Trademark Appeal Case
称呼・外観の類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2001−60126(T2001−60126/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4065334号商標(以下「本件商標」という。)は、商標の構成を後掲Aに示すものとし、平成7年4月4日登録出願、指定商品を第29類「バークシャー種の豚を原材料とするウインナー」として、同9年10月3日に設定の登録がされたものである。
2 イ号標章
被請求人が商品「ウインナー(ソーセージ)」について使用するものとして、請求人の提示した標章(以下「イ号標章」という。)は、後掲Bに示すものである。
3 請求人の主張
請求人は、被請求人が商品「ウインナー(ソーセージ)」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するとの判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
(1)判定請求の必要性
(ア)請求人は、本件判定請求に係る本件商標の商標権者であり、その商標登録の概要は上記1のとおりである(甲第1号証ないし甲第2号証)。
(イ)被請求人が現在製造販売している商品「ウインナー」について使用するイ号標章は、本件商標権を侵害するものであるので、請求人は被請求人に対して、その旨の通告を行った(甲第4号証として、被請求人が現在製造販売している商品「ウインナー」の包装用袋現品を提出する。)。
(ウ)これに対して、請求人は被請求人から平成13年8月10日付で上記通告に対する回答を受領した。同回答において被請求人は、イ号標章は本件商標権を侵害しない旨主張するので(甲第5号証)、本件判定を求めるに至った。
(2)イ号標章の説明
被請求人は、平成10年4月頃よりイ号標章を使用した商品「ウインナー」(甲第4号証)を製造販売し、現在に至っている。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
(ア)本件商標の称呼、外観、観念について
(a)本件商標は、商品「ウインナー」用の縦長矩形の包装用袋の前面を示したものからなり、その上方約半分の部分が黒色で、下方約半分の部分が透明となっている。前記黒色部分の中央には極めて大きく「黒豚」の文字が配置され、その上方には小さな文字からなる「本格燻製仕立て」、また、その下方には前記「本格燻製仕立て」の文字よりやや大きな文字で「あらびきウインナー」の文字が配置されている。前記透明部分の下方の右側には「P」の欧文字及び「プリマハム」のカタカナ文字が配置され、下方左側はその図形中に「原料肉黒豚」の文字を置いた黒豚をモチーフにした図形が配置されている。よって、本件商標から生じる称呼は、「プリマハム」のカタ力ナ文字から「プリマハム」の称呼が生じる外に、その構成文字の大きさ、配置等からして「黒豚」、「黒豚あらびきウインナー」、「黒ラベル」の称呼も生じるとするのが自然である。
(b)次に、外観を見ると、上記のとおり、商品「ウインナー」用の縦長矩形の包装用袋の前面からなる図形商標であるところ、上方約半分の部分が黒色で、下方約半分の部分が透明となっており、前記黒色部分の中央には極めて大きく「黒豚」の文字が配置され、その下方の「あらびきウインナー」の文字と共に非常に強い印象を与え、更に黒豚をモチーフにした図形も構成要素として存在することから、これらの外観構成と相挨って、その内容物たる「黒豚を原材料とするウインナー」がより強く印象付けられるものといえる。
(c)また、観念を見ると、上記の特徴的な外観構成からして、「黒ラベル」、「黒豚」、「黒豚黒ラベル」、「黒ラベル黒豚」、「黒ラベルの黒豚あらびきウインナー」という意味を認知させるものである。
(d)なお、本件商標に係る商品は平成7年から販売され、請求人の主力商品の一つとして大々的に宣伝広告が行われた事実が存在し、その状況を示す資料として、平成8年度におけるテレビコマーシャル費用額の集計表を甲第6号証として提出する。これによれば、ほぼ全国において当該商品のテレビコマーシャルが行われ、その費用総額は約3.81億円に上るものである。
