Trademark Appeal Case
防護標章の周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年審判第18727号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願標章
この防護標章登録出願は、平成3年商標登録願96278号(平成3年9月13日出願)を原出願として商標法第65条第1項の規定に基づく出願の変更がなされたものであって、この出願に係る標章(以下、「本願標章」という。)は別掲のとおりの構成よりなり、第26類に属する願書記載の商品を指定商品として、登録第2596497号商標(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章登録出願として、平成9年10月3日に登録出願、指定商品については、その後、当審において提出した平成12年1月28日付けの手続補正書により第26類「印刷物(文房具類に属するものを除く。)」とする補正がされたものである。
そして、原登録商標は、別掲のとおりの構成よりなり、平成3年9月13日に登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同5年11月30日に設定登録が行われ、現に有効に存続するものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定は、「本願標章は、自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められない。したがって、本願標章は、商標法第64条の要件を具備しない。」旨認定して、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)本願標章と原登録商標との一致について
本願標章は、別掲に示すとおり、濃緑色に着色した文字により「BANYU」の文字を横書きに表してなるところ(左から3字目の文字のみは、2つの細書きした「N」の字形をやや横にずらして二重に表されている。)、該構成はその構成・色彩において原登録商標と同一のものであること、そして、原登録商標が請求人の所有に係るものであり、かつ、該商標権が現に有効に存続していることは、その商標登録原簿の記載に照らし、これを認めることができる。
(2)原登録商標の周知・著名の程度について
請求人は、原登録商標が請求人の業務に係る商品(第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」)を表示するものとして需要者間に広く認識されているから、本願標章の指定商品である「印刷物(文房具類に属するものを除く。)」に使用した場合、請求人の業務に係る商品であるかの如く混同を生ずるおそれがあるとして、商標法第64条該当を述べ、証拠として第3号証ないし第256号証を提出しているので、以下、これについて検討する。
(ア)第3号証は、請求人会社「萬有製薬株式会社」に係る会社概要を示す、いわゆるインターネットのホームページの情報(1999年(平成11年)8月12日付け)であって、その事業内容、従業員数、売上高(年次より)等の記載よりみて、同人が全国各地に事業所を置いて医薬品等を販売する相当規模の事業者であること、そして、当該情報の所定個所に原登録商標と同一の商標の表示が認められる。
(イ)第4号証は、請求人会社に係る1999(平成11年)年4月作成の「萬有製薬医療用医薬品添付文書集」なる製品案内抜粋(写し)であって、その取扱いに係る各種医薬品の製品名別、一般名別、或いは薬効別等の製品リストとともに、その一部の錠剤には、予め所定の数量毎にカプセル包装された表側に原登録商標が一面に表示されていることが認められる。
(ウ)第5号証は、請求人会社に係る1999(平成11年)年6月作成の「緑内障・高眼圧症治療薬」とする当該医薬品に係る製品パンフレットであって、その表題部に原登録商標の表示が認められる。
(エ)第6号証は、請求人会社に係る1999年(平成11年)4月作成の「緑内障・高眼圧症治療薬」とする当該医薬品に係る製品パンフレットであって、その表題部に原登録商標の表示が認められる。
(オ)第7号証ないし第21号証は、1991年(平成3年)末から1999(平成11年)年中旬に至る間の朝日新聞、日本経済新聞等の新聞及び健康に関する一般雑誌に掲載された請求人会社の企業活動を示す広告記事であって、請求人会社が原登録商標の表示の下、「薬の効果と副作用について正確に理解してもらうために努力している」、「高血圧治療薬の効果」「新薬を開発している」等のうたい文句により企業活動を行っている状況が認められる。
(カ)第22号証ないし第30号証は、1992年(平成4年)中旬から1999年(平成11年)中旬に至る間の読売新聞等の新聞に掲載された請求人会社の企業活動を示す広告記事であって、請求人会社が原登録商標の表示の下、「コレステロール値の維持、運動、血圧、食事」等を通じた健康維持に関する啓蒙活動を行っていることが認められる。
