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Trademark Appeal Case

立体商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第19506号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第28類「釣竿用導糸環」を指定商品とし、平成9年4月1日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由

原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりみて、釣り竿に取り付けて使用する環で、いわゆる『ガイド』と呼ばれている釣竿用導糸環であって、通常採用し得る『ガイド』そのものの形状からなる立体商標を表示するにすぎないから、これを本願指定商品に使用しても、自他商品の識別機能を有しないものと認める。なお、出願人は、上申書において、本願商標は商標法第3条第2項に該当する旨主張するが、提出の各種資料を以てしては、本願商標が商品『釣竿用導糸環』について使用された結果、立体商標として自他商品の識別機能を有するに至っているものということはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)平成8年法律第68号により改正された商標法上の立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。

そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。

また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。

そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。

(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。

また、実用新案法、意匠法等により保護されている形状について重ねて又は権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。

(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおり、釣り竿の部品の一つであって、リールより送り出される道糸を竿先まで導くため釣り竿に適当な間隔で取り付けられる環(以下、「釣り竿用ガイド」という。)と認められるものであるところ、該形状は「釣り竿用ガイド」の一形態を表すものであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に商品「釣竿用導糸環」の形状を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。

請求人は、「本願商標は、釣り竿用ガイド(釣竿用導糸環)として採用し得る様々な形態のパターンの中にあって、他に類似するもののない独創的な形状を表したものであるから、通常採用しうる釣り竿用ガイドの形状そのものとはいえず、自他商品の識別力を有しているものである。」旨主張する。

しかしながら、原審において請求人も甲第1号証の4ないし6を提出しているように、「釣り竿用ガイド」にあっては、仕掛けの投入・巻き上げがスムーズにできること、道糸が釣り竿やガイドに絡まないこと及び魚のあたりが手元に明確に伝わること等が要求されるため、「釣り具」を取り扱う業界においては、特徴をもたせた多種類の形状の釣り竿用ガイドを製造・販売しているところであって、本願商標を構成する「釣り竿用ガイド」の特徴は、商品等の機能(糸絡み防止、摩擦抵抗の極小化、等)や美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲内のものというべきである。

しかして、本願商標は、前記認定のとおり、ややその形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。

(4)立体的形状からなる商標で商品等の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、また、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」(前掲答申P31参照)としているが、商品等の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときには、識別力を認めて登録することは前示のとおりである。

(5)請求人は、「本願商標は、永年使用の結果、請求人の商品を表示するものとして著名になっているものであり、自他商品の識別機能を有するものであるから、商標法第3条第2項に該当する。」旨主張し、原審において甲第1号証ないし同第17号証(枝番を含む。)を提出し、さらに、当審において甲第19号証ないし同第26号証を提出した。

そこで、請求人提出の各甲号証について検討するに、甲第2号証、同第4号証及び同第22号証ないし同第25号証は、請求人の釣り具価格表、商品カタログ・パンフレット等の資料であるが、その資料中には、請求人の製造販売に係る商品であることを表示したと認められる「Fuji」「富士」「フジ」等の文字が使用され、さらに、本願商標と同一と認められる釣り竿用ガイドを含む各商品毎にも、「Fuji」「富士」「フジ」等や他の文字が併記されているものである。

しかして、前示のとおり、商品の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、或いは、その美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)には、商品の出所を表示し自他商品を識別する標識として採択されるとはいえないものであり、その識別機能を果たすものとしては文字、図形又は記号等が適しているため、専らこれらが自他商品の識別標識として採択、使用されていることは顕著な事実であること及び前示認定のとおり、本願商標に係る形状が商品の一形態を表示するに過ぎないものであることからすれば、前記各甲号証中の商品「釣り竿用ガイド」は、「Fuji」「富士」「フジ」等の文字商標により識別されているというべきである。

また、甲第5号証、同第6号証、同第15号証、同第16号証の1ないし4、同第19号証及び同第26号証等によれば、請求人は「釣り竿用ガイド」において世界のトップに立つ企業であり、そのガイドの市場占有率はかなりの程度のものであって、我が国の釣り具メーカー各社の釣り竿にも多用されていることは認められるとしても、該甲第5号証及び同第16号証の2における釣り具メーカー各社の釣り竿は、「Daiwa」「SHIMANO」「RYOBI」等や釣り竿の種別毎に表示されている「磯潮」「POWER LOOP」「岩船」等の文字商標により識別されているというべきであって、これら釣り竿に接する取引者・需要者が、その部品の一つにすぎないガイドに注意を払い、その形状のみを捉えて出所を認識し購入するものとは到底認めることができない。

さらに、甲第7号証は、表題を「陳述書」とする証明書であるが、その証明者の殆どが請求人の関連業者と認められるばかりでなく、予め文章が記載された一枚の用紙のみの証明書であるため、証明者が安易に署名、押印をしたのではないかという疑問も否定し得ないところであって信憑性に欠けるといわざるを得ないものであり、また、甲第7号証と表題を同じくする同第8号証は、単に請求人の釣り竿用ガイドが全国で販売されていることを証明するにすぎないものであるから、前記各甲号証は俄には採用し難い。

加えて、(a)商標法第3条第2項における当該出願商標が使用をされた結果自他商品の識別機能を有するに至っているものであるか否かと不正競争防止法第1条第1項第1号における当該商品等表示が需要者の間に広く認識されているものであるか否かの認定、判断は、それぞれの法律の目的によってその内容が異なるといい得るものである(東京高裁昭和42年(ネ)第2373号判決参照)こと、(b)意匠法その他の工業所有権法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであり、これらに従った登録意匠等の実施と商標の使用とは明らかに異なるものであって、意匠登録等により保護される形状の独占実施を理由としては当該出願商標が自他商品の識別機能を有するに至っているものとすることができないのみならず、却って、意匠権等の消滅後は何人もその実施が予定されているものであることから、甲第12号証及び同第1号証の1ないし3に基づく請求人の主張は、いずれも採用の限りでない。

その他、請求人提出の各甲号証を総合してみても、本願商標それ自体が自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとするには十分とはいえないものであるから、先の認定を覆すに足りない。

4 結 論

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、これを登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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