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Trademark Appeal Case

周知商標の悪意登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成9年審判第17396号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第3165491号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3165491号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成5年2月15日に登録出願、第11類「家庭用浄水器」を指定商品として、平成8年6月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第100号証(枝番を含む。)を提出した。

1.請求人は、米国製の浄水器である「ハーレー1」(「1」は、ローマ数字、以下同じ。)の日本における総発売元として、1985年から輸入販売を開始して、日本国内において販売活動に従事してきた。

1991年4月に、被請求人は、請求人の神奈川地区における販売代理店として請求人と代理店契約を締結し、「ハーレー1」のモデルチェンジである「ハーレー2」(「2」は、ローマ数字、以下同じ。)の浄水器の販売を行っていたところ、被請求人は、請求人と代理店契約を締結している他の代理店との間においてトラブルを繰り返し起こし、さらに、請求人との契約条項に違反したため、1992年12月10日付をもって請求人との代理店契約を解除されている。

2.(1)請求人は、本件商標の登録出願日である平成5年(1993年)2月15日以前に、商品「家庭用浄水器」に「ハーレー」の標章を付して販売していた。また、広告その他、多数の刊行物の記事等に示すように「ハーレー」の標章が請求人の標章として商品「家庭用浄水器」について周知著名の域に達していた(甲第1号証ないし甲第29号証)。

(2)被請求人が本件商標を出願した以降も、請求人は、ハーレー浄水器の社会的評価を高めるための努力を一貫して続けてきた。すなわち、請求人の上記「ハーレー2」は、各出版物に記事として掲載され、または、広告宣伝をして今日に至っている(甲第30号証ないし甲第65号証)。

また、その後も出版物のみならず、現在では各テレビ局の料理番組やテレビドラマの中で使われることが最も多い浄水器となっている。1997年から1998年には、浄水器が使われている10の料理番組中7番組で「ハーレー2」が使われていた程である。

3.(1)商標法第4条第1項第10号について

甲各号証に徴して明らかなように、本件商標の指定商品と同一の商品に使用され、かつ、本件商標と同一又は類似の標章が本件商標の出願時前において周知であり、かつ、この周知標章の使用が特定人であるところの請求人、さもなければ米国のハーレーシカゴ社が、少なくとも関係取引者又は需要者間に広く認識されているのであるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

(2)商標法第4条第1項第19号又は同第15号について

被請求人は、上記代理店契約を解除された後、平成5年(1993年)2月15日付で本件商標を出願して、同8年6月28日に登録を受けたが、被請求人は上記の如く、請求人の神奈川地区の代理店として「ハーレー2」の浄水器を販売していた関係上、「ハーレー2」の標章が本件商標出願前に、請求人、若しくは米国のハーレーシカゴ社の標章として既に周知著名であったことを十分に知る立場あったにもかかわらず、本件商標の出願に及んだのであり、請求人(または米国のハーレーシカゴ社)の商品と被請求人の商品とが相互に競合関係にあることを被請求人自身も認めているように、本件商標の出願は被請求人の悪意(故意)によるものであることは明白である。

被請求人が仮に本件商標の出願後、自己の商標として周知に到らしめた事実があると仮定しても、前述したように、請求人の周知標章が存在している事実を当然知っておりながら、自己の商標として故意に出願したものであるから、このような悪意の使用者は、よしんばその者が本件商標を使用することによって周知に到らしめたとしても、このような悪意使用者は本法の保護を受けるものではないこともまた当然である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであり、さもなければ商品の出所の混合を来すおそれがあることも又当然に理解できるものであるから、同第15号にも違反して登録されたものである。

4.被請求人は、「FLAX」の部分が被請求人を表示している以上、本件商標が被請求人を示す商標であり、しかも、「FLAX」の部分の存在によって本件商標が「米国のハーレーシカゴ社を表わす訳ではないことも又充分識別可能である旨答弁しているが、本件商標は「HURLEY」の英文字を書し、そして、その右下に極めて小さく「FLAX」の英文字が付記されているのである。したがって、取引者又は需要者がこの商標を一見したとき、誰でもこの商標から「ハーレー」の称呼及び観念が生じることは明白であり、付記された前記「FLAX」は殆ど無視されるのである。すなわち、本件商標は、請求人さもなければ米国のハーレーシカゴ社の「ハーレー」又は「HURLEY」の標章と全く同一とも云うべきであり、双方は相互に同一又は類似商標又は標章であることは全く疑義の余地がない。

