sokuhyo

Trademark Appeal Case

商品形状の識別力判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第4127号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第20類「合成樹脂製止め具」を指定商品として、平成9年12月9日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由

原査定は、「本願商標は、その指定商品である『合成樹脂製止め具』との関係からみると、該商品の一形態である回転式の止め具を認識させる立体的形状よりなるものであるから、これをその指定商品に使用しても単に商品そのものの形状を普通に用いられる方法をもって表示してなるにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。なお、出願人が提出した甲第1号証ないし同第4号証からは、本願商標が出願人の取扱いに係る商品として周知のものである事実も認めることができない。」旨認定して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。

立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。

そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。

また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。

そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。

(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。

また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地方裁判所 昭和50年(ワ)第3035号 昭和52年12月23日判決言渡)との判示がなされているところである。

したがって、前記(1)の解釈は、本件独自の見解でないことは明らかである。

(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲に示すとおり、アーム部分が開いた状態の中空壁用止め具の形状を表したものとみるべきであって、これを本願指定商品「合成樹脂製止め具」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状の一形態を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。

(4)請求人は、本願商標に係る形状のデザインが奇抜であり、他社の止め具と比べても、顕著な差異を有し、また、本願商標の形状が同種商品を取扱う業界において、請求人の取扱う商品の形状であることが認識されているから、出所表示機能を発揮している旨主張する(甲第1号証、同第2号証及び同第9号証)。

しかしながら、本願商標が際立った特徴を有する形状であるとしても、甲第1号証によれば、他社の同種商品も、その形状においてそれぞれ差異を有していると認められるところ、その特徴は、商品の機能(使用時の強度等)又は美感をより際立たせるための範囲のものというべきである。また、甲第2号証は、(社)日本建築あと施工アンカー協会の会長が、本願商標に係る形状の商品を、出願人が日本国内で「トグラー」「TOGGLER」の商標を付して販売している事実のみを証明しているにすぎないと認められるものである。

しかして、本願商標は、前記認定のとおり、その形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは前記(1)で述べたとおりである。また、商品の形状それ自体については、本来的又は直接的には他の知的財産権制度で保護されるものであるから、前記の請求人の主張は採用できない。

請求人は、本願商標と同一又は類似の平面商標である登録第4089448号商標及び同第4077888号商標について、商標権の設定登録されている事例があるから、本願商標も自他商品の識別力を有している旨主張する(甲第7号証、同第8号証、同第10号証及び同第11号証)。

しかしながら、登録第4089448号商標に係る図形は、甲第10号証によれば、出願人が会社創業当時から社標と採用していたものであり、名刺等に広く使用している旨主張していること、また、登録第4077888号商標に係る図形は、甲第11号証によれば、シルエット手法による抽象的なこの図形は斬新で、顕著なものであるから、商品の使用状態を普通に用いられる方法で表示したことにならない旨主張していることが認められ、前記各登録商標が、商品の品質・形状等を普通に用いられる方法で表示した図形商標であるとはいえず、また、甲第7号証及び同第8号証によれば、商標法第3条2項により登録されたものでないと認められるから、商品の形状そのものを立体商標として表した本願商標とは明らかに事案を異にするものである。

したがって、請求人の前記主張は採用できない。

なお、立体的形状からなる商標であっても、商品等の形状をもって構成されるものについては、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度の導入に当たっては、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、また、前掲工業所有権審議会答申でも、「指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること」としている(前掲答申P31参照)。

そして、商品等の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときに、識別力を認めて登録することは前記(1)で述べたとおりであり、諸外国と何ら異なるところはない。

請求人は、本願商標の使用による周知性を主張し、甲第2号証、同第5号証及び同第6号証を提出している。

そこで、請求人提出の証拠をみるに、甲第2号証によれば、前記のとおり、本願商標に係る形状の商品が、日本国内で「トグラー」「TOGGLER」商標を付して販売していることが確認できる。そして、甲第5号証及び同第6号証によれば、請求人の取扱いに係るアンカー(止め具)が、他の同種商品と比べても多くの需要者等に取扱われあるいは使用されているであろうことが推認可能である。

しかしながら、甲第2号証は、前記のとおり、本願商標についての周知性を証しているとは認められないものであること、また、同第5号証ないし同第6号証にしても、同第5号証に、本願商標の表示等がなく、需要者等がその形状自体についてどの程度認知しているか確認し得ないことから、これらの証拠によっては、本願商標と同一である止め具の形状自体が、使用によって需要者に強い印象、記憶を与えた結果、需要者の間で何人かの業務に係る商品等であることを認識できるに至っているものであるということができない。

また、他に、請求人の主張を証する同業組合又は同業者等による客観的な証明等もないから、請求人提出の全証拠によっても、本願商標それ自体が使用による識別性を有するに至っているものと認定することはできないというべきである。

4 結 論

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条2項には該当しないとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。