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Trademark Appeal Case

小売役務の役務該当性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第17464号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「ESPRIT」の欧文字を横書きしてなり、第35類「化粧品・香水類・石けん類・トイレ用品・めがねフレーム・サングラス・日覆い・宝玉・時計・紙類・紙製品・印刷物・刊行物・書籍・ノートブック・スケジュール帳・住所録・筆記製図用具及びその製品・文房具・キャリングケース・かばん・旅行かばん・かさ・ハンドバッグ・がま口・ベルト・財布・家具・額縁・家庭用小物及び容器・ガラス器・皿・カップ・マグカップ・椀・鉢・石けん入れ・灰皿・くし・スポンジ・歯ブラシを含むブラシ類(絵筆を除く)・ヘアブラシ・メーキャップ用ブラシ・陶磁器製家庭用品・テーブルクロス・ベッドカバー・敷布及び枕カバーを含む寝具類・タオル・ふきん・布製家庭用品・履物及びかぶり物を含む男性用及び女性用及び子供用被服・ゲーム・おもちゃに関連する小売り」を指定役務として、平成9年1月9日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶理由

原査定は、「本願は、政令で定める商品及び役務の区分第35類に属さない商品(役務)を包含している。『〜に関する小売り』は、取引の対象が個々の商品であり、商品の販売の際に提供するサービス(品揃、選択し易い商品の配列等)が、商品の販売に付随して行われるサービスにすぎないから、独立して取引の対象となる商標法上の役務とは認められない。したがって、本願は商標法第6条第1項の要件を具備しない。」旨認定、判断して本願を拒絶したものである。

3 請求人の主張

我が国において、「〜に関連する小売り」について商標登録による保護を求める場合には、便宜上、小売りされる商品すべてについて商標登録を取得する方法がとられている。しかしながら、小売りという行為は、むしろ、商標法第2条第1項第2号「業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用するもの」及び同第3項第3号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同 じ。)に標章を付する行為」との関連において保護されるべきものである。

例えば、百貨店においては、多くの他社の商標を付した商品を販売している。これに接する需要者は、その商品に付された商標から商品の出所を認識する。たとえ、その商品に百貨店Aの値札がついており、百貨店Aの包装紙で包装されようとも、その商品の出所を推し量るのは商品に付された商標である。

また、現代社会においては、小売りサービスは、単なる物売りとしての小売りではなく、需要者のニーズにこたえるべくさまざまな付随サービス・工夫を提供するものへと変革を遂げている。モノが市場にあふれている現代において、単なる商品の良さのみでは他社との差別化を図ることは困難であり、このような小売店の総合的なサービス活動がなくては、需要者を惹きつけることはできないものと考えられる。商品商標のみが保護対象となっていた旧法ならいざ知らず、役務商標が保護対象となった現行法のもとでは、小売りは、商品の販売の場所を提供し、それに伴うさまざまな便益を需要者に与える役務として保護されるべきである。

更に、かかる「〜に関連する小売り」について、1997年1月1日に発効したニース協定第7版では第35類の注釈において、′′the bringing together,for the benefit of others,of a variety of goods(excluding the transport thereof),enabling consumers to conveniently view and purchase those goods′′(「他人の便益のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便益を図ること」)を挙げ、かかる役務の登録が可能であることを示唆している。同時にアメリカをはじめとする多くの国々で「〜に関連する小売り」についての商標登録を認めている。このように、ニース協定が認める役務について、「商品にかかるものである」ことを理由に、協定加盟国である日本が登録を認めないのは、国際協調の精神に反するものである。

4 当審の判断

本願の指定役務は、各種商品に関連する小売りと認められるところ、これが商標法にいう役務といえるかどうかについて検討する。

ところで、商標法は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、....商標登録を受けることができる。」と規定する(同法第3条第1項)とともに、商標及びその使用については定義規定(同法第2条参照)を置いているが、商品及び役務が何であるかについては特に定義しておらず、これは専ら社会通念に委ねられているものといえる。しかして、社会通念に照らし、商標法にいう「商品」は「商取引の対象となる有体動産であって、それ自体流通過程にのせられ転々流通するもの」と解されるのに対し、「役務」は「他人のために提供する労務又は便益であって、独立して取引の対象となるもの」と解するのが相当である。

