結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第31473号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第1677308号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和55年9月17日登録出願、指定商品を第24類「ステレオレコード、録音済テープ、その他のレコード」として、同59年4月20日に登録、その後、平成7年1月30日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
請求人は、「本件商標の登録はこれを取り消す、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第17号証を提出した。
(1)請求の理由
被請求人は、本件商標を過去3年以内に指定商品を識別する目的の商標として使用してきた事実はなく、また、第三者に使用権を設定した事実もない。したがって、その登録は商標法第50条第1項により取り消されるべきものである。
(2)弁駁
被請求人提出の証拠は、本件商標についての商標としての使用、あるいは社会通念上同一の商標の使用を示すものではなく、実演家アーティストグループ名である「横浜銀蝿」の名称等を表示しているにすぎない。
実演家アーティストグループ「横浜銀蝿」については、正式名称を「The Crazyrider 横浜銀蝿 Rolling Special」と称し(甲第3号証)、現在、請求人「嵐レコード株式会社」に所属し、版権管理並びにマーチャンダイジング管理については全て請求人が実施しているところである。したがって、被請求人が答弁書において主張している事項は、その多くが誤りであり、以下その理由を述べる。
(イ)アーティストグループ名「横浜銀蝿」の沿革について
「横浜銀蝿」については、上記のように長い正式グループ名の略称として知られ、同グループは1979年9月21日、芸名「嵐」、「翔」、「TAKU」、「Johnny」の4名で結成され、例えば「翔」らが作詞、作曲した「ツッパリ High School Rock’n Roll」、「あせかきべそかき Rock’n Roll」など、数々のヒット曲を世に送ったことについては周知である。「横浜銀蝿」が当時所属していたレコード会社は、被請求人「キングレコード株式会社」であり、キングレコードは収録した楽曲原盤をもとに、当時、数々のレコード販売を行った。
しかし「横浜銀蝿」は結成後、わずか4年の1983年12月31日に解散し、メンバーのうち、「嵐」はマルチタレントとして、「翔」はソロアーテイストとして、「TAKU」は音楽プロデューサとして、「Johnny」はレコード会社のディレクターとして、それぞれ活躍の場を変更していったところである。
解散後、14年近くを経た1996年になり、かつてのメンバーらの間で話し合いが行われ、現在レコード会社の社員になっている「Johnny」を除く3名「嵐」、「翔」、「TAKU」が「横浜銀蝿」の再結成を企画し、1997年1月1日、これらのメンバーで再結成デビューを行ったところである。
(ロ)請求人が本件審判請求を行った端緒
再結成デビューを行ったアーティストグループ「横浜銀蝿」(正式名称は前記のとおり)においては、レコード制作を請求人が、レコード発売元を「シルバーレコード株式会社」が、販売元を「日本コロンビア株式会社」がそれぞれ担当して、CDの発売等の活動を行ったところである(甲第4ないし第8号証)。
ところが、請求人らの再結成によるこうしたCDに対し、被請求人「キングレコード株式会社」においては、被請求人が本件商標を保有していることに基づいて、あたかもCDにアーティスト名「横浜銀蝿」を表示できるのが、「キングレコード株式会社」のみであり、請求人らのCD上での「横浜銀蝿」等の表示行為が違法行為であるが如き誤った認識を業界内に流布した。
請求人は当初被請求人の上記行為に対し、不正競争防止法に基づき対応することも考えたが、そもそも本件商標については、被請求人において商標として使用されていないことは明白であり、本件審判請求を行った次第である。
(ハ)被請求人「キングレコード」 による「横浜銀蝿」のCD上への表示行為について
以上のように、「横浜銀蝿」については、アーティスト名称であることは明白である。一方、被請求人は、本件商標を保有していること、並びに当初結成された時の楽曲演奏原盤(原盤音源)を保有していることに基づき、旧楽曲をリメークしたCD販売を行っており、こうした「横浜銀蝿:完全復刻版」のCDを乙第1号証の1ないし第5号証に示すように、被請求人が発売していること自体、請求人において争うものではない。
しかしながら、こうした被請求人の使用商品「CD」における「横浜銀蝿」等の表示は、あくまでも、当初結成されたアーティスト名(20年前に結成され、16年前に解散したグループ「横浜銀蝿」)としての表示に他ならず、そもそも本件商標から分離し、使用商品の包装体(CDカバー)上で表示される「横浜銀蝿」の名称は、自他商品を識別するための商標ではなく、あくまで、かつて存在したアーティストグループ名にすぎないものである。
商品「CD」上においてのアーティスト名の表示や、CDタイトル、アルバムタイトル等の表示行為は、商標使用行為に該当しないとするのが、甲第15及び第16号証に示す「UNDER THE SUN事件」以降の判例、通説になっていることは、レコード業界において周知である。
すなわち、被請求人の使用商品において表示される「横浜銀蝿」はアーティスト名として需要者に認識されることはあっても、需要者において自他商品を識別する目的で表示される商標として認識されることは皆無であり(横浜銀蝿のCDを購入する需要者においては、その動機により横浜銀蝿をアーティスト名と認識せずに購入することは皆無である)、よって被請求人による使用商品(CD)上での「横浜銀蝿」の表示行為は商標法第2条第1項第1号での商標使用に当たらず、商標法第50条第1項における商標権者による商標使用に該当しない。
