Trademark Appeal Case
立体商標の包装形状識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2000−19153(T2000−19153/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
この出願に係る商標(以下「本願商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり(立体商標による商標)、第30類に属する願書に記載の商品を指定商品として平成11年5月31日に登録出願、その後、指定商品については平成12年8月23日付けの手続補正書により「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」とする補正がされたものである。
2 原審における拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品中の『コーヒー及びココア』・『茶』等との関係においては、その商品の包装(収納容器)の一形態を表したものと容易に認識させる立体的形状よりなるものであり、その側面に施されたデザインも、単なる装飾の一部に過ぎず、自他商品の識別力を有する程に特異性があるとは認められないものである。そうとすれば、本願商標を、その指定商品中前記商品に使用しても、単に商品の包装(収納容器)の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。
3 請求人の主張
請求人は、請求の理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第33号証を提出した。
(1)本願商標の基本的外観形状は、縦長円筒形からなるものであり、コーヒー等商品の包装容器の一形態として普通に使用されているものであることを認めるが、「炎」をモチーフとした図形は、包装容器の前面に立体的に刻印されたものであって、該図形は、指定商品との関係において、普通名称でもなく、商品との関係において無関係な図形であって、自他商品識別力を有するものである。該刻印は、明瞭に凹凸模様として認識されるものであり、立体商標の構成資料として充分登録適格性がある。したがって、本願商標は、商品の外観形状と自他商品識別力を有する「炎の図形」との結合商標であって、全体として自他商品識別力を有する。
(2)本願商標は、盛大なる広告宣伝と商品の優秀性によって、多くの需要者、取引者に広く親しまれ、著名性を獲得した。
(3)ありふれた形状に図形等を付した商標が多数登録されている事実がある。
4 当審の判断
(1)立体商標(制度)について
平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美的感覚(美観)を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美観をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美観を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美観と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美観とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
さらに、立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」によれば、「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、立体商標と意匠権との関係については、知的財産権制度全体の整合性を図る観点から、指定商品やその容器の形状そのものである場合には不登録とする取り扱いを厳格に行うことにより、両法域間の整合性を図る必要があると解される。
(2)本願商標について
本願商標は、別掲に示すとおり、縦長円筒缶の形状よりなり、その上面には指を掛けて引き開けるつまみ部(プルタブ)を有し、その胴部側面の一部箇所に炎(火が燃える様子)又は植物の葉形を思わせる縦長の抽象的図柄が相当程度のスペース(面積)をもって凹凸により刻印されている(以下「炎の図形」という。)ものである。そして、この円筒缶の形状は、全体として液体等を収納する上面にプルタブを有するプルトップ缶といわれる包装用容器と認められるものである。そして、該炎の図形は、その横幅スペースにおいて円筒の胴部側面、すなわち、缶胴部の円周の約3分の1を占め、かつ、その縦の長さは上下スペースの約8割を占めているものである。
ところで、本願商標指定商品中の「コーヒー及びココア、茶、そばつゆ、ホワイトソース」等、液体状の商品は、各種包装用容器(プルトップ缶を含む。)に収納、取り引きされているのが実情といえるところ、これら包装用容器の外側面には、商品の出所を表示する標章(すなわち、文字、図形等の商標)、製造者名及び販売者名や内容物の表示等とともに、その見栄え(外観)を良くするため、各種装飾的図柄(デザイン)や色彩が施されているのが一般的である。
そうしてみると、本願商標は、当該商品の包装用容器の一類型と目される円筒缶(プルトップ缶)であり、その胴部側面に刻印されている炎の図形は、前記包装用容器の実情よりすれば、当該商品の出所表示部分というよりは、むしろ、需要者に対し当該包装用容器の美感を訴えるための刻印装飾(デザイン)として認識されるとみるのが相当であって、たとえ、それ自体の図柄はやや特異なものであるとしても、全体として未だ包装用容器の形状を普通に用いられる方法で表示する域を出ないものといわなければならない。そして、炎の図形が、特定の称呼・観念の下に、商品識別の標識として機能しているとする事実はなく、また、その証拠も見出せない。
しかして、本願商標は、液体等を収納する包装用容器の胴部側面に美観のための一定の態様を刻印した円筒形状よりなるものであるから、これを指定商品中の前記商品に使用しても、取引者・需要者は、単に当該商品又はその収納容器を表示したものと理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
請求人は、本願商標中の炎の図形部分に自他商品の識別性があり、盛大な広告宣伝の結果、本願商標が識別性を獲得していると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし同第20号証を提出し、かつ、他の立体商標に関する登録例(甲第21号証ないし同第33号証)を引用しているが、本願商標中の炎の図形が包装用容器の装飾と理解され把握されるに止まること前記のとおりであり、また、その実際の使用例をみると、該炎の図形は、それ自体が赤・黒で着色され或いはその内部を縞模様で表すなどして本願商標とはその外観、印象を異にし、かつ、商品の出所表示部分と目される文字(「KIRIN」「FIRE」)と共に用いられていて、それ自体が商品識別の標識として機能するとの点は客観的に明らかでないから、該事実はこれを認めるに充分でない。また、他の引用登録例は、自他商品の識別性のある文字又は図形を伴っている点において本願商標とは事案が異なるものであるから、それらを本願商標の登録の適否を判断する基準とすることは適切でない。したがって、請求人の主張は採用することができない。
(3)結論
以上のとおり、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものといわざるを得ないから、同旨の理由をもって本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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