sokuhyo

Trademark Appeal Case

薬剤と医療補助品の区分

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第31206号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第1924681号商標(以下、「本件商標」という。)は、「INTEGRAN」と「インテグラン」の文字を二段に横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和59年7月10日に登録出願、同62年1月28日に設定登録、その後、平成9年1月30日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものであるが、指定商品中の「のり及び接着剤」については、ー部商品の取消審判が確定し、その取消の登録が平成7年8月22日になされているものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の指定商品中『薬剤』については、その登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を下記の通り述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第4号証を提出している。

(1)請求の理由

被請求人は、本件商標を、その指定商品中「薬剤」については継続して3年以上日本国内において使用していない。また、本件商標について専用使用権者は存在せず(甲第1号証)、通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。

したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品中、上記商品について使用されていないものである。

よって、本件商標は、商標法第50条の規定に該当し、その登録に係る指定商品中の上述の商品について登録を取消されるべきである。

(2)平成11年1月29日付答弁に対する弁駁

(イ)被請求人は答弁書において、本件審判請求日前3年以内に本件商標をその指定商品中「薬剤」につき使用している旨主張し、その証拠として乙第1号証ないし乙第3号証の3を提出している。

しかしながら、本件商標が使用されたとされる乙第2号証ないし乙第3号証の3記載の商品「吸収性局所コラーゲン止血剤」(以下、「本件使用商品」という)は、以下のとおり、本件審判請求にかかる指定商品「薬剤」には該当せず、したがって、本件商標は本件審判請求にかかる指定商品「薬剤」については使用されていない。

(ロ)本件審判請求にかかる指定商品「薬剤」は、昭和34年法商品区分における包括概念であり、同概念については、特許庁発行の「商品区分解説」(甲第2号証、昭和35年6月1日初版、昭和55年4月7日改訂版)において説明されているとおりである。

すなわち、上記「商品区分解説」によれば、「薬剤」とは、(a)薬事法(昭和35年法律第145号)の規定に基づく”医薬品”の大部分及び(b)同法にいう”医薬部外品”のー部、とされている。さらに同解説は、「薬事法の定義による”医薬品“のうち、医療補助品という概念に属するものは“薬剤”の概念には含まれない」としている。

(ハ)ところで、被請求人提出の乙第2号証ないし乙第3号証の3によれば、本件使用商品は、次のような特徴を有するものである。

(a)形状は綿状に紡糸加工したものであり、また、綿状のものとこれを薄く延ばしたシートタイプのものがあること。

(b)「医療用具製造承認」を受けていること(医療用具製造承認番号20700BZZO0468000)。

(c)本件使用商品を「医療用具」と表示していること。

(d)「特定保険医療材料」として保険適用が認められていること。

(e)本件使用商品は、学術論文等においては、「止血材」と表現されていること。

(f)使用方法は適当量を乾燥状態のまま出血面に適用し、上から圧迫するものであること。

(g)特性として、「吸水性に優れ、さらに血液も速やかに吸収すること。

(h)綿繊維構造であること、また、本件使用商品を示す写真より、本件使用商品が「脱脂綿」と形状等が極めて類似していること。

本件使用商品は、以上のような特徴をもつものであるが、このうち、上記(a)ないし(e)からは、本件使用商品が薬剤というよりは材料的な商品であることが明らかであり、(f)ないし(h)からは、その性質・使用方法・使用目的等が脱脂綿と酷似していることが明らかである。

(ニ)さらに、上記の特徴を有する本件使用商品が、本件審判の対象である指定商品「薬剤」の概念に属するか否かを検討する。

まず、前記「商品区分解説」が示すとおり、本件商標の登録において使用されている用語である「薬剤」の概念には、「医療補助品」という概念に属する商品は含まれないこと前述のとおりである。しかして、同「商品区分解説」(甲第2号証)10頁は、「医療補助品」の概念には、「(3)医療材料」が含まれ、この(3)には、専ら医師が使用する医療関係品のうち材料的なものであって薬剤でないものが含まれる旨述べ、さらに「ガーゼ」、「脱脂綿」は、医師が使用する場合も医療補助品の概念に属すると規定している。

そこで、本件使用商品についてみると、前記(3)の表に示す特徴(b)から(e)のとおり、本件使用商品は商品カタログ等において「医療用具」、「医療材料」または「止血材」と表示されており、それが「医療関係品のうち材料的なもの」であることは明らかである。すなわち、本件使用商品は、本件商標が登録に際して用いられた商品区分及びその概念によれば、「医療補助品」に属することが明白である。

(ホ)さらに、同「商品区分解説」7頁は、「薬事法の定義によれば、“医薬品”の中には通常、衛生用品と考えられる『ガーゼ』、『脱脂綿』等も入るが、この類には、医療補助品という概念があるので、これらは薬剤には含まれない」と明示し、「ガーゼ、脱脂綿」をとくに具体例として挙げ、これらは、「薬剤」ではなく「医療補助品」の範囲に含まれることを確認している。しかして、前記(ハ)に示す特徴(a)、(f)、(g)、(h)から明らかなように、本件使用商品は、「商品区分解説」例示の「脱脂綿」と同等の形状であって、その機能、使用方法、使用目的等においても同様である。したがって、この観点からも、本件使用商品は、「ガーゼ」、「脱脂綿」と同様に「医療補助品」の概念に属する商品であり、上述のとおり「薬剤」の概念からは「医療補助品」の概念に属するものは除外されるから、「薬剤」の概念には属しないことが明らかである。

(ヘ)なお、特許庁のホームページにおいて公開されている商品・役務名リストにおいて、商品「患部の止血および生体組織の復元を助ける医療用補助材」が、昭和34年法商品区分における「医療補助品」を示す「01C01」の類似群に属するものとされている(甲第3号証)。この商品は、本件使用商品と実質的にほぼ同一の商品と考えられるから、これによっても、本件使用商品が「医療補助品」に属することは疑いない。

