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Trademark Appeal Case

「トレカ」商標の類否と指定商品

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35151(T2000−35151/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4316578号商標(以下「本件商標」という。)は、標準文字をもって「トレカ」と書してなり、第16類「紙製簡易買物袋,家庭用食品包装フイルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,雑誌,新聞,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,事務用又は家庭用ののり及び接着剤」及び第28類「囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,人形」を指定商品として、平成9年10月7日登録出願、同11年9月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標

請求人が引用する商標は、以下のとおりである。

(1)登録第2657450号商標;「TORAYCA」と「トレカ」の各文字を上下2段に書してなり、第14類「原料繊維」を指定商品とする。

(2)登録第1021494号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第15類「糸」を指定商品とする。

(3)登録第1021495号商標;「トレカ」の文字を書してなり、第15類「糸」を指定商品とする。

(4)登録第1111446号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第16類「織物、編物、フェルト、その他の布地」を指定商品する。

(5)登録第2605079号商標;「トレカ」の文字を書してなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とする。

(6)登録第2658322号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とする。

(7)登録第3112371号商標;「TORAYCA」と「トレカ」の各文字を上下2段に書してなり、第19類「建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料,れんが及び耐火物,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落下防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス,無機繊維の板及び粉(石綿製のものを除く。),タール類及びピッチ類,人工魚礁(金属製のものを除く。),送水管用バルブ(金属製又はプラスチック製のものを除く。),ビット及びボラード(金属製のものを除く。),飛び込み台(金属製のものを除く。)」を指定商品とする。

(8)登録第4114589号商標;「トレカ」と「TORAYCA」の各文字を上下2段に書してなり、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザーククロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,布製ラベル,ビリヤードクロス」を指定商品とする。

(9)登録第3112372号商標;「TORAYCA」と「トレカ」の各文字を上下2段に書してなり、第27類「敷き物,壁掛け(織物製のものを除く。),畳類,洗い場用マット,人工芝,体操用マット,プラスチック製の壁板・タイル及び床板,リノリューム製の壁板・タイル及び床板,壁紙」を指定商品とする。

(10)登録第2628020号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第10類「理化学機械器具、光学機械器具、写真機械器具、映画機械器具、測定機械器具、医療機械器具、これらの部品および附属品、写真材料」を指定商品とする。

(11)登録第2638969号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具、電気材料」を指定商品とする。

(12)登録第2713373号商標;「トレカ」の文字を書してなり、第12類「輸送機械器具、その部品および附属品」を指定商品とする。

(13)登録第2715637号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第12類「輸送機械器具、その部品および附属品」を指定商品とする。

(14)登録第2580894号商標;「トレカ」の文字を書してなり、第13類「手動利器、手動工具、金具」を指定商品とする。

(15)登録第2628021号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第13類「手動利器、手動工具、金具」を指定商品とする。

(16)登録第2614452号商標;「トレカ」の文字を書してなり、第18類「ひも、綱類、網類、包装用容器」を指定商品とする。

(17)登録第2614453号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第18類「ひも、綱類、網類、包装用容器」を指定商品とする。

(18)登録第2633114号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第20類「家具、畳類、建具、屋内装置品、屋外装置品、記念カップ類、葬祭用具」を指定商品とする。

(19)登録第2580895号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品とする。

(20)登録第2607702号商標;「トレカ」の文字を書してなり、第22類「はきもの、傘、杖、これらの部品および附属品」を指定商品とする。

(21)登録第2607703号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第22類「はきもの、傘、杖、これらの部品および附属品」を指定商品とする。

(22)登録第2638970号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品とする。

(23)登録第1021914号商標;「TORAYCA」と「トレカ」の各文字を上下2段に書してなり、第24類「おもちや、人形、娯楽用具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)レコード、これらの部品及び附属品」を指定商品とする。ただし、指定商品中の「おもちや、人形、娯楽用具」については、平成9年審判第17404号の不使用取消審判において取り消され、その審決は、平成10年5月13日に確定し、同年7月15日に登録された。

(24)登録第2604915号商標;「トレカ」と「TORAYCA」の各文字を上下2段に書してなり、第24類「おもちや、人形、娯楽用具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)レコード、これらの部品及び附属品」を指定商品とする。ただし、指定商品中の「おもちや、人形、娯楽用具」については、平成9年審判第17423号の不使用取消審判において取り消され、その審決は、平成10年6月24日に確定し、同年8月12日に登録された。