(ニ)登録商標の社会通念上同一の範囲での使用について
被請求人は答弁書において、オートバイの図形部分と「横浜銀蝿」の名称が分離して表示されていることを、自認、自白している。加えて被請求人は「横浜銀蝿」と図形の両者がたとえ分離されていても、社会通念上登録商標と同一の商標であるとしている。
しかしながら、図形部分に表示される「The Crazyrider」については、グループの正式名称「The Crazyrider 横浜銀蝿 Rolling Special」の一部に他ならず、大体、被請求人が答弁書で「男女二人がオートバイに乗る図形」と称しているこの図形中の人物こそ、横浜銀蝿のメンバー「翔」のキャラクターそのものである。
すなわち、本件商標の表示中、「横浜銀蝿」の部分は前記のとおり1979年当時の「アーティスト名」であり、「The Crazyrider」の部分については正式グループ名の一部であり、図形部分についてはメンバーの一人「翔」がオートバイに乗っている姿のキャラクターに他ならない。
したがって、もはや要部と思しき部分が、実質的に存在せず、あるいは不明な商標については、図形、文字等がバラバラで商品の包装に表示され、下記商標が物理的に同一でない状態で表示される以上、登録商標が表示されていないと解釈されるべきである。
(ホ)専属実演家契約の終了
被請求人は答弁書において、あたかも「横浜銀蝿」がキングレコードの専属実演家であるが如き誤った主張を行っている。確かに、今を遡る20年以上前において結成されたアーティストグループ「横浜銀蝿」は、当時所属していたプロダクションとキングレコードとの間で専属契約が結ばれていたことを否定するものではない。
しかし、その後「横浜銀蝿」は解散され、専属実演家契約は終了しており、再結成された「横浜銀蝿」はかつて所属していたプロダクションとは全く無関係であり、また被請求人が本件商標を保有することをもって、請求人に圧力をかけることは絶対に許されるべきものではない。
被請求人「キングレコード株式会社」においては、甲第17号証に示す一覧の各商標権を保有しているところであるが、この中には明らかに「アーティストグループ名称」、「レコードタイトル名」、「アルバムタイトル名」などが含まれているところである。被請求人がこうした本来の自他商品識別を目的とする商標以外の部分で、商標権を保有する目的について、請求人としては全く理解できないところであるが、もし、仮にこの種の商標権を保有することにより、アーティストの活動を制限できるとするならば、レコード会社がアーティスト支配、楽曲やアルバムのタイトル名支配を商標権の取得により自由に行い、アーティストの自由な音楽活動が商標権取得により阻害されることとなる。
以上の点から、請求人としては、本件商標の特質に鑑み、請求の趣旨どおりの審決を求める次第である。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、請求の理由に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)被請求人は、自己の業務に係る商品中、専属実演家「横浜銀蝿」の作品であるCDレコードについて、少なくとも1991年1月から現在に至るまで継続的に本件商標を使用している。該CDレコードは「録音済みCDレコード」であって、本件商標の指定商品であり、本件審判の請求に係る指定商品「レコード」に属することは明らかである。
乙第1ないし第4号証は、いずれも本件商標権者が複数のレコード販売特約店にて、本件商標を付した「録音済みCDレコード」を、現に展示販売している事実を証明する証拠写真である。これらは、商品の性質上、各商品における本件商標の表示は小さいものであるため、乙第5号証において、商品に付されたラベル現品を提出して、更に明瞭に登録商標の使用事実を明らかにする。
このラベルにおいて、CDケース箱体の背表紙にあたる部分と、箱体表面にあたる部分には、本件商標の主要部分である男女二人がオートバイに乗る図形と、「The Crazyrider」、「横浜銀蝿」の文字が明瞭に表されている。
ここで、使用商標は、図形部分と「横浜銀蝿」の文字部分の配置や大きさが本件商標と異なる点で、物理的には完全同一といえないものである。しかしながら、本件商標の構成から明らかなとおり、図形部分と「横浜銀蝿」の文字部分が分離して表されており、これらの一体性は薄い。かかる構成の登録商標においては、使用される商品の特質から文字と図形の配置や大きさ等、商品全体のバランスを考慮して適宜変更して使用することは、取引の慣習上普通に採用されているところである。
したがって、この程度の変更使用であれば、これに接する需要者、取引者も同一の商標と認識するのにさして支障はなく、よって、使用商標は本件商標との関係において、社会通念上、同一の範囲に属するものとみるのが至極自然である。
次に、本件商標の使用が、少なくとも本件審判請求登録の日前から3年以内の使用であることについて証明する。
乙第6号証は、本件商標権者のレコード販売特約店より、本件商標が使用された商品「CDレコード」について、各販売特約店が展示販売してきた期間を証明いただいたものである。かかる証明書のとおり、上記本件登録商標の使用は、少なくとも本件審判請求登録の日前から3年以内の使用であることは明らかである。
(2)上記の事実から、本件商標は、その指定商品中「レコード」につき、本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において商標権者によって使用された事実が明白であり、商標法第50条第1項の規定に該当する事実は全くないものである。