(キ)第31号証ないし第34号証は、平成8年1月から平成11年1月に至る間の月刊陸上競技1月号別冊第1付録に掲載された請求人会社の企業活動を示す広告であって、これより原登録商標の表示の下、「新薬を開発している」、「優れた新薬と正しい医薬情報をお届けします。」等のうたい文句により企業活動を行っている状況が認められる。
(ク)第35号証ないし第36号証は、1997年(平成9年)、1998年(平成10年)のいわゆる箱根駅伝のパンフットと思しき印刷物に掲載された請求人に係る広告記事であって、請求人会社が原登録商標の表示の下、「新薬を開発している」旨のうたい文句により企業活動を行っている状況が認められる。
(ケ)第37号証ないし第55号証は、1992年(平成4年)10月から1999年(平成11年)7月に至る間の新聞・パンフレット等に掲載された請求人に係る広告記事であって、請求人会社が原登録商標の表示の下、「現代人とストレス」、「はたらく人々の健康」、「高血圧の予防と治療」「成人病の予防と運動療法」、「リエンジニアリングと健康管理」なるシンポジウムを行っていることが認められるものの、原登録商標に係る商品及びその具体的な取引状況までは明らかではない。
(コ)第56号証ないし第83号証は、1993年(平成5年)5月から1999年(平成11年)4月に至る間の新聞に掲載された広告記事及びちらしと思しきものに掲載された広告記事であって、請求人会社が原登録商標の表示の下、「いのちのコンサート」、「ふれあいコンサート」などの「コンサート」という文化活動を行っていることは認め得るとしても、原登録商標に係る商品及びその具体的な取引状況までは明らかではない。
(サ)第84号証ないし第97号証は、1995年(平成7年)5月から1998年(平成10年)6月に至る間のものとみられる新聞等(なお、第93号証ないし第97号証は発行年が不明である。)において、請求人が主催、後援、協賛しているとする「BANYUいのちのコンサート」、「BANYUいのちのコンサートIN仙台」、「BANYUいのちのコンサート’95」等のコンサートに係る紹介記事、お知らせ記事とみられるところ、当該企業活動の状況は認め得るものの、これに表示された「BANYU」という商標は、厳密にいうと原登録商標とはその表示態様をやや異にし左から3文字目の文字が細書きした「N」の字形をやや横にずらして二重に表されたものではないので、その使用を示すものとは認められない。
(シ)第98号証は、「少年と蜂」、「森のいきもの」、「春」、「夏」、「秋」、「冬」の全6編からなる請求人に係るテレビCMの一部を静止画像として示したものと認められる。そして、これらCMにおいては「いのちの音を聴いたことがありますか。」、「耳を澄ますと聞こえてきます。美しいいのちの音楽が。」、「春の命が歌い始めました。」、「夏のひかりをあびていのちは大きく育ちます。」、「いのちのいろどりが秋を告げています。」、「冬のいのちが新しい季節を呼んでいます。」の語句の後に「ひとりひとりのいのちを考える萬有製薬です。」のナレーションが入ることが認められる。これら6編からなるCMは、企業イメージを高める企業活動と理解し得るものの、これらによっては、原登録商標に係る商品及びその具体的な取引状況までは明らかではない。
(ス)第99号証ないし第221号証は、第98号証(CM放送)の平成5年以降の放送実績を示したものと認められる。
(セ)第222号証は、請求人会社が平成11年に株式会社エフエム東京及び関連会社を通じて「BANYU TALKING GALLERY」というラジオ番組を提供していること、また、その番組中において関連イベントとして「BANYU TALKING GALLERY」という試写会の告知を行ったことを示すものであって、これからは、該番組において出演者が「バンユー」と呼称するなどしてPR活動を行ったことは認め得るものの、原登録商標それ自体の使用状況は示されておらず、その周知状況を客観的に判断することはできない。
(ソ)第223号証ないし第242号証は、1995年(平成7年)12月から1999年(平成11年)1月に至る間の箱根駅伝のパンフレットや新聞、雑誌等における当該イベントに関する広告と思われるが(第223号証、第224号証、第235号証、第239号証ないし第242号証は発行年が不明である。)、ここからは、請求人が原登録商標を表示して箱根駅伝の放送番組を提供していることは認められるものの、原登録商標に係る指定商品が示されていないことからすれば、当該取扱いに係る商品を具体的に把握することができない。
(タ)第243号証は、1996年(平成8年)11月20日発行の日経産業新聞における日本ジェイ・ディ・エドワーズ株式会社の広告記事であって、「BANYU流ERP」の表題の下、J.D.Edwardsの業務パッケージを導入した結果、萬有製薬(請求人)が業務の効率化を図った旨の内容が示されているに止まるものである。