(25)登録第2638968号商標;「トレカ」の文字を書してなり、第25類「紙類、文房具類」を指定商品とする。

(26)登録第2652299号商標;「TORAYCA」の文字を書してなり、第25類「紙類、文房具類」を指定商品とする。

(27)登録第1117786号商標;「トレカ」と「TORAYCA」の各文字を上下2段に書してなり、第34類「プラスチツクス、ゴム、皮革、パルプ、その他の基礎材料で他の類に属しないもの」を指定商品とする。

なお、請求人は、上記した各登録商標を引用するが、請求の理由から判断すると、請求人は、商品「炭素繊維」について使用される「トレカ」、ないし「TORAYCA」の文字よりなる商標を引用したものと認めることができ、以下、右商標について「引用商標」という。

第3 請求人の主張等

請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第97号証(枝番を含む。)を提出した。

1.引用商標及び請求人の営業活動等について

(1)引用商標は、請求人の製造・販売に係る炭素繊維(カーボンファイバー)の商標として本件商標の出願当時、既に取引者・需要者間に周知されていた。

(2)炭素繊維(カーボンファイバー)について

炭素繊維は、その特性とする高強度で弾性率に富み、軽量で高耐熱性を利用して強化型複合材料として使用され、航空宇宙材料やスポーツ・レジャー分野その他に広く用いられている(甲第2号証)。

(3)請求人の営業活動について

アクリロニトリル繊維を焼成して工業的に採算性のある炭素繊維を製造したのは、世界で請求人が最初である。

請求人は1971年(昭和46年)に年産12トンの規模で工業生産を開始し、1973年には年産60トンに、1974年120トン、1975年180トン、1979年420トン、1981年540トン、1982年1250トンと生産規模を拡大した。その後、世界的需要の増大にともなって増産を重ね、1995年には、2900トン、更に1998年には4700トンへ生産設備を拡大した。そして、1997年には国内総生産の約50%、世界規模での炭素繊維の総需要量の約40%のシェアを占めるに至っている(甲第3号証ないし甲第9号証)。

請求人は、その製造・販売する炭素繊維に「TORAYCA/トレカ」と商標名を命名し、上述のとおり製造・販売を行ってきたが、この素材の特長を活かした各種製品の開発に努力を重ねた結果、航空・宇宙産業資材、レーシングカーの車体及び主要構造部分、天文台の電波望遠鏡、ゴルフクラブ・スキー・釣竿・ゴルフシューズ・テニスラケット・棒高跳び用の竿・バレーボールの支柱・その他のスポーツ用品、X線診断装置等の医療品、電子機器、屋根材、建物の構造材、コンクリートの補強材、シャープペンのボディ・洋傘・ゴルフ傘の骨・ステッキ等の日用品等広い分野に使用されている(甲第10号証ないし甲第22号証の8;なお、甲第11、12号証は、甲第94号証と同一のものである。)。

(4)請求人の炭素繊維「トレカ」のPR活動について

請求人は、炭素繊維「トレカ」を市場に出して以来、その複合素材としての特長を述べ、用途の開拓に努力を傾注してきた。

その活動は、主として、新聞、雑誌、専門誌に未来性のある素材として紹介し、宇宙・航空産業に用いられるその高性能特性を利用した新しい用途(自動車の車体、各種部品、ルーフィング、電子機器部品等)等を発表し、併せて新聞・雑誌広告、テレビによるコマーシャルの放映を実施した。

これらPR活動に費やした費用は、昭和52年度は1700万円、昭和53ないし55年度はそれぞれ1300万円、昭和56年度1億4000万円、昭和57年度1億8400万円、昭和58年度1億4000万円、昭和59年度1億600万円、昭和60ないし62年度はそれぞれ500万円、昭和63年度1000万円、平成1年度2000万円、平成2年度5000万円、平成3年度1900万円、平成4年度2800万円、平成5年度1900万円、平成6及び7年度はそれぞれ500万円、平成8年度3300万円、平成9年度4300万円である。

宣伝広告例として、甲第23号証ないし甲第68号証を示す。また、テレビコマーシャルで放映した例として甲第69号証の1及び甲第70号証を示す。

請求人は、毎年新人の募集を行っているが、その際、会社事業活動を紹介する会社案内を作成し、希望者に配布している。炭素繊維「トレカ/TORAYCA」は請求人が最重点をおいて開発を行っている新規事業である(甲第72号証ないし甲第74号証)。

