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Trademark Appeal Case

三井の著名性と混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35583号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4004228号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4004228号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成からなり、平成6年8月19日に商標登録出願され、第36類「建物の売買,土地の売買,建物又は土地の鑑定評価」を指定役務として、平成9年5月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標登録の無効の理由に引用する商標(以下、併せて「引用商標」という。)は、以下のとおりである。

「MITSUI」の文字を書してなり、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項に規定する使用に基づく特例の適用を主張して平成4年9月30日に登録出願され、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,土地の売買,建物又は土地の情報の提供」を指定役務として、平成9年4月25日に設定登録された登録第3287296号商標、および「三井」の文字を書してなり、前記使用に基づく特例の適用を主張して平成4年9月30日に登録出願され、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,土地の売買,建物又は土地の情報の提供」を指定役務として、平成9年4月25日に設定登録された登録第3287295号商標。

第3 請求人の主張

請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨つぎのように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第49号証を提出した。

本件商標は、以下の理由により、商標法第4条第1項第15号、同第10号、同第8号及び同第11号に該当し、その登録は同法第46条により無効とされるべきものである。

1.商標法第4条第1項第15号が適用されるべき点について

(1)三井グループの沿革、概要、活動

(イ)三井家の事業は、その家祖三井高利が延宝元年(1673年)伊勢松坂より京都、江戸に出て越後屋呉服店を開いたことに始まる。三井高利は掛値なしの現金店頭販売という当時の常識を破る独創的商法を採用しその事業は大いに繁栄した。呉服業と併せその営む両替業も繁盛し、元禄4年(1691年)幕府は金銀為替御用達を三井両替店ほかに申しつけ、以後呉服業と両替業は三井の二大事業としてその繁栄の基礎となった。

高利は元禄7年(1694年)死亡したが、事業の永続的発展のためその遺言により嫡男三井高平を総領家としてその弟5名からなる六本家を設け、女系にも三連家を設け財産を同族の共有とした(その後三代目三井高房のとき二連家を加え、三井一族十一家となる)。 三井高平は三井全事業の最高統制機関として1710年「大元方」を設置した。これは明治になって組織された三井合名会社の基をなすものであった。

慶応3年(1867年)、王政復古の大号令が発せられると三井は朝廷方に味方し、新政府の金穀出納所(のちの大蔵省)の御用達として京都両替店主人、三井三郎助高喜らが任命された。

(ロ)明治2年、日本で初めての会社形態の企業として通商会社、為替会社ができたとき、三井の名代として三野村利左衛門が両社の総差配となった。明治9年には、日本で初の民間銀行である私盟三井銀行を開業した。同年、三井家の物産業を吸収し、井上馨が起こした貿易商社「先収会社」の業務を継承して三井物産会社を設立し、益田孝が社長に就任した。三井物産会社は、依頼を受けて物産を売りさばくことを業とし、優秀な人材を集め海外に支店を開き、多方面への事業展開を図った。

これら三井銀行、三井物産の発足により近代的企業の軌道が敷かれた。明治23年の金融恐慌にともない、当時の三井銀行副長中上川彦次郎は大量の人材を登用し、三井の資本を工業資本へ転換すべく鐘淵紡績、芝浦製作所、王子製紙、三井鉱山などを手がけ工業立国の構想を推進した。

(ハ)日清戦争、日露戦争後の好景気により三井傘下の各企業はいずれも急成長した。益田孝の育てた三井物産会社は明治40年代にはわが国貿易総額の2割強を占めるに至った。三井家の安泰と会社運営の統括を図るため明治42年三井家同族会の管理部を法人化して三井合名会社が設立され、一方三井銀行、三井物産、三井鉱山の三大基幹企業はそれぞれ資本金2,000万円の株式会社に改められた。

大正3年には、新指導者として団琢磨が三井合名理事長に就任、第一次世界大戦勃発を契機とする景気に支えられて三井の諸企業はみな大躍進をとげた。三井合名会社は大正9年には資本金2億円、同15年には3億円となり、日本最大の会社として君臨した。

(ニ)昭和15年、三井合名会社を株式会社組織にすることとなり三井合名、三井物産が合併した。三井物産は三井合名の所有株式を継承し、その後昭和19年には三井財閥の中枢機構として株式会社三井本社が設立され強力な統率会社としての機能を営むこととなった。三井本社は昭和19年、直系10社(三井物産、三井鉱山、三井信託、三井生命、三井化学、三井不動産、三井船舶、三井農林、三井造船、三井精機)と準直系会社(日本製粉、三井倉庫、大正海上火災、東洋レーヨン、東洋綿花、三機工業、東洋高圧、三井油脂化学、三井軽金属、三井木材工業、三井木船、熱帯産業)を指定した。これらの三井財閥の傘下会社は昭和16年には109社、昭和20年には273社に拡大している。

(ホ)昭和20年8月、我が国は第二次世界大戦において、連合国に降伏し、昭和27年まで占領状態が続いた。この間、連合国は、財閥解体の方針を打出し、三井本社も解体を声明した。さらに、三井十一家の資産凍結など一連の措置により三井財閥は解体された。

