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Trademark Appeal Case

欧文字称呼の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2001−35191(T2001−35191/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4107952号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成8年4月19日に登録出願され、第12類「自動車用子供安全座席,折り畳み式乳母車」を指定商品として、平成10年1月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標

請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3365599号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、平成7年6月27日に登録出願され、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車,自転車並びにそれらの部品及び附属品,船舶並びにその部品及び附属品」を指定商品として、平成9年12月12日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。

1 請求の理由

(1)本件商標と引用商標の称呼について

本件商標の構成は、「GRACO」と書されたものであって、その構成より「グラコ」の称呼が生じる。

一方、引用商標から生じる称呼としては、その構成中の上段部分の「ガラコ」の文字より「ガラコ」の称呼が生じるものである。さらには、引用商標からは前記「ガラコ」の称呼以外にも、その下段の「gla’co」の文字より「グラコ」の称呼も生じる。

なぜならば、「gla’co」の文字を、「ガラコ」と称呼させるには不自然な綴りであって、「gla’co」の文字中「gla...」の部分は、英語の「glad(グラッド)」、「glass(グラス)」、「glamour(グラマー)」というように、英語では「グラ...」というように称呼されるし、日本人の場合そのように称呼することのほうが慣れており、しかも自然である。

また、引用商標の商標出願・登録情報(甲第5号証)では、その称呼の欄に「ガラコ」の称呼と共に「グラコ」の称呼も付与されている。

したがって、引用商標中の上段部分の「ガラコ」の文字は、下段部分の「gla’co」の文字の読みを特定したものとも見ることができるが、未だ引用商標からは「グラコ」の称呼が生じる場合もあるものと考える。

(2)本件商標と引用商標の指定商品について

本件商標の指定商品中の商品「自動車用子供安全座席」は、引用商標の指定商品中に含まれている。

(3)以上のとおり、本件商標は引用商標と称呼において相紛れる恐れのある類似の商標であり、また本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。

よって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号の規定に違反してなされたものであり、したがって商標法第46条第1項によりその登録は無効とされるべきである。

(4)また、商願2000−18054(甲第6号証)は本件商標を引用商標として拒絶を受けた(甲第7号証)。その拒絶査定(甲第8号証)の内容によると、引用商標が存在するにも拘わらず、間違って本件商標は登録されたものであり、本件商標が無効となれば、商願2000−18054の出願は登録されるものと解される。

2 答弁に対する弁駁

(1)引用商標の称呼について

(ア)被請求人の主張の如く、引用商標はその片仮名文字部分にならって「ガラコ」と称呼され得るものである。

しかしながら、その片仮名文字部分「ガラコ」が、その下段の欧文字部分の唯一の称呼と言える場合というのは、その欧文字部分に相応する自然な称呼と合致する場合であって、引用商標中の「gla’co」の如く、その「g」の文字の称呼について、その上段の片仮名文字にならって「ガ」と称呼する場合には、子音である「g」に続いて、すぐ後ろに母音「a」が存在するべきところであるが、しかし子音「g」に続く表示は子音「l」、そして母音「a」であって、子音「g」に続く母音「a」が無い以上「ガ」と称呼させることには無理がある。

このような「gla−−」という綴りは英語風の綴りであって、このような場合には、英語の「glad(グラッド)」、「glass(グラス)」、「glamour(グラマー)」というように、英語では「グラ...」というように称呼されることから、日本人の場合そのように称呼することのほうが慣れており、英語風に「グラ...」と称呼するのが極めて自然であって、片仮名文字部分に合わせて「ガラコ」と称呼するには、経験則上不自然であることからすれば、引用商標からは、片仮名文字部分に相応した「ガラコ」の称呼の他に、英語風に「グラコ」の称呼も生じる場合があるものと考える。

(イ)さらに、引用商標「ガラコ/gla’co」のように、片仮名表記があるにもかかわらず、その表記が不自然であるため他の称呼が生じる場合もあるということの主張を補強するため、甲第9号証乃至甲第19号証を提出する。これらのように、片仮名文字部分が自然な称呼を表すものではないときには、他の称呼も生じることがあるという旨で審決されている。

引用商標も、その商標中の「’」の符号の評価を除いては、上記各審決における内容と同様の関係にあるものであると考える。

(ウ)つぎに、被請求人は引用商標中の「’」の符号について、所有格の符号としてはその位置が英語として不自然な位置に表示されていることから「gla’co」の表示は英語ともローマ字とも認識不可能と判断されている。

しかしながら「’」(「apostrophe」(アポストロフィ))は、省略符号として見ることもでき(甲第20号証)、また、英和辞書類においては、見出し語が2語以上の複合語などではその各々の要素の発音が他で示されている場合アクセントだけを示す為に「’」(「apostrophe」(アポストロフィ))に似たアクセント記号が、多くの単語に表記されている(甲第20号証)。

甲第20号証の例として、「glass」の単語のページを示したものであって、2語以上の複合語には「’」(「apostrophe」(アポストロフィ))に似たアクセント記号が付されているが、普段そのような符号には気を止めること無く英語を認識している。