また、請求人は、甲第66号証ないし甲第100号証を提出して本件に関連する事実関係を証明する。

第3 被請求人の主張

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第61号証(枝番を含む。)を提出した。

1.本件事案の背景

(1)「ハーレー」の浄水器は、1960年代米国のハーレーシカゴ社(イリノイ州、アイシップ、サウスララミーアベニュ、12621所在)を出所とする商品であり、請求人は、昭和60年以降同社の代理人である地位にあった。

他方、被請求人は、平成3年4月以降、請求人の国内販売代理店として(ハーレーシカゴ社の販売復代理人として)「ハーレー」の浄水器の販売を行ったことがある。

被請求人は、前記販売代理店たる地位にあった当時、東急ハンズを始めとする各百貨店の店頭において、「ハーレー」浄水器を展示し、広範な販売に努力した。然るに、被請求人が「ハーレー」浄水器に対する配布パンフレットに「東日本総代理店」の表示があったことを根拠として、平成4年12月代理店契約を解除するに至った。

前記「東日本総代理店」の表示は、請求人担当者の承諾を得たうえで行ったのであって、前記解除は明らかに不当であるが、被請求人は、事態の平穏かつ円満な解決を考慮し、敢えて前記代理店表示を行ったカタログを全て回収まで行っている。右解除が行われた後、被請求人の取引先は、「ハーレー」浄水器を請求人を介さずに、直輸入することを要請し、被請求人も、当該要請に応じ、その結果として、被請求人は請求人と同様に、「ハーレー」浄水器を並行輸入することによって、継続的取引を行うことが可能となり、平成5年4月以降、「ハーレー」浄水器の輸入及び国内販売を行っている。

したがって、請求人と被請求人とは、「ハーレー」浄水器の輸入販売元たる地位において競合関係にあり、今日に至っている。

(2)被請求人は、平成5年4月以降、米国のH&N社を介して「ハーレー」浄水器の輸入を行っていたが、ハーレーシカゴ社は、被請求人が「ハーレー」浄水器につき、わが国内においてリファビッシュを行ったこと、さらには「ハーレー」浄水器以外の浄水器を扱ったことを不満として、平成9年5月H&N社に対し、契約解除の措置を講じた。しかしながら、被請求人はその後においても、別途第三者を介して「ハーレー2」の浄水器の購入を行い、請求人と被請求人とが「ハーレー」浄水器の取り扱いにつき、競合関係にある点において何ら変わりはない。

2.商標法第4条第1項第10号規定の周知性の成否

(1)請求人は、「ハーレー2」標章が、本件商標出願当時において既に請求人の標章として全国的に周知となっていた旨を主張する。

いうまでもなく、前記周知性の成立については、請求人の立証事項であるが、「ハーレー2」は、需要者及び取引業者間において、請求人主張の如く、周知であるが如き事態は発生していない。そうであるが故に、「ハーレー2」製品について、請求人と被請求人とは、営業上競合状態となり得たのである。

仮に、前記周知性が成立していたのであれば、被請求人の「ハーレー2」製品の扱いにおいて、請求人の扱う同製品との間で、出所の誤認混同が必然的に生じていなければならないところ、少なくとも被請求人サイドの営業においては、今日に至るまでこのような誤認混同は生じていない。

(2)商標法第4条第1項第10号に基づく無効事由が成立するためには、本件商標の平成7年12月7日登録査定に至るまでに、本件商標が、ハーレーシカゴ社の代理店である請求人を表すものとして被請求人の関与を無視できる程度に周知であるか、又は被請求人における本件商標の使用が、請求人による本件商標の使用、すなわち、「ハーレー」浄水器の販売行為において混同を生ずるほど、請求人が著名であるかの、何れかが成立しなければならないところ、平成7年12月7日以前の日付を有する書証は、甲第1号証から甲第56号証であるが、この内、甲第1、2、4ないし7、11、20、25、28、37、41、51、55号証は、「ハーレー」浄水器が掲載されるも、その取扱業者たる被請求人が掲載されている訳ではない。