(e)更に、ここで考慮すべき重要事項として、次のことが挙げられる。
即ち、本件商標に係る商品が販売され、請求人の主力商品の一つとして大々的に宣伝広告が行われた平成7年当時において、商品「ウインナー」の包装用袋として、黒色をその前面の上方約半分に施した上に金線を施した例は皆無であったという事実が存在し、かつ、甲第3号証の商品カタログから明らかなとおり(特に裏面の説明書にあるとおり、販売店へもこの点のアピールを商品コンセプトとして提案している。)、この点を強調する宣伝広告が行われていた事実がある。
(イ)イ号標章の称呼、外観、観念について
(a)イ号標章は、商品「ウインナー」用の縦長矩形の包装用袋の前面を示したものからなり、その上方約半分の部分が黒色で、下方約半分の部分が透明となっている。前記黒色部分の中央には極めて大きく「黒豚」の文字が配置され、その下方には「あらびきウインナー」の文字が配置されている。また、「黒豚」の文字の上方には「BERKSHIRE PORK WIENER」の文字と黒豚をモチーフにした図形も構成要素として存在する。これらの構成要素の外には、「BERKSHIRE PORK WIENER」の文字がより小さい文字で両脇及び下方にも記載され、また、「黒豚」及び「あらびきウインナー」の文字の下方には、極めて小さい文字で「THIS WIENER MADE FROM 100% PURE BERKSHIRE PORK.WE SEND YOU ONE OF OUR BEST PRODUCTS.」の説明文と「THIS WIENER MADE FROM 100% PURE BERKSHIRE PORK.」の部分に対応するその日本語翻訳文「100%純粋なパークシャー種だけを原料に使用しています。」が小さな文字で配置されている。その他に、「JAS特級品」及び「要冷蔵10°C以下」等の表示部分も見られるが、イ号標章の商標の機能に対して影響を与えない部分であることは明らかである。そうすると、イ号標章から生じる称呼は、その構成文字の大きさ、配置等からして「黒豚」、「黒豚あらびきウインナー」、「黒ラベル」の称呼が生じるとするのが自然である。
(b)次に、外観を見ると、上記のとおり、商品「ウインナー」用の縦長矩形の包装用袋の前面からなる図形商標であるところ、上方約半分の部分が黒色で、下方約半分の部分が透明となっており、前記黒色部分の中央には極めて大きく「黒豚」の文字が配置され、その下方の「あらびきウインナー」の文字と共に非常に強い印象を与え、更に黒豚をモチーフにした図形も構成要素として存在することから、これらの外観構成と相俟って、その内容物たる「黒豚を原材料とするあらびきウインナー」がより強く印象付けられるものといえる。
(c)また、観念を見ると、上記の特徴的な外観構成からして、「黒ラベル」、「黒豚」、「黒豚黒ラベル」、「黒ラベル黒豚」、「黒ラベルの黒豚あらびきウインナー」という意味を認知させるものである。
(ウ)上記状況を踏まえて、本件商標とイ号標章との商標として類否判断の検討を行う。
(a)まず、両者の類否を対比検討するにあたり、その観察方法の基本条件を検討すると、(一)両者が現実に使用されている商品は、いずれも小分け包装されたウインナ−であり、その需要者は一般消費者特に主婦層である点で共通しており、通常の購入方法は、スーパーマーケットの陳列棚に置かれた商品をカートを引きながら1メートル前後の距離を保ちながら、立ち止まることなく、移動しながら観察して購入商品を決定するものである。即ち、いちいち個別の商品を当初から手にとって見比べるような詳細な観察方法が常に採用されるものではないことになる。また、このような状況で購入を検討するのであるから、冗長な称呼等を用いて取引されることを想定することは困難であり、商品包装に前例のない斬新な特徴があれば、この外観構成から受ける印象が極めて強い商品イメージを消費者に記憶させることになり、この外観構成が商品識別の重要な要素となることは自明である。(二)更に、スーパーマーケットの陳列欄に置かれた状態を考えると、通常は商品のアピールを考慮して商品の包装の正面を需要者に向けて立てて並べることになる。そうとすると、その形態が袋状のものであって平面で構成された底面を持つものではないので、必然的に底の部分は潰れることになり、その結果として、通常の取引状態において、両者の外観全体を完全な形態で常に把握できる状態では取引されていることを想定することは極めて困難である。
