Trademark Appeal Case
ポロ図形商標の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第91314号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4123194号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成3年8月23日に登録出願、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として、同10年3月13日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立理由
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由の要点
登録異議申立人の提出した証拠及び取消理由通知書に示した職権調査による資料によれば、「POLO」及び「Polo」の商標は、遅くとも1974年頃にはラルフ・ローレンのデザインに係る被服等を表示するものとして広く知られるようになり、我が国においても昭和52年から53年にかけてラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、婦人服、紳士靴、サングラス等の販売が始められた。
また、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士用品については、「dansen 男子専科」((株)スタイル社 1971年7月発行)、「世界の一流品大図鑑’79年版」((株)講談社昭和54年5月発行)等の書籍に「POLO」、「Polo」、「ポロ」及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形(別掲(2)に表示)等の商標(以下「引用商標」という。)と共に紹介されていることが認められる。
以上の事実を総合すると、引用商標は、著名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして、本件商標の出願前には我が国においても衣料品、靴、かばん、眼鏡等ファッション関連の商品分野の取引者、需要者の間に広く知られていたものと認め得るものである。
そして、本件商標は、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形よりなる引用商標とモチーフを同じくするものであって、その指定商品は、引用商標の使用に係る商品と需要者を共通にする場合が多いものと認められる。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合、ラルフ・ローレン若しくはこれと何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標権者の意見の要点
(1)出所混同の不可能性/図形の非類似性
(a)引用図形の特定
引用図形は、やや左向きの馬の図形で、右足を上げた状態の馬の上にポロ競技のプレーヤーが体を伸ばしてスティックを右手の上方に高々と振り上げている図形であり、振り上げられたスティックは、競技者の左肩上まで持ち上げられている。このスティック部分が上方に突出している事が他のポロに関する商標と比較して特徴的な部分と考えられる。
(b)本件商標の図形
本件商標の図形は、黒いシルエット図形で、右向きの馬の上にポロの競技者が左下を見ながら真下にあるポロの玉を下向きに降ろしたスティックで正に打たんとしている図であり、馬の足とスティックが混在し、全体として動きを感じさせることに特徴のある図形である。
(c)図形の外観の非類似性
本件商標の図形と引用商標の図形を詳細に対比すると、両者は、先ず第一に馬の向きが異なることが大きな相違となる。動物の図形からなる商標の場合、動物の向きは重大な要素であり、反対向きであっただけでも非類似と判断されている例がある。
次に、競技者の態勢が腕を振り上げている状態であるか屈み込むようにして腕を下方に伸ばしている状態であるかについても明確な相違があり、これに関連して、スティックが上に振り上げられていて独立して明らかに見える状態にあるか、下方向に向けられて馬の足とスティックが混在した状態にあるかについても大きな相違がある。
本件商標と引用商標は、馬の向き、競技者の動作、スティックの位置、図形の持つ動き等々において相違があり、これらの諸点を総合的に判断すると、本件商標と引用商標は、詳細な部分についても類似する点が大変に少ないのみならず、全体の印象等々についても類似するものではなく、容易に識別できる非類似の図形であることは明らかである。
(d)他の登録例との類否
「ポロ競技をしている図形」からなる商標の登録は、本類においても、また他類においても多数併存する。本件商標の図形と引用商標が類似するか否かを判断するに際しては、他の登録例との関係を明確にして類似の幅を確定する必要がある。
多数の「ポロプレーヤーの図形」からなる図形商標が併存している状況にあって、類似と判断するにはその特徴的な部分を共通にする等の特別な理由が必要であり、そうでない限り、これを類似するものと判断することはできないものである。単に、ポロ競技をする人の図であることだけを共通にする本件商標と引用商標の場合には、到底これを類似するものとは言えず、非類似の商標と判断せざるを得ないものである。
(e)図形の観念・称呼の非類似性