一般の刊行物又はパンフレットにおいて、「ハーレー」浄水器が掲載されることは、必然的に「ハーレー」浄水器の出所当事者たる米国のハーレーシカゴ社を表示することに帰する。したがって、代理店たる請求人が、「ハーレー」浄水器の取扱業者として周知又は著名であることを立証するためには、必然的に請求人が掲載されている宣伝広告等による立証が不可欠である。然るとき、前記各甲号証は、本件商品の取扱業者たる請求人の周知性又は著名性の立証には、何らの証明力を有していないものと言わねばならない。

このような場合、たとえ、「ハーレー」浄水器の取扱業者たる被請求人の存在を度外視したとしても、前記各甲号証を除外した甲第1号証から甲第56号証に基づき、代理店たる地位にある請求人において、本件商標の使用当事者としての周知性が成立するかについては極めて疑問であり、少なくとも著名性が成立しないことは明らかである。

(3)乙第1号証の1、2は、本件商標の登録査定が行われた平成7年12月7日に至るまでの間に、被請求人が「ハーレー2」及び「ハーレー3」(「3」は、ローマ数字、以下同じ。)の名称の浄水器の販売実績をコンピュータによって集計した一覧表である。これらによれば、被請求人が平成7年12月に至るまでに、「ハーレー2」の浄水器につき、合計4435個出荷し、「ハーレー3」の浄水器を合計159個出荷し、結局、「ハーレー」浄水器につき合計4594個の販売実績を得るに至っていることが判明する。

乙第2号証ないし乙第18号証は、被請求人が「ハーレー」浄水器を扱っていることを裏付けるか、又はこの点に関する宣伝広告が行われている雑誌又は業界新聞の記載事項を示している。

乙第19号証ないし乙第42号証は、被請求人から「ハーレー」浄水器を購入した取扱店による宣伝広告及びパンフレットである。これらの宣伝広告及びパンフレットに基づいて、被請求人から「ハーレー」浄水器を購入した取扱店が、「ハーレー」浄水器をさらに販売する場合には、乙第43号証に示すような被請求人発行のパンフレットとともに、「ハーレー」浄水器の転売を行っている。

すなわち、被請求人を国内の出所元とする「ハーレー」浄水器の販売・転売においては、必然的に被請求人の出所当事者であることは、前記乙第43号証のパンフレットを以って証明されている以上、乙第19号証ないし乙第42号証の宣伝広告又はパンフレットは、被請求人が「ハーレー」浄水器の取扱業者であることを間接的に証明するものと言うべきである。

(4)前記の如き被請求人における販売実績が、乙第2号証ないし乙第18号証に示す紹介記事又は宣伝広告記事、乙第19号証ないし乙第42号証に示す得意先の宣伝広告を介した間接的な証明に即するならば、被請求人もまた請求人と対抗し得る状態にて業界及び需要者間に「ハーレー」浄水器の取扱業者として知れ渡っていることが判明する。

したがって、仮に前記各甲号証を除外した甲第1号証ないし甲第56号証に基づき、請求人が「ハーレー商標」の使用当事者として周知性が成立するのであれば、被請求人においても同様の周知性が成立することになる。換言するならば、本件商標は、被請求人をも表す商標として周知であり、それ故に、競合関係にある被請求人の存在を無視する程度に本件商標が、「他人」たる請求人を表す周知性は、明らかに成立し得ないというべきである。

(5)請求人が立証している甲号各証のうち、本件商標の登録出願日以前の本件商標に関する広告宣伝は、甲第1号証ないし甲第29号証であって、この程度の広告宣伝又は書籍の掲載を以って前記周知性が成立するかについては、重大な疑問の余地がある。

本件商標は、被請求人以外の「他人の業務」を表わす訳ではない以上、商標法第4条第1項第10号の要件を充足していない。

2.商標法第4条第1項第15号規定の誤認混同の成否

本件商標が、商標法第4条第1項第15号に該当するとするには、「ハーレー2」が、請求人の業務に係る商品を表す商標として、著名であることが不可欠である。しかしながら、「ハーレー2」が、請求人を表示する周知性さえ成立し得ない以上、前記著名性等成立する訳がない。

前記3.の如き被請求人の存在を無視する程度の周知性が成立しない以上、前記著名性等成立することはあり得ない。

ましてや、請求人と被請求人の間では、これまで双方が扱っている「ハーレー」浄水器につき、取扱業者及び顧客との間に誤認混同等の事実が生じていない以上、商標法第4条第1項第15号は、「他人の業務に係る商品」との混同の発生のおそれ等の要件は充足し得ない。