(b)これを前提に、両者の称呼を対比すると、本件商標の称呼は「黒豚あらびきウインナー」、「黒豚」、「黒ラベル」等であるの対して、イ号標章の称呼も「黒豚あらびきウインナー」、「黒豚」、「黒ラべル」等であるから、両者の称呼は同一となる。なお、本件商標からは「プリマハム」の称呼も生じることを否定するものではないが、イ号標章には本件商標における「プリマハム」に対応するような例えば「伊藤ハム」等のような、いわゆるハウスマークの表示が敢えて行われていないことからとすると、比較商標を時と処を違えて観察する離隔観察を主とする商標の類否判断においても、本件商標に関連する本件商標のシリーズ商標に係る商品であるとの出所混同を生じるものといえる。もちろん、時と処を同じにして観察する対比観察においてはなおさらその効果が生じることになる。
(c)次に、本件商標及びイ号標章の外観は、商品「ウインナー」用の縦長矩形の包装用袋の前面からなる図形商標であるところ、上方約半分の部分が黒色で、下方約半分の部分が透明となっており、前記黒色部分の中央には極めて大きく「黒豚」の文字が配置され、その下方の「あらびきウインナー」の文字と共に非常に強い印象を与え、更に豚をモチーフにした図形も構成要素として存在することからとすると、両者の外観構成の特徴部分に対する影響力が少ない構成要素中、配置位置に若干相違点が存在する程度に過ぎず、かつ、両者に採用されている黒以外の色彩の種類も同一である。そうすると、文字商標である商標「大森林」と商標「大林森」とは、外観において紛らわしい関係にあり、取引の状況によっては需要者が見誤る可能性があるとする「大森林事件」(最高裁平成4年9月22日第三小法廷判決)の判例からすれば、離隔観察であっても、また対比観察であっても、出所混同を生じる程に両者の外観は類似していると考えるのが自然である。
(d)更に、両者の観念を見ると、同じく「黒ラベルの黒豚あらびきウインナー」、「黒ラベル」、「黒豚」等という意味を認知させるものであるから、両者の観念は類似する。
(エ)本件商標の指定商品とイ号標章の使用商品
本件商標の指定商品は、「バークシャー種の豚を原材料とするウインナー」である。これに対し、イ号標章の使用商品は、そのイ号標章の記載から明らかなとおり、「バークシャー種の豚を原材料とするウインナー」である。よって、本件商標の指定商品とイ号標章の使用商品とは同一の商品である。
(オ)以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する標章であり、その使用商品も本件商標の指定商品と同一であり、イ号標章を使用する当該商品の包装用袋にはこの外に商標としての機能を発揮していると認められる部分が存在しないことから、被請求人が商品「ウインナー」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
(1)本件商標とイ号標章の対比
(ア)本件商標について
a.本件商標の要部
本件商標の態様は甲第1号証に示されるとおりであり、その構成中には、「黒豚」、「あらびきウインナー」、「原料肉黒豚」、「本格燻製仕立て」、「プリマハム」の各文字、欧文字の「P」を象った図形及び豚の図形を見ることができる。指定商品は国際分類第29類の商品「バークシャー種の豚を原材料とするウインナー」(以下「本件指定商品」という。)である。
本件商標の構成中、「黒豚」、「あらびきウインナー」、「原料肉黒豚」、「本格燻製仕立て」の各文字及び豚の図形は、本件指定商品の原材料、内容、品質を表示する付記的な表示であり、請求人が独占排他的に使用できる文字及び図形ではない。すなわち、本件商標の要部は「プリマハム」の文字及び「P」の図形のみであり、本件商標の効力の範囲にイ号標章が属するか否かを判断する場合には、上記要部とイ号標章を比較検討しなければならない。
b.本件商標の称呼