この外、請求人は、就職ジャーナル等に請求人の企業を紹介した小冊子を発行しているが、その中においても新規事業としての炭素繊維「トレカ/TORAYCA」を紹介している(甲第75号証及び甲第76号証)。

さらに、請求人は、平成8年1月からインターネット上のホームページで「トレカ/TORAYCA」の頁を設けての炭素繊維及びその製品を紹介している(甲第77号証)。

(5)炭素繊維「トレカ/TORAYCA」の販売量について

1971年販売開始以来順調に伸び、1986年には1000トンを超え、1991年2000トンを突破、1996年には3000トン、現在は4000トン以上に達している。また、国内の販売高は、1971年に販売開始以来、1982年には、100億円を突破した。1989年に、200億円を超え、1996年以降の需要増大により、現在の販売高は300億円以上に上っている。

(6)炭素繊維「トレカ/TORAYCA」のユーザーのPR活動について

各ユーザーは、それらの製品が炭素繊維を素材としていることをPRの強力なセールスポイントの1つとしている(甲第78号証ないし甲第93号証)。

上記した製品は請求人の炭素繊維「トレカ」を使用しているが、単に「カーボンファイバー使用」とのみ表示しているものもある。しかし、カーボンファイバー/炭素繊維の名称及びその軽量,高強力、高弾性という特長が上記した各ユーザーの製品紹介を通じ、一般消費者にまで浸透し、他方請求人目身のなす炭素繊維「トレカ/TORAYCA」のPR活動と相まって、「トレカ/TORAYCA」が請求人の業務に係る炭素繊維の表示として一般消費者にも周知されるようになっている。

上記に関しては、請求人の複合材料事業部門の相原大介の報告書(甲第94号証)に述べられているとおりであり、上述の甲第78号証ないし甲第93号証として提出する各社のインターネットのホームページのコピー及びパンフレット(甲第82号証、甲第84号証及び甲第89号証)は、相原大介の報告書に述べられている各社のホームページのコピー及びパンフレットに対応する。

(7)以上総合して判断すれば、請求人の引用商標「トレカ/TORAYCA」は請求人の業務に係る炭素繊維(カーボンファイバー)を表示するものとして本願商標の出願時には、取引者・需要者間に周知されていたことが明らかにされる。

(8)引用商標「トレカ/TORAYCA」は、国際工業所有権保護協会日本部会(AIPP1・JAPAN)編等の日本有名商標集(FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN)にも掲載されている(甲第95号証)。

また、請求人は、特許庁に対し出願される他人の商標について、引用商標と同一又は類似の商標が登録されることによって、引用商標の周知性が損なわれることのないよう万全の措置を講じてきた。

例えば、昭和63年に「自動車、自動車の部品及び附属品」について出願された商標「トレカ」(商願昭63−19278)に対し異議を申し立てた結果、その異議は理由があるものとして、該出願は商標法第4条第1項第15号により拒絶された(甲第96号証)。

2.商標法第4条第1項第16号について

(1)本件商標は、引用商標と同一又は類似している。また、引用商標は、炭素繊維を表示するものとして一般に周知されており、その製品は産業用途のみならず、ゴルフクラブ・テニスラケット・釣竿等のスポーツ用品、万年筆・ボールペン・ステッキ・洋傘等の日用品、電子機器・自動車用部品等の多方面に使用されている。

したがって、本件商標がその指定商品について使用されるときは、それら商品も請求人の炭素繊維を素材として製造された商品であるかの如き、品質の誤認を一般消費者に与えるおそれがある。

(2)被請求人は、本件商標の指定商品は、「炭素繊維」を原材料とする商品は含まれていないから、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがない旨主張するが、前述してとおり、「炭素繊維」は、高強度で弾性率に富み、軽量で高耐熱性を有する強化型複合材料であるから、航空宇宙材料からスポーツ・レジャー用品その他多種多様な分野の商品に使用されており、本件商標の指定商品中、「写真立て,碁石,マージャンバイ,サイコロ,ダイスのコマ」等についても「炭素繊維」が使用される可能性がないというわけではない。

