標は、請求人の業務に係る商品「靴類」を表示するものとして、本件商標の基準日時点において、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたものとは認めらない。
また、請求人は、被請求人には本件商標の取得にあたって不正の目的があったといわざるを得ない旨主張しているが、これを裏付ける具体的な証拠を何ら提出していない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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