本件商標からは、要部の一である「プリマハム」の文字から「プリマハム」の称呼のみが生じるのであって、その他の付記的な表示からは、イ号標章の称呼と比較すべき称呼は生じない。
c.本件商標の観念
本件商標から生じる観念は、「プリマハムの黒豚ウインナ一」のみである。この点について請求人は、本件商標からは「黒ラベル」、「黒豚」、「黒豚黒ラベル」、「黒ラベル黒豚」、「黒ラベルの黒豚あらびきウインナー」等の観念が生じると主張しているが、本件商標はバークシャー種の豚(黒豚)を原材料としたウインナーについて使用されるものであることから、商標を構成する各文字から把握することのできる「黒豚」、「黒豚あらびきウインナー」等の意味合いは、本件商標が附された商品を特定するために把握される観念ではなく、単に商品の内容を把握させるに過ぎないものである。すなわち、それらは商標の類否を判断する際に参酌される「商標から生じる観念」ではない。
また、ラベルとは「広告や標識のためにはる小さな紙片」(株式会社三省堂発行「大辞林」)を意味するものであるところ、商標の構成中にはラベルを想起させる図形または文字などは一切ないので、本件商標からは「黒ラベル」なる観念が想起されることはない。
従って、本件商標からは「黒ラベル」、「黒豚」、「黒豚黒ラベル」、「黒ラベル黒豚」、「黒ラベルの黒豚あらびきウインナー」等の観念は生じない。
なお、商標全体の上半分の色彩である「黒色」は、「黒豚」を原材料とする本件指定商品との関係において、商品の品質を暗示的に表示したものであり、本件商標の独占排他的効力は、「黒色」という色彩には及ばない。
d.本件商標の外観
本件商標の外観は甲第1号証の登録公報に示されるとおりであり、請求人が本件判定請求書において述べる本件商標の外観の説明については、被請求人もこれを否定するところではない。
(イ)イ号標章について
請求人は、イ号標章を特定すべく甲第4号証を提出し、袋全体が恰も自他商品識別標識であるかの如くその細部について述べているが、袋のデザイン中には、商品「黒豚あらびきウインナー」の袋として使用した場合に自他商品識別標識として機能し得る文字、図形、色彩等は含まれていない。
従って、甲第4号証に見ることのできる包装用袋のデザインは本件商標と類似するか否かを判断する対象にはならないと考えるが、被請求人は、この点については特に争わず、甲第4号証の包装用袋そのものをイ号標章と看倣す。
a.イ号標章の称呼及び観念
イ号標章の構成中には、「BERKSHIRE PORK WIENER」、「黒豚」、「あらびきウインナー」等の文字及び豚の図形を見ることができるが、それらはいずれも内容物である「黒豚を原材料としたあらびきウインナー」を表示するものであり、自他商品識別標識として機能するものではない。商標の称呼及び観念は、その構成中自他商品識別標識として機能する箇所、すなわち要部から生じるものであるので、イ号標章からは、自他商品を識別するものとしての称呼及び観念は生じないと判断して然るべきである。
仮に、イ号標章を商品「黒豚を原材料とするあらびきウインナー」について商標登録出願したとしても、商標法第3条第1項第3号該当の理由により拒絶されるものと思料する。
b.イ号標章の外観
イ号標章の外観は甲第4号証のとおりであり、請求人が本件判定請求書において述べるイ号標章の外観の説明については、被請求人もこれを否定するところではない。
なお、本件商標の上下には金色または黄土色様の帯が配されているが、イ号標章の上下にはそのような帯はない。また、イ号標章には、本件商標には表示されていない英文が黒色部分の両側及び中央上部に扇状に配されている。このようなイ号標章と本件商標の外観上の差異は、外観全体の印象を異なるものにしている。
(ウ)本件商標とイ号標章の類否について
本件商標は、その構成中に、赤色で書かれた「プリマハム」の文字及び「P」の図形を有するがゆえに自他商品識別標識として機能するものであり、その構成中「本格燻製仕立て」、「黒豚」、「あらびきウインナー」、「原料肉黒豚」の各文字、商標左下部分に配された豚の図形は自他商品識別標識として機能しない。この点については、請求人も請求書において「...大きく「黒豚」の文字が配置され、その下方の「あらびきウインナー」の文字と共に非常に強い印象を与え、更に黒豚をモチーフにした図形も構成要素として存在することから、これらの外観構成と相俟って、その内容物たる「黒豚を原材料とするウインナー」をより強く印象付けることが...」と主張しているように、請求人自らも認めるところである。