(ト)以上詳述したとおり、被請求人は、本件商標が、本件審判請求にかかる指定商品「薬剤」について使用していることを証明していない。

(3)平成11年9月7日付け答弁に対する第二弁駁

(イ)被請求人は、請求人も、本件商品と「脱脂綿・ガーゼ」との「効果の違い」、「材料の違い」「出血部に働きかける作用の違い」、「需要者の違い」、「価格に違い」を述べ「請求人が本件商標と脱脂綿・ガーゼを同一視している点」に本件商品の商品の帰属に関する誤りがあると主張している。

しかしながら、請求人も、本件商品と「脱脂綿・ガーゼ」に「材料的相違・作用的相違・需要着層の相違及び価格の相違」があることは当然に認めるところであり、平成11年6月17日付弁駁書(第1)(以下「第1弁駁書」という。)も、これらの相違点を前提として論じていることに留意されたい。

さらに言えば、被請求人が指摘する相違点を考慮しても、第1弁駁書で指摘した本件商品の「綿状及びシートタイプ」の形状、「出血面に適用し、上から圧迫する」という使用方法及び次に述べる「本件商品の止血メカニズムにおける役割」より考えれば、本件商品が商標法上「医療補助品」の範疇に属することは明らかである。

(ロ)止血メカニズムにおける本件商品の役割からの検討

止血のメカニズムは、傷口の露出したコラーゲンに血小板が粘着し、この粘着した血小板が「血小板血栓」を作り、さらに「凝固血栓」を作って最終的止血がなされる(乙第4号証)。

この止血メカニズムにおいて、コラーゲンを原材料とする本件商品は、「血小板血栓」の形成を促すものにすぎず、つまりは、本件商品の使用によってなされる止血作用も血小板の自助作用によって行なわれるものに過ぎない。(このような本件商品の作用は、後述する先登録例に係る指定商品「生体の組織の復元を助ける」もの「01C01」に過ぎない。)つまりは、本件商品を用いてなされる止血は、何らの処置をも施さない止血や脱脂綿等を使用して行う止血と同様に、結局は血小板の自助作用によってなされるものであり、体内組織を積極的に変化させるというような薬剤的な要素を持つものではない。

以上のような本件商品の作用を考えるならば、商標法上の商品帰属を考える上において、本件商品は「止血のための医療用特殊材料」と表現したほうが正確であり、やはり商標法上は「医療補助品」の概念に属すると考えるのが妥当である。

(ハ)被請求人は、「本商品は通常の医薬品と全く同様に、添付文書(乙第2号証)が包装容器ごとに入れられており、種々の必要情報が使用者たる医師に伝えられるものとなっている。」と述べている。しかしながら、「医療補助品」の範疇に属する商品中には、販売の際にかかる添付文書が付されるものは多く、かかる添付文書の有無が商標法上の「薬剤」か「医療補助品」かを決定するメルクマールとなるものではなく、上記主張は本件商品が「薬剤」の範疇に属する理由とはならない。

(ニ)被請求人は、第2答弁書中において本件商品が薬事法上「医療用具」に属することとなった経緯を、種々述べている。ここでまず、商標法及び薬事法上の定義の関係について見るに、商標法でいう「薬剤」とは薬事法上の定義とやや異なっており「ガーゼ」、「脱脂綿」のような材料的な医療補助品を含まない点で薬事法より狭い。

被請求人は、本件商品との競業品が薬事法上の「医薬品」とされていることを理由に、本件商品も本来は薬事法上の「医薬品」であり、商標法上の「薬剤」の範疇に属すること、すなわち「医療補助品」の範疇には属しないことを主張しているように思われる。

しかしながら、上述のとおり商標法上の定義と薬事法上の定義が異なる以上、本件商品が薬事法上「医薬品」か否か自体は、本件商品が商標法上如何なる概念の商品群に属するかを決定する上において特に関連するものではない。さらにいえば、請求人が第1弁駁書で主張するところは、その経緯はどうあれ、現在、本件商品が薬事法上「医療用具」とされており、保険適用上「特定保険医療材料」とされている事実である。すなわち、その経緯の如何は別にして、薬事法および保険適用上、材料的なものとして捉えられ「医療用具」とされていること(若しくはその可能性があること)は事実であり、したがって、薬事法が商標法よりも広く材料的な医療補助的商品までも「医薬品」としていることに鑑みれば、薬事法で「医療材料」とされている本件商品はやはり、商標法上も「医療補助品」であるといわなければならない。

(ホ)被請求人は甲第3号証の「患部の止血及び生体組織の復元を助ける医療用補助材」の商品が「01C01」の類似群コードを付されている点について、「当該商品が具体的に如何なるものであるか不明であって、かつ審査における「事例に過ぎないものであることから、本商品の帰属を審判において個別具体的に議論している本件とは直接関係のない事項である」旨主張する。しかしながら、対世的効力を有する商標権の権利範囲は、法上、その表示のみから決定されるのが原則であり、上記指定商品の表示から見て、本件商品が「医療補助品」中の「01C01」に属することは、明らかである。また、被請求人は、「審査における」事例にすぎないものであることから、(略)本件とは直接関係のない事項である」とも主張するが、行政主体たる特許庁が統ー的な判断をすることは法上の平等原則より当然の責務である。さらに、上記で述べた本件商品の作用から、「患部の止血及び生体組織の復元を助ける医療用補助材」なる商品が本件商品と類似の商品であることは明らかであり、したがって、このような事実に鑑みても本件商品は「医療補助品「01CO1」の範疇に属すると考えるのが妥当である。

(ヘ)被請求人は「本商品の原材料はウシの真皮由来のアテロコラーゲンである。即ち、コラーゲンの血液凝固を促進するという生物学的活性を保持したまま、抗原性をできるだけ低減させたタンパク質である(乙第3号証の3、14頁)。」「(第2答弁書5頁3)と主張して、本件商品の原材料が「アテロコラーゲン」であることを、本件商品が「薬剤」の範疇に属する理由としている。しかしながら、原材料のみから商標法上の商品帰属を決定することはなく、特許庁の登録例においても「コラーゲンを含浸させた移植用布帛」は「医療用機械器具(10D01)」の範疇に属するとされている(甲第4号証)。すなわち、本件商品の原材料がアテロコラーゲンであることは、本件商品が「薬剤」に含まれるとする理由にはならない。