これを本件についてみるに、各種商品の小売り自体は、他人のために商品の販売場所を提供し、商品を展示して商品の購買・選択の機会を与えるという労務・便益といえなくもないが、通常、「小売り」は、「物品を卸売りから買い入れて、これを消費者に分けて売ること。」(岩波書店発行「広辞苑」第5版)を意味するのであって、請求人も、需要者に商品の購買・選択の機会を与えることに止まらず、需要者によって選択された商品を販売することを目的にしているものと解される。

請求人が主張するように、現代社会においては、小売店が単なる物売りではなく、需要者のニーズにこたえるべくさまざまな付随サービス・工夫をしていることは認められるとしても、例えば、請求人のいうブランドイメージにあった店舗設計、需要者の購買意欲をそそる商品展示などの店舗コーディネイトや、商品購入に際してのサイズ選び、試着、アドバイス等の小売店によって行われる行為は、商品を販売するために付随して行われる行為というべきであり、需要者の目的も当該商品を小売店から入手することにあるといえるから、これらの行為自体が独立して経済取引の対象になっているものとはいい難い。

また、請求人は、小売りという行為は、商標法第2条第1項第2号及び同第3項第3号との関連において保護されるべきであり、百貨店で販売される商品には百貨店とは別の商標が付されているから、たとえ、百貨店の値札がついていて百貨店の包装紙で包装されようとも、商品に使用されている商標は個々の商品に付された商標であり、百貨店の商標ではない旨主張している。

しかしながら、商標法は、「商標」の定義において「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」と定め(同法第2条第1項参照)、商標がいわゆる商品の「製造標」のみならず「販売標」としても機能することを明らかにしており、請求人及びその需要者の目的は、商品選択の機会又はアドバイスの授受等に止まらず、商品の販売と購買とにあるといえるから、上記「各種商品に関連する小売り」という商品の販売を業とする請求人が使用する商標は、自己の責任により選択して販売する商品であることを示し、他の販売業者の選択販売する商品と区別するという商品の販売標とみるのが相当である。

更に、請求人は、上記「各種商品に関連する小売り」について、1997年1月1日より発効しているニース協定の国際分類第7版において国際分類第35類の注釈に「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」が追加されたことをもって、かかる役務の登録が可能である旨主張している。

しかしながら、上記第35類の注釈には、特に含まないものとして、「主たる業務が商品の販売である企業、すなわち、いわゆる商業に従事する企業の活動」が掲げられており(特許庁商標課編「商品・サービス国際分類表」第7版参照)、上記「各種商品に関連する小売り」は、商品の販売を目的にするものであって、この注釈にいう「商品の販売」に相当するといえるから、上記第35類のサービスには含まれないものと解されるし、我が国においては、商品の小売りは、従前より、上記第35類のサービスに属する役務ではないとして取り扱っている。

このことは、上記国際分類第7版についての審議が行われたニース同盟の第17会期専門家委員会において、小売店サービス(retail store services)の表示は、その表示に関する国際登録標章の保護の範囲又はそのような標章の承認についていかなる国も拘束するものではないとされ、小売店サービスは限定的に解釈されるべきであるとされた経緯(上記専門家委員会報告書「CLIM/CE/XVII/5」 Para.24及びPara.25参照)に照らしても、首肯し得るものである。

そして、上記第35類の注釈において特に含まれるとされる「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」の趣旨は、商品の小売りをすることではなく、他人のために各種商品の品揃えや店のレイアウト等をすることに止まるのであって、上記専門家委員会において、その他人とは顧客、各種商品の製造業者等をいい、商品の品揃えサービスを行う者をいうのではないとされた(上記専門家委員会報告書「CLIM/CE/XVII/5」 Para.26参照)ことからも、その他人がその他人の顧客に商品を販売することを想定しているものと解される。

そうすると、上記第35類の注釈が変更されたからといって、直ちに商品の小売りが上記第35類に含まれるサービスとして認められたということはできないから、請求人のこの主張は、採用することができない。

以上を総合すると、本願の指定役務は、商標法にいう役務ということはできない。

したがって、本願が商標法第6条第1項の要件を具備しないとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、これを取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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