(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。

3.商標法第4条第1項第15号について

(1)前記2.(1)と同様の理由により、本件商標がその指定商品に使用されるときは、それら商品は請求人の許諾のもとに製造.販売されたものであるか、その他請求人と何らかの関係を有する者によって製造・販売されているものであるかの如き、商品の出所につき混同を生じさせるおそれがある。

(2)被請求人は「炭素繊維及びその製品」と本件商標の指定商品とは、その原材料、品質、用途、流通系統等を著しく異にするものであるから、本件商標をその指定商品に使用しても、商品の出所について混同を生じさせるおそれはない旨主張するが、「炭素繊維」は、産業用途のみならず、スポーツ・レジャー用品、日用品に至るまで幅広い用途の複合材料であり、また、本件商標の指定商品も、炭素繊維を原材料として製造される可能性があるのであるから、上記(1)のとおり、本件商標がその指定商品に使用されるときは、商品の出所につき混同のおそれがある。

(3)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4.商標法第4条第1項第19号について

(1)本件商標は、請求人の業務に係る炭素繊維を表示するものとして周知されている引用商標と同一又は類似である。

したがって、本件商標が請求人の商品と関係のない商品に使用されるときは、引用商標の周知性を毀損し、その独自性を稀釈化するおそれがある。

また、本件商標を出願する意図は、引用商標の周知性を自己の有利に利用しようとする不正の目的になるものと推測できる。

(2)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

5.被請求人は、本件商標に係るの異議の決定(乙第1号証)を引用するが、異議由立に対する決定は、一つの判断であって、最終的なものではない。

本来、登録異議申立制度と登録無効審判制度は、全く異なった性質のものである。

登録異議申立は、何人でも請求できるもので、特許庁による登録処分の見直しをすることにより、瑕疵ある登録処分の是正を速やかに行い、登録の信頼を高めるという目的(公衆審査)のための制度である。

登録無効審判は、登録により、自己の利益を害される者の請求に基づき、当事者間の紛争解決を目的とする制度である。

したがって、無効審判においては、請求人が本件商標の登録によって蒙る不利益と被請求人が商標登録を失うことによる不利益とのバランスに立って審理されるものであるから、本件商標に対する異議申立において、その登録が維持されたからといって、本件無効審判において理由なしというものではない。

第4 被請求人の主張等

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。

1.商標法第4条第1項第16号について

本件商標の指定商品は、第16類「紙製簡易買物袋,家庭用食品包装フイルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,雑誌,新聞,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,事務用又は家庭用ののり及び接着剤」及び第28類「囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,人形」である。

ここで、引用商標が請求人の製造・販売に係る商品「炭素繊維及びその製品」を表示するものとして、本件商標の登録出願時に取引者・需要者の間に広く認識されていたとしても、本件商標の指定商品には前記したとおり、「炭素繊維」を原材料とする商品は含まれていないものであるから、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがないことは明らかである。

よって、本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとの請求人の主張は理由がないものである。

2.商標法第4条第1項第15号について

引用商標が請求人の製造・販売に係る商品「炭素繊維及びその製品」に使用され取引者・需要者の間に広く認識されていたとしても、「炭素繊維及びその製品」と本件商標の指定商品とはその原材料、品質、用途、流通系統等を著しく異にするものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品が請求人又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。

よって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの請求人の主張は理由がないものである。

3.商標法第4条第1項第19号について

請求人は、審判請求書において「本件商標を出願した意図は、請求人の引用商標の周知性を自己の有利に不正に利用しようとするもの推察される。」(6頁25行乃至26行)と述べるのみであり、被請求人が不正の目的をもって本件商標について登録を受けたとの主張を何ら立証していないものである。

よって、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当するとの請求人の主張は理由がないものである。

4.以上のことは、本件商標に係る登録異議の申立て(異議2000‐90015)の異議の決定(乙第1号証)からも明らかである。

第5 当審の判断

1.請求人の営業活動及び引用商標について

(1)甲第2号証ないし甲第95号証(枝番を含む。)を総合すると以下の事実が認められる。

ア.請求人は、1927年(昭和2年)にレーヨン糸を生産して以来、デュポン社とナイロンに関する技術提携、ポリエステル繊維の生産等、合成繊維製造企業、あるいは総合化学企業として、我が国で屈指の企業であること。