(ト)被請求人は、「本商品の最終需要者は医師、特に外科領域の専門医に限られる。したがって、本商品は完全な医家向けの商品であるとして本件商品が「薬剤」の範疇に属することを主張している(第2答弁書5頁4)。しかしながら、請求人が第1弁駁書でも述べたとおり、商標法においては「専ら医師が使用する商品も医療補助品の概念に含まれる」ことに鑑みれば、被請求人の上記主張に理由はない。

(チ)被請求人は、第2答弁書中において「GRFグルー」なる商品を具体例としてあげ(答弁書第6頁5)、その形態が溶液状であることを理由に、薬事法上同じ範疇に属する本件商品も商標法上「薬剤」に属すると述べている。しかしながら、「GRFグル−」なる商品を本件商品と同列に論じる理由として、薬事法上本件と同じ範疇に属することのみを主張するにとどまり、何ら証拠がない。また、「GRFグルー」及び「ヘリテン」なる商品が溶液状、粉状であることを主張しているが、本件で争われているのは本件商品「インテグラン」であり、本件商品の形状が綿状・シート状である限り、これらの形状を前提として商品帰属を決定するのが当然である。また、上記商品が溶液状、粉状であることを理由に同商品が「商標法上『薬剤』に属することは疑義がなかろう」と主張しているが、そもそもこれらの商品は本件と関係がなく、また商標法上の商品帰属の決定は、その商品の形態のみならず機能、作用効果等、種々の要素を総合勘案して決定すべきものであるから、このような被請求人の主張は意味がない。

(リ)被請求人は、「価格が脱脂綿やガーゼの価格に比して極めて高価である」旨主張するが、商品の価格が商標法上の商品の帰属、すなわち本件商品が「薬剤」の範疇に属するか「医療補助品」の範疇に属するかを判断する上での基準となるものではない。

以上詳述したとおり、被請求人は本件商標が、本件審判請求に係る指定商品「薬剤」について使用されていることを証明していない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、「結論掲記の審決を求める」と答弁し、その理由を下記の通り述べ、証拠方法として乙第1号証乃至乙第10号証(枝番号を含む)を提出している。

答弁の理由

(1)請求人は、平成10年11月13日付の審判請求書において、本件商標は、その指定商品「薬剤」については継続して3年以上日本国内において使用されていないものであるから、その登録は取り消されるべきである旨主張する。

しかしながら、被請求人は、本件審判請求の予告登録日前3年以内に本件商標をその指定商品「薬剤」につき使用しているものである。即ち、被請求人は平成7年11月20日に本件商標を付した「吸収性局所コラーゲン止血剤」(以下、「本件使用商品」という。)を発売して以来、現在に至るまでその販売を継続するとともに、本件使用商品に関する広告、取引書類等に本件商標を付して頒布しているものである。

このことは、卸業者からの「商品受領書」(乙第1号証)、本件使用商品の「添付文書」(乙第2号証)及び被請求人作成の「製品情報概要書」(乙第3号証の1乃至3)から明らかである。

(2)平成11年9月7日付の第2答弁

被請求人は、請求人の平成11年6月17日付審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という)において、被請求人が本件商標を使用している商品「吸収性局所コラーゲン止血剤」は、昭和34年商標法の商品区分における「薬剤」には該当せず「医療補助品」に該当する旨主張しているので、これに対して以下のとおり反論する。

(イ)本件使用商品の形態について

請求人は弁駁書において、「本件使用商品が薬剤というよりは材料的な商品であることが明らかであり」、また、「その性質・使用方法・使用目的等が脱脂綿と酷似していることが明らかである」と述べている。

請求人が本件使用商品の商標法上の商品帰属を誤解している大きな原因のーつに、本件使用商品の形態が脱脂綿と酷似している点があると思われるので、まずこの観点からの反論をしておく。

本件使用商品は色が真っ白であってふわふわしており、綿状又はシート状に加工されていることから(乙第3号証の1乃至3)、ー見脱脂綿の如く見えることは否めない。しかし、本件使用商品の本体は、そのような形態に加工された「コラーゲン」(より詳しくは「ウシ真皮由来のアテロコラーゲン」であるが、以下簡便に「コラーゲン」と呼ぶ)というタンパク質そのものなのであって、単なる綿からなる脱脂綿などとは全く異なるものである。本件使用商品はコラーゲンの薬物としての作用により、積極的に出血部位で止血効果を発揮する微繊維性の「止血剤」なのであって、決して単に出血を吸収する脱脂綿のような材料的な商品ではないのである。

ここで、止血のメカニズムについて若干説明をしておく。血管が損傷を受けると血管壁を形成しているコラーゲンが露出する。このコラーゲンに血液中の血小板が接触すると血小板がコラーゲンに粘着し、血小板は形を変えながら血小板同士で凝集して血栓(血小板血栓)をつくり傷口を塞ぐ。この血小板血栓は不安定なため、血液中のフィブリンと呼ばれるタンパク質がこれに網をかけるように覆う。このフィブリン網が血球を捕らえることにより血餅となり止血が完全となる(乙第4号証)。これが、自然の止血メカニズムであるが、手術時などの血液の強い惨み出しや噴出性の出血ではかかるメカニズムによる止血が困難あるいは不可能である。そういった場合に使用されるのが本件使用商品などの止血剤であって、出血部に圧し当てて圧迫し、本件使用商品たるコラーゲンが止血の第一ステップたる血小板血栓の形成を促し、その後の止血を容易に可能ならしめるのである。