3.本件商標の構成及び不正競争の意思の有無

本件商標は、「HURLEY FLAX」によって構成されており、前半部分は、ハーレーシカゴ社の出所表示部分に該当するとともに、後半部分は被請求人の出所表示部分に該当する。すなわち、被請求人において、本件商標の登録出願に及んだのは、我が国内において、被請求人が、本件商標を取り扱う業者に該当することを表示するためであり、現に、被請求人は乙第43号証に示すように、自ら発行しているパンフレットによって本件商標に基づく表示を行っている。

本件商標のうち、「HURLEY」につき、専ら請求人を表示する周知性又は著名性が成立し得ない以上、本件事案では「HURLEY FLAX」が如何なる当事者を表示するかについて具体的に考察されねばならない。そして、「FLAX」の部分が被請求人を表示している以上、本件商標が被請求人を示す商標であり、しかも、「FLAX」の部分の存在によって本件商標が米国のハーレーシカゴ社を表示する訳ではないこともまた充分識別可能である。かくして、本件商標の構成に即しても、請求人の主張は成立し得ない。

被請求人においても、「ハーレー」浄水器を周知化するための営業上の努力を行っており、決して被請求人が本件商標の周知性にフリーライドとして不正かつ不当な利益を得ようとしていた訳ではないことも、蓋し当然である。即ち、被請求人は、請求人とは別の営業ルートによって、「ハーレー」浄水器を輸入し、かつ国内販売を行っており、その反映として本件商標の登録出願が行われたのであって、決して当該出願は、請求人に対する不当な打撃を与える等の「不正な目的」を伴っている訳ではない。

したがって、本件商標の登録出願が、「不正競争の意思」に基づいているが如き、請求人の主張は、明らかに失当たるを免れない。

第4 当審の判断

1.本件商標の登録出願日前に発行されたと認められる甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第29号証によれば、以下の事実が認められる。

(1)1969年にアメリカのJason・Hurley(ジェイソン ハーレー)が考案した「Hurley Town&Country(ハーレー・タウンアンドカントリー;「ハーレー1」とも。但し、「1」はローマ数字、以下同じ。)」の名称をもつ家庭用浄水器は、従来の20倍以上の濾過能力をもつ活性炭を6種類以上ブレンドし、6層に分けられた内部に水を通す仕組みで、従来の浄水器に比べ通水時間が長いところから、雑菌の除去率が高く、かつ、繁殖率が低く、また、1週間に1度63度以上の湯を約20分間逆流させることで内部の汚れが落ち、殺菌できるシステムであるから、7年間カートリッジの交換をしないで水道水中に含まれているといわれる発ガン性物質(トリハロメタン)などを80%以上除去することができるといった特徴をもつ商品であること。また、「1990年,Hurley Chicago社は20周年事業として,Hurley Town&Countryのモデルチェンジを行い,ハーレー2(但し、「2」はローマ数字、以下同じ。)を発売した」(甲第29号証)こと。

(2)上記「Hurley Town&Country(ハーレー・タウンアンドカントリー」は、アメリカの環境保護庁の公開テストで家庭用浄水器として、最高の評価を受け、また、1983年、1985年の同国の商品テスト誌「コンシューマーリポーツ」が行った浄水器の比較テストにおいても、最高の評価を得ていること(甲第1、19、20、29号証)。

(3)上記「Hurley Town&Country(ハーレー・タウンアンドカントリー)」の日本での販売は、「ハーレーウォーターシステム タウン・アンド・カントリー型浄水器」として、1985年2月より株式会社ジェイムズにより開始されこと。

