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Trademark Appeal Case

氏名・業種名の使用による識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成9年審判第19442号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」という。)は、別掲に示すとおり、「星野書店」の文字を書してなり、第16類に属する願書記載のとおりの商品を指定して、平成7年11月30日に登録出願、その後、指定商品については、当審における平成10年3月26日付の手続補正書により「書籍,雑誌」とする補正がされたものである。

2 原査定における拒絶理由の要点

原査定は、「本願商標は、ありふれた氏である『星野』の文字及び業種名と認められる『書店』の文字を結合し、普通に用いられる方法で書してなるものであるから、これをその指定商品に使用しても自他商品の識別力を有しないものと認める。出願人は、意見書において、本願商標が商標法第3条第2項の該当要件を具備する旨主張し、証拠を提出しているが、提出に係る資料は、主として『文星堂星野書店』若しくは『株式会社星野書店』の歴史に関するものであって、本願商標をその指定商品に使用し、自他商品識別力を獲得したことを十分に立証したものとはいえないから、結局、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 請求人の主張

本件審判請求書において、請求人は、請求の理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第32号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)請求人の沿革について

(ア)請求人は、書籍卸・小売を永年に亘り営んでいるものである。

(イ)請求人は、大正8年(1919年)9月名古屋市に店舗を創立したが、昭和20年焼失。

(ウ)昭和37年(1962年)12月現在の名古屋市中区錦3丁目23番11号(昭和41年3月30日の住居表示の実施後の表示)に「株式会社星野書店」(本店)を新築開店。

(エ)昭和41年以降、請求人は名古屋を中心に支店を拡大。

(オ)平成9年7月現在、請求人の店舗は本店及び支店14(名古屋市:近鉄名古屋店・栄町ビル店・サカエチカ店・金山橋店・浄心店・高畑店・スカイルブックセンター店,愛知県:朝倉店・稲沢店・江南駅前店・西春店・木曽川店,岐阜県:新岐阜駅前店・大垣店)となっている(以上、甲第2号証、甲第13号証ないし同第30号証)。

(2)請求人の本支店の売上高等の年度別事業所別内訳書について

請求人の本支店の売上高等の年度別事業所別内訳の直近のものとしては、平成8年6月1日から同9年5月31日にかけての3,178,065,273円であり、請求人の取扱いに係る商品の売上高は膨大である(甲第4号証)。

(3)商標法第3条第2項の該当性について

仮令、本願商標が、ありふれた氏である「星野」に業種名である「書店」の文字を結合し、普通に用いられる方法で表示したものであって、商標法第3条第1項第4号に該当するとしても、請求人は、その本支店において、昭和37年12月以来、本願商標を「書籍、雑誌」について、永年に亘り使用してきたから、取引者・需要者は、請求人の業務に係る商品であることを認識するに至っているので、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しており、登録されるべきである(甲第6号証ないし同第32号証)。

(4)同業者の証明書(甲第6号証ないし同第12号証)について

当該証明書の証明者は、我が国における代表的な書籍取次店あるいは出版社である。

(5)本願商標と広告に係る商標(甲第30号証ないし同第32号証)との書体の相違について

本願商標と広告に係る商標とは若干その態様が異なっているが、(ア)取引界にあっては、簡易迅速な取引が尊ばれており、商標も細部に至るまで子細に観察されるものではないこと(イ)取引者、需要者が商標に接する場合は、時と処を異にして接する場合が多く、その場合、細部に至るまで正確に記憶されるものではないこと等を考慮すると、本願商標と広告に係る商標とは社会通念上同一とみなされるべきである。

(6)本願商標と同一又は類似の商標登録出願が見当たらないことについて

請求人の調査によれば、請求人以外の者が本願商標と同一又は類似の商標をその指定商品について出願している事実はない。

(7)本願商標を登録しない場合の影響について

請求人以外の者が「星野書店」の文字からなる商標をその指定商品について、自由に採択し使用し得るとするならば、本願商標をその指定商品について永年に亘り使用し、その結果、請求人が獲得した業務上の信用を著しく毀損するばかりでなく、取引者・需要者に対し不測の不利益をもたらす結果を招来することになる。

4 当審の判断

(1)本願商標の商標法第3条第1項第4号該当について

本願商標は、「星野書店」の文字を書してなるところ、該文字は、請求人(商標登録出願人)の業務に係る会社名称(商号)「株式会社星野書店」の略称部分に相応するものと認められる。

そして、これを構成する「星野」及び「書店」の各文字がそれぞれ我が国において、ありふれて存在する氏姓の一であること、また、商品「書籍、雑誌」等を取扱う事業者がその営業に係る店舗名を表示するものとして、或いは、その営業主体である会社名(商号)等について、その業種名を表示するものとして普通に採択し使用されるものであること、そして、本願商標がそれらの文字を結合し、普通に用いられる方法で書してなるものと容易に認識し把握されるものであることは、下記の(ア)ないし(イ)の点に照らし、これを認めることができる。