(チ)第244号証ないし第256号証は、同業他社に係る当該防護標章登録の状況が示されているに止まるものである。
以上の(ア)ないし(チ)の各認定によれば、請求人が具体的に原登録商標をその指定商品に直接表示し使用している証拠は、僅か第4号証及び第5号証のみであって、このほか、第3号証、第7号証ないし第21号証、第31号証ないし第36号証において、原登録商標の表示の下に医薬品を販売し、又は、高血圧治療薬の効果の記載、新薬を開発している記載等が見受けらるとしても、これら証拠をもってしては、原登録商標に係る商品(医薬品等)が具体的にいつ頃から、どの地域において、どのくらいの数量のものが取り扱われ、また、その市場シェアはどの程度のものかという点は、必ずしも明らかではなく、その周知・著名事情を判断するに必ずしも充分なものとはいい難い。
そうすると、請求人が新薬を開発し、かつ、全国各地に事業所を置いて医薬品等を販売する相当規模の事業者であること、また、健康に関する啓蒙活動を行っていること、コンサート、シンポジウムなどの主催、共催、後援を行っていること、箱根駅伝の番組を提供するなどして積極的に文化活動を行っていること、そして、企業イメージを高めるべくテレビ、ラジオにおいて萬有製薬株式会社という会社を「BANYU」と称して宣伝したこと等の状況よりして、請求人会社が我が国において医薬品等の製薬関連分野の事業者として一般に広く知れられていること、また、原登録商標は、その取扱いに係る商品又はその業務を表彰するものとして、この種医薬品の取引者・需要者間に相当程度認識せられるに至ったものであろうこと、すなわち周知商標と認められるとしても、請求人提出の証拠による限り、それが我が国需要者一般に広く認識せられるに至った著名商標であるとまでは俄に認め難く、その著名事情は依然明らかでないものといわなければならない。
(3)出所の混同のおそれについて
防護標章の登録について定めた商標法第64条第1項においていう「他人が登録商標の使用をすることによりその商品と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがある」かどうかを判断するに当たっては、商標自体とそのほか、その登録商標の著名の程度、防護標章登録出願に係る指定商品の属する分野における需要者の注意力の程度、及び当該商品の取引の事情等に照らし、その混同のおそれの有無を総合的に判断すべきものと解される。
これを本件についてみると、請求人提出の全証拠からは、原登録商標が、請求人会社に係る医薬品等の著名商標であるとまでは判断することができないとした前記認定を相当とするから、他人が本願標章をその指定商品「印刷物(文房具類に属するものを除く。)」に使用したとしても、これに接する需要者が直ちに請求人の業務に係る商品の如く混同を生ずるおそれがあるとまではいえないものと判断するのが相当である。
(4)請求人の主張
(ア)請求人は、本願標章を表示して「食事療法シリーズ」等の印刷物を配布したとし、他人が本願標章を使用した場合、請求人の業務に係る商品の如く混同を生ずる旨述べているが、それらは無償配布される広告・宣伝用のパンフレットの類であり、かつ、その頒布状況の全容は不明であり、また、本願標章の指定商品「印刷物(文房具類に属するものを除く。)」の分野においては、昭和47年以降、相当期間に亘って刊行されてきた件外株式会社小学館に係る商品「万有百科大事典」が存在したことは顕著な事実であって、「万有」(BANYU)の文字からは、需要者はむしろ該印刷物を想起する可能性なしとしないから、結局、それら広告・宣伝用のパンフレット等の存在をもって、商品「印刷物(文房具類に属するものを除く。)」の分野における販売実績ないしは本願標章の周知事情を示すものとはいえないので、本件における出所の混同のおそれについて、これを参酌することはできない。
(イ)他人の防護商標の存在
請求人は、第244号証ないし第256号証をもって、同業他社に係る当該防護標章登録と同様に本願標章も防護標章登録されるべき旨主張しているが、それら同業他社に係る原登録商標と本願標章に係る原登録商標とは、それ自体の構成とそのほか指定商品の分野並びに著名事情を自ずと異にするから、その主張は妥当でなく、採用することはできない。
(ウ)このほか、請求人の述べる主張をもって、前記の認定を覆すことはできない。
(5)結論
以上のとおり、本願標章は、他人がこれをその指定商品について使用したとしても、これに接する需要者は、該商品が請求人の取扱いに係る商品の如く、その出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
してみれば、本願標章は、商標法第64条第1項所定の要件を満たすものとはいえないから、これと同旨の理由をもって本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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