Trademark Appeal Case
結合商標の要部抽出と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成8年審判第14415号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「POLO KNIGHT」および「ポロナイト」の文字を上下二段に横書きしてなり、第25類「履物」を指定商品として、平成6年6月6日登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ(アメリカ合衆国ニューヨーク市マジソンアベニュー650所在)がラルフローレンのデザインによる紳士スーツ、ポロシャツ、ネクタイ等に使用して本願出願前より広く需要者に認識されていた『POLO』の文字を顕著に有してなるものであるから、これを出願人が指定商品に使用するときは、需要者は上記会社もしくは上記会社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定して、本願を拒絶したものである。
3 請求人の主張
本願商標は、外観上、全体として一つのまとまりをもって表示されており、「POLO」の部分のみを顕著に表してなるものではない。また、観念上も前半後半それぞれが有する意味から、不可分一体的に「ポロ競技の騎士」との観念が生じるものとみるのが相当である。さらに称呼においても、「ポロナイト」と称呼され、かかる5音程度の商標は、敢えて途中で区切って称呼するよりも、簡易迅速を旨とする取引にあっては一息に称呼する方が自然である。
したがって、本願商標は、外観、観念および称呼のいずれにおいても「POLOポロ」の文字のみを抽出して認識されることはあり得ず、特に上記したとおり「ポロ競技の騎士」の意味合いに理解されるものであるから、不可分一体のものとして把握されるべきものである。
被服関係の取引市場においては、「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」と全く関係のない多数の会社が別個に「POLO」を含む結合商標を所有しており、しかもその商標を付した被服等を大々的に宣伝広告し販売している事実がある(甲第1号証ないし甲第5号証)。
さらに被服関係の雑誌においても、上記「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」と全く関係のない会社が、「POLO」を含む結合商標を被服等に付して大々的に宣伝広告している(甲第6号証ないし甲第13号証)。
このように被服等の市場において、実際に種々の「POLO」を含む結合商標が、多くの会社により大々的に使用されている事実があり、かかる実情からすれば、需要者が「POLO」を含む結合商標から敢えて「POLO」のみを抽出し、しかも上記「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」を認識するとは到底考えられない。
してみれば、本願商標も上記の商標と同様に「POLO」を含む結合商標であり、被服等の市場においてでさえ、需要者が「POLO」の文字があれば上記会社と認識して取引を行う事情がみられない以上、本願商標を被服と異なる商品「履物」に使用しても、そもそも需要者が上記会社に係る商品と認識するとは考えられず、それ故商品の出所混同が生じることはありえない。
請求人の主張が正当であることは、「POLO」を含む結合商標についての異議決定例(甲第14号証および甲第15号)や多数の登録例(甲第16号証ないし甲第25号証)からも容易に裏付けられる。
仮に原査定の如く出所混同が生じると認定するならば、これら登録例における判断と矛盾するものであり、審査統一の見地からも失当なものである。
してみれば、仮に百歩譲って「POLO」のみであれば、紳士スーツ等の被服につき「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」の商品であると認識されたとしても、本願商標の如く「POLO」を含む結合商標であって、且つ「ポロ競技の騎士」なる不可分一体の意味合いに把握されるものが、その指定商品である「履物」に使用した場合に、上記会社の業務に係る商品であるかの如く出所混同を生じさせるおそれがあるとは到底考えられない。
よって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
4 当審の判断
(1)「POLO」の周知性について
(株)講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」の記載によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター靴、カバンなどのデザインを始め、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出、服飾界の名誉ある賞「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、数々の賞を受賞。1974年に映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る商品には「Polo」の文字とともに「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各標章(以下、一括して「引用標章」という。)が用いられ、これらの標章は「ポロ」と略称されている。
そして、(株)洋品界昭和55年3月発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」「ポロ/Polo」の項及びボイス情報(株)昭和59年9月発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフローレン」の項の記述及び昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、(株)スタイル社1971年7月発行「dansen男子専科」を始め、前出「男の一流品大図鑑」、(株)講談社昭和54年5月発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、(株)チャネラー昭和54年9月発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」(昭和55年11月発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」(昭和55年5月発行)、婦人画報社昭和55年12月発行「MEN’S CLUB 1980,12」、「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年5月発行)、前出「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、(株)講談社昭和60年5月発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、眼鏡については、前出「世界の一流品大図鑑’80年版」、同「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、同「男の一流品大図鑑’81年版」、同「世界の一統品大図鑑’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」「ポロ」「Polo」「ポロ(アメリカ)」「ポロ/ラルフローレン(アメリカ)」等の標章の下に介されていることが認められる。
他に、これを覆すに足りる証拠はない。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」「Polo」「ポロ」の標章について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した東京高等裁判所の判決(平成2年(行ケ)第183号、平成3年7月11日言渡)がある。
以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、我が国においては、遅くとも昭和55年頃までには既にラルフ・ローレンのデザインに係る被服類、眼鏡製品等を表示するものとして引用標章が取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
(2)本願商標は、前記構成のとおり「POLO KNIGHT」の欧文字と「ポロナイト」の片仮名文字を二段に併記してなるところ、その構成中の「POLO」「ポロ」の文字部分は、ポロ競技(馬に乗り、スティックでボールを打って相手のゴールに入れ、得点数を競うもの)を、また「KNIGHT」「ナイト」の文字部分は、「(中世の)騎士」をそれぞれ意味する英語および外来語であり、いずれもよく知られるところから、両語を結合してなるものと容易に理解されるとしても、全体的には不可分一体の既成の観念を示すものとして一般に広く認識されているものとはいい難いものである。
この点について、請求人は、本願商標は「ポロ競技において戦う選手」を意味するものとして不可分一体的に「ポロ競技の騎士」との観念が生じるものとみるべきである旨主張するが、請求人のいう「ポロ競技の騎士」なる観念が一連の語句として通用している事実は認められず、一般に馴染まれたものではないから、たとえ上記観念が生じる場合があるとしても、その故をもって本願商標が常に不可分一体のものとして捉えられなければならないというものでもない。
(3)そうすると、本願商標は、構成中に「POLO」「ポロ」の文字を有するものと容易に認識、理解されるものであり、また、本願の指定商品「履物」は、身につけるという点でファッションに関連する商品であって、統一のブランドの下にトータル的にファッションをまとめようとする昨今においては、本願商標をその指定商品について使用した場合、前記実情からして、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「POLO」「ポロ」の文字に注目し、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る引用標章を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
(4)請求人は当庁における審査例、審判例を挙げて、種々主張するところあるも、過去にされた審査例等は具体的、個別的な判断が示されているのであって、必ずしも確立された統一的な基準によっているものとはいえず、仮にその中に矛盾や誤りがあるとしても、具体的事案の判断においては、過去の審査例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、請求人の主張は採用することができない。
(5)以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、これを取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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