Trademark Appeal Case
周知商標との混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90313号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4211352号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター、靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成7年9月27日に登録出願、同10年11月13日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、米国ニューヨーク州所在のリミテッドパートナーシップであり、その関連会社やライセンシー及び販売店を通して、被服や眼鏡類及びフレグレンスその他のファッション関連商品の世界的な製造・販売に携わっているものである。
申立人がライセンシーや販売店等を通じて製造・販売している商品は、申立人の主な構成員の一人であり世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレンによって主にデザインされたものである。そして、申立人が取り扱う商品の商標として、「馬に乗りポロ競技をしている人」の図形及び「Polo」、「Ralph Lauren」の標章を単独又はそれらを組み合わせて長年使用しているものであって、それらの標章は本件商標出願前から既に周知・著名になっているものである。
そして、本件商標は、申立人がその業務に係る被服類、眼鏡等の商品に長年使用し、申立人が使用して著名となっている標章と酷似するものであるから、これを指定商品に使用したときは、取引者・需要者をして、申立人又はその関係者によって製造・販売されている商品の一種であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
第3 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第4条第1項第15号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由は、次のとおりである。
〈取消理由〉
1 本件登録第4211352号商標(以下「本件商標」という。)は、下記に表示したとおりの構成からなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター、靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品とし、平成7年9月27日に登録出願、同10年11月13日に設定登録されたものである。
2 引用商標の周知性について
登録異議申立人の提出に係る甲第3号証及びサンケイマーケッテング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在のラルフ・ローレンは、1967年ネクタイメーカーのボー・ボランメル社にデザイナーとして入社、幅広ネクタイをデザインし、圧倒的に若者に支持され、世界に広まった。翌1968年独立、社名を「ポロ・ファッションズ」(以下、「ポロ社」という。)とし、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出、服飾業界の名誉ある賞、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、数々の賞を受賞。1974年の映画「華麗なるギャツビー」の主演ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。
我が国においても、ラルフ・ローレンの名前は服飾業界等において広く知られるようになり、そのデザインに係る商品には「Polo」の文字とともに「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標、(以下、一括して「引用商標」という。)が用いられ、これらの商標は「ポロ」と略称されている。
そして、(株)洋品界昭和55年4月発行「海外ファッション・ブランド総覧 1980年版」「ポロ/Polo」の項及びボイス情報(株)昭和59年9月発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフローレン」の項の記述及び昭和63年10月29日付日経流通新聞の記事によれば、我が国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、(株)スタイル社1971年7月発行「dansen男子専科」、前出「男の一流品大図鑑」、(株)講談社昭和54年5月発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、(株)チャネラー昭和54年9月発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80版」、「男の一流品大図鑑81年版」(昭和55年11月発行)、「世界の一流品大図鑑’80版」(昭和55年5月発行)、婦人画報社昭和55年12月発行「MEN’S CLUB I980,12」、「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年5月発行)、前出「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、(株)講談社昭和60年5月発行「流行ブランド図鑑」に、眼鏡については、「世界の一流品大図鑑’80版」、「ファッション・ブランド年鑑’80版」、「男の一流品大図鑑’81年版」、「世界の一流品大図鑑’81年版」に「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフローレン(アメリカ)」等の商標の下に紹介されていることが認められる。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」、「ポロ」、「Polo」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した甲第7号証及び甲第8号証の判決があるほか、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第250号、同第251号、同第252号、同第267号、同第290号(以上平成11年12月16日言渡)、同第268号、同第289号(以上平成11年12月21日言渡)等の一連の判決がある。
さらに、引用商標を模倣した偽ブランド商品が市場に出回り刑事摘発を受けた旨が、例えば、平成1年5月19日付朝日新聞夕刊、同4年9月23日付読売新聞(東京版)朝刊、同5年10月13日付読売新聞(大阪版)朝刊、同10年6月8日付朝日新聞夕刊等において報道されている。
以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、我が国においては、遅くても本件商標の出願時には既にラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして引用商標が取引者、需用者の間に広く認識されていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
3 商品の出所の混同のおそれについて
本件商標は、下記のとおり、マレットを立てたポロ競技者とその背後に一頭の馬の図形からなるものである。
しかして、両者は騎乗しているかどうかの差異があるものの共にポロ競技をしている人と一頭の馬の図形からなるものであり、前記認定の如く引用商標が著名であることに照らせば、本件商標に接する需要者、取引者は、本件商標から引用商標を連想、想起するというのが相当である。
