sokuhyo

Trademark Appeal Case

法人格なき団体の名称保護

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35199(T2000−35199/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録商標第3108437号商標(以下「本件商標」という。)は、「日本美容医学研究会」の文字を横書きしてなり、第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」を指定役務として、平成4年9月30日登録出願され、平成7年12月26日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、「第3108437号商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求めると主張し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同369号証を提出した。

(1) 本件商標は、商標法第4条第1項第8号の規定に該当する。

本件商標に対する無効審判の請求人は、会長を医学博士高野成夫とし、その名称を日本美容医学研究会とする法人ではない社団である。

(ア)請求人は、その事務所を静岡県静岡市曲金5丁目7番15号とし、「専門医師の指導と関与のもとに、医薬部外品クロロフィル化粧料の適切なる使用法および正しい取り扱いを調査・研究し、これを広く普及し、以って日本美容文化の向上に資する」ことを目的とし、本件商標の出願前はるか以前に設立され、現在もその活動を行っている。具体的には、甲第2号証として提出する「日本美容医学研究会定款」にその目的が記載されている。そして、この定款が施行されたのは昭和34年11月8日である。設立及び定款施行時のいきさつは、甲第3号証として提出する小冊子「向後十年の計画」にまとめられており、これによって、請求人の名称は、団体の名称を表示したものとして厚生省をはじめとし各県においても広く認められていることが理解される。

そして、今日まで、請求人は、「日本美容医学研究会」の名称のもとに活動してきていることは、甲第4号証として提出する書籍「新美容医学の実際」、甲第5号証として提出する書籍「美顔教室」、甲第6号証として提出する「美顔センターわかりやすい美顔技術の手引」等を刊行してきていることにより認められる。そして、甲第7号証に示すように具体的な活動の基礎となる指導方針書等を刊行している。さらに、具体的な活動の一つとして甲第8号証として提出する「美顔師規定」に規定されているような活動をも行っている。

(イ)請求人は、上述の甲各号証から明らかなように、「日本美容医学研究会」の名のもとに、長年にわたり活発に社会活動を営んでいる。ちなみに、商標法第77条第2項で準用する特許法第6条には、法人でない社団又は財団であっても代表者又は管理人の定めのあるものは登録異議申立をしたり、無効審判の請求をしたりすることができる旨規定されている。これは、社会では種々な団体が発生し、存在して社会活動を営み、取引を行っている事実があるところから、代表者又は管理人の定めのあるものについては、その名をもって当事者となる能力を認めようとするものである。

現実の社会では、人格なきが故に権利能力を有してはいないが、その名をもって当事者能力を有する社団又は財団は数多く存在し、社会活動を営み、取引界において活動している。このような社団又は財団は、形式的には自然人又は法人としての人格は有さないが、当事者能力を有することにより、自然人又は法人としての人格を有する社団又は財団と同様の機能を有している。そのため、かかる名称は当然尊重されなければならない。

(ウ)ところで、商標法第4条第1項第8号には、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものは除く)は登録を受けることはできない」と規定されている。

この規定は、通常、人格権保護の規定といわれているが、ここでいう他人の名称は、必ずしも権利主体となり得る自然人又は法人の名称のみの名称を指称するのではなく、上述したように現実の社会の実情に照らして、一定の組織を有し、活動している当事者能力を有する法人ではない社団又は財団をも含むものであるとするのが相当である。

(エ)このことは、甲第9号証として提出する東京高等裁判所においてなされた平成10年(行ケ)第380号審決取消請求事件の判決において認められている。この判決の考え方は甲第10号証として提出する最高裁判所においてなされた平成12年(行ヒ)第3号における上告不受理により確定した。この判決に係る事件の発端は、当事者を本件無効審判と同一とし、被請求人が、請求人の名称を含む「財団法人日本美容医学研究会」を商品区分旧第26類に第2713135号として登録したことについて、請求人が該商標の無効審判を請求したことによる。

この判決では、「商標法が無効の審判の手続をする能力を権利能力なき社団に与えたのは、無効の審判によって守られる類型の利益の範囲においては、権利能力なき社団に対しても法人と同じ保護を与える旨を、保護を実現すべき手続の面から表明したものと理解する以上に合理的解釈は、あり得ないのである。」とするとともに「少なくとも無効の審判により守られるべきだとされている類型の利益については、それを無効の審判の手続で守ろうとする限りにおいては権利能力なき社団も権利能力ある社団(法人)と同じに扱うべきものと解すべきである。」と判示されている。そのうえで、「商標法第4条第1項第8号により本件商標を無効とする利益の享受を否定した審決の判断は誤り」であるとして、審決を違法であると判断した。

(オ)そこで、改めて本件商標と請求人の名称を比較すると、本件商標は上述のとおり、漢字「日本美容医学研究会」の文字よりなるものであるから、請求人の名称「日本美容医学研究会」の名称と同一であることは明かである。また、「日本美容医学研究会」の名称と同一の本件商標の出願に当って、請求人は、被請求人に対して何等の承諾も与えていない。

(カ)してみると、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に規定する他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く)に該当するから、その登録は同法第46条の規定により無効とされるべきものである。