通常、称呼するにおいて「’」の程度の符号の存在が、その称呼の困難性を引き起こす場合には、看者はその符号を無視すれば良いのであって、特に引用商標のような造語である場合には、看者は飾り文字程度としか認識しないのではないかと考える。

引用商標が英語風に称呼されるかどうか、つまりその下段欧文字部分の「g」を「グ」と称呼され得るかどうかは、被請求人指摘の「’」の符号の存在が左右するというよりは、上記述べたように、子音「g」の文字の続きに母音「a」の文字が無く、子音「l」、母音「a」と続く綴りが左右する要素が大きいと考える。

引用商標の場合は、ある程度英語風の体裁を成した表示であるので、仮に英語ともローマ字とも判別不可能であるとしても、全面的にその称呼を上段の片仮名文字部分の表示に頼らざるを得ないほどに、引用商標中の「’」の符号が看者の経験則に基づく自然な称呼の妨げになるものではない。

(エ)以上述べたように、引用商標中の上段部分の「ガラコ」の文字は、下段部分の「gla’co」の文字の読みを特定したものとも見ることができるが、未だ引用商標からは「グラコ」の称呼が生じる場合もあるものと考える。

(2)以上のとおり、本件商標は引用商標と称呼において相紛れる恐れのある類似の商標であり、また本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べた。

(1)本件商標の称呼について

本件商標は、その構成から「グラコ」の称呼を生じさせ、他の称呼を生じさせることはないものといえる。

(2)引用商標の称呼について

請求人は『引用商標からは「ガラコ」の称呼以外に、「グラコ」の称呼も生じる。』と主張するが、被請求人はこの主張を認めることはできないため以下争う。

(ア)引用商標は、その構成から「ガラコ」の称呼を生じさせることは明らかであるがその理由を明確にする。

欧文字「gla’co」は、これら一連の文字記号を一体として捉えると一般的な日本人であればローマ字であるとも英語であるとも認定できるものではない。英語の綴りにおいては、「’」を用いるのは所有格を表すときなど極めて限られた場合に限定され、一般に日本人であれば「gla’co」を見て「果たしてこれは英語なのだろうか?」という疑問を抱くと考えられるからである。そうすると、「gla’co」のうち英語風あるいはローマ字風に読むことができそうな部分のそれぞれから称呼が生じるものと考えるのが妥当である。

「gla’co」の欧文字の場合には、「la」および「co」それぞれの部分に着目することができるといえ、これらの部分は、ローマ字表記ではないため英語風に読むこととなり、日本語化した英語からそれぞれ「ラ」および「コ」の称呼を生じさせるといえる。

さて、「ラ」および「コ」の部分は二音を構成するにすぎないが、上段の「グラコ」が三音構成であるため称呼上占める割合が大きいものといえる。また、下段の「gla’co」は五文字(記号を除く)からなるものであるが、上記「ラ」および「コ」は、下段の欧文字「gla’co」のうち四文字を構成する「la」および「co」の称呼に相当する。よって、称呼上、上段の「ラ」および「コ」は下段の欧文字に対してかなりの割合を占めるといえる。

以上のことから、「gla’co」の欧文字の上側に「ガラコ」との片仮名文字がかかれていれば、日本人であれば誰しも「la」および「co」の部分はそれぞれ「ラ」および「コ」と称呼するものと直感的に認識し、さらに、その認識により上段の片仮名文字のうち「ガ」の部分が「g」の読みであると瞬時に連想するものといえる。上段の「ガラコ」という三文字からなる称呼のうち「ラ」および「コ」の二文字の称呼が下段の「la」および「co」それぞれと称呼上極めて密接な関連を有し、これらの二文字が称呼全体のかなりの割合を占めるからである。

すなわち、日本人であれば誰しも上段の「ガラコ」の片仮名文字は「gla’co」の称呼表示であると認識することになる。

(イ)一方、請求人は、『「gla’co」の文字を「ガラコ」と称呼させるには不自然な綴りであって、「gla’co」の文字中「gla...」の部分は、英語の「glad(グラッド)」、「glass(グラス)」、「glamour(グラマー)」というように、英語では「グラ...」というように称呼されるし、日本人の場合そのように称呼することのほうが慣れており、しかも自然であると考える。』と主張するが、この議論は、欧文字「gla’co」が英語表記であるとの前提に立ってはじめて成立するのである。そこで、この点について考える。

そもそも、欧文字「gla’co」は、ローマ字であるとも英語であるとも認定できるものではない。英語の綴りにおいては、「’」を用いるのは所有格を表すときなど極めて限られた場合に限定され、一般に日本人であれば「gla’co」を見て「果たしてこれは英語なのだろうか?」という疑問を抱くと考えられるからである。従って、請求人が主張するように、日本語化した英語の欧文字とその称呼とをもって直ちに引用商標の「gla」の部分から「グラ」との称呼を生じさせると結論付けることはできないものといえる。

もっとも、上記した本件商標については、「GRA」の部分を日本語化した英語の欧文字とその称呼に関連付け、当該部分から「グラ」の称呼が生じ得るとしたが、「GRACO」の場合には語中に不自然な「’」その他の記号がないため、英語表記と認定して差し支えないからである。