イ.昭和46年に炭素繊維の生産を開始し、量産化に踏み出したこと。

ウ.請求人が取り扱う炭素繊維には、「トレカ」、「TORAYCA」の商標(引用商標)が使用されたこと。

エ.炭素繊維は、優れた強度、弾性率、耐熱性、軽さといった従来の繊維にはなかった特性を持つ繊維であり、請求人は、このような炭素繊維の特性を生かし、ゴルフシャフト、テニスラケット、釣り竿、自転車、レーサー用ヘルメットなどのスポーツ用品、航空機用部材、自動車用部材、建築材料、コンテナ、電子部品、医療材料などの産業用機器、傘、杖などの日用品等の原材料としての利用価値を研究開発したこと。

オ.「トレカ」、「TORAYCA」の商標を使用した炭素繊維は、米国をはじめとする外国には、航空機等の部材として輸出され、また、国内では、当初ゴルフシャフト、釣り竿等のスポーツ用品を中心として、その製造会社に使用されたが、その後、上記エ.に記載の商品の原材料に使用され、市場に出回っていること。

カ.請求人は、昭和51年以降今日に至るまで、自己の取り扱いに係る炭素繊維が、その優れた特性故に、各種のスポーツ用品、産業用機器、日用品等の複合材料としての利用価値を、新聞、雑誌、テレビ、インターネット等を通じて宣伝広告した結果、1980年代以降、その需要が増大したここと。

キ.1992年(平成4年)度の「PAN系炭素繊維」の国内売上高(輸出を含む)は、全体の41%強を占めるに至り(甲第4号証の2)、1995年(平成7年)度には世界最大の炭素繊維メーカーの座にあったこと(甲第22号証の6)。

ク.請求人の取り扱いに係る炭素繊維を使用した建造物の屋根・補強材に「トレカライトルーフ」、「トレカラミネート工法」、「トレカクロス工法」の各表示(甲第15ないし18号証)、シャープペンシルに「トレカシャープ」、傘に「トレカ」、ステッキに「トレカステッキ」、ゴルフ傘に「トレカ製」の各表示(甲第19号証)、自動車材料に他に素材の商標と共に「トレカ」の表示(甲第68号証)、コンクリートの補強筋等に「“トレカ”帯状筋」の表示(甲第77号証の4)、ヘルメットに「東レの炭素繊維トレカ」の表示(甲第82号証の1)、ゴルフシャフトに「TOREYCA」の表示(甲第83号証の2)、スキー用ポールに「東レのトレカを使用」の表示(甲第88号証)が使用されていること。

(2)前記(1)で認定した事実によれば、請求人は、我が国で最初に引用商標を使用した「炭素繊維」の量産化を開始し、「炭素繊維」の優れた強度、弾性率、耐熱性、軽さといった特性が、従来に存在しなかった優れた素材として、ゴルフシャフト、テニスラケット、釣り竿、自転車、レーサー用ヘルメットなどのスポーツ用品、航空機用部材、自動車用部材、建築材料、コンテナ、電子部品、医療材料などの産業用機器、傘、杖などの日用品等の商品の原材料として利用価値があることを宣伝広告した結果、請求人の取り扱いに係る「炭素繊維」は、国内にとどまらず、海外においても注目されたことが認められる。

また、請求人が取り扱う炭素繊維は、本件商標の登録出願から査定時までの間に、請求人が研究、開発した商品等の原材料として、実際に利用され、製造メーカー、ないし請求人自身がその商品を販売し、市場に出回っていたことが認められる。

(3)ところで、商品「炭素繊維」は、糸、繊維等商品の基礎材料として、あるいはこれを加工した半製品として取り引きされるのが一般的な取引形態ということができる。そして、請求人の取り扱いに係る炭素繊維の需要者も、その多くの場合が、外国の大手航空会社や国内のスポーツ用品製造メーカー、自動車製造メーカー等であることが認められる。

してみると、炭素繊維の需要者は、一般の消費者を対象とする商品でないことからすると、引用商標が請求人の取り扱いに係る商品「炭素繊維及びその製品」を表示するためのものとして、本件商標の登録出願時からその査定時まで継続して、炭素繊維を取り扱う同業者間、ないし上記したスポーツ用品、産業用機器など、炭素繊維を商品の原材料等として使用する製造メーカー等において広く認識されていたとしても、一般の消費者の間には、引用商標が請求人の取り扱いに係る「炭素繊維及びその製品」を表示するためのものとして、本件商標の登録出願時及び査定時に広く知られていたということはできないと判断するのが相当である。

