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Trademark Appeal Case

語順入替商標の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35449(T2000−35449/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4091621商標(以下「本件商標」という。)は、「ブリーダートップ」の片仮名文字を横書きしてなり、平成7年10月27日に登録出願、第31類「飼料」を指定商品として、平成9年12月12日に設定の登録がされたものである。

2 請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4083146号商標(以下「引用商標」という。)は、「トップ ブリーダー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成4年2月12日に登録出願、「穀物、豆、粉類、飼料、種子類、その他の植物及び動物で他の類に属しないもの」を指定商品として、平成9年11月21日に設定の登録がされたものである。

3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)本件商標「ブリーダートップ」は、「ブリーダートップ」の称呼を生じる。一方、引用商標「トップブリーダー」は、「トップブリーダー」の称呼を生じる。

本件商標及び引用商標は「トップ」と「ブリーダー」、或いは「ブリーダー」と「トップ」の二つの部分よりなると理解されるものである。つまり、本件商標と引用商標とは「トップ」と「ブリーダー」との位置が単に逆転しているにすぎず、簡易迅速を尊ぶ実際の取引の場においては、いずれの部分が前で、いずれの部分が後であったか判然と認識されるとはいえない。特に、それぞれの商標を二回以上続けて称呼すると、「ブリーダートップブリーダートップ」「トップブリーダートップブリーダー」となり、全く区別がつかなくなる。需要者・取引者が時と所とを異にして「ブリーダートップ」「トップブリーダー」の両商標に接した場合、彼此混同して認識するおそれが高い。

審決例においても、同じ二語を結合してなり、その二語の前後を入れ替えただけの二商標が類似すると判断されている(甲第3号証ないし甲第5号証)。

これらの審決からみても、本件商標と引用商標とは類似するものであり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。

(2)引用商標「トップブリーダー」は、そもそも請求人の親会社であり世界有数のペットフード会社であるマースインコーポレーテッド(以下「マース社」という)がイギリス及びアメリカで使用を始めたものであり、マース社独自の厳しい判断基準に則して一定のレベルのブリーダーを「トップブリーダー」と命名したものである。

したがって、「トップブリーダー」はマース社による造語であり、マース社(日本では請求人)によってのみ与えられる名誉ある称号である。「トップブリーダー」に選ばれた人は、請求人のテレビコマーシャルに実名とともに出演しているほか、新聞・雑誌広告等にも登場している。すなわち、「トップブリーダー」とは、マース社或いは請求人によって厳選された具体的な人に与えられる称号であり、その称号は常に請求人の業務にかかる商品「飼料」との関係において使用されるものである。

商標「トップブリーダー」は商標「トップブリーダー推奨」とともに、1985年から日本で請求人が製造・販売するドッグフードのトップブランドである「ペディグリー」に一貫して使用されている。

請求人は日本におけるペディグリーブランドの地位確立のため、莫大な宣伝・広告費用を費やして販促活動を行い(甲第6号証ないし甲第9号証)、商品ラベル・パッケージにおいても必ず「トップブリーダー」の文字が表示されている(甲第10号証)。

特にテレビコマーシャルにおいては、年間数億円もの費用をかけて、ゴールデンタイム中心に全国展開で、「トップブリーダー」を前面に押し出して実際の「トップブリーダー」を登場させ、「『トップブリーダー』○○さん」のナレーション及び映像をお茶の間に流して広告宣伝を行い、商標の知名度を高める上で非常に効果をあげている(甲第6号証)。

また、ラジオスポットによる宣伝も行ったほか(甲第7号証)、新聞広告においても1986年から1992年の6年間だけでも、ほぼ全国の一般紙等において計1億円以上をかけている(甲第8号証)。さらに、雑誌の広告にも同じく8千万円以上を費やしている(甲第9号証)。

現代のようにメディアが発達し、なかでもテレビコマーシャルが最も効果的な広告宣伝手段となっている状況において、上述のように多額の費用をつぎ込んで大々的にテレビコマーシャルを行う効果は絶大である。しかして、本件商標の出願以前に、「ペディグリー」といえば「トップブリーダー」、「トップブリーダー」といえば「ペディグリー」というくらいに需要者・取引者の間に浸透し、「トップブリーダー」といえば大抵の人は「ペディグリー」と反射的に思い浮かんでしまうほどに、引用商標「トップブリーダー」は特別な意味をもつ語となり、一定の商品の出所を特定する著名な商標となるに至った。