よって、何らの疑いの余地無く英語表記と認定しかねる引用商標について日本語化した英語の欧文字とその称呼とをもって特定の称呼「グラコ」を生じ得る可能性があると結論することは全く的外れな議論であるといえ、結局、引用商標からは「グラコ」なる称呼を生じさせないといえる。

(ウ)以上の次第から、ただ単にアルファベット文字が用いられているというだけで英語かどうかも判断しかねる日本人になじみの薄い欧文字「gla’co」の上に、明らかにその読み仮名とわかる片仮名文字「ガラコ」が上下二段に表示されこれらが一体として商標を構成している以上、引用商標を見れば日本人であればだれしもこれを「ガラコ」と称呼するのであり、「グラコ」と称呼する者は存在せず、引用商標「ガラコ/gla’co」は「ガラコ」の称呼のみを生じさせると結論できる。

(3)甲第5号証について

請求人は、甲第5号証を証拠として引用商標から「グラコ」の称呼が生じ得るとしている。しかし、甲第5号証は、称呼を検索キーとする関係から一定の基準に合致したものを表示させたにすぎず法的拘束力がなく、よって、これを根拠として「ガラコ/gla’co」から「グラコ」の称呼を生じさせると認定することはできない。

(4)本件商標と引用商標の称呼の類否について

本件商標より生じる「グラコ」と引用商標より生じる「ガラコ」は、いずれも三音構成の短い称呼であり、類否判断において重要な要素を占める語頭音を差異音とし、該差異音は、いずれも同行に属する濁音「グ」と「ガ」であるが相違する音が母音「ウ」と「ア」である。従って、両者をそれぞれ称呼したときには、語頭音の「グ」と「ガ」が明瞭に発音され聴取されることになる。そして、この差が三音構成の称呼全体に及ぼす影響は極めて大きいものである。よって、「グラコ」と「ガラコ」とは称呼上相紛れるおそれはないものと結論できる。

従って、本件商標は引用商標と称呼において相紛れるおそれはないことから、本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものではないということができる。

(5)本件商標と引用商標の指定商品の類否について

本件商標の指定商品のうち「自動車用子供安全座席」は、引用商標の指定商品のうち「自動車並びにその部品及び附属品」に含まれる。従って、被請求人は本件商標の「自動車用子供安全座席」が引用商標の指定商品と同一であるという請求人の主張を受け入れる。

しかし、本件商標の指定商品のうち「折り畳み式乳母車」は、引用商標の指定商品「自動車並びにその部品及び附属品、二輪自動車、自転車並びにそれらの部品及び附属品、船舶並びにその部品及び附属品」のいずれとも非類似といえる。引用商標の指定商品は自動車部品等の販売店で販売されるのに対し、本件商標の「折り畳み式乳母車」はデパートのベビー用品売場等で販売されるし、用途や需要者も全く異なるからである。

以上のことから、指定商品「折り畳み式乳母車」についての本件商標の登録は、引用商標の指定商品と非類似であることからも商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものではないということができる。

(6)むすび

このようなわけで、本件商標は引用商標と称呼において相紛れるおそれはないことから、本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものではなく商標法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきものではないといい得る。

また、本件商標は称呼において引用商標と相紛れるとの判断がされたとしても、本件商標の指定商品「折り畳み式乳母車」は、引用商標の指定商品のいずれとも非類似であるといえるから、指定商品「折り畳み式乳母車」についての本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものではなく商標法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきものではないといい得る。

第5 当審の判断

引用商標は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなるところ、その構成文字中の「gla」と「co」の各欧文字間の記号が、別掲(2)に示すとおりアポストロフィ(「’」)というより、逆縦長直角三角形のような記号が付されていることより、ローマ字であるか、英語であるか、又は、それ以外の特定の語であるかは直ちに理解し得ないものといわなければならないから、引用商標は、その構成中の片仮名文字部分が欧文字部分の読みを特定したものといい得るものであって、引用商標に接する取引者、需要者は、これより生ずる「ガラコ」の称呼をもって取引にあたるものとみるのが相当である。

そうとすれば、引用商標は、その構成文字に相応して、「ガラコ」の称呼のみを生ずるものといわざるを得ない。

他方、本件商標は、その構成文字に相応して、「グラコ」の称呼を生ずるものと認められる。

そこで、本件商標より生ずる「グラコ」の称呼と引用商標より生ずる「ガラコ」の称呼を比較するに、両称呼は、称呼における識別上重要な要素を占める語頭音において「グ」と「ガ」の音の明らかな差異を有するものであり、本件商標と引用商標とが、その外観において明らかな差異を有することと相俟って、この「グ」と「ガ」の音の差異が短い音構成よりなる両称呼の全体に及ぼす影響は大きく、両称呼を一連に称呼した場合においても音調、音感を異にし聴き誤るおそれはないものといわなければならない。

また、本件商標と引用商標とは、その構成文字全体をもって造語よりなるものと認められるから、観念上比較することができない。

してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念において類似するものとすることはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたもということはできないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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