ゆえに、本件商標は、その要部から「プリマハム」の称呼が生じ、「プリマハムの黒豚あちびきウインナー」という観念を把握することができる。
これに対して、イ号標章は、黒豚を原材料とするあらびきウインナーについて自他商品識別標識として機能する文字又は図形を構成中に含んでおらず、これからは本件商標と対比すべき称呼及び観念は生じない。
従って、本件商標とイ号標章は、称呼、観念のいずれも非類似である。
また、外観についても、本件商標及びイ号標章の構成中、自他商品識別標識として機能し得ない「黒豚」、「あらびきウインナー」等の文字及び豚の図形を比較することは、両者の外観の類否を判断する場合には意味がなく、比較すべきは、本件商標の外観上の特徴を有する「プリマハム」の文字及び「P」の図形とイ号標章である。しかし、イ号標章にはそもそも自他商品識別標識として機能する文字が含まれていないので、本件商標の外観を比較する対象にはならない。
従って、本件商標とイ号標章は外観非類似であるといわざるを得ない。
なお、請求人は、本件商標とイ号標章の類否に関する主張全般において、登録後の本件商標の使用により商標の要部以外の付記的な表示である文字、図形及び色彩を含めた本件商標全体にまで独占排他権が及んでいるかの如く主張している。
しかし、既に述べたとおり、本件商標は「プリマハム」の文字及び「P」の図形を有するがゆえに登録されたものであり、その構成中の付記的な表示に排他的効力が及ぶことはなく、登録後にどれだけ本件商標を使用しても、本件商標の効力の範囲は「プリマハム」の文字及び「P」の図形に止まるものである。
そして、乙第1号証から明らかなとおり、現実の業界においても、本件商標の付記的な表示は請求人の商品を表示するものとは認識され得ない。
すなわち、乙第1号証は、複数の同業者(請求人を含む。)が製造販売する商品包装用袋を写した写真である。これからは、商品「黒豚を原材料とするウインナー」について「黒豚」の文字と豚の図形が使用されていること、及び各精肉メーカーが「黒色」を包装用袋の基調色とした商品を製造販売していることを確認することができる。
因みに、乙第1号証写真のうち、当該件外製造者の業務に係る商品「黒豚ウインナー」は、包装用袋の表装に「黒豚」の文字と5つの豚の図形が表示されており、或いは、件外各社の包装用袋は、そのほとんどが半分程度が透明であり、内容物が確認できるデザインである。この状況よりして、本件商標又はイ号標章と同様に下半分が透明である包装用袋は、商品「ウインナー」についてごくありふれた袋の態様であることが分かる。
このように、各社の商品包装の態様を見てみれば、本件商標のみが有する特徴であるかの如く請求人が主張する本件商標の構成要素は、業界においてごく普通に見られる商品包装用袋の態様と共通するありふれたものであり、「黒色」という色彩、「黒豚」の文字及び「豚の図形」は、請求人が使用する本件商標を特定する構成要素とはなり得ないことが明らかである。
従って、請求人が本件商標をどれだけ使用しようと、その要部以外の付記的な表示である文字、図形及び色彩に、独占排他権が及ぶことはない。
(エ)まとめ
以上のとおり、本件商標の要部は「プリマハム」の文字と「P」の図形であり、本件商標とイ号標章は、称呼、外観、観念のいずれも非類似の商標である。従って、イ号標章は本件商標権の効力の範囲には属さない。
5 当審の判断
本件判定は、被請求人の使用するイ号標章が本件商標の商標権の効力(禁止権)の範囲に属するものか否か、すなわち、イ号標章が本件商標と類似のものか否かを判断することにある。そして、本件における請求人・被請求人両当事者の主張の論点は、本件商標を構成する文字及び図形又はその全体の配色・配置等がその出所識別の標識(要部)として機能し得るものか否か、また、その結果、イ号標章と本件商標とが紛れ得るものか否かの点にある。