したがって、商標「トップブリーダー」は、請求人の業務に係る商品であるという一定の出所を示すから、同じ二語から構成され、これら二語の前後を入れ替えて結合させたものであり、しかも使用される商品が類似している引用商標と本件商標において、本件商標をその指定商品に使用すると、引用商標との間で商品の出所の混同が生じる。

すなわち、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び第15号に違反してされたものであるから、無効とすべきである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。

(1)本件商標と引用商標の類否について

(ア)請求人は、本件商標と引用商標とは「トップ」と「ブリーダー」との位置が単に逆転しているだけにすぎず、簡易迅速を尊ぶ実際の取引の場においては、いずれの部分が前で、いずれの部分が後であったか判然と認識されるとはいえないと主張し、特にそれぞれの商標を続けて2回以上称呼すると全く区別が付かなくなると主張している。

しかし、取引者は、取引が簡易迅速に行われるものであろうとなかろうと、相当の注意力を払って取引を行うものであり、自己の取引に係る商品の商標の前半部分と後半部分とを認識せず取引を行うなどということは、実際の取引の場においてあり得ないことである。

また、取引者及び需要者が商標を2回以上称呼することがあっても一称呼、一称呼確認しながら称呼を行うものである。また、一気呵成に称呼する場合があっても、称呼の前半部や称呼の後半部の存在を無視して「ブリーダートップブリーダートップ」の称呼から「トップブリーダー」を抽出するものでもなければ、「ブリーダートップブリーダートップ」の中から「トップブリーダー」の称呼を抽出するものでもない。

(イ)本件商標と引用商標の観念について考察するに、本件商標「ブリーダートップ」は、特定の親しまれた意味合いを有しない一連の構成からなる造語である。

これに対して引用商標「トップブリーダー」は「最高の繁殖家」の如き観念を生ずるものであり(乙第1号証及び乙第2号証参照)、本件商標と引用商標の観念は相違するどころか比較しようもない。そして、この観念の相違又は有無は称呼の区別を容易にし、本件商標と引用商標の類似性を否定するものである(特許庁商標課編「商標審査基準」参照)。

(ウ)請求人は、同じ2語を結合してなり、その2語の前後を入れ替えただけの2商標が類似すると判断された審決例を挙げている。

しかし、これらの審決例の商標はどれも特定の親しまれた意味合いを有しない造語商標であることは明白である。したがって、本件商標と引用商標の関係とは全く事例を異にするものであり、該審決例と同様に画一的に判断することはできない。

したがって、本件商標と引用商標は非類似の商標であり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

(2)出所の混同を生ずるか否かについて

(ア)引用商標「トップブリーダー」は、「最高の繁殖家」の如き意味合いを有するものであり、マース社による造語ではない。

請求人は、自ら引用商標「トップ ブリーダー」を「トップクラスのブリーダー」、すなわち「最高の繁殖家」を意味するものとして認識し、「トップブリーダー推奨」や「トップブリーダーが推奨する」等と専ら記述的な使用態様での使用をしているものであり(甲第9号証の2)、識別力を発揮するような商標的使用態様を行っているものではない。

(イ)さらに、「トップブリーダー」は、ウサギや文鳥、想像上の人物又は生物を育てるテレビゲームの「トップクラスのブリーダー」や「最高の繁殖家」のように、何かを繁殖・育成するもののなかでも頂点に位置するものの如く一般的に使用されており(乙第6号証)、引用商標「トップブリーダー」は、何ら識別力を有するものではない。

したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、引用商標との間で何ら出所の混同を生ずるものではないことは明白であり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(3)以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものでなく、請求人の主張は認容されるべきでない。

5 当審の判断

(1)本件商標と引用商標との類否について

本件商標は、「ブリーダートップ」の文字よりなるところ、各文字が同じ書体、同じ大きさで一連に表されており、視覚上一体的に看取し得るものであり、かつ、これより生ずる称呼も全体としてよどみなく一連に称呼し得るものである。そして、これを殊更前半の「ブリーダー」と後半の「トップ」とに分離して考察すべきような特段の事情は見出し難く、むしろ、これよりは、直ちに特定の意味合いを想起し得ない一種の造語よりなるものというべきであって、その構成文字全体に相応して生ずる「ブリーダートップ」の称呼のみをもって取引に資されるものとみるのが相当である。

