Trademark Appeal Case
「しみとりくん」の識別性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成7年審判第14547号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「しみとりくん」の平仮名文字を横書きしてなり、第3類「ウエットティッシュ」を指定商品として平成4年8月19日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、商品「染み抜き剤」を容易に認識させる「染み取り」をひらがなで表したものと認められる「しみとり」の文字に敬称「くん」の文字を付して「しみとりくん」と普通に用いられる方法で書してなるものであり、本願の指定商品は提出された商品説明書によれば「不織布に染み込ませた染み抜き剤」と認められるものであるから、これをその指定商品に使用しても、これに接する需要者、取引者は何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないと認める。」旨認定、判断し、商標法第3条第1項第6号に該当し、かつ、使用による識別性の取得も認められないとして本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
請求人は、原査定に対して、「しみとり」は辞書にも掲載されておらず「染み抜き」を意味しない、また、本願商標「しみとりくん」は造語であって、自他商品の識別力を有する旨述べると共に、本願商標は使用により識別性を有するに至ったと主張し、参考資料として、原審時の提出に追加して、第18から第43までの資料を提出している。
よって検討するに、布地についてしみや汚れを除去することを表す用語としては「染み抜き」が正しく、一般的であるとしても、「しみとり」は「染み」を「取る」ことを直接的に表したものであり、その意は容易に理解されるもので辞書への掲載の有無に係わらず一般的に使用され、理解されているものと認められる。
また、本願商標は「しみとり」に「くん」を付して擬人化を図ったものとしても、前記認定のとおり「しみとり」は「染み抜き」の意を直接的に表したものであり、これに「くん」を付したところで、「染み取り」、延いては「染み抜き」の意を和らげる効果はあるとしても、依然として「染み取り」の意を認識させるものであり、前記意味合いを消し、別の意味合いを生じさせ又は特定の擬人を想起させるまでに至っていないものである。
請求人は、この点に関し、意見書において18件の登録例を挙げて、本願商標は識別性がある旨主張しているが、数例を除き、いずれも指定商品の品質等を間接的に表した語又は暗示させる語に「くん」等を付したものであり、指定商品の品質等を直接的に表したものに「くん」を付した本願商標とは事案を異にすると言うべきである。また、「くん」等を付してネーミングすることが普通に行われている現在では過去の登録例とは同列には論じられず、参考とすべきでないものも含まれているとみられる。
次に、本願商標が使用により識別性を有するに至ったかどうかについて、原審において提出した参考資料20から24まで、当審において提出した参考資料18から43までの資料に基づいて検討するに、本願商標「しみとりくん」は平仮名を黒色で横書きしてなるものであるのに対して、資料における使用商標は、使用商品現物に付した「しみとりくん」に関するものも、▲1▼長方形状に塗りつぶしたマリシブルーの中に「しみとり」の文字とそれに比して小さめに「くん」の文字を共に黄土色で表したもの(本願商標の書体とは異なる書体である。参考資料第19の上段中央、当審提出)、▲2▼離れて配した二個の赤丸の中心を結ぶ直線を引き、その上に「しみとり」、下に「くん」の文字を共に青色で表したもの(両文字の大小は▲1▼に同じ。参考資料第19の上段下部、当審提出)、▲3▼長方形の輪郭内に「しみとりくん」の文字を表したものであり(参考資料第19の下段、当審提出)、また、同じ使用商品現物であっても参考資料24(原審提出)には前記認定▲2▼の商標と構成を同じくし文字部分を緑色で表したものだけが付され、参考資料20(原審提出)には青色一色で表した▲2▼の商標と同じくするものが使用されており、いずれも本願商標とは構成態様が異なり、わずかに参考資料18(当審提出)のみにほぼ本願商標と同一とみられるものが認められるだけである(この資料と出願人の関係は不明)。
使用による識別性の取得を認めるには、本来的には識別性が無く登録されるべきでない商標に商標権を認めるものであり、また、使用による識別性を取得するには統一的な使用が肝要であり、使用商標と出願商標の同一ないしは符合は重要であるところ、本願商標と使用商標は悉く構成態様において異なるものであることは前記認定の通りである。
請求人は、使用による識別性の取得の認定に当たっては社会的同一性を採用すべきとして東京高裁の裁判例(昭和59年10月31日判決 同年57年(行ケ)213号)を引用しているが、同裁判例を考慮しても提出各資料をもっては本願商標について使用による識別性の取得を認定するには困難と言わなければならない。
また、資料上における使用商品は、「不織布に染み込ませた染み抜き剤」であって、その需要者は最終消費者である個々の者であり、このような需要者が最終消費者である日用品的な商品について使用による識別性を取得するには使用の範囲が広範囲に渡り、その販売先、販売数量も多数、多量であることを要するものと解されるところ、参考資料23(原審提出)及び同23乃至36(当審提出)によれば、使用商品の販売先は10程度の都府県内であり、主として企業等に買い上げられて、そこから最終消費者に当該企業の販促品として無償で配布されるものと認められる。
その中で繰り返して販売された販売先の所在地は大阪府、東京都、京都府等の数都府県だけであり、販売先の多くが生命保険会社等でこの種商品にしては少数であり、また各取引毎の販売数も多くはなく、使用商品はこれらの範囲内で流通しているものとみられ、しかも、その大半は、本来の需要者たる最終消費者には販促品等として配布される物で、商品として流通しているとは言えないものであるから、広範囲に渡る多数の最終消費者の間に流通したものとはと認められない。
以上の認定によれば、本願商標は、使用による識別性を取得したものとは認め難いと言うべきである。
したがって、本願商標は、これを指定商品に使用しても、需要者、取引者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものであり、商標法第3条第1項第6号に該当するから、同号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消す限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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