(ヘ)この結果、三井財閥は消滅し、財閥本社を通じての組織的な統括力を失った。しかしながら、その後の我が国経済復興にともない、三井財閥傘下にあった諸会社は従来とは異なる求心的な結束を図り、「三井グループ」は、引き続き日本経済において重要な地位を占めている。200社以上に解体された三井物産は、合併を重ね昭和34年に「三井物産株式会社」の名の下に再結集し、以後三井物産は、総合商社として発展を続けている。

三井不動産株式会社は、不動産業分野で発展を続ける一方、昭和31年に清算法人である三井本社を合併した。この経緯もあり、請求人、三井不動産株式会社は三井商号商標保全会など三井グループの世話役を努めている。

旧三井財閥傘下各社は、「三井グループ」の一員として独自の活動を営みつつ、引き続き発展を続けている。「三井グループ」各社の会合として、二木会、月曜会等の会合が設けられている。

(ト)昭和36年には三井広報委員会が発足し、三井グループの対外PR紙「三井グラフ」を発行している。霞ヶ関ビルにある「三井プロムナード」は三井グループ各社の対外PRのための常設展示場として運営されている。さらに三井グループの協力により各企業のわくを超えた共同事業として三井業際研究所、三井情報システム協議会、三井グループ結婚相談所などが設けられている。

昭和45年大阪で開催された日本万国博、昭和50年の沖縄海洋博、昭和56年の神戸ポート博覧会などにおいて三井グループ企業各社は三井グループとして共同して出展を行った。昭和60年、つくば科学万博においては三井グループ62社による「滝の劇場・三井館」を出展した。現在では、二木会、月曜会などを中心として三井グループが形成され、これら各社は各々多くの関連会社を有し、「三井グループ」はゆるやかな結合の企業集団としてわが国経済界において重要な地位を占めている。

本件商標が出願された平成6年8月以前における三井商号商標保全会及び「三井グループ」の状況については、三井商号商標保全会年報(13号)に詳しい(甲第49号証)。

(2)三井の商号、商標について

(イ)三井家の店章「丸に井ゲタ三文字」は、その家祖である三井高利が延宝5年(1676年)頃、越後屋の暖簾に紋所として使い始めたことに由来する。これは高利の母、殊法の夢想によってえらばれたものと伝えられている。同時に「三井」は三井の越後屋、三井両替店いうように屋号の一部として使用され、先の店章と三井の号は厳格に管理された。

(ロ)明治に入ると会社形態の企業が発展したが、三井は明治7年「為替バンク三井組」の看板をかかげ、明治9年7月には「私盟三井銀行」を開業した。また、同日付で、「三井物産会社」を設立した。三井物産は三池炭鉱の払下げを受け、明治26「三井鉱山合名会社」とした。これら各社の統括を図るため、「三井合名会社」を設立した。このように三井の重要な事業は「三井」を商号中に使用してきた。

財閥体制の確立とともに、これら三井の諸企業は各分野おいていずれも大躍進をとげた。前述した通り、第二次大の終戦直後における直系会社は10社であるが、いずれも三井を商号中に含んでいる(三井物産、三井鉱山、三井信託、三井生命保険、三井農林、三井造船、三井精機、三井化学、三井不動産、三井船舶)。これに次いで主要な12社が準直系とされたが、このうち三井の名を冠するものは、三井倉庫、三井油脂化学、三井軽金属、三井木船、三井木材があった。当時、三井は直系10社、準直系12社とこれらの関連、傍系会社を合わせて212社を支配し、これらの払込資本を総括すると全国会社資本の9.5%を占めていた。

(ハ) 第二次大戦後のGHQによる財閥解体政策に伴い、昭和23年8月に「会社の証券保有制限等に関する勅令」が改正され、持株会社整理委員会が旧財閥会社等の商号、商標の使用を禁止する指令をなし得る条項が挿入された。この政令に基づき、昭和24年9月、持株会社整理委員会は、三井、三菱、住友の旧財閥関係会社に対して、旧財閥商号、商標をすみやかに変更し、昭和26年7月以後7年間の期間が満了するまで使用してはならない旨の指示を行い、昭和25年1月21日に、「財閥商号の使用の禁止等に関する政令」(政令第7号)および「財閥標章の使用の禁止に関する政令」(政令第8号)が公布された。

これにより、三井、三菱、住友の旧財閥会社は昭和25年6月30日までに旧財閥商号、商標を変更または廃止しなければならないこととなった。しかし、三井の商号と商標は各企業の象徴であるとして三菱、住友グループとも協力し強力な「財閥商号商標護持の運動」を展開し、その実施を延期させた。そして昭和27年4月のサンフランシスコ講和条約発効とともにこの政令も廃止された。結局三井財閥解体にもかかわらず三井の商号、商標はこの時期においても無キズで守られたのである。