なお、本件使用商品は通常の医薬品と全く同様に、添付文書(乙第2号証)が包装容器毎に入れられており、種々の必要情報が使用者たる医師に伝えられるものとなっている。このような理由で、本件使用商品の本体がその形態の点において脱脂綿に類似しているからといって、本件使用商品が商標法上の「医療補助品」に属するとするのは全くの誤りである。

(ロ)本件使用商品の薬事法上の取扱いについて

本件使用商品は薬事法上の「医療用具」に該当する。そして、本件使用商品は健康保険の対象とされており、その適用上「特定保険医療材料」とされる(乙第2号証、乙第3号証の3)。従って、本件使用商品を保険の適用上の名称で言えば「特定保険医療材料」と正式名称で表わさざるを得ず、またかかることからも、本件使用商品を「止血材」といった表現で表すものがあることも事実である。しかし、本件使用商品が薬事法上「医療用具」に属することとなったのは、次のような事情による。本件使用商品の如くコラーゲンからなる止血剤(保険請求上「微繊維性コラーゲン」と呼ばれる)は、商品の世代としては、ゼラチンあるいは酸化セルロースからなる止血剤の次世代商品にあたる(乙第5号証)。ところで、ゼラチンや酸化セルロースからなる止血剤は薬事法上「医薬品」とされている(乙第6号証乃至同第7号証)。にも拘らず、次世代の微繊維性コラーゲンが「医薬品」ではなく「医療用具」とされたのは、その最初の商品(先発品、商品名「アビテン」)が、早期市場目的等から「医療用具」としての承認申請を選び、厚生省がこれを認めたことによる。本件使用商品を含め、「アビテン」を追って上市された商品は、制度上先発品の規制に従うこととなり、全ての微繊維性コラーゲンが「医療用具」とされる結果となったのである(乙第8号証)。

しかし、本件使用商品を含め微繊維性コラーゲンの商品としての性格、医療現場での位置づけは、ゼラチンや酸化セルロースからなる商品の位置づけと全く合致するのであって、市場でも完全なる競合品の関係にある。

従って、本件使用商品が薬事法上「医療用具」とされていることをもって、本件使用商品が脱脂綿やガーゼと同様、商標法上の「医療補助品」に該当するとすることもまた誤りである。

(ハ)甲第3号証について

請求人の指摘する「患部の止血及び生体組織の復元を助ける医療用補助助材」なる商品に対し、特許庁が「01C01」なる類似群コードを付与しているとの事実は、当該商品が具体的に如何なるものであるか不明であって、且つ審査における一事例に過ぎないものであることから、本件使用商品の帰属を審判において個別具体的に議論している本件とは直接関係のない事項である。

(ニ)以上述べたことをも踏まえ、本件使用商品が商標法上「医療補助品」でなく、「薬剤」に属するとされるべき理由を最後にまとめておく。

(a)性質・機能

本件使用商品はあくまでも「止血剤」であり、本件使用商品の包装箱、添付文書、カタログ等における表示は常に「吸収性局所止血剤」である(本件使用商品の薬事法上の承認に係るー般的名称自体が「吸収性局所止血剤」であるから当然のことである)。本件使用商品は出血を吸わせるだけの脱脂綿やガーゼとは違って、その本体であるコラーゲンが止血作用を発揮するのであって、脱脂綿等との商品の性質・機能の上の相違は歴然としているものである。

(b)使用目的

本件使用商品の使用目的は、その本体であるコラーゲンの血液凝固促進作用により止血効果を得ることにある。この点で単に出血を吸収させるだけの脱脂綿やガーゼとは全く異なる。従って、本件使用商品はその使用において、「縫合あるいは結紮等の通常の止血処理が無効、または実施できない場合に適用し、縫合あるいは結紮等の外科的止血操作の代用となるものではない」とされているのである(乙第3号証の1乃至3における「使用上の注意」の中の「1一般的注意(2)」)。脱脂綿等ではそもそもこのような断り書をすることもあり得ない。

(c)原材料

本件使用商品の原材料はウシの真皮由来のアテロコラーゲンである。即ち、コラーゲンの血液凝固を促進するという生物学的活性を保持したまま、抗原性をできるだけ低減させたタンパク質である(乙第3号証の3、14頁)。この点で、綿を原料とする脱脂綿やガーゼとは全く異質のものである。

(d)需要者

本件使用商品の最終需要者は医師、特に外科領域の専門医に限られる。従って、本件使用商品は完全な医家向け商品であり、この点で、ー般家庭においても広く使用される脱脂綿やガーゼとは全く異なる。

(e)競合品とその形態

本件使用商品が薬事法上「微繊維性コラーゲン」という商品群に属することは既に述べた。ところで、この微繊維性コラーゲンに属する商品の形態は様々であって、決して本件使用商品の如く綿状、シート状に加工されたものだけではない。例えば、「GRFグルー」という商品は溶液状である(乙第9号証)。この商品は微繊維性コラーゲンと呼ぶこと自体も若干妥当性を欠く面があるのであるが、薬事法上は本件使用商品等と同じ範疇に属するとされている(乙第8号証)。また、同様に、「ヘリテン」という商品は微繊維タイプと呼ばれる粉状の形態のものである(乙第10号証)。これらの商品はその形態が脱脂綿等に類似するところがないから、商標法上「薬剤」に属することは疑義がなかろう。そうであれば、これらの商品と薬事法上同一の取扱いがなされ、完全な競合品の関係にある本件使用商品を「医療補助品」に属するということが極めて不合理なことは明らかである。

(f)価格

本件使用商品の価格(特定保険医療材料としての告示価格)は、綿状タイプのもの(1g、2コ入り)で2万9,200円、シートタイプのもの(0.5g、2コ入り)で1万4,600円であり、脱脂綿やガーゼの価格に比して極めて高価である。これは取りも直さず本件使用商品の上記性質等によることは明らかである。

以上のとおり、請求人が弁駁書において、本件使用商品が「薬剤」には該当せず「医療補助品」に該当するとの主張は誤りであり、本件使用商品は「薬剤」に属するとされるべきものである。