(4)わが国において「ハーレーウォーターシステム」の「タウンアンドカントリー」及び「ハーレー2」は、「アメリカ製のハーレー・タウン&カントリーなどは、九九%くらいの高率で除去している(米環境保護庁テスト)」(甲第7号証)、「・・アメリカ製家庭用浄水器『ハーレー・タウンアンドカントリー』だが、米国環境保護庁(USEPA)のもとで行ったホース取りつけ型浄水器の調査の中で最優秀とされたものである。消費者に非常に信頼度の高い『コンシューマーリポーツ』の浄水器のテストでも最上級ランクと評価されている。」(甲第8号証)、「『ハーレー2』は・・米国環境保護局の公開テストで家庭用卓上タイプとしては最高の評価を受け、また米国の商品テスト誌『コンシューマーリポーツ』のすべてのテスト項目で『エクセレント』の評価を受けている。」(甲第9号証)、「米国・米国環境保護庁や、消費者団体なども、家庭用浄水器については厳しい安全チェックを行っている。・・・こうした厳しい調査の結果、最優秀と認められた家庭用浄水器『ハーレー・タウン&カントリー』は、通過水量が一万八千リットルを越えても、トリハロメタンの除去率を九〇%というハイレベルに保つことができたのである。」(甲第11号証)、「アメリカ製の浄水器『ハーレー2』。・・・カートリッジの交換なしで7年間使えることが、うたい文句となっている。」、「アメリカの『ハーレー2』・・・浄化能力については、アメリカの環境保護庁も、厳しい商品検査でおそれられている同じくアメリカの『コンシューマー・リポーツ』も太鼓判を押している。」(甲第12号証)、「アメリカ製で、その名は『ハーレー2』。厳しい商品検査で知られている『コンシューマーリポーツ』によって最上級の評価を受けている優れた製品だ。」(甲第14号証)、「米ハーレー社製の『ハーレー・タウンアンドカントリー』は米環境保護庁の調査でもっとも優秀とされたもので、・・・」(甲第15号証)、「高品質な活性炭が決め手、ずばぬけた性能を誇る浄水器〈ハーレー2〉商品テストには厳しいといわれる米国で最優秀と評価される浄水器。」(甲第16号証)、「アメリカの浄水器は、・・・『ハーレー2』は、『コンシューマーレポート』(83年2月)のテストにおいて、・・・すべての項目でエクセレント(最優秀)を取っている。」(甲第19号証)、「アメリカには、世界的な信頼を得ている商品テスト誌『コンシューマーリポーツ』・・は一九八五年、アメリカ国内の主な浄水器を対象に、・・・有機塩素化合物などの除去率テストをしています。その結果、アメリカ製の『ハーレーウォーターシステム』という浄水器が第一位の評価を受けました。・・・また、アメリカ環境保護庁(USEPA)による据置型浄水器の調査でも、ハーレーは最優秀という評価を受けました。」(甲第20号証)、「アメリカ製のハーレー2という浄水器・・は、アメリカの各種テストで、何回となく最優秀の評価を受けている浄水器です。・・・カートリッジの交換がまったくありません。」(甲第21号証)、「米国環境保護庁管理のもとにテストされたデータにおいて家庭用卓上浄水器としてNo,1 厳格さをもってなる米国商品テスト誌のテスト項目全部について最優秀(エクセレント)の評価」(甲第22、27号証)、「トリハロメタンなどの発がん性物質の除去性能が高く、初期性能を7年間保持する。」(甲第23号証)、「アメリカ環境保護庁の管理のもとに実施されたテストデータで、家庭用浄水器として浄水性能No,1(『コンシューマー・レポート』)というアメリカ産の『ハーレー2』だ。」、「『暮らしの手帳』が今年の六、七月号で発表した比較調査データによると、・・・『ハーレー2』は、一年間使ってもまだ九五%以上の除去能力を保っているという。」(甲第24号証)、「最新のテストでも証明されたハーレー2の優れた性能」(甲第25号証)、「アメリカで最優秀の浄水器 何といっても,ハーレー2です(ハーレー社製)。」(甲第26号証)などの記述とともに紹介されたこと。

2.前記1.で認定した事実からすると、米国で製造された家庭用浄水器「ハーレー・タウンアンドカントリー(ハーレー1)」、及びそのモデルチェンジとして1990年に発売された「ハーレー2」は、濾過能力の優れた活性炭を6種類以上ブレンドし、通水時間が長く、雑菌が棲みにくい構造よりなり、また、1週間に1度63度以上の湯を約20分間逆流させることで内部の汚れが落ち、殺菌できるシステムであるから、7年間カートリッジの交換をしないで水道水中に含まれているといわれる発ガン性物質(トリハロメタン)などを80%以上除去することができるといった従来の浄水器になかった特徴をもつ画期的な商品であり、米国の環境保護庁や商品テスト誌である「コンシューマー・レポート」のテストにおいて、最優秀の評価を得た浄水器であることが認められる。