本件商標および引用商標の図形からは、特定の称呼および観念を生じないものであり、ポロ競技の図形は、多数の商標が併存しており、それらが全て、称呼・観念を同一とすることはできないものである。したがって、本件商標と引用商標は、その称呼・観念において類似するものではない。
(f)先審査例
本件商標と同一の図形の商標、登録第2317546号商標の審査時においても、異議決定においては、「異議申立人が著名であるとして引用する商標とは スティックの位置、人物の騎乗の動作、全体の向き等が明らかに相違する上、黒いシルエット図形で描かれていることから、対比・離隔的に観察しても、著しく印象を異にする非類似の商標とみるのが相当である。」と判断され、商標法第4条第1項第15号該当性を否定している。
同様の異議決定は、旧第20類における本件商標と同一の商標(登録第2719193号)についての異議決定についてもなされており、更に、本件商標と同一の図形を含む商標は、他類においても、引用商標との間に商品の出所混同の可能性はないと判断され、登録されていることに照らしても、本件商標は引用商標と類似するものではなく、出所混同を生ずる虞れもないことは明らかである。
(2)具体的出所混同の不在
本件商標を使用した商品はすでに市場に大量に販売さており、他の同種のポロ関連商品と併存して販売されている。それらの同一商品群の中で本件図形商標が付された商品とラルフ・ローレンの商標の付された商品間で具体的に混同を生じた事実はない。
また、ポロ関連商標は、商標権者以外にも多数の者の商標があり、取引の実際においても、それぞれのポロ関連商標として充分に需要者・取引者に認識され、区別されているものである。米国においても、日本の市場でも、商標権者の商品がラルフ・ローレンの業務に係る商品と混同を生じている事例は全くなく、その販売実績と流通量から考えて、出所の混同を生ずる商標でないことは需要者の動向及び市場の反応からも明らかである。
(3)商標権者の業務保護
取消理由通知書においては、本件商標にポロ競技者の図形が含まれているので、ラルフ・ローレンの商標との間で出所の混同を生ずると判断しているが、この判断は、ポロ競技者の図形が含まれる商標は、全てラルフ・ローレンの商標と混同を生ずるとの判断に至るものであり不当である。
ポロ競技者の図形が全く独創的な図形であれば、第三者がその造語を使用する事を禁止したとしても第三者に不利益は生じないと考えることができるが、ポロ競技者の図形である限り、そのイメージを商標として独占できるものではないし、また競技名を、一私人に独占させることを許すべきものでもない。
(4)異議申立人とポロ競技
商標権者の上部団体であるアメリカ合衆国ポロ協会(United States Polo Association)は、米国を初め、カナダ、北メキシコのポロ・プレイヤーおよびポロ・クラブを統括する団体であり、1890年に設立され、すでに100年を越える歴史があり、アメリカのポロ競技において最も権威ある組織である。
これに対して、異議申立人は、単にポロ競技のイメージをその商標に利用するだけのものに過ぎない一業者であり、このような者が、自己の名称の中にポロの名称を取り込んでいるからといって、ポロ競技のイメージを持つ多くの商標の使用を排除しようとすることは、全く妥当性を有するものではなく、まして、ポロ競技に多大の貢献をしているポロ競技の統括団体である商標権者が、ポロ競技に貢献するために行っているライセンス・ビジネスについての商標取得が拒絶されることは妥当性を有するものではない。
(5)結語
上述のとおり、本件商標は、引用商標とは類似するものではなく、また、具体的出所混同は実在せず、またその可能性もないので、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではない。
5 当審の判断
(1)登録異議申立人 ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップの提出に係る甲第2号証ないし同第7号証、同第10号証及び同第11号証並びにこれらに関連した以下にあげる各種雑誌、新聞等によれば、以下の事実が認められる。
(a)株式会社講談社(昭和53年7月20日)発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング(昭和58年9月28日)発行「舶来ブランド事典『’84 ザ・ブランド』」の記載によれば、アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、かばんなどのデザインをはじめ、紳士物全般に拡大し、1971年には婦人服の分野にも進出した。1970年と1973年に服飾業界で最も名誉とされる「コティ賞」を受賞し、1974年に、映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことからアメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。この頃から、その名前は我が国の服飾業界においても広く知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに「by Ralph Lauren」、「by RALPH LAUREN」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」の各標章が使用され、これらは「Polo(ポロ)」の略称で呼ばれるようになった。