第4 当審の判断

1 基本的な考え方

(1)政令別表で定める商品区分は、主として、材料主義、生産者主義によっていたが、その後、用途主義、販売店主義を大幅に考慮した改正がされて、旧政令別表の分類がされたものと解されている。そして、旧規則別表は、各商品の区分に属すべき商品を具体的に多数表示しており、各区分に属する具体的商品を、大概念(大分類)、中概念(中分類)、個々の商品(単品)等と階層的に表わしている。したがって、不使用取消審判の対象となっている登録商標を現実に使用している商品が指定商品のいずれに属するかについては、その商品と旧規則別表に例示された個々の商品とを対比することによって比較的容易に判断し得る場合が多い。

しかしながら、市場に存在する現実の商品は多種多様であり、日々新しい商品が開発されて出現していることは周知のことであって、登録商標を使用している商品が、そもそも当該商標の指定商品に該当するのか、あるいは指定商品のうちのいずれに属するのかなどの判断が困難な場合も生じ得るのである。また、極めて希有の例ではあっても、商品区分の大分類又は中分類の二つの商品に該当する二面性を有する複合的な商品が生ずる事も否定し難いところであると認められる(東京高等裁判所昭和57年(行ケ)第67号事件昭和60年5月14日判決参照)。

2 本件使用商品について

本件使用商品が取消請求に係る「薬剤」に属するか否かを検討する。

(1)被請求人の提出した乙各号証及び答弁書の全趣旨によれば、本件使用商品について、次の(a)ないし(e)の事実が認められる。

(a)商品の表示、原材料、用途等

乙第2号証、乙第3号証の1、2、3号証及び答弁書の全趣旨によれば、被請求人は、本件使用商品を「吸収性局所コラーゲン止血剤」と表示して販売しており、本件使用商品のパンフレット、リーフレット(乙第2号証、乙第3号証の1、2、3)には、本件使用商品の原材料、特性、作用、使用上の注意等に関して次のように記載されていることが認められる。

(原材料等)

「インテグランは医療用に精製したウシ真皮由来のアテロコラーゲン(仔ウシ真皮をタンパク質分解酵素により可溶化し、主要な抗原性発現部位を除去したコラーゲン)を線繊維状に紡糸加工し、ポリエボキシ化合物で化学架橋処理した吸収性局所止血剤です。インテグランは、・・・コラーゲン以外のタンパク質を含みません。そのためインテグランは低抗原性でかつ高い生体親和性を示すものとなっています。繊維構造をとることにより吸水性がよくなり、さらに術野での飛散性や静電気によるピンセットや手・指などへの付着性も低減されるなど、操作性も優れています。また、インテグランには綿状およびこれを薄く伸ばしたシートタイプの2種類があります。」

(特性)

「操作性に優れた綿繊維状コラーゲンです。」、「血小板の粘着・凝集を促進し、強い止血効果を発揮します。」、「コラーゲン以外のタンパク質を含まず、低抗原性です」「綿繊維構造をとるため、血液などを非常によく吸収し、術野にて飛散しない操作性に優れた柔らかい局所止血剤です。」(作用、出血部位に適用したときの止血の機序)「生体止血機構で最初に起こる反応は、コラーゲンと血小板の接触です。コラーゲンに粘着した血小板は瞬時に活性化され、凝集します。同時に種々の凝固系連鎖反応を迅速に惹起します。インテグランの綿状繊維構造はその空隙に血液を吸い上げて、血小板活性化の場を提供することにより、速やかな止血作用が得られます。」との説明及び本件使用商品が止血剤を用いない場合と比較して止血時間を有意に短縮する効果を有することを示す実験例(止血剤を用いない群と本件使用商品適用群との止血時間の対比)。

(使用上の注意等)

「【警告】脳外科領域及び産婦人科領域等において、肉芽腫、腫瘍等があらわれたとの報告があるので、当該領域では使用後必ず除去すること。尚、他の領域においても、止血後、余剰分は可能な限り除去すること。(他の微繊維性コラーゲン止血剤にて、肉芽腫、腫瘍等の発現の報告があり、重篤かつ非可逆的な副作用の発現する可能性が考えられるため。)」

「【禁忌】次の患者には使用しないこと」との朱書きの見出しの下に「(1)ウシ由来製剤(インシュリン、グルカゴン等)に対する過敏症あるいは症状のある患者(他の微繊維性コラーゲン止血剤にて、ウシ血清アルブミンに対る抗体価の上昇が報告された例があるため)」以上のような記載及び後述する乙第5号証の論文中の記載に照らすと、本件使用商品は、抗原性を低くすべく精製したウシ真皮由来のアテロコラーゲンを原材料とし、これを紡糸加工して得た線繊維状のコラーゲンを綿状又はこれを薄く伸ばしたシート状に整形した形態のものであって、その実体であるコラーゲンと血小板との生理化学的反応によって血液凝固作用が促進されることにより、良好な止血効果を発揮し、術後に患部に残存した場合には生体に吸収されるという性質を有するが、副作用の可能性も皆無とはいえないため、これを使用する医師に慎重な注意が求められていること、また、綿状構造とされているため、血液などを良く吸収する性質を持つものであると認められる。

(b)医療の現場における位置づけ(呼び名、用途、使用の実態等)