確かに、前記1.(1)ク.で認定したとおり、甲第19号証(TORAY SHOP CATALOGUE)によれば、シャープペンシル、傘、ステッキなど一般の消費者が直接購入する商品に「トレカ」なる商標が使用されていることが認められるが、これだけでは引用商標が請求人の取り扱いに係る商品「炭素繊維ないしその製品」を表示するためのものとして、一般の消費者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

2.出所の混同(商標法第4条第1項第15号)について

(1)本件商標の商品の区分及び指定商品は、前記したとおり、第16類「紙製簡易買物袋,家庭用食品包装フイルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,雑誌,新聞,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,事務用又は家庭用ののり及び接着剤」及び第28類「囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,人形」とするものであるところ、上記商品は、いずれも主たる需要者を一般の消費者とするものと認められる。

してみると、引用商標の需要者は、前記したとおり、商品の製造メーカー等であるから、本件商標とはその需要者を著しく異にするばかりでなく、商品の流通経路等をも異にするものである。

また、本件商標の指定商品は、その原材料に炭素繊維が使用されるという証拠はないから、引用商標が使用される炭素繊維とは原材料と製品という関係にあるということもできないし、また、商品の質、用途等において異なるものである。

さらに、前記1.(3)で認定したように、引用商標は、請求人の取り扱いに係る「炭素繊維及びその製品」を表示するためのものとして、本件商標の出願時既に、一般の消費者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

(2)上記実情よりすると、本件商標をその指定商品について使用しても、その需要者は、引用商標が使用される炭素繊維との間に、商品の出所について混同を生ずるおそれはなかったものと判断するのが相当である。

3.品質の誤認(商標法第4条第1項第16号)について

前記2.で認定しとおり、本件商標の指定商品は、その原材料に炭素繊維が使用されているとの証拠はなく、また、引用商標が請求人の取り扱いに係る「炭素繊維及びその製品」を表示するためのものとして、本件商標の指定商品の需要者の間に広く認識されていなかったことからすると、本件商標に接するその需要者は、請求人の取り扱いに係る炭素繊維を想起、連想することは極めて少ないとみるのが相当である。

してみると、本件商標をその指定商品について使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないといわなければならない。

4.不正の目的(商標法第4条第1項第19号)について

本件商標の登録出願日である平成9年10月当時に、「トレカ」、「TOREYCA」の文字よりなり、「トレカ」の称呼を生ずる引用商標が、請求人の取り扱いに係る炭素繊維を表示するものとして、本件商標の指定商品を含めた商品、及び役務の分野を問わず全国的に著名であったとの証拠はなく、また、本件商標の出願が信義則に反してなされたとの証拠もない。

してみると、本件商標は、不正の目的をもってなされたものということはできない。

5.請求人の主張について

(1)請求人は、炭素繊維は、本件商標の指定商品も、炭素繊維を原材料として製造される可能性があるのであるから、本件商標がその指定商品に使用されるときは、商品の出所につき混同のおそれがある旨主張する。

しかしながら、前記認定のとおり、本件商標の登録出願時及び査定時に、引用商標は、本件商標の需要者を含めた一般の消費者の間に広く認識されていなかったものであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、請求人の「炭素繊維及びその製品」との間に、商品の出所を混同を生じさせるおそれはなかったものである。

(2)請求人は、炭素繊維は、多種多様な分野の商品に使用されており、本件商標の指定商品中、「写真立て,碁石,マージャンパイ,サイコロ,ダイスのコマ」等についても「炭素繊維」が使用される可能性がないというわけではない旨主張するが、本件商標の査定時に、本件商標の指定商品について、炭素繊維が原材料に使用されているとの証拠はなく、また、その需要者の間に引用商標が炭素繊維について使用される商標であるとの認識が極めて薄いものであったことは、前記したとおりであるから、商品の品質の誤認のおそれはなかったものというべきであり、かつ、現時点においても、商品の品質の誤認のおそれはないというのが相当である。

(3)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当することについて、商標審査基準を示し、種々述べるが、本件商標が全国的に著名でなかったこと、及び本件商標の出願につき、不正の目的があったと認めるに足りる証拠がないことは前記したとおりである。

(4)以上(1)ないし(3)に関する請求人の主張は理由がない。

6.むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第16号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものではない。

よって、結論のとおり審決する。

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