(ニ)財閥解体により本社機構が解体され、三井系各企業は形式的にも実質的にも独立して活動するようになった。しかし、三井商号、商標の使用禁止の政令撤廃運動などを通じ、三井グループ各企業は「三井」の名前に連帯意識を持ち協力している。100社を超す三井系企業は、その大半が引き続き商号中に「三井」の名前を冠し、その商品にも「三井」を使用する例が多く、「三井」の商号、商標は三井グループ各社及び三井グループ結束の精神的支柱となっている。

(ホ)「三井」の商号、商標を保護する具体的な動きとして300余年もの間「丸に井ゲタ三文字」および「三井」の商号、商標を使用し蓄積された信用、価値を守るべく昭和31年、「三井商号商標保全会」を発足させ、三井グループ共通の財産である三井の商号、商標の保全を図ることとした。同会は、「三井」商号、商標に化体した価値ある信用を守るべく「三井」の商号または商標を使用する場合の基準を設け、商号、商標等の保全を図っている。そして、三井商号商標の新規使用、変更、廃止などについては同会の了承を要することとしている。

(ヘ)三井商号商標保全会は、昭和57年10月、「三井」「みつい」「ミツイ」を含む登録商標についての調査を行った(甲第42号証)。この調査は昭和57年7月31日までに発行された旧法70分類、旧法34分類について公告及び一部の出願を対象としている。

調査の結果、「三井」「みつい」「ミツイ」「MITSUI」を含む商標は751件(含出願中)あったが、うち677件は三井商号商標保全会の会員会社の所有に係るものであった。他のものも大半は消滅し、保全会会員外により出願されたものは33件のみであった(甲第42号証第100頁以下)。このうち、5件については同会の異議申立によりすでに出願が拒絶され、また8件は、「三井の壽」「三井御殿」「信州三井の長者」など固有の構成からなり、そもそも三井グループと混同されるおそれのないものである。即ち、従来の公告例よりみても「三井」「みつい」「ミツイ」「MITSUI」を含む商標は「三井グループ」の商標として公告、登録されているのである。

(ト) 三井グループ各社は、その多くの企業が「三井」を商号の一部とするところから、その製造、販売に係る商品の商標、サービスマーク中にも「三井」「ミツイ」「MITSUI」を含む例が多い。一例をあげれば、「三井ポリエチレン」「三井組立ハウス」「三井石油」「三井の森」「MITSUI BRUDERER」「MITSUI SEIKI BRUDERER 」「三井ホーム」「三井建設コンソーバー」「三井SLパイル」「三井プロセスオイル」「三井のリフォーム」「三井金投資口座」などがあり、これらは所定の手続きを経て三井商号商標保全会の承認を得ている。

(チ)そもそも「三井グループ」の著名性、「三井」「みつい」「ミツイ」「MITSUI」の著名性は格別の証拠提出によるまでもなく、公知の事実である。「三井グループ」の著名性を基礎に商標「三井」「みつい」「ミツイ」「MITSUI」は、産業界において強い自他商品識別力を有する商標として現に機能している。そして、この事情を背景として、商標「MITSUI」「三井」について、役務及び商品の各分類において、三井グループ構成各社のために商標登録が認められている(甲第8号証、甲第9号証)。これらの登録は、永年にわたる信用の蓄積を背景として三井グループ各社に登録を認められたものであり、同グループの商標は極めて価値ある商標として保護されるべきものである。

(リ)三井商号商標保全会は、その幹事会社である三井不動産株式会社の名義で「三井」「みつい」「ミツイ」「MITSUI」を含む商標が公告されると商標登録異議申立を行ない、その結果、三井グループに属する企業以外の出願は、これと混同を生じるおそれがあるとして拒絶されている。特に、被請求人が本件商標と同日付で出願し出願公告された商願平6‐84229号「株式会社 三井開発」(第36類)における異議申立事件において混同のおそれの存在を認定する異議決定がなされている。(甲第5号証)。

上記と同趣旨の判断が役務に関する商願平4‐150658号「三井企画株式会社」(第36類)、商願平4‐146545号「三井企画株式会社」(第41類)に対する異議申立事件における異議決定においても示されている(甲第10号証、甲第11号証)。

さらに、従来の商品分野に関し、商標登録異議決定において、「三井」「ミツイ」「MITSUI」などを含む商標について、広範な業種の企業をその構成員とする「三井グループ」の業務に係る商品であるかのごとく商品の出所につき誤認を生じさせるおそれがあるとされている(甲第12号証ないし甲第32号証)。

(ヌ)上記異議決定の趣旨は、特許庁の無効審判及び当該審決取消訴訟事件の東京高等裁判所においても支持され、この判断が確立されている(甲第6号証、同第7号証)。

(3)以上のとおり、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」といえば、「三井グループ」を指称するものとして認識されていることは、公知の事実である。さらに、先の各異議決定例、審判例にも示されるとおり特許庁においても顕著な事実となっている。