(ア)「星野」の文字又は氏姓について

(a)平成13年3月版 東日本電信電話株式会社(いわゆるNTT東日本)発行「ハローページ」(個人名電話帳)〈50音別〉東京都23区全区版・下巻における「星野」の氏姓は2,670件以上あること、

(b)六藝書房発行、1972(昭和47)年3月8日再版発行、佐久間英著「日本人の姓」の161頁の記載によれば、「星野」姓は、我が国において代表的な姓のうちの一つであり、全国順位107位であって、約9万人存すること、

(c)また、昭和59年12月10日発行「歴史読本」第29巻第19号,特集「日本の姓氏」の90頁「佐久間ランキング ベスト4000」という表題中の「星野」に関する記載によれば、「星野」姓は、110位であること、

(d)さらに、株式会社小学館発行、「日本国語大辞典」第18巻、1993年2月20日第1版14刷の139頁、「ほしの」(星野)の項をみると「ほしの[星野]姓氏の一つ」という記載以外の記載は見当たらないこと。

(イ)「書店」の文字について

(a)「書店」の文字(語)は、一般に、書籍、雑誌等を販売する店舗と容易に理解され、その業種名を表示するものとして普通に用いられていること、そして、「書店」を業種名として用いている例は、全国に無数存在し、また、ありふれた氏姓に「書店」という業種名を付した店舗は、日本全国に多数存在することは、すでに顕著な事実であり、さらに、請求人以外に「星野書店」又は「ほしの書店」という「書籍,雑誌」等を取扱う事業者が我が国において数店以上(例えば、東京都3店舗、群馬県・山梨県・埼玉県各1店舗)存することもまた事実といわなければならない。

以上のとおり、本願商標は、ありふれた氏姓と業種名よりなるものと容易に認識し理解されるものであり、また、その表示態様は、前記各文字を普通に用いられる方法で表示したこと以外に何ら特別な構成を備えたものでないことが認められる。

そうとすれば、本願商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、ありふれた氏姓と当該業種名を表示したものと理解するに止まり、何れの「星野」(書店)の取扱いに係る商品であるかの識別が困難な結果、これをもって、当該商品の出所識別の標識とは認識し得ないものとみるのが相当である。

してみれば、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものといわなければならない。そして、請求人は、本願商標が同法条の規定に該当するとする点については、殊更反論していない。

(2)商標法第3条第2項該当の当否について

本願商標について、なお、登録要件を具備するものというためには、商標法第3条第2項において定める所定の要件(「本願商標をその取扱いに係る商品『書籍、雑誌』について、永年に亘り使用してきた結果、当該商標が自他商品識別標識としての機能を充分に果たし、取引者・需要者が請求人の業務に係る商品を表示する商標として広く認識するに至っていること」)を具備することについて証拠に基づき具体的に明らかにする必要がある。

そして、該事実が充分に明らかでない場合には、自他商品識別の機能を有しないものとして、その登録を認めることは困難といわなければならない。

ところで、商標の本質(機能・役割)は、自他商品(又は役務)の識別機能を果たすことにあり、一方、商標法の法目的は、商標を保護することにより、商標使用者の業務上の信用の維持と需要者の利益保護を図ることにある(法第1条)と解される。

したがって、保護対象とされるべき商標は、本来、これら法目的に合致したもの、すなわち、全国単一の商標権として、独占排他権を認めるに足るものであるか否かの点が問われるのであって、一地域において、一定期間使用してきたものであるからといって、直ちに、この要件を満たすものとみるのは困難であって、商標自体と当該商品の取引の実情に照らし、総合勘案することが必要と解される。

しかるに、請求人は、本願商標をその取扱いに係る商品「書籍、雑誌」について、永年に亘り使用してきた結果、取引者・需要者は、請求人の業務に係る商品であることを広く認識するに至ったものであるとし、商標法第3条第2項該当を主張しているので、以下、その提出に係る各証拠(甲号証)について検討する。

(ア)「覚書・星野家の百二十年」(昭和57年3月3日発行,著者:服部徳助)(甲第2号証)及び「日本の書店百年」(1991(平成3)年7月19日第1刷,著者:尾崎秀樹+宗武朝子)(甲第3号証の1ないし同号証の4)について

「星野書店」の文字は、当該書物の文章中で記述的に用いられているものがほとんどであると認められる。そして、その表示態様からすると、該表示は専ら店舗名ないしは営業表示(又は会社名称の略称)というべきものであって、これを商標として、すなわち、自他商品の識別標識として、需要者に対し印象付け、或いは、注意を喚起することに主眼があったものとは到底認め難いものである。