このことは、わが国においても、国民一般の健康志向が高まり、食物や飲料等に対する安全性が取り沙汰されはじめた1980年代後半から紹介され始め、本件商標の登録出願前には既に、主婦向けの雑誌をはじめ、一般消費者を対象にした各種雑誌に多数紹介されていたことが認められる。

してみると、「ハーレー・タウンアンドカントリー(ハーレー1)」及び「ハーレー2」は、従来になかった画期的な家庭用浄水器として、また、アメリカの各種テストで、何回となく最優秀の評価を受けている家庭用浄水器を表示するための商標として、アメリカではもちろんのこと、わが国においても、本件商標の登録出願前には既に、家庭用浄水器の取扱い者をはじめ、一般消費者の間においても広く知られていたというのが相当である。

3.本件商標の登録出願日以降に発行されたと認められる甲第4号証、甲第30号証ないし甲第65号証並びに乙第2号証ないし乙第24号証及び乙第43号証(乙第25号証ないし乙第42号証は発行日不明)には、「ハーレー2」の商標を使用したアメリカ製の家庭用浄水器は、従来になかった画期的なアメリカ製の家庭用浄水器であり、アメリカの各種テストで最優秀の評価を受けた高性能の浄水器として、前記1.(4)で認定した紹介記事や宣伝等と同様の内容をもって、紹介され、宣伝されていたことが認められる。

してみると、「ハーレー2」は、アメリカ製の高性能家庭用浄水器を表示するものとして、本件商標の登録査定時においても、アメリカはもちろんのこと、日本国内においても、その取引者及び需要者の間に広く認識されていたものと認め得るところである。

4.ところで、「ハーレー・タウンアンドカントリー(ハーレー1)」及び「ハーレー2」の家庭用浄水器がアメリカの「HurleyChicago(ハーレーシカゴ)」社により製造された商品であることについては、当事者間に争いがないところ、該浄水器の製造元であるアメリカにおいては、その製造者が「HurleyChicago(ハーレーシカゴ)」社であることについては、本件商標の登録出願前後を通して、需要者間に広く認識されていたであろうことは、社会通念に照らし容易に推認されるところである。

一方、わが国においては、本件商標の登録出願前に発行された雑誌等で紹介された家庭用浄水器「ハーレー・タウンアンドカントリー(ハーレー1)」及び「ハーレー2」に関し、その製造元が米国の会社であることは明記されているとしても、具体的な会社名が記されていない場合が多いことが認められるが、該浄水器の紹介記事等とともに、「日本ハーレー事業本部」(甲第2、3、5、9号証)、「米ハーレー社製」(甲第15号証)、「ハーレー社」(甲第26号証)、「HurleyChicago社製」(甲第26号証)などの表示があることから、一般の消費者は、アメリカのハーレー社ないしハーレーシカゴ社の製造に係るものと理解する場合も少なくなく、また、本件商標の登録出願後に発行された雑誌等でも、「ハーレーシカゴ社」(甲第35、42号証、乙第3、8号証)、「ハーレー社」(乙第5、6、9、22号証)と表示されていることからすると、本件商標の登録査定前には、一般の消費者の間にも、その高性能な家庭用浄水器であるが故に、アメリカのハーレー社ないしハーレーシカゴ社の製造に係るものと認識されていたというのが相当である。

5.本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中、「HURLEY」の文字部分は、上段に極めて大きく表されているのに対し、「FLAX」の文字部分は、下段に極めて小さく書されているものである。

してみると、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成態様からして「HURLEY」の文字部分に強く印象づけられるものといえる。

また、「HurleyChicago(ハーレーシカゴ)」社の取扱いに係る家庭用浄水器について使用される「ハーレー・タウンアンドカントリー(Hurley Town&Country;ハーレー1)」及び「ハーレー2(HURLEY2)」が取引者、需要者に広く認識されていることは前記したとおりであるところ、「ハーレー・タウンアンドカントリー(Hurley Town&Country;ハーレー1」及び「ハーレー2(HURLEY2)」の要部は、「ハーレー(Hurley)」、「ハーレー(HURLEY)」にあるものとみるのが相当であるから、該「ハーレー(Hurley)」、ないし「ハーレー(HURLEY)」の周知性を考慮した場合、本件商標をその指定商品である「家庭用浄水器」について使用した場合は、これに接する取引者、需要者は、「HURLEY」の文字部分に殊更強く印象づけられるというべきである。