「三井」は一般的な氏姓としての側面をも有するものであるが、商標は商品流通あるいは役務の提供に際し識別標識として機能する標識であって、商標が機能する場である現実の経済社会において、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」が使用されれば、かかる商標はあたかも「三井グループ」に属する企業の商標であるごとく認識される可能性が高いものである。商標は産業社会において自他商品の識別標識として機能するところであり、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」は、三井グループ及び構成各社の歴史を背景として強い指標力を有するものである。

(4)(イ)本件商標は、語頭の「M」を大きく、これに各文字を続けて「Mitsui」と大きく表わし、小さく「kaihatsu」と白抜きした文字で表わした構成からなる。

本件商標は、これが全体として一個の商標を構成するとはいえ、「Mitsui」のみ大きく顕著に表わされている。下段の「kaihatsu」は、極めて小さく付記的に表わされているに過ぎず明瞭に認識される態様ではない。

本件商標は、「Mitsui」の文字と「kaihatsu」の文字を一体的に表わされた構成からなるものとして登録されこれが維持されているものである。なるほど、これら文字は形式上、図形中に一体に表わされている。しかしながら、「Mitsui」の文字と「kaihatsu」の文字は上段と下段に分離し、特に下段の「kaihatsu」は、「Mitsui」の文字の数分の一ないし十分の一の大きさからなる相対的に極めて小さな文字で表わされ、しかも水平線模様中に埋没しているといってよい不鮮明な態様であるにすぎず、多少離れて視ると見過ごす程である。よって、本件商標に接する者は、当然にこれを「Mitsui」商標、「Mitsui」からなる商標と認識するのであって、「M itsui kaihatsu」と一体不可分に認識されるものではない。

本件商標が不動産の広告ビラなどの一遇に表示された場合には、これに接する取引者、需要者は、自然にこれを「Mitsui」印として認識することが容易に想定される。そもそも、「kaihatsu」の文字にしても、各社の商号中に好んで使用される「開発」を表わしたものであり、普通に用いられるありふれた用語であるにすぎない。現に、請求人の関係会社中にも「三井観光開発株式会社」があり、同社との関係よりしても、「三井グループ」の商標といかにも紛らわしい(甲第47号証、甲第48号証)。

以上のとおり、本件商標について、「Mitsui」の文字部分に顕著な印象を与え、これが要部として認識されうることは明白である。商標は、自他商品、役務を識別する目印であって、商品役務を選択する場面において直観的、瞬間的に認識される。本件商標が使用された場合に、これに接する取引者、需要者は、著名な「Mitsui」を念頭に置いて、「M itsui」商標として認識、記憶されるおそれを否定できない。

(ロ) ここにおいて、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」といえば「三井グループ」及びその構成企業の商号の要部並びに商標として本件商標の出願日以前において広く知られていたことはいうまでもない。

(ハ)本件商標は、第36類「建物の売買,土地の売買,建物 又は土地の鑑定評価」を指定役務としているが、これら業務は、請求人、三井不動産株式会社の中心的な業務であり(甲第36号証)、さらにこれら業務は請求人のほか三井グループ各社の業務にも係るところである。よって、「三井グループ」と関係のない被請求人により「Mitsui」を要部とする本件商標がその指定役務について使用されれば、これに接する取引者、需要者は、これはあたかも「三井グループ」を構成する企業の取り扱いに係る業務、あるいはその関連企業の業務にかかるものであるごとく、混同を生じさせるおそれが大きい。

経済社会において価値ある商標と認識されている「Mitsui」を要部とする商標が登録され、使用されるといった事態が商標法の目的とする公正な競争秩序の維持といった観点よりしても好ましくないものであって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当することが明白である。

2.商標法第4条第1項第10号の適用について

(1)「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」は「三井グループ」及びその構成各社を総称するものとして知られ、構成各社の多くは「三井」を商号の一部として使用してきた。このためこれらの各社の製造、販売に係る商品のハウスマークとして「三井」「ミツイ」「MITSUI」が使用される場合も多く、「三井グループ」の著名性と相まって「三井」「ミツイ」「MITSUI」は三井グループ各社の取り扱いにかかる商品及びサービスに関する商標として、本件商標が出願された平成6年8月以前においてすでに周知、著名なものとなっていた。

(2)本件商標は、「Mitsui」と大きく表わし、その下に極めて小さく「kaihatsu」と白抜きした文字で表わした構成からなり、「Mitsui」の文字が顕著に印象づけられる。

よって、本件商標は、これが三井グループ各社の商標であり、三井商号商標保全会により管理、保全されている商標「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」とその称呼及び観念において近似する類似商標である。

前述のとおり、三井グループに属する各企業は「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」を付した商標を本願指定役務に関しても使用している。特に、本願指定役務である第36類「建物の売買,土地の売買,建物又は土地の鑑定評価」は、請求人、三井不動産株式会社の中心的な業務であってその役務が同一、類似するものである(甲第46号証)。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号にも該当するものである。