(2)審尋に対する回答書

(ア)請求人は、その事務所を静岡県静岡市曲金5丁目7番15号とし、「専門医師の指導と関与のもとに、医薬部外品クロロフィルの適切なる使用法および正しい取り扱いを調査・研究し、これを広く普及し、以て日本美容文化の向上に資する」ことを目的とし、本件商標の出願前はるか以前に設立され、現在もその活動を行っている。そして、この定款が施行されたのは昭和34年11月8日である。設立及び定款施行時のいきさつは、甲第3号証として提出する小冊子「向後十年の計画」にまとめられており、これによって、請求人の名称は厚生省(現在厚生労働省)をはじめとし各県においても認知されている。

そして、請求人は「日本美容医学研究会」の名称のもとに活動してきていることは、甲第4号証として提出する書籍「新美容医学の実際」、甲第5号証として提出する書籍「美顔教室」、甲第6号証として提出する「美顔センターわかりやすい美顔技術の手引」等を刊行してきていることにより認められる。そして、甲第7号証に示すように具体的な活動の基礎となる指導方針書等を刊行している。さらに具体的な活動の一つとして甲第8号証として提出する「美顔師規定」に規定されているような活動を行っている。このような状況のもとに「日本美容医学研究会」の名称は古くからメディアにも取り上げられるようになっている。そして、自らもメディアを通じて広告宣伝を行っている。

広告宣伝の内容は、日本美容医学研究会名で、各地の会員店を紹介するというものである。日本美容医学研究会の名称のみならず沢山の会員店の存在を読者に知らしめることができる。この広告宣伝方法は同時に日本美容医学研究会の名を冠することで多くの読者を引きつける。また、テキストの広告宣伝において、該テキストを「日本美容医学研究会」が発行していることを明記する方法での周知徹底をも計っている。

このようにして、日本美容医学研究会の名称は多くの世人に知れ渡るようになった。このことの裏付けは、会員店からの証明書から明らかである。ここに本件商標が登録出願される以前から今日まで一貫して日本美容医学研究会に籍を置く会員から寄せられた証明書を甲第45号証ないし甲第283号証として提出する。この証明書から明らかなように、日本美容医学研究会の会員は全国津々浦々に広がっており、この会員店から美容的手当等についての指導助言を受けた者は数百万人にのぼっている。

このような状況を鑑みたとき、「日本美容医学研究会」といえば請求人を指称するものであることは当然である。

また、現在においても甲第284号証として提出する静岡商工会議所の確認書から明らかなように、かかる機関においても認知されている。このようにしてみてくると請求人の名称は、国、地方公共団体、さらには準ずる機関で認知されており、かつ、新聞、雑誌を通じて取引者や需要者の多数の人々に知られ、そのうえ全国津々浦々に多数の会員店が存在し、この会員店を通して多数の需要者のいることを鑑みれば、請求人の名称は著名であること疑う余地はない。

(イ)叙上のとおり、請求人の名称は著名であるから、請求人の名称を含む本件商標は、商標法第4条第1項第8号の規定に該当し、その登録は無効とされるべきものである。

3 被請求人の主張

被請求人は何ら答弁していない。

4 当審の判断

そこで、本件商標の登録を無効にすべき理由の有無について判断する。

(1)商標法4条第1項第8号は、他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標については、その他人の承諾を得ない限り、商標登録を受けることができない旨定めている。

いわゆる権利能力なき社団も、商標法第4条第1項第8号の「他人」に含まれると解すべきであるから、いわゆる権利能力なき社団、すなわち商標法第77条第2項で準用される特許法第6条にいう「法人でない社団であっても、代表者又は管理人の定めがあるもの」に該当する請求人が、商標法4条1項8号にいう「他人」に当たることは,明らかである。

本件商標(日本美容医学研究会)は、他人である請求人の名称である「日本美容医学研究会」と同一商標であるから、文理上は,商標法4条第1項第8号に当たることになる。

しかして、本件と関連する事件として、東京高等裁判所において、「権利能力なき社団は、権利能力なき社団であることの必然的な結果として、法人の名称(法人の種類を示す文字を含む名称)から、法人の種類を示す文字の部分を除いたものに相当する名称を採用することになり、また、その名称の選択について法的な規制を受けないから、名称の選択は自由に行い得る。

そうすると,その名称中に法人の種類を示す文字を用いた法人については、その名称から法人の種類を示す文字を除いたものは略称となるから(最高裁第2小法廷昭和57年11月12日判決参照)、商標法4条1項8号に基づき、他人がその略称を商標登録するのを阻止するためには、その名称から法人の種類を示す文字を除いたものが著名であることを主張、立証しなければならないことになる。

これに対し、その性質上、常に法人の名称からその種類を示す文字を除いたものに相当するものを自己の名称として採用することになる権利能力なき社団については、その名称を単に商標法4条1項8号の「名称」に当たるとすると、同条項に基づき、上記法人の名称を商標登録することを阻止するためには、単に法人の名称に、自己の名称が含まれていることを主張、立証すれば足り、それが著名であることの主張、立証を要しないことになる。