本件使用商品のような綿状にした微繊維性コラーゲンは、学術論文等の中で「止血材」と表記されることもあるが(例えば、乙第3号証の3のパンフレット末尾の文献欄に記載された文献の題名「綿状コラーゲン製止血材の吸血性、止血性および純度の評価」)、「止血剤」と表記する例(例えば、前記文献欄に記載された論文の題名「アテロコラーゲンを原料とした綿状止血剤」)もあり、数の上では、「止血剤」と表記するものの方が多いことが認められる。「剤」・「材」のいずれの表記が用いられるにせよ、学術文献等の中で本件使用商品のような綿状微繊維性コラーゲンが「止血剤・材」と呼ばれていることからみて、本件使用商品は、その積極的な止血効果に着目して、「止血」の目的で用いられていることは明らかである。また、乙第5号証の「外科における新しい手術機器と材料 局所止血剤」と題する論文(東京大学医学部第1外科河野信博外執筆、手術第44巻第6号1990年所収)には、執筆当時における局所止血剤の現状及び将来の展望について、次の記述がある。「出血部位に局所的に薬剤を投与することによって止血を図る、という概念は、古代エジプトの昔に遡るが、現代でも微繊維性コラーゲンや酸化セルロースなど様々な局所止血剤が使われている。」、「現在用いられている局所止血剤としては「微繊維性コラーゲン、トロンビン・・・などがあるが、すべて比較的高価な製剤であると同時にそれぞれが特性を有するため、適応は製剤に応じて慎重に選ぶべきである。」、「局所性止血剤は、一般に、ある一定時間出血面に固着することで初めて、その止血効果が発現する。」(以上、691頁)「コラーゲン」は、上記の機序(注、血小板とコラーゲンの接触による血小板の活性化と凝集作用)を総合した強い止血作用を持ち、これを応用した局所止血剤として、まず、微繊維素性コラーゲン(Avitene)が考案された。・・・形態は白いもぐさ状で、この物質を必要量とって乾燥させた創に押し当て、圧迫を加えるだけで止血が得られる。・・・止血効果では、ゼルフオーム、オキシセルの3倍といわれ、現在のところもっとも強力な止血作用を持つ局所止血剤であり、各種領域において広く用いられている。」「最近ではウシから抽出されたコラーゲン繊維を不織性のパッド状にした製剤、コラーゲンフリース(Novacol)も造られている。Avitene同様の高い止血効果が期待でき、さらに出血面の解剖学的形態に合わせて切断したり折り曲げたりして用いられるという操作性の面での有用性も備えている。もぐさ状のAviteneでは、静電気の為にピンセットに付着したり、腹腔内に散らばることで癒着の原因となる危険性もあったが、この煩わしさを解消するために、最近ではsheet状のAviteneも開発、発売されており、Novacolとともに今後高い需要が予想される。」(以上、693頁)これらの記述は、本件使用商品を含む微繊維性コラーゲンが止血効果の良好な「局所止血剤」として認知され、これを綿状に整形して操作性を良くした製品が酸化セルロース、ゼラチン等に続く局所止血剤の次世代製品として位置付けられていることをうかがわせるものといってよい。さらに、保険請求の手引書と認められる「図説 特定保険医療材料と保険請求のすべて 上巻」(平成9年発行、乙第8号証)は、「微繊維性コラーゲン」という表題の下に「インスタット」「アビテン」「GRFグルー」「ヘリスタット(ヘリテン)」、「インテグラン(注、本件商標)」、「ノバコール」などの商品名を挙げ、続く下欄の「主に関連する技術料」の項で、「微繊維性コラーゲンは、肝、膵、脾、脳、脊髄の実質性出血及び硬膜出血並びに・・・出血で、結紫、レーザーメス又は通常の処置による止血が無効又は実施できない場合において、止血に使用する。」 「微繊維性コラーゲンは、粉末状のもの及びシート状のものが含まれる。」「ゼラチン止血・接着剤は微繊維性コラーゲンとして算定する。」と解説している。

以上によれば、本件使用商品は、医療の現場で止血の目的で用いられ、医療関係者の間で微繊維性コラーゲン(シート状や粉末状を含む)の一種としてゼラチン製剤と並ぶ止血用の製品として認識されていたと認められる。

(c)包装形態、価格、需要者等

本件使用商品は綿状のものとこれを伸ばしてシート状にしたものの2種類があり、そのどちらも本体であるコラ−ゲンを所定の分量(例えば、綿状のものは1g、シート状のもの0.5g)ずつ密封パックし、これを更に「保険適用」「吸収性局所コラーゲン止血剤」「インテグラン」「綿状」又は「シートタイプ」などの文字を記載した包装箱に2個ずつ入れた形で販売されており、各包装箱には、承認番号、貯法、警告、禁忌、組成、効能・効果、使用方法、使用上の注意、臨床適用、非臨床試験、取扱い上の注意、関連文献・保険適用に関する情報等を記載した添付文書(乙第2号証)が入れられている。

既に掲記した乙号各証及び弁論の全趣旨によれば、本件使用商品は、専ら医家向けに販売される商品であり、その最終需要者は医師、特に外科領域の専門医であって、一般家庭用に薬局などの店頭で販売されることはなく、保険適用における本件商品の告示価格は、「微繊維性コラーゲン」の名称で括られる他の商品(「インスタット」ほか数種)と同じ1g当たり15,200円であり、一般の「脱脂綿」あるいは外科手術に使用される高度に滅菌した「脱脂綿」(医療用)の価格に比べて極めて高価であると認められる。

(d)使用の実態等

乙第8号証によれば、本件使用商品と同様の「止血」目的で用いられるものとしては、商品名「インスタット」、商品名「アビテン」、商品名「ノバコール」、商品名「ヘリテン」などの「微繊維性コラ−ゲン」、保険適用上「微繊維性コラーゲン」として扱われる「ゼラチン製剤」、及び商品名「オキシセル」、商品名「サージセル」などの「酸化セルロース」があり、これらは、その価格帯、使用目的等からみて、相互に競合する関係にあるものと認められる。これらの競合商品のうち、「ゼラチン製剤」及び「酸化セルロース」は、「止血剤」とされ、保険薬として扱われ、薬価基準が適用されている(乙第6号証の保険薬事典)。例えば、「酸化セルロース」の一種である「サージセル」は、薬価基準に収載された医薬品(医薬品:承認番号(47AM輸 第205号)であり、サージセルの中には「綿型」(綿繊維形状)の製品もある(乙第7号証のり一フレット)。なお、この「サージセル」のリ一フレットは、「同効薬剤」として、保険適用上「微繊維性コラーゲン」として扱われるゼラチン製剤の「ゼラチンスポンジ、ゼルフオーム(アツプジョン)、スポンゼル(山之内)」の名を挙げている。