また、本件の指定商品は、上記引用商標が使用されている商品と密接な関係を有するものである。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用する場合に、これに接する 取引者、需要者は、ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものと認められる。
第4 商標権者の意見
上記第3の取消理由通知に対して、商標権者は意見書を提出して、要旨次のように述べた。
1 本件取消理由は、その認定、判断を誤り、違法である。以下、その理由を詳述する。
2 本件商標は、疾走する右横向きの馬と、この馬の前方に、棒状のものを左斜め上方の向きに所持して立つ人物を描いてなるものであり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター、靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成7年9月27日に出願され、同10年11月13日に設定登録された商標(乙第1号証)である。
これに対して、本件取消理由において引用された商標は、(1)馬に騎乗した、(2)「競技中のポロプレイヤー」を、(3)左斜め前方から描いた図形と、(4)「Polo/by RALPH LAUREN」及び「ラルフローレン」の文字よりなる商標(乙第2号証)である。
3 本件商標の構図は、疾走する右横向きの馬と、この馬の前に立つ人物を描いたものであって、(1)馬に騎乗した、(2)「競技中のポロプレーヤー」を、(3)左斜め前方から描いた図形と、(4)「Polo/by RALPH LAUREN」及び「ラルフローレン」の文字よりなる引用商標とは全く異なった極めて独創的なものである。また、本件商標は、人物の黒い帽子、半そでのポロシャツ、乗馬靴と、白いズボン、腕、顔及び首が、コントラストをもって表現されているので、馬に騎乗した「競技中のポロプレーヤー」を、黒塗りの表現で描いた引用商標とは、表現方法が異なり、看者の受けるイメージとしても、全く別異のものである。
そして、本件商標は、ある人からは、「ウマノマエニタツジンブツ」と称呼され、「馬の前に立つ人物」のイメージで取引きされるかも知れないし、別の人からは、「ヒトノハイゴヲカケルウマ」と称呼され、「人の背後を駆ける馬」のイメージで取引きされるかも知れないが、我が国において取引者・需要者が、(1)馬に騎乗しないで、(2)「競技中のポロプレーヤー」でもなく、(3)「Polo」の文字を含まず、(4)図形の構図、(5)表現方法においても引用商標と著しい差異がある本件商標をみて、ポロ競技であることを認識し、延いては引用商標を連想、想起することは、我が国におけるポロ競技の認識の薄さを考えれば、到底想像できないのである。要するに、本件商標は、その特異な外観によってのみ取引者・需要者に把握されるものであって、本件商標を見る者に、ポロ競技であることを認識させ、延いては引用商標を連想、想起するとまでは、到底認めることができないのである。
4 本件商標は、構成中に「Polo」の文字を含むものではなく、ポロ競技を表すのに象徴的な、馬に騎乗した「競技中のポロプレーヤー」を描いたものでもない。したがって、仮に引用商標が、「ポロ」の略称で取り引きされる特殊な事情があるのだとしても、本件商標より「ポロ」の称呼又は観念が生ずる余地はないから、本件商標と引用商標が、称呼又は観念の点で誤認混同されることも起こり得ない。
5 取引者・需要者は、ラルフ・ローレンが、このような引用商標とは全く別異の商標を、自他商品を識別する商標として採択することなど有り得ないことも充分認識しているので、本件商標は、商標権者によってその指定商品に使用されても、ラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について取引者・需要者に誤認混同を与えるおそれはないものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、その登録は維持されるべきである。
第5 当審の判断
1 申立人より提出された甲第3号証の「男の一流品大図鑑」(講談社 昭和53年7月20日発行)の記載によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・フアッシヨンズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデサインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃からラルフローレンの名前は我が国の服飾業界においても広く知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、「Polo」の文字と共に「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれているものである。
そして、同じく甲第11号証の昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、同53年から婦人服の輸入、販売、製造を開始したことが認められる。
また、上記の証拠調べで示した各判決のほか、引用商標についての認定事実について判断を認定した判決(東京高等裁判所平成12年(行ケ)第162号、平成13年2月8日言渡)がある。
以上の事実を総合し、上記の各判決をも併せ考慮すると、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する商標として遅くとも昭和55年頃までには既に我が国において取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
2 本件商標は、別掲に表示するとおりの図形よりなるところ、疾走する右横向きに疾走する一頭の馬と、その馬の前方にポロ競技用のスティック(マレット)を斜め上方にかざして、乗馬用の帽子、被服、靴を身に付けている一名のポロプレイヤーであるというべきで、ポロ競技を人馬をもって象徴的に表してなるものとみるのが相当といえるものであり、その構成全体より「ポロ」の称呼、観念を生ずると認められるものである。
この点について商標権者は、本件商標の構図は極めて独創的であり、「競技中のポロプレーヤー」を描いたものではなく、「ポロ」の称呼及び観念が生じるものではない旨主張しているが、上記の認定のとおりであり、商標権者の主張は採用することができない。
3 他方、引用商標は、その構成に係る「Polo」「by Ralph Lauren」「ラルフローレン」等の文字と共に表されているいわゆる「ポロプレーヤー」の図形部分は、アメリカの著名なデザイナーであるラルフ・ローレンの考案によるもので、1970年頃にはアメリカでは著名になり、前記「ポロプレーヤ一」の図形、「Polo」「Ralph Lauren」の各文字及びこれらの組み合わせよりなる商標を付した「ネクタイ」、「洋服」、「眼鏡」等が販売され、我が国においても、少なくとも本件商標の出願前、既に著名なものとなっていて、これら引用商標が「ポロ」と略称されていたことが認められる。
そして、本件商標の指定商品はファッション関連の商品であって、上記引用商標が使用されている被服、眼鏡等とは、同一又は類似の商品を含んでいるものである。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合には、前記実情から、これに接する取引者、需要者は、その構成に係る馬とポロ競技のプレーヤーの図形に注目し、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形標章や「ポロ」の観念を想起し、本件商標が使用された商品について、ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くその商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
4 以上によれば、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。