3.商標法第4条第1項第8号の適用について

(1)「三井グループ」各社は「三井」の商号、商標を保護すべく三井商号商標保全会を設立し結集している。本件商標は平成6年8月の出願に係るものであるが、平成5年3月31日現在、三井商号商標保全会に結集する法人195社中175社(正会員会社56社中41社、準会員会社139社中134社)、が「三井」をその商号中に使用している。

例えば、三井金属鉱業株式会社、三井建設株式会社、三井鉱山株式会社、大阪商船三井船舶株式会社、三井生命保険相互会社、三井石油化学鉱業株式会社、三井倉庫株式会社、三井造船株式会社、三井不動産株式会社、三井物産株式会社など「三井」を要部とする三井グループ各企業はいずれも著名な会社として知られ各産業分野において「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」はこれら各企業を指すものとして認識されている。

(2)三井商号商標保全会は「三井」商号商標の適正な管理のため、「三井」「ミツイ」MITSUI」「みつい」を商標、商号の一部として使用するに際しては、事前に同会の承認を得ることとしている。もちろん本件商標の出願及び使用に際し、同会が承認を与えた事実はない。

(3)本件商標が上記「三井」を英文字で表わした「Mitsui」を含むことは明白である。現在の経済社会においては、商号、その略称を英文字で表わすことも普通であり、「三井グループ」と関係のない被請求人が「三井」を表わす「Mitsui」を含む本件商標をその指定役務である建物の売買、土地の売買、建物又は土地の鑑定評価について使用すれば、請求人、「三井」の商号、商標を背景として結集する三井グループ及び構成各社の人格権が毀損されるおそれがあることを否定できない。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号にも該当するものである。

4.商標法第4条第1項第11号の適用について

(1)請求人はその所有に係る商標を引用する。

引用商標は、長期かつ広範囲にわたる使用の結果、請求人の業務を示す商標として周知されているとして、商標法第3条第2項が適用されその登録が認められたものである。

(2)本件商標は、語頭の「M」を大きく、これに各文字を続けて「Mitsui」と大きく表わし、「itsui」に相当する部分の下に小さく「kaihatsu」と白抜きした文字で表わした構成からなる。

本件商標は、その外観構成上、これが全体として一個の商標を構成するとはいえ、「Mitsui」の文字のみ大きく顕著に表わされ、「kaihatsu」の文字は下段に極端に小さく付記的に表わされ、しかもその文字は下部水平線中に埋没している。特に、「Mitsui」の文字は、図案化した太い書体でその全体にわたり大きく表わされてなるに対し、「kaihatsu」の文字は、横線を白抜きした態様で極めて小さな文字で表わされてなるものであって、これを遠方より観察し、あるいは一見した場合には明瞭に認識することができない。

本件商標から生じる発音についてみても、「ミツイカイハツ」では全体で7音にも達する冗長な音構成からなるものであり、一体に理解されるものではない。その意味内容よりしても、「Mitsui」と「kaihatsu」が不可分に結合するといった格別の理由はなく、「Mitsui」商標と率直に認識されうるものである。特に、引用商標は請求人の商標として極めて著名なものとなっており、この点からも本件商標中「Mitsui」の部分に格別の印象を与えるものである。

したがって、本件商標に接する者は、一見してこれが「Mitsui」からなるものと認識し、「ミツイ」の称呼、「三井」の観念をもって特定され認識される可能性を否定できない。

(3)他方、「三井」「MITSUI」からなる引用商標より「ミツイ」の称呼、「三井」の観念を生じることはいうまでもない。

よって、本件商標は、引用商標とその称呼及び観念を共通にする類似商標である。

(4)つぎに、本件商標は第36類「建物の売買、土地の売買、建物又は土地の鑑定評価」を指定役務としており、これが引用各商標の指定役務と抵触することは明白である。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

5.利害関係の存在について

本件商標が使用されれば、請求人と業務と混同を生ずるおそれが大きい。また、引用商標と抵触するものである。さらに、請求人は、「三井グループ」の商号、商標を管理、保全する三井商号商標保全会の幹事会社としてその保全を図る責務を負っている。

よって、請求人は、その業務の保護、商標の保護のため本件審判を請求するにつき必要な利害関係を有する者である。

第4 被請求人の主張

被請求人は「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨つぎのように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第13号証(枝番を含む。)を提出した。

1.本件商標の独自性と創作性について

本件商標は、商標法第2条に定義されているように、線と図形等の結合であり、商標権者は、この商標に独創性を持たせるために工夫をしている。

このことは、平成9年異議第90086号商標異議の申立てについての決定の中で本件商標は、「創作的な態様で上下にバランスよく一体的に表された構成よりなるものであって、引用各商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれからしても類似しない商標」と判断されている(乙第1号証)。

2.本件商標の設定の経緯

そもそも、本件商標は、商標権者の社名をデザインしたものであって、創業者(現代表取締役社長三井明)が、自らの姓を事業内容である「開発」に、冠したものである(乙第2号証)。創業時、三井明は、「地域社会への貢献・社会への奉公 」を目標に掲げた。そして、そのためには、人間の生活基盤である「個人の住宅」を業とすべきだと考え、さらに、その住宅も一戸建ての木造住宅に事業を特化した。