本件商標は、別掲のとおり、男女二人がオートバイに乗る図形に「The Crazyrider」の文字を重ね書きした部分(以下「図形部分」という。)と、「THE CRAZYRIDER」と「ROLLING SPECIAL」の各文字を上段と下段に小さく配し、その中間に大きく「横浜銀蝿」の文字を書き表してなる部分(以下「文字部分」という。)の二つの要素の組合せよりなるところ、この図形部分と文字部分は、これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められず、それぞれが独立したまとまりをもって看者に認識、把握されるというを相当とするものである。
ところで、被請求人提出の乙第1ないし第5号証(枝番号を含む。)(商品の写真、ラベル現品)によれば、それに表示されている商標(以下「使用商標」という。)は、図形部分と文字部分が分離して使用されているものである。また、該商標の使用に係る商品「録音済みのコンパクトディスク(音楽CD)」(以下「本件商品」という。)は、本件商標の指定商品中に包含されているものと認め得るところである。
請求人は、本件商品における「横浜銀蝿」等の表示は、自他商品を識別するための商標ではなく、あくまで、かつて存在したアーチストグループ名にすぎないとして、被請求人による本件商品上での「横浜銀蝿」の表示行為は商標法第2条第1項第1号での商標使用に当たらない旨主張する。
確かに、本件商標の文字部分については、1979年9月に結成、数々のヒット曲を出し、1983年12月に解散した4人編成のロックグループ歌手の名称として今なお一般に広く知られているものであって、これが本件商品(音楽CD)に使用されても、演奏者名としてしか理解、認識されず、自他商品を識別するための標識たり得ないことはいうまでもない。請求人の主張は、この限りにおいては妥当なものといえる。しかしながら、本件商標は、文字部分のみからなるものではなく、図形部分を含むこと前記のとおりであり、該図形部分は、本件商品との関係で、直ちにその品質(内容)等を具体的に表示するものとして一般に理解、認識されているとまでは認められず、本件商品について自他商品識別標識としての機能を果たしうる余地が十分にあるものというを相当とするものである。
商標法は、その第2条第1項において、「商標」について定義し、「商標とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であって、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの(第1号)」であるとし、さらに同条第3項において、「標章」についての使用とはどのような行為であるかを定め、例えば「商品又は商品の包装に標章を付する行為(第1号)」、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、又は輸入する行為(第2号)」等をその一態様として挙げている。
被請求人による本件商品(音楽CD)上への本件商標の表示行為は、その態様からみて、形式的にはもちろん、実質的にも本条項で定める行為に適合していると認められるものである。したがって、請求人の前記主張は採用できない。
また請求人は、本件商標のように要部と思しき部分が実質的に存在しないか、又は不明な商標については、図形、文字等がバラバラで物理的に同一でない状態で商品の包装に表示される以上、登録商標が表示されていないと解釈されるべきである旨主張する。
確かに、本件商標と使用商標を比較すると、その図形部分と文字部分の位置関係に明らかな差異が認められる。しかしながら、もとより本件商標の図形部分と文字部分は、これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められず、それぞれが独立したまとまりをもって看者に認識、把握されるものであるといえるし、また使用商標の当該図形部分、文字部分も同様のことがいえるところ、両者の各部分毎の態様はほぼ同一と認め得るものであり、このうち文字部分は演奏者名に相応するとしても、図形部分において自他商品識別のための標識として機能する余地があること上述のとおりであり、そうである以上、本件商標と使用商標とは社会通念上自他商品識別標識として同一の機能を果たしうるものと判断するのが相当であって、かかる図形部分、文字部分の位置関係の差のみでは社会通念上同一性を損なうものとは到底いい得ない。したがって、請求人の前記主張も採用の限りでない。
そして、本件商標と社会通念上同一と認めうる商標(使用商標)を付した本件商品が1991年1月以降現在に至るまで被請求人のレコード販売特約店において継続して展示・販売されていることは、被請求人提出の乙号各証(枝番号を含む。)により認めうるところである。
以上のとおり、本件商標は本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内においてその請求に係る指定商品中の「録音済みのコンパクトディスク(音楽CD)」について、被請求人により使用されていたものと認めることができる。
請求人は、当該ロックグループ「横浜銀蝿」の解散、再結成の事実関係に触れ、自由な音楽活動が商標権により阻害されることはあってはならない旨主張するが、本件において審理すべきは、審判請求前3年以内に日本国内において本件商標が請求に係る指定商品のいずれかについて使用されていたか否かであり、請求人の前記主張は、本件の審理の対象から懸け離れた事柄であって、上記判断を左右するものではない。
したがって、本件商標は商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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