請求人は、被請求人がウインナー(ソーセージ)について使用するイ号標章は、請求人所有に係る本件商標と類似のものであり、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである旨述べ、証拠(甲号証)を提出しているので、被請求人提出の証拠(乙号証)も参酌しつつ、その主張の当否について、以下、検討する。なお、両当事者が本件商標又はイ号標章に係る商品として用いる「ウインナー」の表示は、その一般名と認められる「ウインナーソーセージ」(東洋経済新報社発行「商品大辞典」より)とするのがより適切であるから、以下、この表示を「ウインナーソーセージ」と改め、審理する。
(1)本件商標の構成とその要部について
本件商標は、その構成後掲Aに示すとおり、包装袋の前面ないしは表側(おもてがわ)の如き全形商標、すなわち、その上・下部に黄色の縁取りを施した縦長矩形の上部ほぼ5分の2位の幅で横一杯に黒塗りした矩形内中央位置に大きく「黒豚」の文字を左横向きに白抜きし、同文字の上・下部にそれぞれ赤色及び黄色を用いて「本格燻製仕立て」、「あらびきウインナー」の各文字をそれぞれ横書きし、さらに、前記縦長矩形の左端最下辺には、頭部を右に向け、その胴部一杯に「原料肉黒豚」の文字を白抜きしかつその外輪郭に黄色の縁取りを施した黒塗りの豚の小図形を、同縦長矩形の右端下方位置に、その内部を欧文字の「P」字形様に白抜きした横長小図形及び横書きした「プリマハム」の片仮名文字を連続させるように共に赤色により表示し、また、これらを除いた余白部分は透明状に打ち抜いてなるものであって、これら構成の全体からは、恰も一定幅を透明状にした縦長の包装袋の前面ないしは表側(おもてがわ)の如き形状のいわゆる全形商標と認められる。
そして、本件商標は、その指定商品を第29類「バークシャー種の豚を原材料とするウインナー」とすることは前述のとおりである。
しかして、本件商標構成中の「黒豚」、「本格燻製仕立て」、「あらびきウインナー」及び「原料肉黒豚」の各文字並びに黒塗りの豚の小図形部分は、その指定商品である「バークシャー種の豚を原材料とするウインナー」、すなわち、当該ウインナーソーセージの原材料、品質又は生産の方法を表示したものと容易に理解されるものであって、この種の畜肉製品の製造に携わる事業者であれば、何人もその表示を必要とし又は欲する部類のものといえるから、それらをもって自他商品の識別標識とみるのは到底困難といわなければならない。
次いで、本件商標にあって、黒色を基調とする全体の配色並びに文字及び図形の配色・配置等は、この種の個品包装され市場の流通に供される畜肉製品一般に屡々見受けられる包装形態・包装デザインの一類型であって(被請求人提出の乙第1号証「メーカー各社の製品写真」参照)、その組み合わせ又は全体の配色・配置等に格別特異とする点はなく、また、請求人主張の全趣旨よりしても、それら構成のものが請求人に係る商品の出所識別の標識として機能し得るとする点は具体的に明らかでなく、その証拠も見出せない。そして、前記各部を除いた余白部分は、密封包装される被包装物(内容物)を視認可能な状態に置くべく透明状に設えたものであることを容易に推測させるものであるから、結局、これら構成の全体からは、前記個品包装用袋の前面ないしは表側(おもてがわ)の包装デザインとして把握されるに止まり、それらをもって当該商品の出所識別の標識(要部)とは認識し得ないものといわなければならない。
そして、本件商標構成中の前記赤色の(「P」字形様に白抜きした)横長小図形及び「プリマハム」の片仮名文字部分は、その原材料、品質又は生産の方法等当該商品の品質特性とは直接関連性がなく、特に、「プリマハム」の文字部分は、当該製品の製造・販売に関わる業務主体である請求人「プリマハム株式会社」(商標権者)を直ちに想起・認識させるものであって、これら文字及び図形の各部分は、当該商品について唯一その出所識別の標識と目される部分というべく、本件商標の要部は、この部分にあるとみるのが取引の経験則に照らし相当である。
以上のとおり、本件商標は、全体として当該ウインナーソーセージに係る個品包装用袋の包装デザインの一つとみて差し支えなく、これに表示された文字又は図形のうち、前記赤色の(「P」字形様に白抜きした)横長小図形及び「プリマハム」の文字部分を除いたそれ以外の各部分(余白部分を含む。)は、いずれも当該商品の品質特性を表示し又はその包装デザインを表現するに止まり、出所識別の標識(要部)とは認識し得ないものであって、類否判断の対象とはなし得ないものというべきである。そして、ほかに、この認定を覆すに足りる証拠はない。