してみると、本件商標は、「HURLEY」の文字部分から、単に「ハーレー」の称呼をも生ずるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、アメリカの「HurleyChicago(ハーレーシカゴ)」社の取扱いに係る家庭用浄水器について使用される「ハーレー・タウンアンドカントリー(Hurley Town&Country;ハーレー1)」及び「ハーレー2(HURLEY2)」と「ハーレー」の称呼において類似する商標であって、その指定商品は、「HurleyChicago(ハーレーシカゴ)」社の取扱いに係る家庭用浄水器と同一である。

6.審判請求の理由、弁駁及び答弁の理由、甲第66号証、甲第71号証、甲第72号証、甲第88号証ないし甲第94号証、乙第60号証によれば、以下の事実が認められる。

(1)ウィズ コーポレーション(被請求人のハーレー製品取扱い会社の前身で、被請求人は、ハーレー製品を取り扱う新たな会社として引き継いだ。)は、請求人との間で、請求人が日本国内において独占的して販売する権利を有するハーレー2に関し、平成3年(1991年)4月1日に発効する継続的商品売買契約を締結したこと。

(2)請求人の代理人は、被請求人及びウィズ コーポレーション両名に対し、平成4年(1992年)12月10日付け通知書により、上記契約を解除する旨の通知をしたこと。

(3)被請求人は、上記契約が解除された平成5年(1993年)4月以降、アメリカのH&N社を介して「ハーレー2」の輸入を行い、日本国内で販売していたところ、ハーレーシカゴ社は、平成5年9月にH&N社に対して、被請求人輸入の「ハーレー2」を被請求人が日本国内で修正を加えたこと等の理由により、契約解除をしたこと。被請求人は、その後も第三者を介して「ハーレー2」の輸入し販売していること。

7.(1)前記6.で認定した事実からすると、被請求人は、アメリカのハーレーシカゴ社の製造に係る「ハーレー2」商標を使用した家庭用浄水器が、従来になかった画期的な家庭用浄水器であり、アメリカの各種テストで最優秀の評価を受けた高性能の商品として、アメリカ及び日本国内において、その取引者、需要者の間に広く認識されていることは、本件商標の登録出願前より極めてよく知る立場にあったと認め得るところである。

(2)このような状況にある中で、被請求人は、前記認定のとおり、アメリカの「HurleyChicago(ハーレーシカゴ)」社の取扱いに係る家庭用浄水器について使用される「ハーレー・タウンアンドカントリー(Hurley Town&Country;ハーレー1)」及び「ハーレー2(HURLEY2)」と類似する本件商標を登録出願したものである。

そして、被請求人が本件商標を登録出願することにつき、ハーレーシカゴ社の承諾を得ずにしたことは明らかであり、これを覆す証拠は存在しない。

(3)してみると、被請求人は、アメリカ及び日本国内において、周知性を獲得している「HurleyChicago(ハーレーシカゴ)」社の取扱いに係る家庭用浄水器について使用される「ハーレー・タウンアンドカントリー(Hurley Town&Country;ハーレー1)」及び「ハーレー2(HURLEY2)」と類似する本件商標を、「HurleyChicago(ハーレーシカゴ)」社に無断で先取り的に登録出願したものであり、前記6.(2)の被請求人が請求人との間で締結された継続的商品売買契約を解除された事実、及び前記6.(3)のハーレーシカゴ社がH&N社に対して契約解除をした事実並びにこれらの契約解除後も、「米国のハーレー社で開発 日本総発売元フラックス/ハーレー2」(乙第5号証)と宣伝広告していた事実等を併せ考えると、本件商標の登録出願は、公正な取引秩序を乱すおそれがあるものであり、かつ、国際的信義則に反するものというべきである。

8.以上のとおりであるから、本件商標は、アメリカ及び日本における家庭浄水器の分野において、その取引者、需要者の間に広く認識されている「ハーレー・タウンアンドカントリー(Hurley Town&Country;ハーレー1)」及び「ハーレー2(HURLEY2)」と類似するものであって、不正の目的をもって使用する商標であることは明らかであるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものというべきものである。

したがって、本件商標は、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とする。

よって、結論のとおり審決する。

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