(e)薬事法及び保険上の位置づけ等

本件使用商品は、薬事法上、「医療用具」の中の「微繊維性コラーゲン」と位置づけられており(薬事法上の一般名称は「微繊維性コラーゲン」)、「医療用具製造承認」を受けている。また、本件使用商品は、「特定保険医療材料」の中の「微繊維筒コラーゲン」の一種として、保険適用を認められている(乙第2号証、乙第3号証)。

(2)以上によれば、本件使用商品は、薬事法上の「医薬品」としてではなく「医療用具」として承認を受け、保険の適用上「医療材料」として扱われているものではあるが、その成分、効用(コラーゲンによる止血作用)及び使用目的をみると、コラーゲンのもつ薬理学的作用により出血を止めるという点で「薬剤」的な性質をきわめて強く有する商品であり、現に、外科手術における止血に使用され、医師を中心とする医療関係者及び取引者・需要者の間で、薬事法及び保険適用上の「医薬品」である他の吸収性局所血剤と同類ないし同等のものとして捉えられていると認められる。

他方、本件使用商品が医療関係者及び取引者・需要者の間で「脱脂綿」、「ガーゼ」と同等ないし類似のものと認識されていることを認めるに足りる証拠はない。

(3)ところで、旧政令別表に基づく商品区分について解説した特許庁商標課編「商品区分解説」(甲第2号証)は、商品区分第1類の「薬剤」の概念には、薬事法(昭和35年法律第145条)の規定に基づく ”医薬品”の大部分及び同法にいう ”医薬部外品”の一部が含まれるとし、”医薬品”について薬事法2条の定義規定を引用したうえ、「なお、薬事法の定義によれば、”医薬品”の中には通常、衛生用品と考えられる「ガーゼ」「脱脂綿」等も入るが、この類には、医療補助品という概念があるので、これらは薬剤には含まれない。」としている。上記解説が「薬剤」の概念を説明するのに引用した薬事法は、その1条で、薬事法の適用対象として「医薬品」、「医薬部外品」、「化粧品」及び「医療用具」の4種を挙げ.2条の定義規定で、「医薬品」とは、(a)日本薬局方に収められている物(1項1号)、(b)人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされる物であって、器具機械(歯科材料、医療用品及び衛生用品を含む、以下同じ)でないもの(1項2号)、(c)人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、器具機械でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)(1項3号)と規定している。ここで、商品分類における「薬剤」・「医療補助品」の概念と薬事法における「医薬品」で「医療用具」の概念との対応関係を見ると、「商品区分解説」において「脱脂綿」「ガーゼ」は薬事法上は「医薬品」であるが商品分類の上では「医療補助品」であると説明されていることにも表れているように、商標法上の商品分類における「薬剤」・「医療補助品」の概念(区分)と薬事法上の「医療品」・「医療用具」(医療用材料を含む。)の概念(区分)とは一義的に対応する関係になく、両者の間には、ずれないし差異があることが認められる。このような差異は、商標法の商品分類が商品の混同を防止し商標使用者の業務上の信用と需要者の利益を保護するという商標法の目的に即して、「取引市場を考慮し」、「主として用途主義、販売店主義の商品分類」を採用している(「商品区分解説」)のに対して、薬事法は、医薬品や医療用具につき、それぞれの特質に応じ、「品質、有効性及び安全性の確保」(薬事法1条)という見地から適切な規制を加えることを目的として、「医薬品」や「医療用具」の概念を定めていることに由来するものと解される。いずれにしても、法の目的に応じて分類をする目的ないし観点も異なる以上、商標法における商品の分類区分と薬事法上の「医薬品」・「医療用具」の区分とが必ず合致しなければならないと解する理由はないといわざるを得ず、それぞれの法の趣旨に照らして薬事法上「医薬品」である商品が商標法上は「薬剤」でないものとして扱われたり、商標法上の「薬剤」が薬事法上は「医薬品」でないものとして扱われることがあっても、差し支えないというべきである。

(4)そこで、商標法上の商品分類における「薬剤」にどのような商品が該当するかを検討するに、旧規則別表には、商品分類第1類「薬剤」に属する商品として、中分類の「血液用剤」中に、「血液代用剤」、「血液凝固阻止剤」、「血しよう」と並んで「止血剤」が挙げられている。また、同別表中に「薬剤」に属するものとして記載された商品の中には、液状のもの、粉末状のもの(薬用べビーパウダーなど)、軟膏状のもの、固形のもの(日本薬局方の薬用石けん)、もぐさ状のものなど、商品の形態(外形)としてみると種々のものが含まれており、それらに共通するのは、何らかの薬理学的作用を有する物質(あるいはその調剤に使用される物質)であるという点であると認められる。

他方、商品分類第1類の「医療補助品」については、旧規則別表に「ガーゼ、脱脂綿、ほう帯、三角きん、眼帯、耳帯、ばんそうこう、腹帯、月経帯、ルーデサック、子宮サック、子宮べッサリー、避妊用具、指サック、氷のう、氷まくら、氷のう釣り、すいのみ、ほ乳用具、魔法ほ乳器、医療用油紙、オブラート、カプセル、ほう帯液、ピンセット、綿棒、人工鼓膜用材料、人工歯用材料、補綴充てん用材料、歯科用セメント」が商品例として記載されており、「商品区分解説」においては、医療補助品の「医療補助品この概念には、次のものが含まれる。

(1)一般に家庭でも使われる衛生用品

この中には薬事法にいう「医薬品」の一部(例えばガーゼ、脱脂綿等)も含まれる。

(2)ほ乳用具

(3)医療材料(例えば、「人工鼓膜用材料」「人工歯用材料」等。)