請求人は、本件商標からは「黒ラベル」「黒豚」「黒豚黒ラベル」「黒ラベル黒豚」「黒ラベルの黒豚あらびきウインナー」等の観念が生ずる旨述べているが、「黒豚」(くろぶた)が「バークシャー種の豚の俗称」(株式会社三省堂発行「大辞林」より)として、一般に理解されかつ普通に用いられる実情にあることはすでに顕著な事実であって、その指定商品である「バークシャー種の豚を原材料とする・・・」の食品素材(原料)を表示したにすぎず、また、ラベルとは、一般に「広告や標識のためにはる小さな紙片。レッテル。レーベル。」(前出「大辞林」より)であって、一定の目印(標識)の下に店頭に陳列される商品等に付される標識片と理解されるところ、本件商標中には、その種の標識片とみられる図形又は文字などの表示はなく、ほかに、本件商標が「黒ラベル」の如き観念・称呼をもって取引に資されるとする取引事情は見出せないから、結局、本件商標より「黒ラベル」なる観念が生ずるとする合理的理由はなく、該事実は客観的に明らかでないから、この点を述べる請求人の主張は採用することができない。
(2)イ号標章の構成と要部について
被請求人がウインナーソーセージについて使用するイ号標章(甲第4号証)は、縦長矩形のほぼ下半分を透明にした合成樹脂製の個品包装用袋の前面ないしは表側(おもてがわ)の全形商標と認められる。そして、この包装用袋が当該ウインナーソーセージの個品包装に用いられるものであり、また、その前面ないしは表側(おもてがわ)の全形をイ号標章とする点については、両当事者間に争いはない。
しかして、イ号標章は、縦長矩形のほぼ上半分を黒色に塗りつぶし、その横長矩形内中央位置に、「黒豚」及び「あらびきウインナー」の各文字を前者は大きく、後者は小さめにそれぞれ横書き風に白抜きに表し、これら文字の上部には、金色を色調として、それぞれ、頭部を左に向けた豚の小図形及びその左右に蔓状の図柄を表し、また、これら豚の小図形等を上から冠する如く、金色の縁取りを有するやや大きめの黒色文字による「BERKSHIRE PORK WIENER」の欧文字を弧状に配し、さらに、これら文字・図形の下部には、極小の金色文字による「THIS WIENER MADE FROM 100% PURE BERKSHIRE PORK.WE SEND YOU ONE OF OUR BEST PRODUCTS.」、「THIS WIENER MADE FROM 100% PURE BERKSHIRE PORK.」の各欧文及び「100%純粋なバークシャー種だけを原料に使用しています。」の邦文を白抜きに表示し、また、さらに、これら横長矩形の左右両辺並びに前記縦長矩形の最下辺には、いずれも金色文字による「BERKSHIRE PORK WIENER」の欧文字をそれぞれ縦書き又は横書きに配し、同縦長矩形の右下方位置に、それぞれ、「JAS特級品」、「要冷蔵10°C以下」及び「品質保持期限」等に関する文字を配してなり、これら文字及び図形ないしは彩色した部分以外は透明状に打ち抜かれているものである。
そして、イ号標章構成中の前記文字及び図形の各部分は、全て当該ウインナーソーセージに係る原材料、品質又は生産の方法を具体的に表示し又はその品質特性に関して縷々説明し或いは所定の規格品(JAS)であること、さらには、特に意味のない装飾的図柄としか認識し得ないものであって、それら以外の何ものをも想起させるものでなく、また、この種畜肉製品の製造に携わる事業者であれば、何人もその表示を必要とし又は欲する部類のものといえるから、それらをもって自他商品の識別標識とみるのは到底困難といわなければならない。
また、イ号標章にあって、黒色を基調とする配色、文字及び図形の配置等は、この種個品包装され流通に供される畜肉製品一般に屡々見受けられる部類のものであって、その組み合わせ又は配色構成自体に格別特徴とすべき点は見出せない。そして、これらを除いた透明状の打ち抜き部分は、密封包装される被包装物(内容物)を視認可能な状態に置くべく透明状に設えたものであることを示すものであるから、結局、これら構成の全体からは、前記個品包装用袋の前面ないしは表側(おもてがわ)の包装デザインとして理解されるに止まり、それら配色、文字及び図形の配置等をもって当該商品の出所識別の標識(要部)とは認識し得ないものといわなければならない。