これに対し、引用商標は、「トップブリーダー」の文字よりなるところ、構成冒頭の「トップ」の文字は、「頂上、最高」(乙第1号証)の意味合いをもって、「トップ・クラス」「トップ・モード」「トップ・バッター」等の邦熟語を形成することで世人一般に広く親しまれているところであり、また、「ブリーダー」の文字は「純血種の犬や猫などの繁殖家」(乙第2号証)の意味合いの語として一般に理解されているものといえるから、構成文字全体より「最高の繁殖家」の観念を生ずるものと認められる。そして、その構成文字に相応して「トップブリーダー」の称呼を自然的に生ずるものである。

してみれば、本件商標より生ずる「ブリーダートップ」の称呼と、引用商標より生ずる「トップブリーダー」の称呼とは、音構成が著しく異なり彼此相紛れるおそれはないものと判断するのが相当である。

また、本件商標は一種の造語とみられるのに対し、引用商標は前記意味合いを感得させる点で両者は観念上区別し得るものであり、また、それぞれの構成よりして両者は外観においても紛れるおそれはない。

したがって、本件商標と引用商標とは外観、称呼及び観念のいずれよりしても区別し得る非類似の商標と判断するのが相当である。

請求人は、本件商標と引用商標とは「トップ」と「ブリーダー」との位置が単に逆転しているにすぎず、簡易迅速を尊ぶ実際の取引の場においては、いずれの部分が前でいずれの部分が後であったか判然と認識されないことが多く、特に、それぞれの商標を二回以上続けて称呼すると全く区別がつかなくなると述べ、需要者・取引者が時と所とを異にして「ブリーダートップ」「トップブリーダー」の両商標に接した場合、彼此混同して認識するおそれが高い旨主張する。

しかしながら、本件商標が構成全体をもって一体不可分の構成よりなるものと認識されるものであること上記のとおりであって、これを「ブリーダー」と「トップ」の両文字よりなるとみなければならない格別の事由は見出し得ないものであり、この点を認めるに足りる証拠もない。また、引用商標からは上記のとおり特定の観念を看取し得るものであるから、引用商標は「トップブリーダー」の文字構成のものとして明確に認識されるものといわなければならない。しかも、取引の実際において商標を二回以上続けて称呼することが商取引における常態となっているものとは到底判断し得ないから、結局、請求人の上記主張は採用の限りでない。

(2)出所混同のおそれの有無について

請求人の提出に係る証拠における引用商標の使用状況をみると、テレビコマーシャルの概要(甲第6号証の3)には「優秀なチャンピオン犬を育てている○○さん」「おめでとうトップブリーダー○○さん」「トップブリーダーが推奨する」等の文字が、テレビ広告内容の写真(甲第6号証の4)には「トップブリーダー推奨」「だからこそトップブリーダー推奨」等の文字が、雑誌広告(甲第9号証の2)及び商品ラベル、パッケージ及びパンフレット(甲第10号証)には「トップブリーダー推奨」の文字が記載されているが、これら「トップブリーダー」の文字は他の語とともに記述的に使用されているものと認めざるを得ない。そして、このほか、「トップブリーダー」の文字が商品の識別標識として認識し得る態様で使用されている使用例は見受けられない。特に、請求人が最も効果的な広告宣伝手段である旨述べるテレビコマーシャルにおいては、上掲甲第6号証の3によれば「優秀なチャンピオン犬を育てているトップブリーダー○○さん」の文字などを表記して犬と人物の映像が映し出されており、「トップブリーダー」の文字は明らかに登場人物を指称しているものと認識されるものである。

そうとすれば、請求人の使用に係る「トップブリーダー」の文字は、専ら記述的な意味合いで使用されているものといわざるを得ないから、請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願前に引用商標が請求人の業務に係る商品「飼料」を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたとする点は明らかでなく、これを認めるに十分なものとは判断することができない。

しかも、本件商標は、上記のとおり引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、他に両商標間に誤認混同を生ずるとすべき事由を見出すことはできない。

してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者がこれより引用商標を直ちに連想、想起するものということはできないから、本件商標は、請求人又は請求人と関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。

(3)結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものということはできないから、その登録は、同法第46条第1項により、無効とすることはできない。

なお、本件審判の審理終結後、請求人から提出のあった平成14年4月1日付弁駁書については、その理由を検討するも上記判断に影響を及ぼし得るものでなく、審理再開の必要を認めない。

よって、結論のとおり審決する。

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