専ら医師が使用する医療関係品には、器具器械と材料的なものがあるが医療補助品には、後者のうち薬剤を除いたものが属する。前者は、第10類医療機械器具に属する。

歯科材料として使用される「歯科用アマルガム」は、この概念に属する。

「ガーゼ」「脱脂綿」

ー般に家庭でも使われるので、医療補助品に含まれるが、医師が使用する場合もこの概念に属する。

「ピンセント」医師専用の特殊なものは含まれない。

以上のような旧規則別表に記載された「医療補助品」の例及び「商品区分解説」における解説に照らすと、「医療補助品」とは、一般家庭でも使われる衛生用品、ほ乳用具及び専ら医師が使用する医療関係品の中で薬剤を除いた材料的な性質の商品を統括した概念であると認められる。

(5)以上の検討を総合してみると、本件使用商品は、前記(1)、(2)で認定したとおり、その薬理学的作用による止血効果を目的として使用されるという点において「薬剤」的な性質の強い製品であって、旧規則別表中に「医療補助品」として例示された衛生用品や材料的な商品と同等視することはできず、商品の性質、用途、医療現場における位置づけ、使用の実態及びこれらから推認される取引者・需要者の認識に照らすと、「薬剤」に属する商品と認めることが相当である。

本件使用商品は、請求人が主張するような「材料」(吸収材)としての性質を認め得るとした場合でも、これを敢えて「薬剤でない医療補助品」と解して「薬剤」から排除すべき積極的かつ合理的な理由は見いだせない。そして、本件使用商品が、薬事法上の「医薬品」として承認を受けていない事実は、本件の事実関係の下では、上記認定を左右するものではない。

3 請求人の主張について

請求人は、本件使用商品は「脱脂綿」の類似商品であり、「医療補助品」に属するものであるから、「薬剤」には属さないと主張するので、請求人の主張の当否について判断する。

(1)「脱脂綿」との類似性について

請求人は、本件使用商品は綿状である、目に見えない止血の仕組みはともかく、本件使用商品も「出血面に圧し当てる」という物理的な圧迫を利用して止血をすることは「脱脂綿」等によって止血する場合と変わらない、などの点を挙げて、本件使用商品は「脱脂綿」の類似商品であると主張するが、その主張は以下の理由により採用することができない。

脱脂綿は、「日本薬局方解説書」によれば、綿の種子の毛を脱脂し、漂白したものであり、その品質に関して試験項目として挙げられている項目(酸又はアルカリ度、水溶性物質含有の有無、色素、蛍光増白剤の有無、沈降速度、吸水量、他の繊維やネップ、混在物、異物の有無)からみて、生体に対して薬理学的作用を及ぼすことが全く予定されていない、もっぱら材料的な性質の物であることが明らかである。脱脂綿を止血に使用する場合でも、止血は脱脂綿を介した出血部の圧迫という物理的作用によって行われるものであって、脱脂綿自体が積極的に止血作用を有するものではない。

また、一般の「脱脂綿」は店頭で販売され、衛生用品としてー般家庭でも使用されるものであって、包装は一般に簡易であり、価格も低廉で、使用上の注意や副作用その他の詳しい情報を記載した添付文書などはなく、外科手術用の高度に滅菌した脱脂綿の場合でも、使途は「止血」に限られず(血液等の「吸収」にも用いられる)、価格は止血剤として販売されている商品に比べるとはるかに低廉であることは、前示のとおりである。

他方、本件使用商品は、綿状であるという形状・形態及び水分の吸収性に優れるという点で「脱脂綿」と共通するところはあるものの、コラーゲンの薬理学的作用による積極的な止血作用に着目して止血の目的で使用されるものであって、単なる材料としての働きしか予定されていない脱脂綿とは異なる。また、原材料、用途、販売の実情(包装、添付文書の有無、価格、競合品等)、需要者層などの点でも、脱脂綿とは大きく異なっている。

以上によれば、本件商品は、原材料、性質、作用、用途等からみて「脱脂綿」とは異質の商品であり、取引の実態に照らしても「脱脂綿」とは全く異なるものというべきであって、本件使用商品を「脱脂綿」の類似商品とみることはできない。

したがって、本件使用商品は「脱脂綿」の類似商品であるから「医療補助品」であって、「薬剤」ではないとする請求人の主張は、その前提を欠くものであって、採用することを得ない。

(2)「医療補助品」であるとする請求人主張の他の理由について

本件使用商品が「医療補助品」であって「薬剤」ではないという請求人の主張は、「脱脂綿」との類似性を理由とするほか、(a)本件使用商品の薬事法及び保険適用上の地位、(b)いわゆる新分類の10類に属する「手術用キャットガット」(縫合糸)からの類推解釈、(c)「患部の止血及び生体組織の復元を助ける医療用補助材」に旧分類の「医療補助品」に対応する類似群コードが与えられていること等をも理由としている。

しかし、(a)については、前記2のとおり、薬事法及び保険適用上における本件使用商品の取り扱いが「医療用品」であって「医薬品」でないことは、本件の事実関係の下では、本件使用商品が「薬剤」に属する商品であることの妨げとなるものでなく、本件使用商品を商標法上の「薬剤」と扱っても差し支えないというべきであり、(b)についても、物理的な総合のために用いられるもっぱら材料的な性質の「手術用キャットガット」と薬理学的作用による止血効果を目的として使用される本件使用商品とは同視し得ないから、「手術用キャットガット」に関する商標法の扱い如何は、本件使用商品が「薬剤」に属するか否かの判断を左右するものではない。(c)も、本件使用商品が「医療補助品」であるとする理由とはなり得ず、また、薬剤でないとする理由ともなり得ない。

なお、本件使用商品が仮に「医療補助品」と判断され得べき性質を有するとしても、そのことが本件使用商品を薬剤と認めるととの妨げにならないことは、前記1のとおりである。

4 結論

以上によれば、本件使用商品は、「薬剤」に該当する商品であり、被請求人は、本件商標を取消請求に係る指定商品「薬剤」に属する本件使用商品について使用してきたものと認められる。

してみれば、本件商標は、被請求人によって、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、取消請求に係る指定商品である「薬剤」に属する「吸収性局所コラーゲン止血剤」に使用されていたものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。