この時、三井明は、自らの設立した会社の事業は、住宅建築のために、国土を開発する事業であり、地域に、国土に根付いた事業を行いたいという希望を抱いた。

こうした思いを表すべく、工夫と創作を重ねて、本件商標は生まれた。本件商標の6本の線は、国土である北方領土・北海道・本州・四国・九州・沖縄を表しており、その上に書かれた「kaihatsu」の文字が、当社の事業を示している。さらに、6本の線によって表された国土の上には、創業者である現社長の三井明の姓を配し、事業が、地域に国土にしっかりと根付くがごとく、確固たる企業基盤をつくり、将来は日本全土に事業が伸長する夢を表している。このような創作による本件商標は、乙第1号証でも明示されているように、一体的に表された構成よりなるものであって、請求人の主張による見方は、強引であり謂われのないものである。

3.本件商標と現況について

当社は、設立当初から、請求人らを含む、他との違いを打ち出してきた。

(1)乙3号証によると、請求人と同一ともいえる三井不動産販売株式会社が、平成5年8月31日、平成9年11月3日及び平成10年3月1日に、被請求人の商品を一般消費者に紹介し販売している。つまり、請求人らは、平成5年8月には、当社の商品、事業、標章を認めている証拠である。また、当社の商品・事業が、請求人らに対応できない分野の物であることの証拠である(乙第3号証)。さらに、特記すべきは、本件商標登録後の平成10年3月1日に、本件商標を明示して、販売している当社の分譲住宅を一般消費者に紹介し、販売している。このように、当社の商品・事業・商標を認めておきながら、かかる請求を行うことは商慣習に反する。

すなわち、本件商標は、請求人らグループに、平成5年から認められているのである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、第10号、同第11号及び同第15号に反するもではない。

(2)ところで、最近の請求人らの一般消費者へ向けた宣伝・広告を見てみると、「丸に井桁三」の三井のマークをよく見かけることができるが(乙第4号証、同5号証)、それとは異なる全く別のデザインによるマークもよく見かける(乙第6号証)。

当社が、本件商標を認知してもらうべき対象は一般消費者であるが、そこに対して、もっぱら使用している標章が、本請求にかかる商標と異なれば、商品の出所の混同等は起こらないと考える。また、商標法第2条第3項の各号、同第4項及び同第5号の使用についても疑問である。さらに、請求人の示す請求人らグループの商標は、その出願手続きについては各社毎に行っており、その形状についても、各社各様であり統一性がなく、これがという物が存在しない。

これらを鑑みると、請求人は、当社の商標選択権を必要以上に狭めようとすることになるのではないかと考えられる(乙第7号証)。

(3)当社は、東大宮及び埼玉県南地域を中心に、一般消費者向けの一戸建て住宅を手がけてきた。創業時からの目標である「地城社会への貢献・社会への奉公」を念頭に事業に取り組んできた。また、商標・商品・事業の独自性・差別化を打ち出してきた(乙第8号証)。その結果、今日では、「自社仕入・自社施工・自社販売の業態」と「材料・土地を自らの目で確認し、納得した物しか仕入れない」という真摯な姿勢が評価され、東大宮では、第23期現場を販売するに至り、他地域でも、多数の現場・商品を販売している。

これは、一般消費者及び当社分譲住宅のために、土地を提供してくれる方々が、当社の商標・商品・事業を認知しているからに他ならない(乙第9号証)。

さらに、協力会も発足し、上場企業を含めた取引先は、70社を数える(乙第10号証)。 つまり、当社の商標・商品・事業は、明らかに、その独自性を認知されており、他との混同も無ければ、他を騙ることも、その必要も全くない。

そのくらいに、本件商標の創作性と商品・事業の独自性が、認知されている証拠である。

(4)請求人は、審判請求書において、「本件登録商標は、これが全体として一個の商標を構成する。」と、本件商標の創作であることを認めている。

同様に、本件商標は、顧客・取引先等から、「デザイン、バランスに優れている」、「線使いが良く、目を引く」及び「このマークは、他社さんには無いですね」等と好評である。いわば、当社の独自性・創作性・差別化の象徴である。

ところで、請求人の解釈には、強引で本件商標について当社の意図と異なるこじつけが見られる。恰も、当社を騙りというようなもので、審判の場において、公然とこのような主張は、侮辱にあたる。然るに、請求人の本件商標を分割した解釈部分は、削除されるべきである。

三井商号商標保全会規則及び同会年報(第1号)によれば、「丸に井桁三及び三井 」については明示がある(乙第11号証)。然るに、該会は、この保全等を目的とした会であって、請求人の拡大解釈は、当社のように、三井姓の人間、三井明が起業し、そこに自らの名前を付けた時に、商標選択権が無くなる。強いては、日本国憲法第21条第1項、結社・表現の自由及び同22条第1項、職業選択の自由の趣旨に反する。