(b)株式会社洋品界(昭和55年4月15日)発行「月刊『アパレルファッション店』別冊、1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」、ボイス情報株式会社(昭和59年9月25日)発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」、昭和63年10月29日付日経流通新聞の記事及び株式会社チャネラー(昭和54年9月)発行「別冊チャネラーファッション・ブランド年鑑’80年版」等によれば、我が国においては、西武百貨店等が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等、同53年から婦人服の輸入、販売を開始したことが認められる。
(c)また、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士用品等については、前出「男の一流品大図鑑」、「舶来ブランド事典『’84 ザ・ブランド』」をはじめ、株式会社スタイル社(1971(昭和46)年7月10日発行)「dansen男子専科」、株式会社講談社(昭和54年5月20日)発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、同社(昭和55年6月)発行「世界の一流品大図鑑’80年版」、同社(昭和55年11月20日)発行「男の一流品大図鑑’81年版」、同社(昭和56年6月)発行「世界の一流品大図鑑’81年版」、婦人画報社「MENS’CLUB」1980(昭和55年)年12月号及び株式会社講談社(昭和60年5月)発行「FASHION SHOPPING BIBLE’85 流行ブランド図鑑」などの書籍において、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題のもとに広告又は紹介されていることが認められる。
(d)さらに、引用商標を模倣した偽ブランド商品が市場に出回り刑事摘発を受けた旨が、例えば、平成1年5月19日付朝日新聞夕刊(甲第10号証)において報道され、この記事中では引用商標が「ポロ」、「POLO」、「Polo」等と称されている。
(e)なお、ラルフローレンの「POLO」・「Polo」・「ポロ」・馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の標章について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定し、その周知性を認めた判決として、甲第7号証の判決を始め、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第250号、同第251号、同第252号、同第267号、同第290号(以上平成11年12月16日言渡)、同第268号、同第289号(以上平成11年12月21日言渡)、同第288号(平成12年1月25日言渡)、同第298号、同第299号(以上平成12年2月1日言渡)、同第192号(平成12年2月29日言渡)、同第333号、同第334号(以上平成12年3月29日言渡)等の一連の判決がある。
(2)以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として、遅くとも本件商標の登録出願時までには、既に我が国において取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
(3)しかして、本件商標は、別掲のとおり、疾走する右横向きの馬に乗ったポロ競技のプレイヤーが真下に位置するボールを、下に位置するマレット(T字状のスティック)で打とうとする様をシルエット風に表してなる図形である。
そして、本件商標とラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして広く知られている引用商標中の疾走する左横向きの馬に乗ったポロ競技のプレイヤーが右上部にマレットを構えている図形とは、その両者を対比すると、全体の描き方、プレイヤーの姿勢、マレットの位置・角度等が異なるものの、ともに馬に乗ってマレットをもちポロ競技に興じているプレイヤーを表してなることにおいて、共通点を有することが認められる。
また、本件商標の指定商品は、引用商標の使用に係る商品と需要者を共通にする場合が多いと認められるものである。
このような事情の下において、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る引用商標中の疾走する左横向きの馬に乗ったポロ競技のプレイヤーが右上部にマレットを構えている図形を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
なお、商標権者は、審査例、審判例を挙げて、種々主張するところあるも、過去にされた審査例等は具体的、個別的な判断が示されているのであって、必ずしも確立された統一的な基準によっているものとはいえず、仮にその中に矛盾や誤りがあるとしても、具体的事案の判断においては、過去の審査例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、商標権者の主張は採用することができない。
(4)結論
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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