以上のとおり、イ号標章は、全体として本件商品に係る個品包装用袋の包装デザインの一つとみて差し支えなく、これに表示された文字又は図形の各部分は、いずれも当該商品の品質特性を表示し又はその包装デザインを表現するに止まり、出所識別の標識(要部)としての機能を発揮し得るものでないから、結局、イ号標章は、類否判断の対象とすべき要部を有しないもの、すなわち、それ自体商標として認識し得ないものというべきである。そして、ほかに、この認定を覆すに足りる証拠はない。
(3)本件商標とイ号標章との類否について
本件商標は、その要部を前記「P」字形様に白抜きした赤色の横長小図形及び同図形右側に接するように赤色で横書きされた「プリマハム」の文字部分とするものであり、これを除いたその余の構成各部は、いずれも当該商品の品質特性を表示し又はその包装デザインを表現するに止まり、出所識別の標識(要部)とは認識し得ないものであって、商標の類否判断の対象とはなし得ないものであること前記認定のとおりである。
他方、イ号標章は、構成各部並びにその全体構成よりして当該商品の品質特性を表示し又はその包装デザインを表現したにすぎず、全体として自他商品の識別標識(商標)とは認識し得ないものであって、類否判断の対象とすべき要部を有しないものであること前記認定のとおりである。
そうすると、本件商標とイ号標章とは、その要部において相互に共通する点はなく、また、その外観、観念、称呼等により取引者に与える印象、記憶、連想等を総合し、かつ、それら商品の具体的な取引状況に照らし全体的に考察しても、なお、両者は、その出所について混同を生ずるおそれのない互いに別異のものといわなければならない。
してみれば、イ号標章は、請求人に係る商品(ウインナーソーセージ)との共通事情を考慮するとしても、なお、本件商標と類似のものということはできない。
請求人は、両当事者に係るウインナーソーセージは共に小分け包装されていて、その需要者である一般消費者特に主婦層にあっては、購入商品を決定するに当たり詳細な観察方法はとられない取引状況であるとの点を前提に、両者を時と処を違えて離隔観察に依った場合、イ号標章は本件商標に関連するシリーズ商品の如く出所混同を生ずるものであり、また、対比観察によった場合も同様である旨述べ、「大森林事件」(最高裁判所平成4年9月22日第三小法廷判決)を引用しているが、一般にこの種商品の需要者が商品の購買・選択に当たって詳細な観察方法を経ないまま購入するとする点は甚だ疑問であって、むしろ、需要者は事情の許す限り、当該商品に表示される商標、価格は勿論のこと、その品質(原材料等)・メーカー(製造者)等の表示を具に視認し選択指標とすることが通例というべきであり、また、イ号標章は、前記した同種商品の取引事情(乙第1号証)等よりして、需要者をして包装デザインの一類型としか認識されないとした前記認定を相当とするものであって、さらに、引用判決は、商標自体の構成等よりして本件とは事案を異にするものであって、本件判定の判断基準とするのは適切でないから、結局、これらの点を述べる請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。
このほか、イ号標章が本件商標と類似し又は紛れるとする旨述べる請求人の主張は、この種商品の需要者一般の観察力(注意力)、前記取引の実情等を過小評価し又は軽視するものであって妥当でなく、前記判断を覆すことはできない。
(4)結語
以上のとおり、被請求人がウインナーソーセージについて使用するイ号標章は、本件商標と類似のものということはできないから、結局、イ号標章は、本件商標の商標権の効力(禁止権)の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
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