請求人は、こうした意味においても、グループの統一的なデザインされたロゴマークを設定すべきであると考える。

4.さらに、創業以来の目標である「地域社会への貢献・社会への奉公 」のために、以下の内容を行っている。

(イ)扱い商品は、自社施工である(乙第8号、同第9号証)。

(ロ)性能保証住宅をいち早く導入した(乙第12号証)。

(ハ)安全協力会を組織し、現場清掃・安全衛生管理等の教育を定期的に実施している(乙第10号証)。

(ニ)商標・商品・事業を認知され、全日本不動産協会の理事会社を務め、同業他社の指導・新規参入業者の育成及び一般消費者からの不動産取引に関する相談を受けている。特に、一般消費者からの相談は、定期的に市民ホールなどの公の場所で行われ、費用は無料である(乙第13号証)。

これら商品・事業及び地域社会への貢献を通して、当社の商標・商品・事業は、認知されており、請求人の事業内容とは異なる。また、商品についても、当社は、自社施工の高耐久性木造住宅を扱い、請求人のビル・マンション・ツーバイフォーとは明らかに違い、出所の混同はあり得ない(乙第5号証、同第6号証及び同第9号証)。

5.利害関係

乙第3号証に示すとおり、請求人と同一ともいえる三井不動産販売株式会社が、被請求人商品を一般消費者に紹介し、販売している。この事実からすれば、被請求人商標・商品・事業を認めて、被請求人商品より、利益を享受している。故に、本件商標の使用により、不利益をもたらすどころか、請求人らは、利益を得ている。

よって、本件審判の請求人たる理由がない。

6.結び

本件商標は、設定の経緯・意図及び背景からして、外観・称呼及び観念の類似しないための工夫・創作の結果生まれたものであり、請求人の主張するような意図・背景は全くない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号及び第15号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断

1.利害関係の有無について

本件審判の請求に関し利害関係の有無について争いがあるので、この点について判断する。

無効審判の請求人は、審判請求をするについて法律上の利益を有することを要すると解されるところ、請求人は、企業グループ商標の管理の幹事会社であり、また、その商標の使用者の一であることが甲第39号証及び同第46号証によって認められる。そして、本件商標が使用された場合には、前記グループが管理し使用する商標との間で、役務の出所について混同を生じるおそれがあると思量するものであり、本件商標の登録の存否によって、商標管理者としての地位、商標使用者としての地位に重大な影響を受け得る者と認められる。

したがって、請求人は本件審判を請求するにつき利害関係を有するといい得るものである。

2.そこで、本案に入って、本件商標の登録の無効事由の有無について判断する。

(1)請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。

(イ)三井系企業の事業の歴史は、古く江戸時代にさかのぼるものであり、延宝元年(1673年)に、三井高利が伊勢松坂から江戸に出て家業として呉服業、両替業を営んだことに始まる。三井高利の子孫は、これを承継し、元禄年間には徳川幕府の御用商人となるなどして、江戸時代を通じて大いに繁栄した。

(ロ)明治時代になると、三井一族は、明治9年に我が国で初めての民間銀行である三井銀行を設立し、これと並行して、同年、三井物産を創立した。三井一族は、我が国の富国強兵、殖産興業の国策に協力して資本を蓄積し、明治42年には、銀行、物産、鉱山の三基幹企業を株式会社組織に改めるとともに、三井家一族の同族会の管理部を法人化して三井合名会社を設立し、三井一族が株式を通じて傘下の企業を支配するという財閥の体制を整えた。

三井財閥の傘下の企業のうち主要な企業10社を直系会社、これらに次いで重要な企業12社を準直系会社と称していた。ちなみに、請求人は、昭和16年7月、三井合会社の不動産部門を分離し、全株三井一族所有のもとに設立された会社である。

三井財閥の事業は、明治時代から大正時代を経て戦後の財閥解体に至るまで、国策と歩調をあわせて事業を拡大し、傘下の企業を増やし、我が国最大の財閥として繁栄を続けた。三井財閥の持株会社は、三井合名会社から昭和15年には三井物産株式会社へ、昭和19年には株式会社三井本社へと変遷し、株式会社三井本社の株式投資の対象となっていた企業は200社を超えていた。

(ハ)三井財閥が昭和21年の財閥解体により消滅すると、その傘下にあった多数の会社は三井一族の支配から独立することとなったが、これら三井系企業は、昭和25年頃になると次第に接近して相互の親睦、情報交換等を図るようになり、やがて前記直系会社、準直系会社が中心となって、三井グループと称される企業集団が形成されるに至った。三井系企業は、グループ内で相互に系列融資や株式の持合いをしたり、その他の事業協力をしたりし、また、共同で研究機関、公報機関、親睦施設等を設置するなどして結束し現在に至っている。