しかしながら、このような解釈は、法の定める手続に従って法人格を取得した法人を、法の定める手続をとらなかった権利能力なき社団よりも著しく不利に扱うことになり、看過することのできない不均衡を生じさせるものであるうえ、このような取扱いを認めると、商標法4条1項8号を利用して、法人の名称の商標登録を阻止するために権利能力なき社団が濫用的に用いられる危険も大きくなる。

したがって、権利能力なき社団の名称については、法人との均衡上、その名称は、商標法4条1項8号の略称に準ずるものとして、同条項に基づきその名称を含む商標の登録を阻止するためには、著名性を要するものと解すべきである」と判示している(平成13年4月26日判決 東京高等裁判所平成12年(行ケ)第344号、同第345号)。

(2)上記判決は、訴訟の当事者において、原告を「財団法人日本美容医学研究会」、被告を「日本美容医学研究会」として、個別具体的に判断がなされているものではあるが、本件についてみると当事者において、請求人を「日本美容医学研究会」、被請求人を「財団法人日本美容医学研究会」とするものであり、共に当事者を同じくするものであると認められる。

そうとすれば、本件についても、権利能力なき社団の名称について、商標法第4条第1項第8号に基づきその名称を含む商標の登録を阻止するためには、略称に準ずるものとして、権利能力なき社団の名称が著名であることが必要であると解するのが相当である。

そこで、請求人の「日本美容医学研究会」の名称の著名性について判断する。

(3)請求人は、この点について、名称の著名性に関する主張及び立証の意向等を問う審尋を受け、著名性を立証する旨意見を述べ、そのための資料として、甲第2号証ないし甲第10号証のほか、甲第13号証ないし甲第368号証を提出している。

ところで、当審において本件商標を商標法第4条第1項第8号に該当するというためには、本件商標を登録すべきとした登録査定時(すなわち、平成7年8月24日、以下「登録査定時」という。)にはもちろん、本件商標の登録出願時(すなわち、平成4年9月30日、以下「登録出願時」という。)においても、本件商標が同号に該当するといわなければならない(同法第4条第3項参照)。そのためには、本件商標の登録出願の時点で、既に、請求人の名称が著名となっていなければならないと解すべきである。

(ア)そこで、請求人提出の証拠についてみるに、それらの証拠のうち、甲第4号証ないし甲第7号証に係る書籍は、請求人が発行する書籍としての活動内容がわかるところがあるとしても、登録出願時における著名性を立証するものとして、これを観る需要者に「日本美容医学研究会」の文字自体を強く印象付けるものとは考え難いものである。(なお、甲第8号証の指導方針書(美容師規定)は登録出願後の発行であり、甲第31号証ないし甲第40号証に係る雑誌については、登録査定時後の発行によるものであるから、登録出願時における著名性を立証するものとしても参酌できない。)。

(イ)また、甲第45号証ないし甲第283号証に係る会員の証明書は、「当社(私)は、昭和○年○月○日より今日まで、貴会の会員として、これまで約○○人程度に対して、美容的手当等についての指導、助言を行って参りました。また、『日本美容医学研究会』に係る多くの広告宣伝を知っております。このような事情から、『日本美容医学研究会』の名称は、需要者の間に広く認識されていると信じます。以上証明いたします。」の定型的な文言に日付等の数字と住所、名称及び代表者を書き入れただけのものであり、内容的にも、具体的に如何なる広告宣伝を知り、如何なる根拠をもって需要者の間に広く認識されていると信じているのかが明らかになっていない。いずれにしても、平成13年9月の時点での証明にとどまるもので、登録出願時並びに登録査定時において著名であったことを証明するものとはなっていないものである。

(ウ)甲第284号証に係る静岡商工会議所の確認書も、昭和34年11月の設立から今日まで、医薬部外品クロロフィル化粧料の使用方法及び取扱いの調査、研究、普及活動等を目的として活動している団体である旨を平成13年10月の時点で確認するにとどまるもので、登録出願時並びに登録査定時において著名であったことを証明するものとはなっていないものである。

(エ)さらに、登録出願前の発行に係る新聞又は雑誌ではあるが、甲第13号証ないし甲第17号証に係る新聞は、所謂業界紙の類と思しきものであるところ、誰が如何なる者を対象にどの程度発行、頒布しているのかすら定かとなっていない。また、甲第18号証ないし甲第40号証に係る雑誌、甲第41号証ないし甲第44号証の新聞も、そこに掲載されている広告は、美顔教室名並びに「にきび・しみ・肌あれ・日やけ等でお悩みのあなた...・クロロフィル美顔教室の美顔師にお電話してみませんか」等の広告文句とともに、「日本美容医学研究会会員店」の文字が記載されているものであり、美顔教室が日本美容医学研究会の会員店であることを表示するものではあるが、これを観る需要者に「日本美容医学研究会」の文字自体を強く印象付けるものとは考え難いものである。

(4)してみれば、請求人の「日本美容医学研究会」なる名称は、本件商標の登録出願の時点で既に著名となっているとは到底いうことができない。

そうとすると、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものとはいえない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではないから、同法46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。