また、これら書物の発行の趣旨は、あくまで、記念誌的な意味合いのものとみるのが相当であり、その内容は請求人の沿革を纏めて紹介した書籍の範疇に止まるものというべきであって、その発行部数・地域・期間等は不明というほかはないから、請求人が本願商標を「書籍,雑誌」に使用し、我が国の需要者間において広く認識され、自他商品識別力を獲得するに至ったものであることを客観的に示すものとはいい難く、したがって、本願商標について、需要者一般の認識の程度を測ることはできない。

(イ)売上高等の年度別事業所別内訳書(54.6.1ないし9.5.31)(甲第4号証)について

請求人の本支店の年度別事業所別売上高内訳書によれば、毎年相当程度の販売実績が認められるものの、本願商標の記載すらも見出せないから、これらの書面をもって、本願商標が「書籍,雑誌」に使用され、我が国の取引者、需要者間において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、自他商品識別力を獲得するに至ったことを客観的に明らかにしたものとはいえない。

(ウ)「books HOSHINO」の文字よりなる登録第4037441号商標の商標登録原簿及び商標公報(甲第5号証の1及び同号証の2)について

該商標は、本願商標と構成態様を著しく異にする別個のものであって、事案を異にするから、その存在は、本願商標の使用による自他商品識別力獲得の有無の判断に直接関わりがなく、参酌することはできない。

(エ)同業者の証明書(甲第6号証ないし同第12号証)について

これらは、請求人が予め当該証明に係る文面を印刷・作成・依頼した一片の書面に、それぞれの証明者が署名、捺印した形式の画一的な証明書であって、たとえ、我が国における代表的な書籍取次店あるいは出版社に係るものであるとしても、当該証明者がその証明書の内容に関し、如何なる資料に基づいて証明し得たのかの事情は皆目不明であり、かつ、これらの者はいわば請求人会社の取引業者であって、需要者ではないから、これらの証明書によっては、本願商標が我が国の需要者間において、どの程度認識せられたのかの点は依然明らかでなく、該事実は客観的に証明されない。

(オ)印刷業者の証明書(甲第13号証及び同第14号証)について

これらは、株式会社出版サービスセンター及び株式会社小林印刷所の代表者が請求人に対して、平成9年1月から同12月にかけて納品した包装袋(1,151,000枚)及びブックカバー(1,291,000枚)の納品証明であるところ、請求人と直接の利害を有するこれらの者の証明をもって、直ちに、本願商標が「書籍,雑誌」に使用され、我が国の需要者間において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、すなわち、自他商品識別力を獲得するに至ったものであることを客観的に証明し得るものとはいい難い。

(カ)請求人の本支店の各写真(撮影日:平成10年4月)(甲第15号証ないし同第29号証)及び私鉄の車内広告及び駅構内広告の写真(甲第30号証ないし同第32号証)について

請求人が名古屋を中心とする愛知県内及び岐阜県の一部において総計15店を営み、それらの店名として本願商標を現に使用していることは認められるとしても、これらは、請求人がその事業拠点とする一地域のみの広告活動であって、これらに接する者は、自ずと一定地域に限定されるものであるから、地域限定のない我が国の需要者一般において、本願商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして、自他商品識別力を獲得するに至ったことを示すに充分な証拠とは認められない。

以上のとおり、甲第2号証ないし同第32号証からは、本願商標が愛知、岐阜の一地域範囲において、請求人の業務に係る書籍、雑誌等を表示するものとして相当程度需要者間に認識されたものであろう点は認め得るとしても、同地域を超えて、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者一般に広く認識せられたものとするのは困難であって、商標法第3条第2項の自他商品識別力を獲得するに至ったとの点を認めるに充分なものとはいい難い。

(3)その他の請求人の主張について

請求人は、同人以外の者が本願商標と同一又は類似の商標をその指定商品について出願している事実はないから、本願商標は登録されるべきである旨述べているが、本願商標の構成自体とこの種商品の取引事情よりして、登録要件を具備するものでないことは、前記(1)及び(2)に示すとおりであって、他人による出願の存否が、本願商標の登録の可否判断を左右するものではないから、その主張は妥当でなく採用の限りでない。

また、請求人は、「星野書店」の文字からなる商標を「書籍,雑誌」について自由に採択し使用し得るとするならば、本願商標を「書籍,雑誌」について永年に亘り使用した結果、請求人が獲得した業務上の信用を著しく毀損するばかりでなく、取引者・需要者に不測の不利益をもたらす結果を招来する旨述べているが、本願商標の登録が認められないからといって、直ちに、その周知性や継続使用の権利までもが全否定されるわけではなく、また、前記商標法の法目的並びに全国一律に効力の及ぶ商標権の独占排他性を考慮すれば、むしろ、本件商標を商標登録することにより、無用の混乱を引き起こすおそれなしとしないから、その主張は採用することができない。

(4)結語

以上(1)ないし(3)に述べたとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4号該当を免れないものであり、また、提出証拠による限り、この適用除外規定である同法第3条第2項所定の要件を備えたものともいえないから、結局、これと同旨の理由をもって、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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