(ニ)三井一族の事業においては、創業以来、丸の中に井桁三マークを配した標章を商号、商標として使用してきたところ、これが、三井財閥、三井グループの時代にも引き継がれ、三井系企業は、三井財閥の傘下にあったときも、財閥解体後も、「三井」の文字からなる標章あるいは井桁三マークを商号若しくは商標として営業活動に使用し、名声と信用を築き上げてきている。そして、三井系企業は、前記直系会社、準直系会社などの有力企業が中心となって、上記商号、商標の使用によって築き上げられてきた名声及び信用を保護し、上記標章の有する出所識別機能を維持するために、三井商号商標保全会という組織を開設し、請求人は、その幹事会社となっている。

(ホ)上記認定の事実によれば、三井系企業はその業種にかかわらず、また設立時期に相違があるものの、三井財閥の傘下にあった時代以来、「三井」の文字からなる標章を自己の商品若しくは役務であることを示す標章として使用して、永年にわたり営業活動を続け、三井系企業としての名声と信用を築き上げてきたものであって、三井系企業の全体としての事業規模の大きさ、営業活動の期間の長さを考慮すると、「三井」の文字からなる標章は、三井系企業の商品若しくは役務を表示するものとして、本件商標の登録出願の日前に、取引者、需要者間に広く認識され、全国的に著名となっていたことが認められ、このような取引の実情のもとにおいて、「三井」といえば、三井系企業の商品若しくは役務を想起させる機能を持つに至っているものと認められる。

(2)本件商標について

本件商標は、別掲に示すとおり、「Mitsui」の欧文字の頭文字「M」を大文字で上部約4分の3を黒く太く表し、その下部約4分の1を6本の横線で描き、それに続けて「itsui」の文字を前記「M」の上部約4分の3とほぼ同じ高さに合わせた小文字をもっていずれも黒く表し、さらに、6本の横線を「itsui」の文字の下方に配し、その6本の横線内に「Kaihatsu」の欧文字を白抜きにしたものである。

しかして、その構成にあって「Mitsui」部分は、「Kaihatsu」部分に比して約4倍の大きさで表されるものである。これに対して、「Kaihatsu」の文字部分は、6本の横線内に白抜きされたことで格別印象の強いものとはいえない。また、「Mitsui」の欧文字は「三井」に、「Kaihatsu」は事業との関係で会社の名称等に使用されることが多い「開発」に通じる欧文字綴りといえるものである。そして、「Kaihatsu」部分と前記「Mitsui」部分とが常に不可分一体のものとしてのみ認識されるとすべき特段の事情も認められない。

そうとすれば、これに接する者は、本件商標の構成中、大きく顕著に表わされた「Mitsui」の文字部分に注意を惹かれ、当該部分に強く印象を留める場合が決して少なくないとみるのが相当である。そして、それより生ずる「ミツイ」の称呼とともに「三井」を想起するといい得るものである。

被請求人は、本件商標に独創性を持たせる工夫をしたとして、その採択の意図・経緯等について述べている。しかしながら、この被請求人の主張するところをもってしても、本件商標が常に不可分一体のものとしてのみ認識されるとは認め難いものである。

(3)出所の混同のおそれについて

「三井」といえば、元来氏姓を表す語ではあるけれども、上記(1)のとおり、取引の実情のもとにおいては、本件商標の登録時はもとよりその出願時において、三井系企業の商品若しくは役務を想起させる機能を有するに至っていたものと認められる。

そして、「Mitsui」の文字は、この著名商標「三井」の欧文字による表示に当たるものであり、本件商標は、その「Mitsui」の文字を構成中に顕著に有するものである。また、本件商標の指定役務と請求人の業務(提供する役務)とは同一又は類似のもの、若しくは関連性の高いものである。

そうしてみると、本件商標がその指定役務に使用される場合には、これに接する取引者・需要者をして、その構成における「Mitsui」の部分に着目し、「ミツイ」の称呼とともに著名商標「三井」を連想させ、請求人又は三井グループの関連会社の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるといわなければならない。

してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

被請求人は、請求人らは被請求人の取り扱う物件を一般消費者に紹介し販売しており、被請求人の事業・商標を認めている旨主張する。しかしながら、需要者の観点においてみれば、前記認定判断のとおり役務の出所について混同のおそれがあるものであり、乙各号証によれば共に物件を取り扱った事実があることを推認しうるとしても、この一事をもって、需要者が出所混同をするおそれがないとする証左とはいえない。また、請求人と被請求人の事業内容が異なる旨主張するが、具体的にみればその取扱い物件(耐久性木造住宅かビル・マンションやツーバイフォー住宅か)等の規模・形態などには差異があるとしても、共に不動産の売買などであって、それぞれの商標によって識別しようとする役務の範囲としては同種のものといわざるを得ず、関連性のないものとは言い難いものである。その他、被請求人が述べる被請求人会社の経営姿勢等によって前記判断を左右すべきものとは認められない。

3.したがって、本件商標は前記条項に違反して登録されたものであるから、請求人の主張するその余の理由について判断するまでもなく、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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